作業メモ:
- 年表の追記
- テーマ部分とかにサムネイルをつける?
- 用語追加: ポストヴェール、南シナ海戦争、要素
背景情報
これは、1998年カノンの世界観解説や、有用なリソースのまとめです。各根幹記事の結末などに関して、重大なネタバレがあります。気にされる方は、まず主要な根幹記事を先に読まれた方がいいかもしれません。
目次
情勢 | 1998年カノンの世界情勢の解説です。 |
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団体 | 1998年カノンで活躍する団体の解説です。 |
用語 | 1998年カノンに登場する用語の解説です。 |
年表 | 1998年カノンにおける重要な出来事の年代まとめです。 |
その他のリソース | より詳細な設定集やCSSテーマなど、その他の有用なページのリンク集です。 |
情勢
世界の情勢は日々移り変わっていく。特に、ヴェールが失われ、あらゆる異常がファクターとして加わるようになった世界では、その変遷速度は未曾有のものとなる。災厄と新技術の荒波の中、まだ見ぬ未来に突き進んでいくこの世界の一端を紹介しよう。
ヨーロッパ
🇵🇱 ポーランド
神格存在出現事件とヴェール崩壊
1998年7月12日の正午、ポーランド南部・マウォポルスカのとある村で、ショパン・カルトの異端的な一派が儀式を決行。結果、ショパンの顔とセミの幼虫の身体を持つ巨大な異形の神と、同じくショパン顔の成虫のセミの群れが出現し、経路上の都市を破壊しながら、カルトの聖地であるジェラゾヴァ・ヴォラ村に向けて進行を開始した。この“神”は未完成の状態で出現したと見られ、聖地への到達は神の完成による破滅的な世界終焉シナリオに繋がりかねないものだった。

当時の新聞に載ったイラスト。
財団、世界オカルト連合、ならびにポーランド政府は一時的に協調し、神格と戦闘するも難航。12日夜に首都クラクフの北にあるプロショビツェで決戦が行われ、最終的には神を討ち取ることに成功する。しかしながら、死に際の神が放った超極大規模の奇跡論パルスにより、ポーランド南部全体で建物の崩壊などの大損害が発生。また、これに伴いヴェールが崩壊し、財団・連合は一般に向けての公開説明を行わざるを得なかった。
被災したポーランドでは、神の影響で消滅した生物が残す“カック灰”による汚染が発生し、また民間人・建造物への被害も (一部の魔術的保護を受けていた箇所を除いて) 深刻だった。財団・連合は当時崩壊間際であったプロメテウス・グループに出資し、ポーランド南部の復興や除染を任せた。この“ポーランド特需”によって同社はある程度修復し、その後の第二次パラテックバブルへの礎となっていく。
一方、日本から飛び立った夏鳥思想をきっかけに、2000年代にポーランドで出現した過激派夏鳥組織“ボチャン・ビアウィ”の行った悪行は、後の反異常思想“ナツドリズム”の勃興に繋がるなど、神格存在出現事件は今後も長い禍根を残すことになる。
🇪🇦 スペイン
2015年・国民カワウソ化事件
比較的順調に世界に追随していたスペインであったが、2015年8月、スペイン国民カワウソ化事件が発生。“トンガラシ翁”として知られる要注意人物が不死を目指す儀式の過程で神格化し、人々を食材であるカワウソに変えて捕食し始めた。これは1998年の神格存在出現事件以後、神格存在が起こした事件の中では当時最大級のものだった。
バルセロナに出現した神格はイベリア半島全土に結界を構築し、眠りについた。しかし、スペイン政府側が神格討伐時にポーランド南部のような破壊的影響が生じる懸念から様子見を行っていたことや、財団・連合が同時期に南シナ海で発生していた、サメ殴りセンターと海洋諸国の間の武力衝突 (南シナ海戦争) に手を取られていたことなどで、対応は遅延。結果、出現7日後に結界の影響が遅効性であったことが発覚し、半島全土の国民がカワウソに変化。覚醒した神格による人々の捕食が始まった。
神格は各都市を移動しつつ、軍と交戦。トンガラシ翁に飼われていた (そして儀式の触媒となっていた) 2匹のカワウソ──リュドリガ兄妹 (セイル・アヒージョ・リュドリガとアマリア・アヒージョ・リュドリガ) の接触・協力で見つかった打開策から、11月29日の「第3次バルセロナ市街戦」を以て神格存在は撃破された。実に3ヶ月に及ぶ騒動であった。なおこの際、当初心配されていた神格討伐に伴う破壊的影響は発生しなかった。

エスパノル・ヌートリアのスケッチ。
戦後も、スペインではしばらくの間に渡って政治的混乱が続いた。また対応の不足から、正常性維持機関やEUなどへの不信感が広まった。何より大きかった問題が、種族の変化による生活様式の変化と、ホモ・サピエンスの間での対立の発生だった──半島在住のカワウソ化した人々は「エスパノル・ヌートリア」と呼ばれ、少数のヒトのままの住民 (エスパノル・ヒュマノ) との間に対立が生まれていた。特に、ヒュマノの間における異常排斥思想の広まりなども新たな問題となった。
国民の大部分が動物特徴保持者 (AFC) となってしまったスペインは2016年に憲法を改正し、欧州でもいち早くAFCへの権利保証を進めた国家となった。このため、AFC権利論の文脈において、スペインは先鋒国家の1つであると見なされている。

スペイン次元穴探検公社 (CESEXAD) のロゴマーク。
また、衰退してしまった国内産業を補う一手として、神格存在が残していった「次元穴」が注目された。神格存在は戦闘中、しばしば異次元空間に繋がるポータルを生じさせては、その中へと逃げ込んだ。これらのポータルは現在も残されたままであり、幻想的な異空間へと繋がっていた。調査の結果、この世界からは未知の有用な資源が豊富に発見され、スペイン政府は次元穴の探索を国家事業として積極的に推し進めた。これは後に、別次元・空間探索産業 (ODSE産業) が国家の経済状況に大きな影響を与えた代表例として知られるようになる。
北米
🇺🇸 アメリカ合衆国
メキシコ湾体制と9.11テロ
ポーランド神格存在出現事件の後、財団-世界オカルト連合-プロメテウスグループ-アメリカ合衆国政府の4者協議による北米大陸のアノマリー評価報告システムが速やかに確立された。米国南部超常組織協力条約 (SUSEOCT) の拡張的な枠組みとしてメキシコ湾条約が締結され、財団・連合の特殊資産が集中する北米全域における衝突の防止、ならびにヴェール・プロトコルの段階的廃止におけるモデルケースとして運用された。

メキシコ湾体制 (画像作成: 広末孝行)。
これら4権力による新世界秩序は俗に「メキシコ湾体制」と呼ばれ、財団・連合などに否定的な見解を示すカオス・インサージェンシーなどの組織による反体制活動の活発化を招いた。2001年9月11日、ニューヨークで開催予定だった国連の超常問題特別総会を狙って、4権力を離散させるべくCIが大規模な超常テロを引き起こす。
CIはハイジャックした飛行機でマンハッタン島上空に儀式陣を構築し、その結果ワールドトレードセンターを中心に地獄への崩落が始まった。財団・連合は対応に当たるも、暴徒化した悪魔の軍勢、更にはCIが解き放った多数の工作員や超常兵器によって戦闘は激化する一方。WTC 1頂上に事態の元凶らしき生まれかけの神格が確認され、GOC本部はピチカート手順の発動によりマンハッタンごと脅威存在を葬り去ることを通告する。

