シーズン案 2020年: 朝焼けと犯罪のユガ

インドでは気温が40度を超えることも珍しくない。アスファルトで目玉焼きができるし、水に入れた氷はたちまちのうちに溶けてしまった。そこを歩いていた牛が立ち上がって、魔術を唱え始めた。辺りがすうっとして風が吹き始めるが、ただそれだけである。財団下級エージェントのマリア・ホイールは、日本製バイクがごった返す道路の喧騒を道端で見ていた。マリアの財団での仕事は分かりやすく言って、「何でも屋」である。特定のオブジェクトに業務は割り当てられず、本当に何でもする。「何でも屋」というのもマリアの急に言い出したことではなくて、事実同僚からそう言われているのである。「よ、何でも屋!」「そこで何でも屋さんにお願いなんだが」「何でも屋の出番だね」うんざりする。マリアはアメリカに住んでいて、夫も息子もいる身だ。夫には商社のビジネスであると偽って、「何でも屋」をしている。財団は商社より高給な仕事であるが、商社より上等な仕事ではない。やっていることは、冷蔵庫を治したり水道管を治したり、そういうことと全く同じだ。子供が私の仕事を知ったらどう思うだろうか、ため息をつく。
「インド政府が壊れている」それは財団からのテレフォンだった。糞の詰まった下水道が糞を吐き出しているのだ。ここでは、死刑にされた犯罪者が三日後に蘇生してまた死刑される。まるで繰り返すユガのように。
ページリビジョン: 1, 最終更新: 14 May 2023 02:18