
*ハッチがひらく音*
概要
登場とその共通モチーフ
怪奇部門 (Department of Abnormalities, 略してDoAとも) は、2018年に投稿された記事「SCP-3790 - 怪奇部門」で初登場した概念である。
怪奇部門は多くの場合で財団の下位にある部署の名前として登場するものの、財団が過去そのような部門を有していた記録は存在せず、その実情は亡霊が如く謎に包まれている。
基本的に、関連記事では怪奇部門そのものが登場することはない。何らかの古びた廃墟や放棄された施設に、『怪奇部門』のネームプレートが付いている……という形で、彼らの活動の残滓が登場するのみに留まることがほとんどだ。
怪奇部門記事には、以下の特徴が見られることが多い。
- 漠然とした恐怖。
- 暗闇。
- 閉塞感。
- 無機質性。
- ミステリアスな空気感。
- 正体不明性。
- 隠された真実。
- 封鎖・隠蔽された施設・物品。
- 財団の過去。
- 財団の初期活動、あるいはそれを思わせる描写。
- 財団が忘れたがり、埋めてしまった何らかの過去。
- 古びた廃墟や跡地。
- 何らかの暗喩。
- 財団創作そのものの過去。
- 有名オブジェクトの起源の示唆や、別視点からの再解釈。
- サイト上で起きたメタ的な出来事等の暗喩。
総じて不気味さ・ミステリアスさを特徴とする存在だが、主要テーマが過去と結びついていることから、どこか物寂しい・懐かしい雰囲気を纏う場合もある。怪奇部門は初期の財団 (財団世界観・財団創作の双方) と紐付けられることも多く、初期の財団創作が纏っていた謎めいた空気感の、ある種のリブートとして捉えられることもある。
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怪奇部門について原著者はその正体を未だ明かしておらず、そのため著者・読者の間でも解釈には広い幅がある。基本的にはパターンスクリーマーやシガスタンのような、いくつかの共通するモチーフによって特徴づけられる存在といえる。
怪奇部門が何者かについては、以下のような解釈が存在する。
- 財団内部の秘匿機関。
- 財団の原型。
- 財団が非異常も扱う組織だったころに異常存在を扱っていた部署の痕跡。
- 財団内でも異常すぎるものを取り扱う/取り扱っていた部門。
- 前世界の財団の遺物。
- そもそも怪奇部門自体が異常存在である。
- 財団の模倣をする異常現象/要注意団体。
なお、原著者であるカクタス自身は財団内部の秘匿機関のような形で記事を描きがちである。
最近では主に、『既存オブジェクトの起源・再解釈』を仄めかすジャンルとして扱われる傾向があるが、カクタス自身が当初はそうした存在として考えていなかったと発言しているように、怪奇部門の在り方はそれに限らない。
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怪奇部門を登場させる際、以下の物品や表現が併用されることが多い。
- 金属製の物品。無機質性や閉塞感の演出であるほか、怪奇部門施設が長年残っている理由の補強に使われがちである。
- 金属製のプラカード。多くの場合、『SCP財団 怪奇部門』『怪奇部門』といった名称や、収容室内のオブジェクトの名前が記されている。この名称は摩耗していたり、削り取られていてよく読めないこともある。
- 金属製のハッチ、または扉。溶接などで封鎖されていることも多い。
- 地下施設が舞台になることが多いが、地上施設、船舶、あるいは単なる病院や小屋などが舞台になることもよく見られる。多くの場合、どの施設も何年も (何十年も) 前に放棄された無人の廃墟として登場する。荒廃した状況である場合もある。
- 設備が古く、比較的現実のものに近い。怪奇部門は、 (昔の組織であるとされることも多いため) 先進的な超兵器などはあまり用いない傾向にある。
- アイテムナンバーの不使用。怪奇部門はあまりアイテムナンバーを使用せず、通称で呼ぶことが多い。ただし、使用する場合もある。
- 財団記章。怪奇部門が財団傘下であることを示すため、財団のロゴマークが施設などに刻まれていることが多い。