33番街に集う悪魔たち。
一方、財団はこれを容認せず、戦闘を継続。現地の財団・連合部隊は共闘体制を取って神格を異次元に追放し、9/15にマンハッタンは再び現実に浮上した。神格により本来の主従関係を上塗りされていた悪魔たちは、再度地獄第三圏の主であるイブリースの命令下に戻り降参を宣言。神格の追放の代わりにイブリースが結んだ契約の結果、悪魔たちの存続が確約され、彼らは新たな労働力として、専用の法律下で (そして財団の政治的・情報的根回しの下で) マンハッタン復興に動員されることとなった。
地獄の侵食範囲は最終的にマンハッタン島全域ならびにその周辺区域まで及んでおり、関連して述べ1500万人が異常存在に直接的な影響を受けた。これは北米大陸の財団・連合資産の対処能力を大きく上回る事態であった。これを受け、両者は「ハドソン川協定」を発行し、事後処理に伴う衝突防止のためにいくつかの条項を取り決めた。
今回のテロ事件において、マンハッタンに居合わせた魔法使いや要注意団体が市民と団結して事態の対処に奮闘しており、彼らの様子が報道で広まっていた。加えて、先述したように悪魔たちが島で働くようになった。こうした背景を受けて、ハドソン川協定では人間型異常存在の権利がある程度保証される運びとなり、これは後の異常性保持者の権利運動に繋がる、重要な歴史的転換点となる。
現在、マンハッタンでの悪魔の渡航・労働は既に一般的な光景になっており、その情景は亜種族と共存する一例として世界中に広まっている。
南米
🇨🇴 コロンビア
“楽園”誕生とその顛末
かねてより麻薬の氾濫で知られるコロンビアであったが、ヴェール崩壊後に出現した無名の犯罪組織 (通称“ジョン・ドゥ・カルテル”) によって多数のパラドラッグがバラまかれ、社会情勢は急激に不安定化、政府は腐敗し機能不全に陥った。合衆国にまで溢れ出したパラドラッグの出処を追ううちにUIUはコロンビアの実情を把握、カルテルの鎮圧を企図し始める。
しかし2006/10/2、カルテルの傀儡政権は他の主権国家・正常性維持機関からの干渉断絶を宣言。国土一帯がどこからともなく湧き出した麻薬の霧に覆われ、立ち入ったものは夢の世界に取り込まれるようになってしまった。
コロンビア領土は国際連合の信託統治領となり、立入禁止区域に指定された。領域内ではカルテルと結託した悪魔たちが徘徊し、目覚めない民衆からエネルギーを回収し続けている。民衆の精神世界に構築された第二のコロンビアは、パラドラッグ漬けの狂気と退廃に溺れた世界となっており、ボゴタ上空に形成された幻像“オルタナティブ・コロンビア”にその光景が投影されている。
オルタナティブ・コロンビアはカルテルによって支配され、精神世界への移行も彼らが悪魔と契約を結んで引き起こしたものだと考えられている。同国は世界最大規模のパラドラッグの産出地となっており、ここから全世界に流出した“魔薬”マギファナは、各国裏社会での犯罪シンジケートの拡大を誘発した。
しかし20██年、詳細不明の集団“アゲインスト・ウィード”により、カルテルの支配体制は崩壊。残存するカルテル上層部と一部住民は、夢界の彼方へ姿を消した。
その後、2019年の再構築イベントの影響で、コロンビアは一度完全に“正常化”された──はずなのだが、再度コロンビアでは麻薬の霧の出現や、奇妙な精神疾患が多発しており、裏社会では“カルテルの帰還”が都市伝説的に広まりを見せている。まだ財団たちの仕事は終わりそうにない。
アフリカ
🇪🇬 エジプト
3度顔を変えた国家
エジプトはかねてより神話伝説が豊富であったが、ヴェール崩壊後、書物と口承の中に生きていた種族──いわゆる「伝承部族」が実際に存在していたことが発覚した。エジプトは彼らと協調する国家として、比較的先進的な政策を打ち出していたが、2019年、巨大な災厄が巻き起こる。
2019年9月13日、全世界規模のCK-クラス: 現実再構築イベントが発生。その結果として、アフリカ・南米両大陸は1998年のヴェール崩壊を経験していない歴史に変化した。住民は異常の知識を持たず、パラテックは姿を消し、これまで培われてきた伝承部族の進出は一気に逆戻りする結果となる。
この際、ナツドリズム系の人物・団体の多くが、「正常」になった両大陸を聖地と見なし、積極的な移入と“啓蒙”を行った。それに伴い、エジプトを中心とする北アフリカ各国が反異常思想を核に同盟を組んだ「サハラ夏鳥臨時軍事政府」が出現。伝承部族への積極的迫害を行い、国際的な非難を浴びることになる。
最終的に有志連合軍により軍事政府は敗走する結果となり、都市には伝承部族が戻ってきたものの、凄惨な戦争の歴史は今尚も爪痕を残している。ホモ・サピエンスと亜種族は、再度灰の中から手を取り合っていけるのだろうか?
アジア・太平洋
🇯🇵 日本
奇蹄病──新たなる課題
第二次パラテックバブルの波は、当然日本にも押し寄せていた。この恩恵を受けて勢力を拡大する企業もあれば、逆に海外勢力の進出を受けてその影響力を燻ぶらせる企業もあったが、躍進した企業の代表格が日本生類創研だった。しかし、彼らは長年に渡って多くの法的・人道的な問題を抱えており、日本政府・正常性維持機関共通の目の敵でもあった。
2009年1月28日、奇蹄病事件が発生。日本生類創研開発の人体変異ウイルスの漏洩により、神奈川県を発端に日本国内で大量感染エピデミックが起きてしまう。奇蹄病は急性期に人体の一部が哺乳類などの別の動物様の器官に置き換わる症状を齎し、この際に生じる不全などによって感染者の一部は死亡、生存者はそのまま人ならざる器官とともに生きていくこととなる。
多数の死者・後遺症患者を発生させたことで、日本生類創研の立場は一気に悪化。膨大な賠償金、法的追求・制限に追われるなかで本社が倒産し、グループは離散する。

奇蹄病患者の差別防止ポスター。
奇蹄病患者たちは犠牲者として憐憫の目を向けられる一方で、その姿形や風聞から、各地で不当な差別・迫害が相次いだ。動物特徴保持者 (AFC) という言葉が一般的に使われだしたのもこの頃だ。彼ら奇蹄病患者たちの保護の訴えは、伝承部族や先天性の動物特徴保持者など、他のAFCも巻き込みながら一つの運動へと拡大していく。
東京事変とその余波
2017年12月17日、東京都全域 (および周辺区域) で史上最大規模の現実崩壊が発生。粘性を持って流れる電流、人体の建造物との融合、時空間の拡張・圧縮、降り注ぐビルの雨……かつての巨大都市は、わずか1日にして、居住不能地帯と化した。膨大な死者・行方不明者を出し、住む場所を失った難民が周辺の県に押し寄せるなか、生き残った政府関係者は群馬県に新たな暫定政府を設立した。
当時の財団は、2015年のスペインで満足な対応ができず、国際社会からの信用が失墜傾向にあった。このため、財団は彼らの支援で復興した成功例を求めていた──現在の日本の状況は、まさにこの状況に合致するものだった。そこで、彼らは早期に新日本政府に支援を提供し、その復興開発を強力に援助した。

