アイテム番号: SCP-3000
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-3000は考え得るいかなる方法でも直接収容が不可能です。財団はSCP-3000と基底現実間における潜在的アンカーの探索・破壊を続行します。
説明: SCP-3000は、A)地球の別反復(あるいは多くのそうした反復の融合物)、またはB)地球とある程度の表面的類似を有する異次元の発現、のどちらかであると現在仮定されています。SCP-3000に関する情報はすべて、かつてエージェント・アレクシス=ケネディの右眼窩に取り付けられていた、サイバネティック的眼球拡張部内に保存されていたデータから回収されました。身体は回収されておらず、彼女の継続的生存の見込みはないと考えられています。
エージェント・ケネディは、プロジェクト・シトラ=アキュラの一環として結成された財団/GOC共同の高機密指定部隊、機動部隊プサイ-13("魔女狩人")の一員です/でした。機動部隊プサイ-13はネオ-サーキック1組織への潜入、ならびに高脅威構成員の終了を任務としています。
プロジェクト・シトラ=アキュラの一環として、機動部隊プサイ-13はオカルト交戦時戦略Counter Occult Stratagem(COS)及び腐食性/焼夷性の武装運用について習練・熟達しています。各エージェントは焼夷弾及び腐食性の弾薬が使用できるように改造されたSIG Sauer P226を装備しています。機動部隊プサイ-13の隊員は以下を含む少数のサイバネティック的拡張を施されています:
- 両眼球は眼球インプラント7型Ocular Implant Type 7(OI-T7)により改造され、着用者がビデオデータを記録することを可能にしています。このデータはライブ映像として財団司令部に順々に送信されるとともに、内部ハードドライブに保存されます。OI-T7は焦点距離・低光度環境に合わせた調整が可能であり、またGPS観測器を装備しています。
- 頭蓋骨の一部には補助頭蓋聴覚インプラント2型Sub-Cranial Auditory Implant Type 2(SCAI-T2)が外科移植されており、音声記録を可能にしています。またこの記録は順々にOI-T7内の記録チップに保存されます。
- バイタルサインの追跡を目的とする、補助皮膚下バイオテレメトリー観測器。
目標: PoI-3681 (ヴィヴィアン・デュラント-クロイ)
生誕日: 1971/08/07
身長: 1.6メートル
体格: 小柄
瞳: 青
髪: ブロンド
略歴: ヴィヴィアン・デュラント-クロイは身元不明の母親とデュラント家2の家長シリル・E・デュラントの間の娘であり、ルイジアナ州セントタマニー郡の一家の邸宅で生まれました。彼女は女性相続者にして上流社会のセレブタントとして公然と知られ、異常な能力・関与の証拠はありませんでした。1996/10/21、PoI-3681はアブラクサス・アームズのCEOにしてネオ-サーカイトの疑いがあるハンガリー人、ベルトク・クロイと結婚しました。
PoI-3681は現在デュラント=ボドフェル金融グループの会長兼CEOであり、ネオ-サーキシズムにおいて権威を増しつつあります。プロジェクト・シトラ=アキュラは彼女が合衆国大西洋沿岸中部3の地域で主に活動するネオ-サーキック支部組織、GoI-0490("白蛆の秘密教団")4の仮カルキスト5になる予定であることを明らかにしました。
任務: GoI-0490への潜入ならびにPoI-3681の終了。
任務補遺 2014/11/23: エージェント・ダニエル=カイン、アレクシス=ケネディ、パトリック=テイラーはGoI-0490への潜入に成功し、2014/12/01に開かれるPoI-3681のザルクンZ'alkun6の儀式に招かれました。エージェントらは指令を受け次第PoI-3681を終了する手筈です。機動部隊プサイ-9”深淵を見つめるもの”の工作員らは、事態が悪化した場合に備えて待機するものとします。
時刻: 2100 |
クロイ邸は白蛆の秘密教団の主要本部であると考えられています。屋敷は20世紀初頭のものであり、ニューヨーク州スカーズデールの人里から離れ、深い森林に覆われた区域に位置します。エージェント・カイン、ケネディ、テイラーはエージェント・バロウズ(同じく機動部隊プサイ-13所属)の運転するリムジンに乗って門楼まで送迎されます。門楼はカメラとインターカム7システムを備えています。身元不明の声がインターカムから語りかけます:
時は何時か?
