SCP-5000-DEL: 怨悪のマエストロ

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アイテム番号: 5000
レベル3
収容クラス:
neutralized
副次クラス:
none
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
caution


特別収容プロトコル: 2000/01/04時点で、SCP-5000の不活性な残骸は解体され、保管のため貯蔵サイト-77に運ばれました。SCP-5000は無力化しましたが、ジェズアルドの街は緊密な観察下に置かれます。

説明: SCP-5000は、その構造と関連した際立って異常な性質を持つ、声楽による楽曲演奏を発生させることのできる装置です。装置は124体の保存処置をされた人間、張り巡らされた青銅のパイプ、大型の鯨の胃と肺から制作されたふいごで構成されます。SCP-5000は12段の鍵盤、レバー、滑車、ペダルが取り付けられており、これらにより操作できます。この構成から、SCP-5000は現在の状態では、基底状態の非異常性の人間には演奏できないと考えられています。ふいごは3本の青銅の鎖がリズミカルに引くことにより操作され、張り巡らされたパイプにより人間に空気を送ります。6本のレバーはパイプを切り替え、風量を様々な程度に拡大もしくは抑制するために使用されます。48本のペダルは鍵盤1段の下に4本ずつ配置され、どの人間が空気を送り込まれるかを切り替えるために使われます。それぞれの鍵盤には88本の鍵があり、人間の口、舌、喉、喉頭を変化させることができます。

SCP-5000を操作すると、歯車の動く定常的な音とともに、街中に隠された通気口から蒸気を吹き出させます。このことは蒸気機関と歯車仕掛けが装置全体を作動させていることを示唆しますが、SCP-5000の部屋の異常な音響がその発生源を特定することを困難にしています。SCP-5000とそのメカニズムに関するに関するこれ以上の情報を得るには、最終的には解剖及び分解を必要としますが、そのような行為はSCP-5000を損傷させ、さらには破壊する可能性もあるため禁止されています。

SCP-5000に組み込まれた人間は当初は死亡していると記録されましたが、脳波(elecrtoencephalographic: EEG)スキャンによると継続した脳の活動があることが示されました。多数の刺激応答、脳波活動1、エンドルフィンレベルの試験の結果、これらの人間コンポーネントは自意識があり、かなりの苦痛を感じていると結論されました。この状態がどのように達成されたのかは殆ど判明していませんが、何らかの薬物が彼らのよく保存された状態に関与していると思われます。

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シルヴェストロ・クリシオーネにより偶然撮影された襲撃者の写真(1953)。

SCP-5000はイタリア、ジェズアルドのジェズアルド城2の地下で、1953年の誘拐と大量殺人の捜査の過程で発見されました。ベネチア出身の才能ある、しかし無名の歌手イザベラ・コラサンティが1953/12/25の演奏会にてマスクを着用し、儀式めいた服装をした攻撃者の一団により強行的に誘拐されました。現在ではコラサンティのジェズアルドへの招待も、誘拐の協力者によるものだったという仮説が提唱されています。

生存者の証言によると、攻撃者たちは黒い煙にまぎれて舞台に現れました。生存者の多くが、これをパフォーマンスの一環だと考えたため即座には反応しなかったと認めました。攻撃者たちはコラサンティを意識不明にし、介入しようとしたものを終了しました。このイベントに雇われていたプロの写真家であるシルヴェストロ・クリシオーネはコラサンティの体を運び、現場から逃走するマスクをしたものたちの写真を撮影することができました。この事件は34名の負傷者、12名の死者(クリシオーネ氏を含む)を出し、死因は短刀による刺突および何らかのガロットのようなものによる絞扼でした。

現地の警察機関による捜査は進展せず、当初は能力の不足によるものと考えられましたが、後に彼らは攻撃者の協力者であると判明しました。進展のなさに業を煮やした犠牲者の遺族が州に嘆願を出し、(おそらくは多数の死傷者のため)早期に対応され、ローマからジェズアルドに捜査官のチームが派遣されました。アルマンド・フランチェスコ捜査官が捜査を引き継ぎ、多数の無視されてきた証拠を収集し、明らかに意図的に攻撃を隠蔽した痕跡も発見されました。現地の警察機関は物理的証拠の破壊(検死前の遺体の意図的な火葬など)や「共産主義者のパルチザン」である16歳から20歳の3名の男性に大量殺人の罪を着せた上での非合法的な処刑を指揮していたことも判明しました。

州の捜査官は結果としてジェズアルドを運営する秘密結社の存在も突き止めました。ラ・マスケラータLa Mascherata(仮面舞踏会)と呼ばれ、ジェズアルド支部には不釣り合いな人数の芸術家、作家、音楽家が町の役人や警察幹部と共に所属していました。最下級のメンバー(典型的には最も若い)の尋問の結果、警察官がジェズアルド城地下のローマ時代の貯水池に向かうことになりました。このことがなければ、一般大衆には知られなかった場所でした。内部ではSCP-5000と共に、多数のカルトに関連したアーティファクトや文書が発見されました。イザベラ・コラサンティの身体も発見され、不明な化学物質により部分的に処置されていました。証拠から、彼女は1953/12/30、22:40、アルデバラン3が天頂にあるときに意図して行われた儀式の一環として行動不能状態(当初は死亡と記録されました)にされたことが示されました。

