仮書き

「イサナギは、アルベルタを蘇生した。今、それにふさわしい人物は貴方しかいない。エノラ・クラッドは、アルベルタ・ダークだ。恨みだけで生きているイサナギがアルベルタを蘇生したのは、復讐に必要だったから。それで、今その役目を終えたあなたは、役目を着せて蘇生させたイサナギに対して、ささやかな復讐をしようとしている」

「素晴らしい。満点です」

「動機も十分、情報も真実……一度乗っかるしかねえか」

「では、今から人間が少しだけ生き残る方法を説明します」

残り一時間、決定された未来をひっくり返す授業が始まった。









・エノラは、以下の内容を語る

エノラ・クラッドはプレイルを手にした際(つまり【7-1】よりも前の時点で)、A15班との通信回線を絶った上でプレイルのシステムを覗き見た時に逆にカメレオンによるハックを受け、世界中の人々に "伝書使" のビジュアルイメージをバラ撒くための踏み台に使われていた。その際にエノラ自身もそのビジュアルイメージの断片を知覚し、これが彼女が「無駄な足掻きをからかいに……と思ったのですが、やめたところです」という形に動く大きな背景理由となった。







・これにより、プレイルは「カメレオンがエノラの持つ情報回線を踏み台にして、送信可能な相手に片っ端から伝書使のイメージをバラ撒いた」事を把握。






しかし "切り札" と言ってみた所で、所在が把握できなきゃどうする。


一瞬の沈黙の後、ローゼンバーグが呟く。

「さっき見た報告書によると、この "2000-JP" には帰巣本能があるんだったな?」


「……マダラザ!イリシアの義体に再接続しろ!」

ローゼンバーグの言葉の直後に、叫ぶかの如く古河の指示が響き渡った。続きを述べる彼を遮るように、マダラザがその先を言い当てる。

「"空フォルダ [SCP-2000-JP]" を、彼女の義体のシステム内に作成します!」



【空フォルダ内に、伝書使が駆け込んで来る描写】



「来ました、……いや、容量が増えない?」

マダラザの発言が、プレイルに、エノラに、A15班の全員に緊張を生む。

「……違う、僅かに増えてます。異常に軽いんだ……。」

マダラザは手にした端末に伝書使きりふだのソースコードを表示した。



"he is scp-2000-jp. the messenger dog."


※↑、「プログラムのソースコードを表示する画面」っぽく表示する構文で










・プレイルは "he is scp-2000-jp. the messenger dog." という一文のみのプログラムがSCP-2000-JPのそっくりさんとして複雑な処理を実現している理由について、「バラ撒かれたイメージを元に、人々のニューロデータが描く思考が姿を与えた」「人々の思考を糧に、イザナミの人造神と根本は同じ」と説明する。




・以下のやり取り

「コイツは、一匹だけなのか?」

「そのようです。」

「……ダビングアウトがニューロデータに致命傷を与える理由を覚えてますか?」

「固有思考パターンを絶えず予測演算し続ける、複製処置が割り込めばその演算が崩壊して……」


彼らの眼前に、 "he is scp-2000-jp. the messenger dog." という一文のみで構成されたプログラムが鎮座している。



・SCP-2000-JP演算作戦の概要と、それによってA15調査班が消息を絶つであろうことを予見している記述。


・エノラ・クラッドの裏切りにより、イサナギの謀略は失敗。アストリズムの一発がイザナミに直撃し、班メンバーもろとも消滅。


・このタイミングでニューロバンク"トツカ"の全ニューロデータを依り代とした大規模なSCP-2000-JP演算作戦が実施される。結果的にトツカからのリモート義体だったイリシアの人格が破綻。

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