エージェント・カインが返答します:
11時──真夜中の蠕虫が近づいている。
門扉が開き、何事もなく邸宅の敷地に立ち入れます。3人は玉石の道を進み、赤い装飾ガラスのランタンに照らされたエリアを抜けて、およそ3分経過後に屋敷に到着します。タキシードスーツと顔全体を覆う黒のヴェールで着飾ったドアマンが表玄関を開くと、彼/彼女は頭を下げて一礼し、彼らも同じように振る舞います。
エージェントらが邸宅へ入るとともに、ビデオは滑らかな赤と黒の石からなる室内装飾品や金色のシャンデリアを映し出します。室内音楽は彼らが歩みを進めるにつれて次第に聞き取りやすくなってゆき、3人は大広間に到着します。室内は絵画や彫像で飾り付けられ、そのうち獅子の頭と蠕虫の身体を持つ存在を表現したおよそ5メートルの大理石の彫像が部屋の中心に存在します。この像はデミウルゴス、またの名を”ヤルダバオート”8の象徴的表現であると考えられます。
広間は屋外で見かけたものと同様の赤色ガラスのランタンによって仄かに照らされています。話し声が聞こえ、うめき声もまた同様です。水晶体拡張部は低光度環境へと調節し、150〜200体のヒト型個体群を明らかにします──その大部分は性行途中のようであり、他の個体はくつろぎ、会話し、見学しています。多くはまともに衣服を纏っておらず、一部は仮面のみを着用しています。
3人はコーナーテーブルに着席し、会話に興じている様子を装います。召使いらが部屋を右往左往し、ワインとオードブルを提供して回っています。召使いらはドアマンのものと同じ服装に身を包んでいます──タキシードスーツ(男性用・女性用のどちらかを着用)、そして黒のヴェールです。
時刻: 2205 |
記録に束の間垣間見えるのは、背が高く(身長およそ2.5メートル)静止した、フード付きのローブを被った人物です。おそらく警備員であると考えられる彼らは、邸宅内部を見守っているようです。これら実体はその後、潜在的なSK-BIOタイプΒ個体に指定されました。
任務司令部はエージェント・ケネディとテイラーには広間内に残るよう指示し、エージェント・カインにはPoI-3690の捜索を続行するよう指示します。エージェント・ケネディとテイラーは周辺環境に溶け込むために相手への接吻・接触を開始し、一方でエージェント・カインは邸宅の更なる調査へと向かいます。
エージェント・カインは付近の会話を一部録音することに成功しました。音声専門家は以下の対話に区分けしました:
2名のゲスト間の会話の最後とみられるもの:
不明な男性: …だが彼らの血は間違っている。薄くそして弱い…
不明な女性: 我等は同じ主に仕えているではないか。いくら薄いと呼べど、イオンの血の最小の滴ですら豚とは一線を画しておろう。
2名の男性の間の少々白熱した議論:
不明な男性1: オロク9の誓いだと?
不明な男性2: いかにも。
不明な男性1: 冗談だろう。ブラックロッジは同族かもしれないが、奴らはそうした主張に必要な[解読不能]に欠けている。
不明な男性2: 君は彼らの熱意を過小に評価しているな。モスクワの寺院を見たことがあるかね? 君は彼らを見くびっているよ…
男女が、背中を丸め身体を覆うカウルから青白い触手をぶら下げた人物(PoI-5963に指定)に話しかけています:
不明な女性: カルキスト・トゥースラTuuslar。お会いできて光栄です。
PoI-5963: ヴィVi・ズx・サァsaa・ツスルtz'thul。
不明な男性: ああ、貴方様は儀式を行うためここにおられるのでしょうか? 貴方様が遥か下々の者たちと喋られるためなどに遥々やって来られるとは思えません。
PoI-5963: ヴァナァタVanaata。ノドNod・ダァスdaas・メンスカmenska、ガァルgaal・ナクnak・ズx・デロdero・セクスthex・マァmaa・アルゥンalune。
不明な女性: 知恵なる御言葉。本当に光栄です。
時刻: 2230 |