夜の中央新都心。
日本の復興政策の中、群馬県を新たな首都として、「中央新都心」を構築する計画が発表された。これは失われた都心機能を回復しつつ、最新鋭の技術を多数導入して、より先進的な都市を創り上げる試みだった。先の東京事変の経験を踏まえて、日本は首都機能をいくつかの都市に分散し、2026年には完全な道州制へと移行した。
他方、尚も断続的な現実崩壊を続ける東京では、政府・民間による多数の調査活動が行われた。その中で注目されたのが、ODSE産業だ。非基底資源が豊富であることが判明した東京には、危険を承知で一攫千金を狙うトレジャーハンターたちが集中した。何らかの影響で災害を逃れたいくつかの特区が、この産業の前哨拠点として機能した。
この他にも、東京では様々なドラマが展開される。地上の人々が知らぬ間に、地下では生存者たちが複数の駅コミュニティを形成し、拠点となった駅間で交流・衝突を繰り返していた。彼らはテクノロジーからほど遠いサバイバル生活を送り、暗闇の中で生命の火を繋げていく。また、東京周縁の廃墟・無人地帯に形成されたスラム街“トーキョー・サークル”では、企業や犯罪シンジケートの抗争が日常的に起こっていた。
26年間続いた災厄は、2043年12月27日にとうとう終焉を迎え、被災地の復興・再開発がゆっくりと進行しつつある。またこの際に、地下東京コミュニティと地上部は正式な交流に成功したようだ。
AFC権利活動
東京事変の影響で些か後回しにされてしまったが、異常性保持者たちの権利保証活動はなおも続いていた。2025年には、日本で異常性保持者保護法が改正され、動物特徴保持者についての条項が新たに盛り込まれるなどの進展を見せた。
しかし、それで国内の差別が瞬く間に一掃されたかというと、そうもいかない──問題は根深く、それに奇蹄病事件や東京事変の影響、そして親超常化が進む政策への反発で、反異常思想・ナツドリズムは着実にその根を広げつつあった。
2037年、南米のナツドリズム系武装組織に参加していた過去を持つ男性が、AFCを標的にした無差別テロを決行。巻き込まれた非異常者を含む大勢が死傷しただけでなく、被害者の中に2015年のスペインで神格討伐に貢献したヌートリア女性が含まれていたことで、話は日本国内のみならず国際的なニュースにまで膨れ上がり、主要各国に体質改善を促す結果となった。
超常医療産業の拡大
2010年代から人類の体内現実性レベルが次第に上昇し始め、またアノマリーが身近なものとなっていったことで、それに伴う異常性質の発現が全世界的に発生し始めた。2020年代から財団はこうした異常性を疾患と見なし、(特に害のあるものに対して) 収容・治療などの対応を開始した。
2029年、財団は中央新都心にサイト-81Q5を設立。同施設は日本国内での異常疾患対応計画の要であり、日本全土の「財団指定難病」患者が運び込まれ、治療を受けていた。一方、サイト-81Q5の体質には問題が多く、相次いで不祥事が発覚。最終的にはサイト全体で現実崩壊事象を起こしてしまい、財団の体質改善を唱える声や、超常医療の部分的見直しが唱えられるようになる。

日本医療業界の二大巨頭。
とはいえ、有害な異常性を医療でカバーするというスタイルはある程度一般化を見せていた。民間では、旧日本生類創研にルーツを持つ“ニッソグループ”と、国内最大級の企業連合会“Yakushiグループ”の二大巨頭が互いに競い合っていた。
近未来の社会では、多様化・権利保障は更なる進展をみせ、「人類」の定義はより拡張されたものとなっている。こうした超多様化社会に寄り添う形で、ニッソやYakushiは様々なサービス・商品展開を日々繰り広げ、日本は新たな夜明けへと向かいつつある。
団体
異常が溢れる世界で何が起こるか? 当然、異常な団体の活動が活発化する。異常を管理する者、事件を起こす者、あるいはそれらを崇めたり、売買したり、研究したりする者……。
一部の団体は通常世界とほとんど変わらないが、その活動内容・活動量に変化があった。またある団体は抜本的な変化を遂げたし、中には新たに形成された団体もある。
そんな彼らのうち、カノン内によく登場するものをいくつか紹介しよう。
正常性維持機関・国家組織
財団

確保、収容、保護。
財団、あるいはSCP財団は、GOCと並ぶ世界最大規模の超常機関だ。彼らは“確保・収容・保護”の3つのスローガンの下に、人類史の背後で超国家的な収容活動を続けてきた。そこで取られていた超常隠蔽の方針こそが、世に言う“ヴェール・プロトコル”であった。
しかし、1998年のポーランド南部での大事件は、神秘のヴェールを捲くりあげてしまった。元凶となった神格実体の討伐後、財団は世間にその姿を表し、異常とその対応機関の存在を公に認めることとなる。そして2001年、テロ鎮圧の暁に財団が連合と共同で発表した“ハドソン川協定”をきっかけとして、異常存在の収容・粛清活動は一部見直されることとなり、財団の秘密主義・非人道性は次第に薄れつつある。
とはいえ、彼らは未だ財団であり、新世界においても正常な社会の維持に向けて活動を続けている。新たな財団は人類の守護者としての性格がより強まり、異常な事物の対策機関の位置づけで社会に認知されている。“正常”はもはや我々の知る姿ではないが、異常存在の記録や収容は今も続けられているし、危険な超常技術の取締や、亜人種の社会政策について監修を行うなど、彼らの仕事は暫く消えそうにない。
2020年代からは、世界各地の人々に発現しつつある異常性を疾患と見做して、彼らの収容と治療を開始した。しかしながら、日本におけるその中枢施設であるサイト-81Q5には、大きな翳りが見えていた……。
- サイト-81Q5: 2029年、日本国群馬県に設立された巨大サイト。財団異常疾患研究・治療センターとして、日本全体の財団指定難病 (DIDF) の患者を収容・治療していた。不祥事をきっかけに調査が行われたところ、上層部が財団から離れた独自の運営を行っており、隠蔽工作等の問題があったことが発覚。2041/12/24にサイト全体で現実崩壊事象を引き起こし、患者や職員を巻き添えに異常化、SCP-2041-JPに指定された。
- 信濃中央新聞: 長野県に本社を置く財団フロント企業。ヴェール崩壊下においては、財団の実質的な機関紙として活躍している。その影響で同社は日本最大手のメディアにまで成長し、電子版アプリやテレビ会社を子会社に持つ等、大きな発展を遂げている。恋昏崎新聞や帝都経済新聞などが対抗馬。
世界オカルト連合

人類を守り抜く。たとえ敵が何であれど。
通称GOC。国際連合を母体とする、財団と対をなす世界二大正常性維持機関の片割れ。その名の通り世界各地の超常組織を束ねた“連合”であり、財団同様に1998年以前から世界の背後で人類を守護してきた存在である。GOCは財団同様にヴェール崩壊後も存続しており、一種の治安機関として振る舞う。
異常存在の破壊・粛清を基本とする姿勢から財団とは対立していたものの、ヴェール崩壊以後は融和路線に転じ、相互交流に積極的な姿勢を見せている。とはいえ長年の遺恨はそう簡単に消えるものではなく、政治的・軍事的な対立は今なお残り続ける。
ハドソン川協定以後、彼らは粛清範囲を縮小させたものの、未だ脅威存在と認定した異常実体に対しては排除活動を行っている。特に大型敵性実体の出現時などには財団と共闘することも多く、その鍛え抜かれた手腕・技術は強く頼りになるだろう。
- 世界超保健機関 (WPhO)
WHOの対異常疾患部門。日々異常疾患に対処する傍らで、サイト-81Q5の実態について追っているようだ。
- 国際統一奇跡論研究センター (ICSUT)
奇跡論研究を専門的に取り扱う、GOC最大の研究・教育機関。ICSUTのおかげで、GOCは奇跡論分野に比較的秀でている。財団の教育機関であるプリチャード学院や、“自由”な校風で知られるディア大学とはライバル関係にある。
企業グループ・営利団体
プロメテウス・グループ