- 怪奇部門の独自ロゴを考えるメンバーもいる。こうした怪奇部門独自ロゴの代表例は、SCP-4099で使用された、財団の盾マークの中に檻のような3本の縦線が入っているものがある。
- この他にも、財団との繋がりを示唆する物品などが出てきやすい。
- 怪奇部門はあまり自ら語らない傾向にある。これはミステリアス性に繋がっているが、記事によってはそこそこ喋ることもある。
- 怪奇部門のフォーマットは、使用例は少ないものの存在している。これはSCP-4099やSCP-6071で使用されており、ギアーズの提言: プロトタイプの形式を踏襲している。
- 怪奇部門記事では、無機質で客観的な描写が (特に) 好まれる傾向にある。関係の推測や謎の解明を挟まずに、純粋に起きた出来事だけを記すことが多い。
- このため、難解な内容となることもある。
- 多くの怪奇部門記事には、大なり小なり元ネタがある。この元ネタは有名なSCP記事であることが多いが、クリーピーパスタや史実の出来事、はたまたメタ的な出来事であることもあり、また元ネタがほぼ無いと言えることもある。
- ディスカッションなどで著者が答えを出していることも多い。
登場記事
各記事での登場例
ドアには、ドアノブのすぐ上に取り付けられた“SCP財団 怪奇部門(Department of Abnormalities)”という小さな金属製プラカード以外の識別マークが存在しません。
内容
- かつて怪奇部門なる組織が管理していたらしき地下施設で、第一層〜第七層までが存在する。各階層には既存のオブジェクトや要注意団体、実在する都市伝説などを思い起こさせる、様々な奇妙な物品が収容された部屋が並んでいる。各部屋には収容された品目の名称を記したプラカードが付けられている。
- 第七層には到達できない。
- オブジェクトクラスこそSafeだが、O5評議会により大部分の情報が隠されているなど、不審な点が垣間見える。
分析/元ネタ以外
- 2018/6/9、djkaktus & Croquembouche投稿。
- 最初の怪奇部門記事であり、既に怪奇部門記事の持つ特徴のほとんどがこの時点で完成されている。
- このため、怪奇部門が登場する他記事からリンクが飛んでいることも多い。SCP-3790の他に、SCP-3220などもリンクを繋がれることが多い。
- 後に記事内に短いメモ書きが追加され、他の怪奇部門記事へのリンクが付いたリストが掲載された。要するにハブに近い機能が付加されたわけだが、全ての怪奇部門記事にリンクが飛んでいるわけではない。このリストはたまに更新されることがある。現在掲載されているのは3200、4220、5832、5731、5709、5538、PL-167。リストによれば、3790以外に計10個の怪奇部門サイトがあるようだ。
- カクタスは本来、怪奇部門が『既存のSCPオブジェクトの起源』を仄めかす存在として広まるとは想定しておらず、自分としては怪奇部門は財団が存在すべきでないものを回収して埋めてしまい、発見されないようにする組織であることを意図していたという旨の話をSCPDサーバで語っている。またカクタスは一度怪奇部門のタグ化を拒否しており、これについてTwitter上で聞かれた際にも、同様に財団が掘り返したくないものであることを重要視し、その美学を一貫させたいという旨の返答を行っている。*ただしタグ化自体は、記事が相当数増加したことを受けて、後にスタッフ側が実装を行っている。
- SCP-3790ならびに怪奇部門は、これ以降のdjkaktus氏の他作品にも何度か登場している。俗に言う『カクタスバース』 (およびその内部シリーズのプロジェクト・パラゴン) とは密接な関わりがあるようであり、事実としてSCP-3790には、アポリオンの冠など、それらと関係する物品が収容されている。DJ・カクタスの提言Ⅲ、SCP-4840、SCP-6666、プロジェクト・パラゴンハブ、To Never Again See The Light Of Day、およびSCP-4760などに言及がある。
- 怪奇部門そのものとの関係が薄くとも、アポリオンの冠を指すためにSCP-3790にリンクが飛んでいることがある。