エージェント・カインは異様に長い義肢を備えた女性の四肢切断者のように見える実体と遭遇します。この映像を詳しく分析したところ、手足は義肢ではなく肉体的改変(”リハスカゥル”Lihaaskur10、またはサーキックにおける”肉の工芸”)の結果であることが示唆されます。この人物はPoI-4201に指定されます。PoI-4201のヒト部位は全裸であり、両眼を黒い目隠しで覆われた状態で逆さまに吊るされています。
ビデオはPoI-4201がエージェント・カインに近づき(4本すべての肢で歩き/這い寄り)、口を開く様子を映します。不明な女性ゲストがエージェント・カインに官能的に触れ出し、次のように語りかけます。
彼女は満足させたくて堪らないのです。進んで。彼女に捧げるのです。私は見たいのですよ。
エージェント・カインは自我を保つよう指令され、それに従います。PoI-4201は彼に口淫し始めます。
およそ16分経過後にエージェント・カインはPoI-4201(および不明な女性)との交流を完了し、PoI-3690の捜索続行を指示されます。ゴングのような楽器が打ち鳴らされると、ゲストらは直ちに活動を中止して広間の北東に位置する玄関ホールへと下りていきます。エージェントらは彼らを追跡し、その最終目的地で合流するように指示されます。
時刻: 2300 |
ビデオはいくつもの円卓が置かれた大食堂を映し出します。エージェントらは空いている卓に座り、すぐに他9人のゲストが加わります。召使いらが入ってきてフルコースディナーを給仕し出します。メインコースは牛肉に似ており、シャトーポテトが添えられています。エージェント・ケネディはエージェント・テイラーに向けて囁きます:
ステーキの味じゃないわ。どっちかって言うと豚肉ね。もしくは子牛肉かもしれない。
ディナーの間、エージェントらは他のゲストと会話に興じます。これら討論はごくありふれた内容で、異常な対象物との関係はありません。ゴングが再度鳴らされると、ゲストらは席から立ち上がって広間へと戻ります。
時刻: 2400 |
中央の像(獅子の頭を持つ蛇)が消失しており、かつて像が立っていた位置には螺旋階段が現れています。全員が階段を下ってゆき、隠された地下構造に入ります──建築様式は寺院あるいはカタコンベに類似します。床は湿っているかのように輝き、赤い生体物質が粘菌のようにエリアを覆っています。短な廊下は丸い部屋に辿り着き、部屋の中央には有機的な触手によって空の鉢の上に繋ぎ止められた蛹のような大型物体が存在します。部屋は古代ローマの円形劇場によく似た設計であり、200人以上のゲストが立った状態で不都合なく部屋を満たすことを可能としています。
ヴェールを付けた召使いらが、縛られ猿轡をされた男性、女性、子供の一団を引きずって入室し、彼らを鉢に押し込んでゆきます。PoI-5963が鉢近くの建造物の頂点に立ち、拘束された人々が穴の中に投げ込まれていくにつれて詠唱を始めます:
ラRa・イオン-ヴァヴィドリスIon-Vavidris! ラ・イオン-ヴァヴィドリス! ラ・イオン-ヴァヴィドリス!
ナルNal・ドゥルンdurn・マァルmaaru・ヴァァスvaas・モクmok・デロdero・ズx・シルsil・デンden・トゥロシュturrosh・ノドnod・フレンスクflensk・[解読不能]・ジョズ-ヴィjoz-vi。ヌイゾァNuizor・カルkal・ヴロルクンvrolkun・[解読不能]・ウグルイカルugruilkal・カァスkaas・ズx・クルダルKhuldal・[解読不能]。
ラ・イオン-ヴァヴィドリス! ラ・イオン-ヴァヴィドリス! ラ・イオン-ヴァヴィドリス!
バァロクBaarok・ウェリveri・リフクlihk・[解読不能]・ヴァァスvaas・ノドnod・タルクtark・ヴァルドvald・ヴァァラガズvaalagaz。ギグラスGigrass・ノドnod・ンフィスリmh'ythri、イオンIon・デロdero・カァスkaas・シルsil・ハヴィトhavit・ズx・ヴァジュマVažjuma! フルスHuruth・[解読不能]。
ラ・イオン-ヴァヴィドリス! ラ・イオン-ヴァヴィドリス! ラ・イオン-ヴァヴィドリス!
