
インドでは気温が40度を超えることも珍しくない。アスファルトで目玉焼きができるし、水に入れた氷はたちまちのうちに溶けてしまった。そこを歩いていた牛が立ち上がって、魔術を唱え始めた。辺りがすうっとして風が吹き始めるが、ただそれだけである。財団下級エージェントのマリア・ホイールは、日本製バイクがごった返す道路の喧騒を道端で見ていた。マリアの財団での仕事は分かりやすく言って、「何でも屋」である。特定のオブジェクトに業務は割り当てられず、本当に何でもする。「何でも屋」というのもマリアの急に言い出したことではなくて、事実同僚からそう言われているのである。「よ、何でも屋!」「そこで何でも屋さんにお願いなんだが」「何でも屋の出番だね」うんざりする。マリアはアメリカに住んでいて、夫も息子もいる身だ。夫には商社のビジネスであると偽って、「何でも屋」をしている。財団は商社より高給な仕事であるが、商社より上等な仕事ではない。やっていることは、冷蔵庫を治したり水道管を治したり、そういうことと全く同じだ。子供が私の仕事を知ったらどう思うだろうか、ため息をつく。
「インド政府が壊れている」それは財団からのテレフォンだった。糞の詰まった下水道が糞を吐き出しているのだ。ここでは、死刑にされた犯罪者が三日後に蘇生してまた死刑される。まるで繰り返すユガのように。
概要: シーズン案 「2020年:朝焼けと死刑のユガ」は、インドで起こる異常現象に関する新シーズンです。2005年に登場したインドの犯罪者ソウフラ・キューは、33人の女性をレイプし、3人の男性を殺害したことで死刑となりました。ソウフラ・キューが蘇生したのは、その1年後のことです。ソウフラ・キューは最終的に3333人の女性を強姦して、333人の男性を殺害します。世界各地で蘇生と死亡を繰り返し、その被害を増大させていきます。彼の目的が何にあるのか、どのような異常現象によるものなのかはわかっていません。このような災害とも呼べる犯罪者の出現によって、インドは空中分解を始めます。元からさまざまな宗教が分布しているインドでしたが、それからは新興宗教が跋扈し、各地の街を支配し、ソウフラ・キューの処遇についてそれぞれバラバラなことを言い始めました。インド政府は、各国からの文句に耐えながらついに決壊し、機能不全に陥るのでした。
テーマ: 仏教を産み、今は数多の宗教を擁しているインドらしく、「死を超越する人間のアヴァンギャルド」がテーマです。ソウフラ・キューは、全ての人間を選別する執行装置です。インドの神話に基づいて次のユガへ世界を進めるために大量殺人を繰り返しています。神話の「野蛮さ」によって世界は一種の死刑を受けます。しかし同時に、アメリカ政府やインド政府がソウフラ・キューを死刑しようするのも一種の「野蛮さ」です。死刑には国家が個人を殺害するという野蛮さが付随しています。ソウフラ・キューに呼応して世界各地から脱獄を始める死刑囚は「超越者」と呼ばれ、死という最大の難関を、すなわち野蛮さを乗り越えた人間たちです。おおむね98カノンの「前進」というテーマと対応しており、死んでも前に進むという哲学を成しています。
登場人物
内海勅使郎 1994年生まれ。男性。水と氷を好む道徳家。倫理学者の父の下で生まれる。新卒でとある大企業に勤めていたが、心労で辞めてしまった。心優しく優しすぎる性格。幼少期に母が父と離婚するが、それがおおむね子供の教育方針に関することであり、母が自分を守るために離婚したということを知っていた。母は家計を守るために働き始めるが、それで体を壊してしまったので勅使郎自身は罪悪感を抱いている。
生まれる前に双子の兄弟を亡くしている。頭についたこぶのようなものを身体が弟を吸収した跡であると信じている。弟はもう死んでいるため、彼の内部には弟が存在せず、それゆえ疎集合の肉体を形成する。魂の根本的な部分が存在しないため、超越者としての力を得る。《疎集合内臓》超越者の中で唯一犯罪を犯していない、空気のような人物。
ブッダ:
1998年生まれ? 女性。珈琲と煙草を好む実力者。「ブッダ」は彼女の名乗る通り名の一つで、もちろん本名ではない。人によって名乗る名前を変える。勅使郎が日本人だったので「ブッダ」になっただけで特に宗教にはこだわりがない。自分のことを世界を創造した唯一神であると考えている。そのため罪を犯すことに迷いがなく、目的のためならどんなことでもどんな風にでも熟す。基本的に人類や世界のことを舐めていて、思いつきで人を殺したり国境を無視したりするので最悪。気軽に街とか燃やすし、差別主義者でアナーキスト。一方、自分の仲間を信者としてみなす傾向がありその場合はかなり優しい。
超越者ではないし特に異常性を持たない。少々身体能力が高く知恵が回るだけの女性。異常性のない異常者。
マリア・シャングリラ
2001年生まれ。女性。ジュースと砂糖を好む遊び人。ゲーム脳で、始めた遊びを必ずやり切るという自分ルールを頑なに守り続ける。何度倒れてもコンテニューするゲーム脳であるため、超越者としての資格がある。《無限続行》オクラホマの学校で起きた2015年の銃乱射事件で、学校に取り残された友人を潜入ゲームの要領で救出するが、勢い余って銃を持っていた人間を殺害してしまう。そのまま無関係の人間を数名射殺し、現れた警察を3度に渡って撤退させるが、4度目に財団の支援を受けた火力攻撃に敗れて収容される。
シャルル・アリューラ
1980年生まれ。女性。茶と愛を好む合理家。南インドを支配する軍閥の女性。自分の正義に自信を持ち、揺るがない魂を持っているために超越者としての資格がある。《優秀者支配》