- DJ・カクタスの提言ⅢやSCP-4840の内容を踏まえると、『管理者』はアウダパウパドポリス由来の存在である可能性があり、また怪奇部門が管理者と何かしらのかたちで関わっている可能性が浮上する。
- カクタスの記事ではアダム・ブライトが怪奇部門の重要人物 (おそらくはトップ) として描写されているため、これを踏まえるとSCP-3790内のメモ書きは彼が残したものである可能性がある。
- SCP-3790の第七層は到達不能とされているが、プロジェクト・パラゴンシリーズを見るに、実際は到達可能 (あるいは到達可能になった) ようである。
- "Department of Abnormalities"を直訳すれば『異常部門』だが、この部分を『怪奇部門』と訳したことで醸し出された独自の雰囲気は、我々を魅了した。これは当初のSCP-3790が持っていた、初期作風/怪奇創作への回帰に紐付けているのかもしれない。
分析/元ネタ
- SCP-3790は明確に元ネタをセッティングしている記事ではないが、いくつかのオブジェクトはどこか既存記事や都市伝説、神話を想起させる。
- 第一階層/部屋1/ヴィヴァルディ (Vivaldi)
- 実在したヴァイオリニスト、アントニオ・ヴィヴァルディ。
- SCP-012などと関係する可能性はある。
- 第一階層/部屋2/モンテスマの顔 (Montezuma's Face)
- SCP-902と関係があるかもしれない。
- 名前はアステカ君主モンテスマを指す? コンキスタドールの到来時、モンテスマ周辺の人間は厄災を予言したと言われる。あるいは一部のインディアンに伝わる同名の神のことかもしれない。
- 第一階層/部屋3/プラカード無し
- 不明。
- 第一階層/部屋4/プラカードは損傷しており、文言が読み取れない
- 不明。
- 第二階層/部屋1/イアン (Ian)
- SCP-096と関係があるかもしれない。
- 第二階層/部屋2/泣き叫ぶ少年 (The Crying Boy)
- 実在する、呪いの都市伝説がある絵 (Wikipedia: The Crying Boy)
- 第二階層/部屋3/見張る者たち (The Watchers)
- SCP-173を監視する職員たちを思い起こさせるが、特に関係はないかもしれない。
- 第二階層/部屋4/プラカード無し
- 不明。
- 第三階層/部屋1/無限の寒さ (The Infinite Cold)
- 不明。SCP-3799などと関連しているのではないかというコメントがいくつかある。SCP-4812-Eと関係するかもしれない。
- また、カクタスは以前同名のSCP記事を投稿していたことがある (Internet Archive: SCP-2318)
- 第三階層/部屋2/悲哀 (Sorrow)
- 不明。
- 第三階層/部屋3/人の居ない世界 (World Without Man)
- SCP-804と関係するかもしれない。
- 第三階層/部屋4/アダムの憎悪 (Adam's Hatred)
- カクタスバースにおける最初の人間、アダム・エル・アセムと関連するかもしれない。
- 第四階層/部屋1/朝の星 (The Morning Star)
- DJカクタスの提言Ⅲの終盤で、O5-1/アーロン・シーガルが使用する剣の名称がThe Morning Starである (和訳は明けの明星)。提言Ⅲではエデンの園にあったので、実際には同一のものではないのかもしれない。
- なお、明けの明星はラテン語でルシファーである。
- 第四階層/部屋2/ニガヨモギ (Wormwood)
- ヨハネの黙示録において登場する、同名の星か。プロジェクト・パラゴンハブではオールド・エウロプ南方 (現代の北アフリカ) の土地、アバドンが星の落下で滅びたという話があるので、もしかすると (当初は) そこの星のこと (だった) かもしれない。
- SCP-3790の投稿後、4000コンテストに投稿されたSCP-4008は、ここからメタタイトルを取っている。後にSCP-4008の設定はカクタスバースに逆輸入されたため (SCP-6666等で登場)、それを踏まえると、現在この部屋に収容されているのはSCP-4008関連のものであるかもしれない。