鉢には今や30~40人の人間が入っています。ヴェールを付けた召使いらは骨あるいは類似素材から造られた華やかなナイフを携えて穴へと入り、虜囚らに攻撃を加え始めます──猿轡が取り外され(このことにより悲鳴でかき消され、PoI-5963の暗唱を続けて聞き取ることができなくなります)、ニュズの儀Rite of Nyúz11と考えられる行為が行われます。任務司令部はエージェントらに従うよう指示し、虜囚らはエージェントらの行動に関わらず死ぬだろうと指摘します。エージェントらは意図的に動脈を狙っているようであり(おそらくはより速やかな、より人道的な死を確保するため)──騒がしい儀式の中で気づかれることなく迅速に死に至らしめます。
時刻: 0120 |
サナギが縄から切り離され、バラバラになった死体の穴へと落下します。群衆は一切の識別できる言葉なしに発声し始めます──それら音声は倍音詠唱12に類似します。その間に、召使いらは割腹により自己終了します。サナギは破裂し、内部から鎌状の付属肢によって引き裂かれます。現れた実体はそのヒト様の頭部と胴体の見た目から、PoI-3690(ヴィヴィアン・デュラント-クロイ)だと考えられます。
PoI-3690は3本の節足動物様の脚(2本の前脚、1本の後脚)で立っており、身長はおよそ2.7mです。PoI-3690の身体の大部分は白と黒のキチンから構成され、6枚の赤と黒の模様を持つ鱗翅目状の羽、2本のカマキリのような腕、青白いヒト様の上半身を保有します。
任務司令部はエージェントらにPoI-3690およびPoI-5963の終了を指示します。エージェントらは武器を引き抜き発砲します。PoI-5963は背後から攻撃を受け炎上し、付近の敵を巻き込んで焼死させるものの、PoI-3690は負傷していないようです──甲殻に覆われた腕がヒト様の部分の軟組織を保護しています。
エージェント・テイラーは群衆から攻撃を受け、繰り返し刺傷を負った後にバイタルモニターによって死亡が確認されます。エージェント・カインとケネディは後退し、広間まで撤退を開始するよう指示されます。エージェント・ケネディはエージェント・カインを制圧射撃で支援しつつ、カインは階段に遠隔操作爆破装置を取り付けます。終了次第、両名は広間への逃走を続行します。エージェント・カインは両名が安全距離に到達し次第即座に爆弾を起爆します。その結果生じた爆発により広間の床の大部分は地下へと崩落し、巨大な亀裂を生じるとともに邸宅の残りへと火炎が広まります。
4体のSK-BIO タイプΒ個体がエージェントらに突撃します。重厚な服装に見を包んでいる際はヒト様の形であるものの、彼らは四足歩行で疾走し、その足取りはほぼ狼のものです。エージェント・カインは拳銃で実体らに発砲し、実体群の注意を引きつけます。エージェント・カインに飛びかかったところで、ビデオはSK-BIO タイプΒの顔を映し出します──肌は青白く、大きな歯に占められた垂直の口が見て取れます。実体らはそのままエージェント・カインを引裂き、彼の身体から四肢を引きちぎります──エージェント・カインはその数秒後に死亡が確認されます。
機動部隊プサイ-9("深淵を見つめるもの")はクロイ邸を襲撃し(ETA: 0200)、PoI-3690を無力化するよう指示を受けます。
火災は広まり続け、予想されるあらゆる脱出ルートを妨げます。エージェント・ケネディは付近の窓に数弾発砲するものの、防弾ガラスです。床はSK-BIO タイプΒの下で崩落し、彼らとエージェント・カインの残骸を下に引きずり込みます。PoI-3690が瓦礫の中から登ってくるのが見えます。エージェント・ケネディはPoI-3690に数発発砲しており、実体を負傷させた可能性があります。
有機的な触手群が地下から広がるとともに邸宅の建築の一部を掴み、明らかに建物を完全に抹消しようとする形で取り壊します。エージェント・ケネディは床が崩壊するとともに下へと落下します。
彼女の通信はロストします。
時刻: 0150 |
すべてのエージェントに死亡宣言がなされます。クロイ邸は破壊されています。人間やその他も、残骸は1つ残らず回収されることはありません。
2015/08/07、財団はエージェント・ケネディのGPS座標を受信し始めましたが、音声通信の接続再確立には成功しませんでした。エージェント・ケネディは香港湾仔区の路地まで追跡されました──彼女が最初に行方不明になった場所から12, 000km以上離れた地点です。先述の通り、当該座標から回収されたのは彼女の拡張を受けた右眼球だけでした。
注記: ビデオでは全1460時間長に渡って原因不明の歪みが頻繁に発生します。これらの歪みはほんの1秒間のみ表示され、1~20分の間隔で発生するか、稀な発生例では急速に連続します。これらの歪みは意味不明なシンボルとして現れ、80,000以上のシンボルがビデオ分析ソフトウェアにより検出されています。各例は一意であり(非反復的)、観測者に対して認識災害性を有します(頭痛、脳出血、失明、死を誘発)。
ビデオの直接視聴、または完全なビデオ転写に関しては、エイダ・グリツェスキェヴィチ博士まで承認申請を提出するようにしてください。
第01日 |
ビデオは最初150分間は暗転しており、この間のエージェント・ケネディは意識喪失状態にあると推定されます。彼女が目を開くと、仄かに照らされた部屋と瓦礫が映ります。エージェント・ケネディは立ち上がって自身を確認します──彼女は血に濡れ、痣こそありますが、重傷は負っていないようです。眼球拡張部は自動で低光度環境に調節します。
エージェント・ケネディ: 司令部? [咳き込む] 司令部、聞こえますか?