研究と洞察により、神秘はありふれたものとなる。
プロメテウス研究所を中核企業とする、巨大な企業連合コンツェルン。あるいは、パラテクノロジーの帝国。
大戦期〜冷戦期にかけて超常開発競争が加熱する中で巨大な勢力を誇っていたが、冷戦終結に伴ってその力は急速に弱まり、1998年には経営難によってほとんど解体直前にまで追い込まれていた。かつては同等に渡り合っていた財団と連合からも、もはや解散前提で事後処理について議論されているような有様であった。
しかしそんな最中において、ポーランドでの神格出現事件とヴェールの崩壊が発生し、世界情勢は大きく揺れることとなる。この際、二大正常性維持機関はプロメテウスの崩壊による超常技術の散逸、およびそれに伴う社会情勢の更なる混乱を見過ごせないという形で合意に達した。そこで両者は壊滅したポーランドの復興計画にプロメテウスを関与させ、巨額の出資とともに、彼らのエンジンの紐を引っ張り直したわけである。
この“ポーランド特需”への対応とともに、同社は財団・連合の監視下に置かれながらも一般市場への参画を再開させ、後に第二次パラテックバブルと呼ばれることになる景気情勢によって、その業績を大幅に回復させることに成功する。かくして不死鳥がごとく灰の中から蘇ったプロメテウスは、財団・連合・合衆国とともにメキシコ湾体制に参加しつつ、一度は引っ込めた手を再び世界各地へ広げていった。
しかし9.11をきっかけとする体制のゆるやかな崩壊のなか、プロメテウスは徐々に財団や連合の手綱を離れ始めた。松明の持ち手は、いつまでその炎を無事持ち続けられるのだろうか?
ニッソグループ
NISSO: 新しい日常を、創生する。
ヴェール崩壊と続く第二次パラテックバブルの影響はここ日本にも波及し、日本生類創研もまたその勢力を大きく拡大させた。しかし、彼らを厭う者もまた多い。日本国内の超常事業を統括するJAGPATOの認可を得ず、また様々な組織犯罪への関与も噂される日本生類創研は、財団、連合、日本政府共通の目の上のたんこぶとして睨まれていた。
2009年、神奈川県周辺で奇蹄病事件が発生。この際、事件の起点となったのが日本生類創研の研究所であったことが判明する。これは偶発的なアウトブレイクだったとされるものの、この事件をきっかけに日本生類創研は積極的な取締対象とされ、更には多額の賠償責任を負うこととなってしまう。徐々に弱体化しゆく日本生類創研は、ついには完全な解散を迎えてしまった。
しかし東京事変以後、国内企業の建て直しを図る政策に乗っかる形で再始動。この際に基盤となったのが旧社の医療系研究員たちであり、再び結集した彼らは確かな技術力と徹底した自浄努力、国の支援もあって数々の医療機器で世界トップシェアを誇る大企業へ返り咲き、「ニッソ医機」として新生することに成功した。同社は新たに創設された「ニッソグループ」の中核企業でもあり、同時期に勃興・発展していった医療企業連合「Yakushi」とはライバル関係にある。
一方、裏社会では未だに地下活動を続ける旧社の残党勢力について聞くことができ……。
Yakushiグループ
衆生を救え。それが我々の使命だ。
如来の名を名乗る、巨大な医療系企業連合。ヴェール崩壊後、超常技術・異常疾患の対応で変革を迫られつつあった日本製薬業界において、躍進していった薬師寺製薬を中核にする形で結成された集団である。同社が発展過程で様々な企業を買収してきたこともあり、医療系を中心としながらも食品・美容・工業といった分野の企業も所属している。このため、Yakushiはグループ内だけで大部分の処理を完了してしまう潤沢なリソースを持つ。
Yakushi傘下企業は表面的には対等なものとして扱われるが、実態としては薬師寺製薬を頂点に置くゆるやかな序列制を有している。トップは薬師寺製薬のまま変わらないが、序列2位以下の企業はかなり流動的なことが知られている。
2020年代以降の日本における代表的な企業連合の1つであり、資金・勢力ともに国内最上位クラスである。薬師寺製薬の躍進の影には財団があり、初期には出資などを介してYakushiの動向にも口を出していた時期があるとされる。しかし、次第に両者の摩擦が目立ち始め決裂。以降は利害関係上対立することも珍しくなく、両者の間には緊張状態が続いている。
- 薬師寺製薬
Yakushiの中核企業であり、不動の序列一位。「どんな人でも大丈夫、仏のマークの薬師寺製薬!」というコマーシャルは、日本人なら誰でも覚えがあるだろう。その企業規模を示すかのように、ドラッグストアには必ず薬師寺製薬の医薬品が置いてあるほどである。
スキンケア用品、エナジードリンクなど、薬師寺製薬のカバー範囲は極めて広い。また、研究開発型企業としても活躍しており、ミーム風邪治療薬「アンタミン」を自社開発し上市した。主な研究分野はミーム感染症、超常整形外科疾患など。
1763年、薬師寺家の当主、薬師寺惣兵衛が薬種中買商として独立した日が企業としての創立記念日とされているが、薬師寺家の歴史はさらに古く、一説によれば蒐集院の医療関係を担当していたとされている。
理外研グループ

理外を理解し、利用する。
大正時代、ある一つの団体が理研の裏に設立された──理外学研究所は、戦前日本における代表的な民間超常研究機関であった。理外研は研究資金を確保するため、研究成果を利用していくつかの事業体を興した。この旧理外研産業団をルーツに持つ独立した企業達は、戦後も分野の枠を超えて横の連携を維持し続けている。
かくして理外研グループは、多分野に根を広げた国内有数の大型企業集団となった。グループ構成企業は、ヴェール消失から市場開放前にかけて、営利事業を行う国内最大規模のJAGPATO認可団体として、日本の各市場に名を轟かせた。しかし、プロメテウス等の攻勢によってその勢力圏は後退。現在、グループの各社は各々の分野で企業連を結成、または参加するなどして、様々に巻き返しを図っている。企業連での役回りの多くは、政府や財団との太いパイプを生かした渉外活動。
- 財団法人 理外学研究所
自然科学系総合超常研究所として広く知られる。そのルーツは大正時代に理研の裏に結成された同名の超常研究者集団。資金源は理外研グループによる共同出資や、同法人が持つ特許。グループ企業の研究者プールや共同研究体制を組織する為のベースとして機能している。
教育・学術機関
帝都大学
この国の最先端に立つ。
東京事変は都心部の主要大学を破壊し、日本の学術研究は大打撃を受けることとなった。これら大学機関の機能を復活させるために、復興プロジェクトの一環として設立されたのが帝都大学である。同校は東京大学を中心に、一橋大学や東京工業大学などの南関東の上位国立大学・公立大学が併合される形で誕生した。
しばらくの準備期間を経たのち、帝都大学は2021年に正式稼働を開始した。新都心の小型宇宙内に敷設されたキャンパスには多数の先進技術が導入されており、同校もまた日本の学問・技術の最先端として、多面的な研究を行っている。
花籠学園

あなたの才能を咲かせましょう。
この団体の立ち位置は少々特殊である──花籠学園が登場する作品の大部分は、東京事変が“無かった”世界を舞台としているためだ。
その場合、花籠学園は東京都9区に大規模なガーデンシステムの“庭”を内包する形で設立された私立の学園とされる。敷地内の9割以上の面積を誇る“庭”は高度な能力を持つコンピューターに類するものであり、莫大なエネルギーを産む悪魔工学の召喚機構でもある。“庭”はあらゆる資源として転用されることが期待されており、医療分野、エネルギー生成施設、あるいは人工知能に対する試みの1つでもある。
それらの分野に関わる数多の企業、病院、政府機関の陰謀と策略によって成立した学園であるが、それに負けず劣らず在学生らも強烈な個性を持っている。花籠学園の設立目的には社会の急激な変化によって生じた異常性を持つ子供たちの教育を行うことが含まれる。要注意団体に所属している者も多く、財団のプリチャード学院がカバーできない者たちへの教育を確保する機関でもあると言える。
ある事件を経て、2030年以降の花籠学園は財団の管理下に置かれることとなっているが、一部の生徒はそれに反目して活動しているようだ。
とはいえ、東京事変の“起きた”世界においても、花籠学園はやや規模を小さくしつつ活動している。
思想・宗教団体
ショパン・カルト
聖なる音の調べに、耳を傾けて。
ポーランドを代表する伝説的な音楽家、フレデリック・ショパンをある種の神または救世主として崇拝する集団。こうした思想はショパニズムと呼ばれ、ポーランドを中心に東欧各国に分布する。ゆえに関連教団の多くはこれらの地区で見られるが、1998年の事件以降は世間一般からの風あたりが強くなってしまっている向きもある。
- 聖ショパン正教会
財団の指定はGoI-484A。最も伝統的な派閥。全体的に厳かな気風を漂わせているが、新規の信者は快く出迎えてくれることだろう。1960年頃にジェラゾヴァ・ヴォラでアンソニー・ブコウスキ氏により立ち上げられた小規模カルトが母体となっており、教義も当初のものをほぼそのまま維持している。教団のトップもブコウスキの子孫が務めている。
彼らは1998年のポーランド事変の背後で事態収拾に向けて活躍したものの、その後の世間からのバッシングを避けきれなかったようだ。
- 聖ショパン再誕のための音術師協会
財団の指定はGoI-484E。GoI-484Aから破門されたヴォイチェフ・ノヴァク司祭が1982年に設立した、非常に過激な団体。彼は探求の最中に異次元の神格存在と接触し、直接その恩恵を受け取ったことで、組織は急成長を遂げるに至った。
彼はこの神を聖ショパン本人だと考えていたものの、実際にはショパンに擬態した暴力的な邪神に過ぎなかった。退廃的な儀式と引き換えに、この神は信者へ多数の強力な現実改変能力や奇跡術行使能力を授けたと見られている。これらの能力は“音術”と総称され、彼らがポーランド国内のエンターテイメント業界に根を広げ、大きな力を持つ要因となった。
この神を聖ショパンと信じ続けたままのノヴァクの手によって“降臨”のための儀式が執り行われたが、その結果は異貌の神の出現による故郷と教団の壊滅であった。召喚に居合わせた信者の大多数が亡くなり、生き残りも正常性維持機関や警察機関からの厳しい取り締まりを受けることとなる。
財団は2000年代には教団を壊滅済として認定したが、未だ一部の信徒が国内外での地下活動を続けている疑惑があり、禍根は残るままだ。
ナツドリズム系諸団体