- 第四階層/部屋3/ハルモニアの首飾り (Harmonia's Necklace)
- ギリシア神話の女神、ハルモニアーには呪いの首飾りの伝承がある。
- 第四階層/部屋4/プラカード無し
- 不明。SCP-3930と関連する可能性があるかもしれない。あるいはSCP-017などかもしれない。
- 第五階層/部屋1/人の心 (The Heart of Man)
- 不明。
- 第五階層/部屋2/工具の痕跡は、プラカードがてこの原理で強引に外されたことを示している。“ハロー”という言葉がプラカードのあるべき位置の金属に刻み込まれている。
- SCP-3935と推定される。
- 第五階層/部屋3/チャンネル55 (Channel 55)
- SCP-055と関係があるかもしれないが、関係ないかもしれない。
- 第五階層/部屋4/生ける悪夢 (Living Nightmare)
- 不明。
- 第六階層/部屋1/ミスター・ちんもく (Mr. Silence)
- Tale"To Never Again See The Light Of Day"に登場。
- 第六階層/部屋2/死者の椅子 (The Dead Man's Chair)
- バズビーズチェア?
- 第六階層/部屋3/エッツィ (Ötzi)
- 呪いの都市伝説で知られるミイラ。通称アイスマン、またはエッツイ。
- 第六階層/部屋4/アポリオンの冠 (Apollyon's Crown)
- SCP-4840で詳細が語られた物品。最初の人間、アダム・エル・アセムが他世界の星を取って作った王冠 (カクタス作品では他世界由来の物品がアノマリーとなるという話があるので、それを踏まえると原初のアノマリーとも言える) で、これによってアダムは悪の心に目覚め、王として統治を開始した。後にアベルやカインがこれを手に入れようとするが失敗し、最終的にセスが盗んだことで王国は滅んだ。後にセスがこの王冠を地上の人間に与え、後にその子孫がアポリオン王家となる。最終的に戦乱の中で冠は失われたはずだが、怪奇部門がそれを所有していた。
- カクタスバースにおける全ての元凶とも言えるオブジェクトであるため、他記事でもちらほら言及される。
- 第七階層
- アクセス不能。しかしSCP-6666やプロジェクト・パラゴンハブの内容を踏まえるに、2021年現在はアクセス可能であるらしく、現O5-1/カルヴィンが立ち入って中にいる未知の実体と面会している。
- 中にいる実体の正体は不明だが、複数の情報を繋ぎ合わせるに、『夜の最後の王』関係の存在がいるのかもしれない。あるいはIS/IS NOT関係かもしれない。
- DJカクタスはアダム・エル・アセムは第七階層にいないと発言している。
- 氏は関連する001提言を執筆する予定があるらしい。おそらくプロジェクト・パラゴン関連として来る作品だと思われる。
関連リンク
- SCPDeclassified: SCP-3790 - "Department of Abnormalities"
- SCPDeclassified: Flash Explainer: Department of Abnormalities
- KanKan氏の考察 (2020/5/28)
跳ね上げ戸には”怪奇部門(Department of Abnormalities)”という言葉が日本語で刻まれた小さな金属製プラカードが取り付けられています。
「怪奇部門」の調査報告 by Dr_Kasugai
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:3995762-227-2251
怪奇部門に関して by Fennecist
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:3705485-16-9221
怪奇部門記事・解釈モーメント by Dr_Kasugai
https://twitter.com/i/events/1440328471834607626?s=20