部屋は黒ずんだ色合いの石と絡みついた生体物質から構成されるようです。赤い光が壁の亀裂から確認できます。部屋には廊下があることが見て取れ、そこからエージェント・ケネディは移動してゆきます。廊下の奥は赤く発光しています。エージェント・ケネディはおよそ9分間歩いた後、中庭らしき場所にたどり着きます。エージェント・ケネディはよろめき、咳き込みます。エリアは赤い砂嵐のようなものに呑み込まれています──より詳細な分析はこの”霧”が実際には生体発光胞子の集合であることを示唆しています。これら胞子は以降、SCP-3000-1に指定されています。
エージェント・ケネディ: 誰か聞こえませんか? こちらエージェント・ケネディ、避難を要請しています。
エージェント・ケネディは内部に戻ってから、胞子から隠れられる場所を探しているようです。以降64時間は内側で費やされ、エージェントは睡眠と司令部との連絡再確立の試みを交互に繰り返します。
第04日 |
エージェント・ケネディはSCP-3000の探索を開始し、おそらくは現在地からの出口および/または食料・水を探しています。エージェント・ケネディは自らのドレスの一部を引裂きだして顔を覆うのに使用しているらしく、それから中庭へと入ります。SCP-3000-1の密雲を通り抜ける際、彼女は定期的に咳き込みます。彼女は階段の1段目らしき場所の上に今立っている自身の裸足を見下ろすと、そこを登っていきます。およそ12分の上昇を終え、彼女は構造物の屋上と見られる場所にたどり着きます──今や明瞭に視認できるそれは、廃墟の城または寺院の複合体に類似しています。地平線の彼方に黒いピラミッドが視認でき、腱のような生物的な尖塔が天を貫いています。
エージェント・ケネディ: 何よこれWhat the hell…
エージェント・ケネディは付近の建物を見つめています──建物は彼女が現在所在する構造物とほぼ接触するほどに近接しています。彼女は崩壊した壁に取り残された開口部に飛び入り、転がり込んだようです。立ち上がった彼女は1分かけて新たな周辺環境を観察します。老朽化具合こそ最近のものですが、その建築は完全に異なっています──劇的に異なる文化や時期を示唆するほどです。
内部は集合住宅のものに類似します。エージェント・ケネディは住宅に入っていきます──扉はヒンジから外れて床に転がっています。冷蔵庫には以前遭遇したものに似た脈動する肉様の物質が繁茂しているようです。エージェント・ケネディはいくつかの朽ちた戸棚を漁り、半分空の蜂蜜が入ったガラス瓶を発見するに至ります。結晶化していたため、エージェント・ケネディは棚に対して瓶を叩きつけ、脛に縛り付けていたサバイバルナイフを用いて蜂蜜の破片を小削ぎ落としてゆき、その欠片を口に放り込みます。彼女は酷く汚れたベッドシーツから仮拵えの小さなカバンを作ってゆくと、残りの結晶化蜂蜜、コーンスターチか小麦粉のように見えるものを1袋、そして一度試飲してみたうえで、先程まで未開封であった水のボトルをカバンに詰め込みます。
第14日 |
エージェント・ケネディは集合住宅からできる限りのものを回収した後、放浪しだし──SCP-3000からの出口を探す意図を述べます。彼女は歩いていくにつれて話し始めます。
エージェント・ケネディ: 誰にも私の声は聞こえてないのよね? でも私が見たものは全部記録されてる。ここから出たら…そうね。きっと。きっと私たちはここから何か得られるはずよ。他の人たちは死んでしまったけれど。私はそう確信してる。
この場所をどう言えばいいかわからない。空気は錆みたいな味がする、あるいは血──説明し難いのよ。それに燃えてる。私の皮膚よ。私の皮膚に何をしたか見て頂戴。
エージェント・ケネディが手を差し出すと、病変に覆われている様子が映し出されます。
エージェント・ケネディ: 食料が見つかれば、何か医療用品も見つかるかもしれない。でもどこに行けばいいかはわからない。病院みたいな場所を探せばいいかしら? ええ。きっとそう。しばらくかかるかも。
第23日 |
エージェント・ケネディ: 誰も見ていない。生命はない、いや…ちがうわね。地面が生きている。壁が生きている。
聞こえるのよ。囁き声がする。理解できない言語で私に喋りかけてくる。
空を見上げると痛い。動きが不自然──まるでたちの悪いトリップみたい。きっとこの場所全体が1つの大きな幻覚にすぎない。きっと私は担架に括られているのよ──私を起こそうとしているの? 解剖するのね?