帰ろう、ぼくらの盛夏へ。
夏鳥思想。それは本来日本の市井で生まれた、各々の過去に帰ろうとする懐古主義の一形態に過ぎなかった。ゆえに、ヴェール崩壊後の夏鳥思想は、ヴェール崩壊以前の世界へ郷愁を抱く。
問題は、インターネットを通じて拡散したこの“夏鳥思想”が、欧米で遂げた変化である。当時既にショパン事変やマンハッタンテロで激動の最中にあった欧米では、異常存在への悪感情がにわかに加熱しつつあった。そこに持ち込まれてしまった夏鳥思想は、なにか別のものへと姿を変える──すなわち、超常の排斥によるヴェール時代への回帰を唱える市民運動と化したのだった。
この新たな夏鳥思想 (ナツドリズム) は次第に欧米で猛威を振るうようになっていき、より政治化・多様化を重ねていく。今となっては、社会階級や思想背景ごとに様々なナツドリストが存在するようになっていた。彼らナツドリストは各地でナツドリズム系諸団体を結成し、組織的な活動を開始するようになる。穏健派のナツドリストも多数存在している一方、過激派によるテロ活動は度々紙面を騒がせた。
ナツドリストは悪魔、伝承部族、パラヒューマン、AFCなどに敵感情を向けることも珍しくなく、時にその矛先は異常関連団体や超常災害の被災者にさえ向けられる。しかし非合理なことに、自らの目的を達成するためならばアノマリーの使用を厭わない団体も数多い。特に、2019年の二大陸正常化事件において“正常化”したアフリカ・南米は彼らの聖地と見なされ、多くの活動家が発生・流入、一部は地元の伝承部族らに対する迫害・ジェノサイドにさえ及び、世間一般から多大な批判を浴びた。
- ボチャン・ビアウィ
ポーランドで成立した、初期の代表的なナツドリズム過激派団体の1つ。その名はポーランドの代表的な夏鳥である、シュバシコウ (ヨーロッパコウノトリ) の異名に由来する。彼らが東欧で働いた悪行の数々は、欧州で"B.B."の文字列への忌避を引き起こした。
- サハラ夏鳥臨時軍事政府
正常化後のアフリカ大陸に流入したナツドリスト活動家達によって成立した、親夏鳥派の政権。超常排斥思想を中核に、サハラ以北の国家間で緩やかな連合国を誕生させた。旧GOC構成組織の「プル・アンク・ン・ジェフウティ」 (ジェフウティの図書館) とともに地元伝承部族等への弾圧を行い、これに反発した多国籍軍との紛争により崩壊を迎えた。
テロリスト・犯罪シンジケート
カオス・インサージェンシー

さあ、世界をひっくり返せ。
世界各地、とりわけ第三世界に広がる犯罪ネットワークと多数の超常資産を保有する、財団分派組織。正体不明の司令部“デルタ・コマンド”によって率いられ、その命を受けた工作員たちによって様々な“作戦”が実行される。
ヴェール崩壊後、合衆国・財団・連合・プロメテウス研究所の4大権力が接近し、俗に”メキシコ湾体制”と呼ばれる体制によって新たな世界秩序が構築されつつあった。これを危険視したインサージェンシーは後に9.11と呼ばれるテロを敢行し、マンハッタンを異界に転落させる。マンハッタン・クライシス自体は人々の団結によって解決を迎えたものの、この際に生じた組織間の亀裂から、4権力は徐々に離散していくこととなった。
マンハッタン・クライシス後の報道で広く知られるようになったカオス・インサージェンシーは、その後も様々な犯罪関与を続けており、世間一般では代表的な超常テロ組織の一つとして認知されている。
この世界における彼らの真の目的は、“人間による人間の世界の維持”である。異常が暴露され、人ならざる者たちが氾濫しつつある現状を憂い、かつての人間主義的な“光”を取り戻そうと暗躍する。インサージェンシーにとっては、彼らこそが人類最後の防壁なのだ。ゆえに目標達成のためならば、彼らはいかなる手段であろうと躊躇なく行使することだろう。
ジョン・ドゥ・カルテル

溺れよう。ともに夢幻の享楽に。
ヴェール崩壊後、コロンビアで積極的な活動を開始した麻薬カルテル。様々なパラドラッグを売り歩く闇の商人であり、扱う薬は物理的・電子的・概念的なものまで多種多様。一方、正式な名称は知られておらず (あるいは存在しておらず)、一般には現地警察命名の「ジョン・ドゥ・カルテル」の通名で知られている。
一気に拡大したカルテルはコロンビア政府さえも支配下に置いた。合衆国に氾濫する新種のパラドラッグを追うUIUに存在を察知され、掃討が計画されたものの、2006年10月2日、傀儡政権を介して全主権国家・正常性維持機関との関係断絶を宣言。悪魔との契約によって、コロンビア全土を麻薬の霧で覆い、国中の人間を狂気と堕落が支配する夢の世界へ引き込んだ。
以後、カルテルは夢内のコロンビアを支配下に置いていると推定されるものの、未だ外部とのパラドラッグ売買は積極的に行っている模様であり、世界各国の犯罪組織とのパイプがあると予測されている。
その他
恋昏崎ニュースエージェンシー

記者よペンを取れ。誰より早く真実を暴きたてろ。
夕陽と夜闇を繰り返す異空間の町、恋昏崎に本社を構える報道会社。恋昏崎新聞社を前身に、かつてより勢力を拡大するとともに、新聞以外の他媒体へも進出している。
多数の記者が日々特ダネを狙って日本各地を、ひいては世界各地を行き交っており、危険地域への潜入取材も率先して行う傾向にある。報道内容は特に旧超常社会の世相に強く、ヴェールが破れた当時には購読者も増加傾向にあった。特にテロ中真っ只中のマンハッタンに潜入し、その実態や異常市民の活躍を世界最速クラスで報道してみせた手腕は高く評価されている。
一方で強烈な正常性維持機関叩きが社風として根源まで染み付いており、そのためには捏造じみた曲解や社会倫理を踏み越えた取材も厭わない。この問題性から、同社は世間一般からは信頼性に疑念が残るゴシップ紙・タブロイド紙的な存在と見られている。ただし正常性維持機関やそれらに忖度する各国政府の意向を無視して活動する性質上、信濃中央新聞等ではとうてい取り扱えないような問題も積極的に取り扱い、時には誰よりも速く一大スクープをかっさらってくることもあるため、案外侮れない。
シャンク一派