フランチェスコとともに働いたジェルマーノ・ドラーツィオ捜査官は財団が潜入させたエージェントであり、これらの発見を報告しました。武装したイタリア軍に偽装した財団の工作員が町を占拠し、住人に記憶処理を施しました。殆どのラ・マスケラータのメンバーは追い詰められ自己終了しました。成功裏に逮捕されたものも、自身の舌を噛み千切り飲み込みました。ラ・マスケラータの生存者はサイト-██に尋問と終了のために護送されました。

1953/12/25の襲撃に関与したものに似た8つの異常な実体が不動状態で発見され、おそらくは不活性状態にあると考えられました。これらは以降SCP-5000-1に指定されています。これらの身体は調査され、遺伝的には通常の人間であると判明しましたが、その陶器状4のマスクは粘性の黒い物質により顔と融合していました。粘着物質の試験は分泌源から離すと速やかに蒸発するため失敗しました。X線造影では、この物質は頭蓋のほとんどと、脳の全てを消費していることが示されました。彼らは定義上は生存していますが、発話も動作も行わず、飲食も不要と思われます。これらの実体はサイト-17に移送され、以降確保、収容されています。

匿名の5カルトメンバーとの手紙によると、ヨーロッパの政治、文化、宗教的権威への強い影響が示唆されます。これらの手紙には、カルトでは「イル・コーロIl Coro」(「聖歌隊」)と呼ばれる、SCP-5000についての言及が含まれています。それによるとSCP-5000は明らかに重要視されている予言された実体であるイル・マエストロ・デル・ランコーレIl Maestro del Rancore(「怨悪のマエストロ」)の出現までは演奏できないとされています6。生存者は階級が低く無知であり、結果的に正体不明の結社の中核メンバーの目的は不明瞭なままとなりました。

更にこれらの文書とともに、7篇の極めて複雑な楽曲の楽譜と日記が発見されました。これらの文書は16世紀後半から17世紀にかけての日付と、貴族・作曲家であるカルロ・ジェズアルドの署名が記されていました。

SCP-5000とその関連文書によると、一般に知られた伝記ではカルロ・ジェズアルドの生涯の全てを表していないことが示唆されます。関連する彼の文書の翻訳が以下の折りたたみで閲覧可能です。

カルロ・ジェズアルドはその異常なマドリガルの作品で知られていますが、その唯一の類似点は人間の発声を使用していることのみです。その複雑さのため、それらは完全に新しい記譜法を必要としました。それはジェズアルド自身の考案、あるいは何らかの不明なソースから採用されたものです。これらの作品には書き記された歌詞はなく、SCP-5000を演奏するものへの指示が含まれています。SCP-5000自体が言語に似た音を生成します。曲名はイタリア語ですが、SCP-5000に生成される音声はあらゆる既知の言語と一致しません。

音楽学者ロレンツォ・マルティネリ博士を代表とする財団の研究者は、SCP-5000を操作しようと試みましたが、ほとんど成功しませんでした。複数の演奏者が操作しましたが、結果としてこの楽器は超自然的な能力(主としてスピード及び協調の面において)を必要とし、人間用のインターフェイスである可能性は低いと結論されました。

自動ピアノ16に着想を得て、マルティネリ博士はSCP-5000の前例のない複雑さを回避する機械的な手段の開発を開始しました。彼の発明である自動コーポリオペ17は1973年に完成し──ついに財団はSCP-5000の異常な能力の詳細を試験できるようになりました。初期実験はD-クラス職員により行われ、防音チャンバー内の研究者によって観察され、研究者はその後(もし可能ならば)テスト対象を直接解析し、インタビューします。これらの実験の結果の概要が以下になります。

バチカン秘密書庫Vatican Secret Archivesの1997年の元来は無関係であった調査の際に、財団の工作員は、さもなくば忘れられていたアヴェッリーノ県での大規模な事件を隠蔽する陰謀の証拠を回収しました。SCP-5000そのものへの言及はありませんでしたが、枢機卿会のメンバー間の書簡には頻繁な、しかし婉曲な、カルロ・ジェズアルドとその奇妙な行動についての言及がありました。彼の邸宅から回収されたと思われる、無題の文書や人間の歌唱を超えると思われる複雑さの4篇のさらなる楽曲などの、多数の作曲家の所有物も発見されました。これらの楽曲はストラッパト・デレ・グリエ・デル・サクリフィーチョStrappato dalle guglie del sacrificio(「生贄の憎悪に引き裂かれて」)、イル・ミーオ・オサリオ・トラボッカIl mio ossario trabocca(「我が骨壷は溢れて」)、ダイ・ソッニ・ディ・フェッブレ・デイ・バンビーニ Dai sogni di febbre dei bambini (「発熱した子供の夢より」)、そしてラ・マルチャ・デイ・マイアリLa marcia dei maiali(「豚の行進」)と題名が付けられています。これらへの更なる調査は結果として、アヴェッリーノの異常な活動を粛清するために教会が後援した軍事行動が存在したことを明らかにしました。

バチカンの書庫の文書:

バチカンの文書に描写されたアノマリーの極度の性質により、監督司令部はSCP-5000の異常な音楽能力のこれ以降のあらゆる試験を停止する必要があると考えました。カルロ・ジェズアルドのナポリの墓をエージェントが調査し、人間の残骸ではなく、豚の骨が内包されていることを見出しました。

補遺5000.1:

補遺5000.2:


著: MetaphysicianMetaphysician
訳: YS_GPCRYS_GPCR

タグ: アラガッダ 5000 neutralized scp ぜんまい仕掛け 歴史 死体 精神影響 自我 音楽

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