エージェント・ケネディはヒステリーに陥り、泣くのと笑うのを繰り返します。
第27日 |
エージェント・ケネディはフランス風邸宅が老朽化した廃墟のような建物を探索します。彼女は食物を求めて台所を漁り、別の蜂蜜瓶を見つけます──残りは腐敗しているか、分解しているか、絡みついた肉(現在はSCP-3000-2に指定されている)により消費されています。ケネディは上層階(屋根の大半が失われている)を探索し、図書館と座って読書に耽る人物(PoI-2699に指定)に遭遇します。ケネディが拳銃を取り上げると、その人物は本を脇に置きます。その顔には目も鼻もなく、穏やかな所作で開いた手を持ち上げます──その掌にはヒトの目が存在します。PoI-2699が話しかけます:
ようこそ。
エージェント・ケネディが返答します:
何? それだけ? あんたが言いたいことはたったそれだけなの? この地獄は何? 私は一体どこにいるのよ!
PoI-2699は頭を下げたのち返答します:
これが… [戸惑う] これが地獄に見えるだと? [歯を打ち鳴らすような音を上げる] 楽園へ、万事の終端へようこそ。ここは彼の荒涼たる領土だよ。
エージェント・ケネディが返答します──彼女は武器を向け続けます:
私を馬鹿にしてるっていうの? どうすれば出ていける? 教えてくれるなら頭は吹き飛ばさないかもしれないわ!
PoI-2699が返答します──観察できる情動は映りません:
ここは聖地だ──この場所で君は囁く。出ていく方法はいくらでもあるが、君はその権利を獲得していない。学ぶべき教訓、受け入れるべき真実があるのだよ…
エージェント・ケネディは首を横に振ります:
あんたの真実なんてクソ喰らえよ。ここから出せって言ってんの。
PoI-2699は飛びかかって叫びます:
クラフ-カKrav-ka・リスクlisk! 無礼なアマめ! たとえ強要rapeせねばならなくとも、お前は我等の真実を受け入れることになるのだ!13
ケネディは武器を発砲し、PoI-2699の頭部と胴体を数度に渡って攻撃します。PoIは後方によろめくとローブの山へと崩れ落ち、そこから這いずりだした生物たちが脱出して廃屋各所の割れ目や裂け目に逃げ込みます。ケネディは悲鳴を上げ、空中に武器を発砲するとそのままいくつかの本棚を突き倒します。
第34日 |
エージェント・ケネディは酸の川(ケネディはこの液体を”胃酸”のような匂いがすると説明しています)のほとりにある廃病院を発見します。未確認のワニ型生物らが川の岸付近に潜んでいます。それらは6本の肢、一見骨格のような頭部、灰色の肌、黒色のたてがみを保有します──それらは以降SCP-3000-3に指定されています。ケネディは生物らから距離を取りつつ廃墟へ侵入します。
内部は比較的現代的ですが、少なくとも数百年間は放棄されていたかのように見えます。腐食したヒト骨格が廊下を塞いでいます──ケネディは進行するためその中を掻き進むことを余儀なくされます。ケネディは部屋から部屋へと移動してゆき、医療用品を漁ります。彼女が鏡の前で立ち止まると、ジュクジュクとした病変がかなり広がっているのが明らかになります。彼女はこれら傷口に包帯をしていき、最終的には両目を除く全身を覆います。
ケネディは精製水の容器は回収するものの、食料品(彼女が必死に欲しているものであるようです)は回収しません。彼女は1977/04/09付のブラジルの新聞を発見しましたが、文字は褪せており辛うじて読める程度です。より詳細な分析は、太陽系に侵入する6つの”赤い月”が国際的なパニックを引き起こし、いくつかの壊滅的パンデミックの発展が同時多発的に発生した旨の言及を明らかにします。
第40日 |
エージェント・ケネディは病院を避難所にして、SCP-3000-2を収集し、また何匹かの小型原生生物を狩るために危険を承知で出かけます。肉は彼女に病気を引き起こすものの、彼女は新たな食料源ならびに環境に適応しているようであり、空気中で息苦しくなる頻度が下がっています。弾丸を温存するために、ケネディは廃材から槍を作り出しています。彼女はまた、夢について語りだします:
それは夜驚症として始まったわ──恐怖なんかで定義される病気ね。痛みも、混乱もあった…でも現実じゃない物語なの。
だけど、物語は形を取り始めてる。この場所は精神に悪戯してくるのよね。とにかくこういった土地で寝ると悪夢を見るものよ。でもこれらは違うの…
この夢は他の誰かのものだと感じる。そこでは私は羊飼いで、群れの面倒を見てるの。私は彼らを守ろうとする。外には捕食者たちがいるの。私は彼らを脅威から救ってやれない──私は十分に強くない。私は道を探さないといけない。私は彼らに薬を与えて──彼らを強くしたけれど……けれど、何かが違う。彼らは病気なの。私もそう。病気だけど強い。すごく強い…
でも私たちはその誤った治療薬を飲み続けてる。私たちには止められない。私たちは今それを必要としてる。私たちはとても空腹なの。ひどい中毒に陥ってる。
空腹は止まらない。私たちは最初から運命づけられてた。私たちにチャンスがあると考えるなんて愚かなことだったのよ。
第43日 |
エージェント・ケネディは病院の屋上に居り、見たところ周囲の環境を偵察しているようです。遠方に炎が見え、彼女は詳細確認のために拡張視界を調整します。3体のヒト型実体験が原始的な武器(槍、棍棒等)で武装し、大火の周りに集まっています。この炎は人工的に作られたものというよりはガス孔の産物であるようです。ケネディは一人呟きます:
こいつらがこれまで人間だったなんて考えたくもないわね。
これら生物はSCP-3000-4に指定されています。遠方に動きが見えます。すぐに数百体の移動中のSCP-3000-4がいることが明らかになり、おそらくはこの土地在住の遊牧民族だと思われます。空を占める赤塵が突如として壊れ、巨大な眼が現れます──その瞳はエージェント・ケネディを凝視しているようです。彼女が視線をSCP-3000-4に戻すと、彼らはこれをしるしと取ったようで、病院へ向けて移動を始めています。
エージェント・ケネディは物資を集めて病院の外壁を這い降り、SCP-3004の反対方向へと逃げ込みます。彼女は一度だけ背後を振り向きます──巨大な眼が彼女の方向を見つめ続けています。
第61日 |
エージェント・ケネディは穴の上に立っています。穴は人工的な石の構造に開いているものの、感染した深い傷口に類似します。
囁き声たち……彼らは私を助けようとしてくれている。私はその指示に従った。これは……これは帰り道。私の世界が恋しい。私の家族と友人が恋しい。私の持つ情報は……きっと役立ってくれるでしょう? そうよね。そのはず。
でも、私は酷く変わってしまった。この場所は私の一部になってる。もし帰ったとしても、檻に入れられ解剖されるのがオチ……私はプロトコルを理解してるし、あなたたちの誰に対してもそれを守れそうにない。
私のことさえ信用できないの。あの脅威を私の世界に持ち込みたくはない。
[眼の上に手を重ねる。彼女の拡張部が眼窩から引き抜けるまで、彼女は痛みに唸り声を上げる。彼女はその眼を自身へと向ける──彼女のもう一方の目は黄色く、血に汚れた包帯は彼女の体中に形成された異様な腫瘍を覆い隠すことができない] これを受け取って。私の見てきたものを見るのよ。
きっといつの日か、私たちは薔薇色の空の下で再開するのでしょう。
ビデオ映像が終了します。
警告: O5認可要求
あなたがアクセスしようとしているファイルは、シトラ=アキュラ職員ならびにレベル4/3000認可を有する人物のみ閲覧可能です。このクリアランスには標準レベル4セキュリティプロトコルは含まれません。これより先に要求クリアランス無しでアクセスしようとする場合、終了の事由となります。