望ましい未来へ。
タデウス・シャンクに率いられる謎の集団。時系列から零れ落ちた人々で構成されており、時の流れから隔絶された空間に本拠地を置く。
彼らは時空を飛び回り、歴史を左右するポイントに現れては、密かな介入を繰り返している。これは「塔」や外部の時間遡行勢力による改変を調整/妨害するため、ひいては「望ましい未来」へ世界を到達させるための行動である──彼らはこの時間軸が混迷する闇の中で、人類が光の中で生きていけるように暗躍し続ける。
用語
世界が変わるとき、新たな言葉が生まれる。そうして、この世界では数多くの語彙が誕生してきた。もちろん新たな用語だけではなく、以前から超常組織内で使われていたものもある (そしてその一部は、一般でも使用されるようになっている)。
以下に、この世界で特によく使われる用語を抜粋したリストを載せておこう。基本的に五十音順に並んでいるが、「事件・災害関係」のみ発生年代順に並んでいる。
アキヴァ放射 (Akiva Radiation)
神聖視されるものから発される放射線であり、神や聖地からしばしば発生する。測定単位はアキヴァ、あるいはその1/100であるセンチアキヴァ。
悪魔工学 (Daemonics)
召喚デバイスを組み込んだ集積回路で悪魔を利用する技術の総称。基本的には社会生活を送っているような知性悪魔ではなく、より微弱な低級悪魔が利用されることが多い。
1960~70年代には非異常の技術として一般の製品に広く取り入れられていたが、1970年代末に原因不明の異常効果が頻発すると、85年には一部の例外を除いて悪魔工学製品や技術は民間から取り除かれた。しかしヴェール消失後まもなく、2001年に民間企業が再発見するに及び、安全な代価として植物の生命エネルギーを用いる等の方法が発見・研究されている。
一部設定は異なるが、悪魔工学のオリエンテーションも参照。
カック灰 (Kuck Ash)
神の干渉によって消失した生物が残す“灰”。視認は可能だが、物理的な干渉は不可能である。1998年に財団のカック研究員によって発見された。カック灰が多く堆積した地域ではHm値が不安定になる。接触・吸引することで体内EVEに短期的な乱れが生じ、特に妖術者にとってはバックラッシュの制御を誤り致命的な事態に発展することがあるほか、初期のVERITASやカント計数機は撹乱を受けて計測不良を起こす。
奇跡論 (Thaumatology)
いわゆる魔法を科学的に研究する学問。統一奇跡論はこの分野の中で最も広く受け入れられている理論的な体系である。GOCがこの方面に秀でており、同団体に加盟するICSUTは奇跡論研究の大御所である。
詳細は████████████教授の奇跡論講座を参照。
アスペクト放射 (Aspect Radiation)
現実を操作するのに十分な強度を持ったEVE放射。より厳密には、色相 (Hue)、ピッチ (Pitch)、構成 (Weave) の組み合わせで系統を分類する。出力はキャスパーという単位で定量化される場合もある。
生体発躍エネルギー (Elan-Vital Energy)
EVE、第六生命エネルギーとも。根本的なエーテルの粒子であり、すべての奇跡術の動力源。
奇跡術/魔術 (Thaumaturgy)
いわゆる魔法。生命エネルギーに基づき、呪文や儀式を通して実行される現実の操作。現実改変者 (タイプ・グリーン) による直接的な現実の操作とは区別される場合もある。これを研究する学問が奇跡論。
奇跡術師 (Thaumaturge)
妖術者とも。観測者効果を介してEVEを動力化し、奇跡術を実行して現実を操作する人物。いわゆる魔法使い。GOCでの通称はタイプ・ブルー。
バックラッシュ (Backlash)
奇跡術等の結果として発生する、局地現実の無秩序な改変。バックラッシュを上手く抑え込めないと、甚大な被害が生じる場合もある。このため、魔法/奇跡論は如何にしてバックラッシュを誘導・制御するかを重視して発展してきた。
VERITAS
生体エネルギー放射視覚化戦術認識システム (Vital Energy Radiation Imaging Tactical Awareness System)、通称ヴェリタス。GOC謹製の特殊技術で、彼らの視覚補助ヘッドセットに組み込まれて運用されている。
生物が発するEVE流を検出・視覚化することができる装置であり、生命体の位置、状態、超常活動の有無とその系統分類などの把握に有用。
レイライン (Ley-line)
多くのEVEが流れる、地理的な経路。古来より様々なかたちでその存在は把握されており、その一例として、風水では龍脈とも呼ばれる。
現実性 (Reality)
現実の強度。通常は1.0 Hm。現実改変者は周囲より若干高い現実性を有し、また周囲の現実性を若干下げる。これにより、彼らは周辺現実の操作を可能としている。ヒュームによって定量化される。空間現実性の測定にはカント計数機が、維持にはスクラントン現実錨が使用される。
国際軌道エレベーター アース・ワン (Global Space Elevator "EARTH ONE")
複数の国・企業が共同で設立中の軌道エレベーター・システム。実はとある要因により、「軌道エレベーターが完成する理想の未来」を実現するべく、1998世界の宇宙は改変され続けている。この現象により、1998世界の時間軸は極めて流動的な性質を帯びている。一部の人物・組織はこれを知っており、利用、調査、あるいは修正しようと、時間の狭間で活動している。
次元路 (Dimensional Way)
同一次元内に散在するアクセスポイントを経由して高速移動を可能とする技術。2010年代に開発され、先に開発された跳躍路と同様、(既存の) 災害に強い高速移動手段でありながら、建設コストが優れていたことから、これにとって代わったが、2017年に発生した東京現実崩壊性災害の際に通行者に大量の死者を出したことで、日本では公共事業から排斥された。
神的エネルギー交換炉 (Deific Energy Exchange Systems)
神格を利用して、信仰などの要素を別のエネルギーや物質へ変換する技術。ヴェール崩壊当初は法規制されていたが、後にこの技術を扱う企業も登場しだした。
スーツ (Suits)
世界オカルト連合が開発・運用している、特殊な衣服の総称。一般工作員が使用する「ブラックスーツ」、戦闘時に使用されるパワードスーツ「ホワイトスーツ」、大型脅威存在相手に使用される人型巨大兵器「オレンジスーツ」などが存在する。
ソーマトキル合金 (Thaumatokill Alloy)
「奇跡殺し」ソーマトキルの合金。テレキル合金に奇跡論的図形を施すことによって、テレキル合金の持つ精神影響阻害効果をコントロールし、付近での奇跡術者によるEVEエネルギーを用いたアスペクト放射の構成 (Weave) を阻害ないし遅延させる。主に魔導テロ対策に用いられた。
跳躍路 (Leap Way)
出発地と目的地に作成したポータルから小型宇宙 (≒異次元空間) を中継することで、高速移動を実現する技術。2006年に開業した日本のリニア中央新幹線が、世界初の鉄道営業での活用例。後発の次元路より建設が高コストの為に一時は新規着工が滞ったが、2017年の東京現実崩壊性広域災害に際して多くの犠牲を出した次元路に対し、跳躍路を死亡原因とする事例がなかったことから再注目された。
認知現実論 (Cognition-to-reality Theory)
人類の共有する世界観、つまりは世間の大多数が現実と考える合意的現実によって、認知学的に世界のあり方が規定されているという学説。この理論に照らして、ヴェール崩壊で異常が公知となったことが、異常発生件数の増加した原因ではないかと疑われている。
パラテクノロジー (Para-technology)
現在の (ヴェールの外側での) 最先端技術を超えた非異常性技術 (所謂オーバーテクノロジー) と、未だ十分に理解されていない超常的な原理を利用した、あるいはそこから派生した技術の総称。当カノンではヴェールが破れているため、1998年が遠ざかるほど、後者の意味合いが強まると考えられる。パラテック、パラテクなどと略されることが多い。
パラドラッグ (Para-drag)
超常的手段で製造された違法薬物/電子ドラッグの総称。超常生物や超常植物から生成されたものや悪魔実体から生成されたもの、中には脳神経に直接的な影響を及ぼす電子情報など多岐に渡る。オルタナティブ・コロンビアの重要な外貨獲得源となっているほか、同領域内における超常的文化の主軸となっている。ジョン・ドゥ・カルテルに由来するものは、魔薬マギファナの通称で呼ばれることもある。
ピスティファージ実体 (Pistiphage Entity)
「信仰を喰らうもの」。知性体の信仰により自己の維持・成長を行う実体で、俗に神と呼ばれる存在の1つ。その生態上、別の信仰に寄生する場合もある。
不詳実体 (Unknown Entity)
略してUEとも。未特定・未分類の実体に対して暫定的に使用される。実体が収容または詳細に研究された場合は別の呼称が設定されるため、このコードが設定された実体は詳細不明のまま消失あるいは殲滅されていることが多い。財団と世界オカルト連合の統一コード。
別次元・空間探索産業 (Other Dimensions and Spaces Exploration Industries)
通称ODSE産業。これまで基底世界では確認されていなかった物質、「非基底資源」 (Nonbaseline Resource, NBR) を求めて行われる、別次元・空間の探査活動。2015年のスペイン神格存在出現事件で生じた次元穴での事例が有名で、日本でも別次元交錯や空間拡張が生じている東京で同種の産業が盛り上がりを見せている。
悪魔 (Daemon) / 悪魔実体 (Daemonic Entity)
口語的に地獄として知られる異世界に由来する生物群。特に、人型のものがこう呼ばれる。基底世界では通常長居できずに消失するが、契約を結ぶことによってその存在を保つことができる。この際、悪魔は契約に伴う対価として、奇跡術を含む超常的な活動を行う場合がある。
現在、基底世界にいる悪魔の大部分はSCP-2911-JP由来の個体であり、専用の法律を契約として居住しているものである。ただし、一部のドラッグ等により、契約を脱しながらも現世に留まる、いわゆる違法悪魔が出現することがある。
異常性保持者 (Anomalous Career)
異常性を持つ人物の広義の区分。英訳の頭文字を取ってACとも呼ばれる。ほぼ同義の既存用語として「超常人間/パラヒューマン」が存在する。1998年に存在が一般社会に知られ、2001年に締結されたハドソン川協定を期に権利が認められていった。時代が下るにつれて、やや差別的な用語であるとして、次第に別の呼称に置き換える向きも生じつつある。
エスパノル・ヌートリア (Español Nutría)
スペイン神格存在出現事件の際に、カワウソ型のAFC種族に変異したスペイン国民 (イベリア半島本土在住) の総称。知能、寿命、声帯はヒト時代のものを概ね維持しており、手 (前足) も通常種のカワウソのものよりも広い可動域を持つ。変異範囲外に居住していた等の理由で形質変異を経験しておらず、従来のヒトを保っているものはエスパノル・ヒュマノと呼ばれている。
現実改変者 (Reality-bender)
自らの意識に基づき、直接的に現実を操作することができる人物。特定の現象のみを引き起こすような、能力に制約がある場合も多い。GOCでの通称はタイプ・グリーン。
財団指定難病 (Designated Intractable Disease of Foundation)
通称DIDF。異常疾患による社会への影響を懸念し、2020年後半に策定された枠組み。非異常なもの含む疾患のうち、
- 現代科学において解明不可能な原理に基づいている
- 治療の可能性を期待できるもの
- 他者に少なからず影響を及ぼす異常性を有していること (感染性を持つことも含む)
- 財団の収容が必要であると考えられるもの
の4要項を満たすものと定義され、財団医療部門特別委員会の過半数の賛成により財団指定難病として指定される。
神格/神 (Divine/Deity)
聖性を有する存在全般を指す、口語的な総称。多くの場合、人々の信仰を基盤に活動しており、高い奇跡論的エネルギーを有する。通常通り人々に崇拝される神から、工業的に利用される神、あるいは甚大な災害を齎す敵対的な巨大神格まで、様々な個体が確認されている。
一方で、アブラハム宗教に出てくるような強大な創造神 (God) が存在するかどうかは、未だ議論の対象となっている。
第n世代 (Nth Generations)
1998年の神格存在出現事件以降に生まれた子供たちを「第一世代」とする年代区分。「第一世代」の子世代である「第二世代」以降、体内の平均ヒューム値が従来の約1.0Hm以上を上回るようになり、限定的な現実改変能力を獲得した。
伝承部族 (Mythical Tribes)
異常性保持者の分類の一つで、非超常の文化において架空の存在として隠匿されていた種族の総称。各地の神話や伝承に語られるような半人半妖の存在が多数を占める。ギリシャや、二大陸正常化事件以前のエジプトは親伝承部族的な政策を取っていた。
動物特徴保持者 (Animal Feature Career)
通称AFC。身体に動物の特徴を持つ人物 (特定獣人種族、知性化動物、獣変者、人獣融合者、奇蹄病患者) の総称。“アニマル”と “アノマリー”を掛け合わせて、アニマリーと呼ばれることもあるが、これはやや蔑称的・口語的なニュアンスを含む。異常性保持者の中で最も権利が与えられるのが遅かったグループであり、差別や偏見が根深く残る。
アノマリー・ナショナリズム (Anomaly Nationalism)
正常性維持機関による国家主権の侵害や、巨大な外資系パラテクノロジー企業による国内産業への進出・政治的圧力を排することを目的とするナショナリズムの一類。ヴェール崩壊以前に正常性維持機関が行っていた国家主権の侵害行為(自国民の殺害・監禁、有形無形資産の接収・占有など統治権の侵害や、超常行政への介入による対外主権の侵害など多岐にわたる)が明らかになったことにより、反正常性維持機関運動として始まった運動。これにより、アノマリー研究の国家プロジェクト化や民族資本によるアノマリー関連企業の育成政策が推進された。
異常性保持者保護法 (Anomalous Carrier Protection Act)
世界的な人型異常実体の権利保証活動の最中、日本で成立した法律。当初は後天性パラヒューマンの権利擁護を掲げていたものであった。2025年、時代の変化や異種族への受容等の理由により改正、先天性パラヒューマンや伝承部族にも対象が拡大された。
ヴェール (The Veil)
世界各国の政府と正常性保護機関による、異常、超常、オカルトを人類の大多数から隠す、もしくは偽装するという方針に与えられた名称。この世界においては、1998年7月13日を境に存在していない。
The "F"
財団がその内外に刊行している雑誌。世界の流れを俯瞰的にまとめ、どんな出来事が起きたのか読者に関心を持ってもらったり、それらのファクトチェックを行ったりしているほか、パラテックの啓発などを目的としている。
スペイン2016年憲法 (Spanish Constitution of 2016)
スペイン神格存在出現事件終結後にスペインで制定された新憲法。条文にはスペイン国籍を保有するパラヒューマンや異種族の権利保証が明記されており、当時の世界においては先進的なものであった。制定理由としてはスペイン神格存在出現事件の影響により動物特徴保持者 (AFC) が多数派となったためとされる。
正常性維持機関 (Normalcy Preservation Organization)
ヴェール崩壊以前、正常な人類社会を守護するために活動していた機関の総称。代表例は財団と連合。ただし、ヴェールが廃止された現在では、異常専門の社会の守護者としての役割が強く、慣習的な呼名に近くなっている。
地下東京コミュニティ (Undertokyo Communities)
現実崩壊中の東京地下に封じられた生存者たちが、地下鉄網などを基盤に構築したコミュニティ。各駅を拠点に寄り集まった人々が、時に協力し合い、時に敵対しつつ暮らしている。東京事変の終結後には地上部と接続し、“開港”。以後はある種の自治区として存続している。詳細については地下東京奇譚シリーズを参照。
中央新都心 (Central Capital City of Japan)
東京事変で首都を失った後、旧群馬県前橋市をベースに作られた中枢都市。東京の政治機能・金融機能を引き継いでいるだけでなく、多様なパラテクノロジーを取り入れた先進性をも兼ね備える。
Qingtan
個人が自由に記事を書くことができる、インターネット上のブログサービス。政治、経済、読書感想といった多様な記事が投稿されており、新たな言論空間の一つとして定着している。サービス名は古代中国の「清談」に由来する。
夏鳥思想/ナツドリズム (Natsudori thoughts / Natsudorism)
日本の市井で生じた実践を伴う懐古思想、ならびにそこから生じた反異常主義の思想。ヴェール崩壊に伴い夏鳥思想は正常だった時代への郷愁を包括していったが、ショパン事変やマンハッタンテロで反異常主義が加熱していた欧米圏との接触で変質、市民による政治的な反異常主義運動へ移り変わった。この新たな夏鳥思想は、「ナツドリズム」として旧来のそれと区別されることもある。
ハドソン川協定 (Hudson River Agreement)
国際連合本部での超常問題特別総会開催中に発生したマンハッタン次元崩落テロ事件終息に際し、財団と世界オカルト連合間で締結された協定。当該事件の事後処理に関連する全125条に及び、特に正常性・現実性を毀損しない限り人型異常/脅威実体の人権を擁護することを表明した第125条は、パラヒューマン人権問題の一里塚である。