ブライアン・リー博士: 56日目について議論しなくちゃならん。全員とも俺が話してることは完璧に分かっているはずだ。SCP-3000-1が消散したとき何も見ていませんなどとごまかし続けることはできない。
エイダ・グリツェスキェヴィチ博士: だがあれをどう説明していけばいいのだ? 脳裏に浮かぶのは”波打つ広漠”ただそれひとつ、全くもってクリニカルではない。
ジュディス・ロゥ博士: ではあれが何でないかから言っていきましょう。SCP-3000は惑星ではありません──あれはむしろ、いくつもの死した世界の欠片が散りばめられている。
ブライアン・リー博士: 完全なる星無き空間の虚無が、赤き”月たち”が存在した──月に目はない、手足はない、だが少なくとも、俺たちにはあれを理解することができた! だがあんな存在は単に想像もつかなかったんだ。
エイダ・グリツェスキェヴィチ博士: あれほど巨大なものを記録したことはない。そしてそれがどう動くかもだ。研究チームの半数が意識を失い、もう半数が視線を背けた。人の知覚はあんなものを想定していなかったのだ。
ジュディス・ロゥ博士: クラス7です。
ブライアン・リー博士: クラス7はあくまで仮説上に過ぎん。財団はこれほど多くの次元に同時に存在する物的実体に遭遇したことなどなかった。あのような存在を純粋に学理的な意味で探求するなど不可能だ。今の科学分野はそこまで進んでいない。
ジュディス・ロゥ博士: では我々はあれをなんと呼ぶのでしょうね──神?
エイダ・グリツェスキェヴィチ博士: クラス7に刷新した脅威評価が必要だ。現在の文書はSCP-3000が何か、その真の規模を反映していない。
ジュディス・ロゥ博士: Keterのままにしましょう。それ以上だというのなら、我々は青酸カプセルを配布しだしたほうがマシです。
タイトル: SCP-3000: His Desolate Domain
リンク(ページ削除済): http://www.scp-wiki.net/3000contestmetaphysician
著者: Metaphysician
投稿: 2017/3/25 (?)
サーキシズムの原作者であるMetaphysician氏がかつてSCP-3000コンテストに投稿、そしてあまり時間を置かずに自主削除された記事の翻訳です。メタタイトルである”彼の荒涼たる領土”(His Desolate Domain)はSCP-2406やサーキシズム-ハブにおいて登場する語です。
この記事自体は比較的初期から構想されていたものであり、そのため内容には現行の、そして投稿時のサーキシズム解釈と食い違う点があります。しかしながらMetaphysician氏の創作宇宙、ならびにサーキシズムの考察の一助になるかと考え、この記事を翻訳しました。
氏の砂箱にはついぞ完成・投稿されることはなかったものの、より現代的なサーキシズム解釈に沿って組み直された下書きが置かれています。こちらを読んだあとに見比べてみるのもいいかと思います。
http://scpsandbox2.wikidot.com/his-desolate-domain
翻訳にあたり、以下のページを参考にしました。
原文
当時の記事のアーカイブです。こちらの機械翻訳と見比べながら進めました。
偶然にもKOの砂箱でソースコードを発見したことから上記ページを発見、翻訳することを決めました。
訳文拝借等
クラヴィガル・オロクやカルキストの説明はこちらからほぼそのままコピー&ペーストしています。
シトラ=アキュラならびに”魔女狩人”関連の説明はこちらからほぼそのままコピー&ペーストしています。
凌遅刑関連の説明はこちらからほぼそのままコピー&ペーストしています。
正直なところ私はまだ英語に不慣れであり、誤訳や奇訳が一定数存在するかと思います。もし「ここはこうした方がいいぞ」と思われる文章や単語がありましたら、ディスカッションで連絡されるか、または直接編集・修整していただけると幸いです。