ピチカート手順 (Procedure Pizzicato)
世界終焉を引き起こし兼ねない対象を粛正するための、世界オカルト連合による最終緊急事態対応手順。「ピチカート」とは、世界オカルト連合工作員に課せられる、脅威存在に対する対処レベルで最大のもの (全6段階)。現地部隊に対し全面的な武装制限の解除がなされ、場合によってNBC兵器を始めとした強力な兵器が投入される。2001年のマンハッタン次元崩落テロ事件で発動されかけた際は、それに伴う政治的破局が危惧された。
メキシコ湾体制 (The Gulf System)
SCP財団・世界オカルト連合・プロメテウス研究所・アメリカ合衆国の4大権力から構築される新世界秩序の俗称。米国南部超常組織協力条約 (SUSEOCT) を基盤に構築されたためこの名で呼ばれる。財団視点では財団・連合の特殊資産が集中する北米全域における衝突の防止、ヴェール・プロトコルの段階的廃止におけるモデルケースとして運用されていたとされる。しかし9.11を切欠として団体間に亀裂が生じ、体制は次第に弱まっていった。
ポーランド神格存在出現事件 (1998 Poland Divine Disaster)
1998年7月12日午後から13日早朝に渡り、ポーランド南部で発生した神格降臨事象。この事件を切欠として、この世界のヴェールは捲くられた。民間では"0712事件"、"7.12"などと呼ばれるほか、財団での内部コードとして"イベント・ペルセポネ"の呼称が用いられる。事件の詳細についてはシーズン1998: ワルツの夜を参照。
マンハッタン次元崩落テロ事件 (September 11th Attacks)
2001年9月11日発生、15日終結。米国マンハッタンにおいてカオス・インサージェンシーが引き起こした大規模超常テロ事件であり、一時的に同市を悪魔実体らの住まう異次元空間へと引きずり込んだ。事件の名称については、民間ではマンハッタン・クライシス、9.11テロなどと呼ばれるほか、財団では内部コードとして"マンハッタン・カオス"の呼称が用いられる。事件の詳細についてはシーズン2001: 合衆国の一番長い日を参照。
オルタナティブ・コロンビア事件 (2006 Columbia Disassociation)
2006年10月2日に発生した事件。コロンビア政府による他の国家や正常性維持機関との訣別宣言、およびボゴタ上空に出現した非実存領域への全生物種の移行事象の総称。これによりコロンビアは事実上の鎖国体制へと移行した。事件の詳細についてはシーズン2006: 大麻畑でつかまえてを参照。
奇蹄病 (Kitei Disease)
日本生類創研の開発した獣変調ウィルス、TX-85957による感染症。感染者の身体には動物的部位が発生し、場合によっては死に至る。2009年に神奈川県の日本生類創研施設から漏洩し、日本国内で俗に「奇蹄病事件」と呼ばれる大規模感染エピデミックを引き起こした。この際多数の死者が出ただけでなく、大勢の患者が今も後遺症や差別に苦しんでいる。事件の詳細についてはシーズン2009: 黄昏に沈む爪牙を参照。
スペイン神格存在出現事件 (2015 Spain Divine Disaster)
2015年8月13日から同年11月29日に渡り、スペイン北東部で発生した神格降臨事象とスペインのイベリア半島領土における奇跡論的災害の総称。この事件で4000万人以上が形質変異の影響を受けた。民間では"スペイン国民カワウソ化事件"、"トンガラシ事件"などと呼ばれるほか、財団では内部コードとして"イベント・オッタル"の呼称が用いられる。事件の詳細についてはシーズン2015: プルス・ウルトラを参照。
東京現実崩壊性広域災害 (2017 Tokyo Disaster)
2017年12月17日以降続いている、東京を中心とした南関東での超常災害。現実崩壊による異常現象で都市圏が破壊され、万単位の犠牲者が発生した。この災害により東京が壊滅したため、日本国政府は首都機能を移転させることを決定した。民間では”東京事変/東京事変災害”1の呼称でも知られる。詳細についてはシーズン2017: 東京事変を参照。
二大陸正常回帰事件 (Normalization of Africa and South America)
2019年9月13日に発生した限定的なCK-クラス:再構築シナリオ事象。結果として、アフリカ大陸および南アメリカ大陸がポーランド神格存在出現事件を経験していない形となった。両大陸の住民は再び異常に対して無知となる事を強いられたほか、夏鳥思想連盟を含む反アノマリー主義者たちは当該地域を聖地として認定し、人口の流入を加速させた。
長野市AFC殺傷事件 (Nagano AFC Massacre)
2037年8月1日に長野県長野市で発生した殺傷事件。この事件により26人が死亡、38人が負傷した。AFCを標的にした事件であり、実際に被害者にAFCが多かったことからこの名称が付けられた。AFC受容が進んでいたことや、従来のヒトも巻き添えで犠牲になっていたことから、容疑者への世間の反応は冷ややかなものであった。事件の詳細についてはシーズン2037: 黎明に轟く咆哮を参照。
サイト-81Q5現実崩壊事件 (Site-81Q5 Reality Collapse)
2041年12月24日に財団日本支部のサイト-81Q5で発生した事件。元々は財団指定難病 (DIDF) の治療目的で設立、運営されていた医療施設が、事件の影響により具体的な意味性とユークリッド空間的ベクトルが喪失している危険領域となった。事件の詳細についてはシーズン2041: 病院の窓から覗いた朝を参照。
年表
以下は当カノンにおいて特に重要な出来事と、その発生年の一覧だ。左の「情勢」タブと合わせて参考にしてくれ。
- 1998年
- 2001年
- 2006年
- 2009年
- 2015年
- スペイン国民カワウソ化事件発生。スペイン王国にて要注意人物「トンガラシ翁」が神性を獲得。スペイン国民の大多数がカワウソに変異し、翁の捕食対象となる。[言及]
- 2017年
- 12月17日 ― 東京現実崩壊性広域災害 (東京事変) 発生。東京全域で異常現象が急発生し、以後26年間東京を中心とする南関東を破壊し続ける。[言及]
- 2019年
- 9月13日 ― 二大陸正常化事件発生。大規模なCKクラス: 再構築シナリオが発生し、アフリカおよび南米がイベント・ペルセポネの影響を受けていない形にリセットされる。これに伴い夏鳥思想連盟の活動が活発化。[言及]
- 2020年
- 2025年
- 日本で異常性保持者保護法が改正され、新たに動物特徴保持者が保護の対象となる。[言及]
- 2026年
- 3月13日 ― 日本が道州制を採用する。新たな首都となった群馬は大きな発展を遂げている。[言及]
- 2041年
- 12月24日 ― サイト-81Q5現実崩壊事件発生。巨大医療施設サイト-81Q5にて局所的な現実崩壊が発生し、大量の患者・職員を巻き込んで異常空間化する。[言及]
- 2043年
- 東京現実崩壊性広域災害が終結。調査隊が派遣されだす。[言及]
- 2048年
- 淡路島にて巨大神格存在が出現するも、現地に駐屯していた自衛隊により爆破処理される。[言及]
To Be Continued…
時間軸と他世界
深淵へようこそ。ちょっと難解だったり複雑だったりする裏話をしていこう。ほとんどはカノンの中核要素では無いから、気になれば覗いてみる程度でも構わない。
さて、本題だ。著者ごとに解釈が違うことにより、カノンはしばしば設定の内部分裂を起こす。これについては特段珍しいことではない。1998年カノンでも同様の設定分裂が起きているが、我々はこの分裂も世界設定の一つとして取り込んでいる。以下はこれに関する話になる。
http://drkasugai.wikidot.com/1998-deep
その他のリソース
より詳細な設定集などの、あなたの執筆/読解に役立つかもしれないリソース。
拡張版設定資料集
7happy7氏が設立した外部の非公式サンドボックスサイト「SCP-JP環境再現サイト」上で展開されている、詳細版の設定集。完全な網羅はできておらず、貢献者を中心に日々追記が行なわれている。
『1998年』設定資料集ハブ
各設定集をまとめたハブページ。
📖 用語集
1998年カノンに登場する、様々な用語のリスト。
💥 超常事件集
1998年カノンに登場する、様々な事件のリスト。
👥 登場人物事典
1998年カノンに登場する、様々な人物のリスト。
🌍 登場ロケーション
1998年カノンに登場する、様々な舞台のリスト。
📽️ 詳細版タイムライン
1998年カノンに登場する、様々な出来事のリスト。
📰 新聞見出しまとめ
1998年カノンに登場する新聞記事やブログサイトなどのヘッドラインをまとめたページ。
🛤️ タイムライン分岐
1998年カノンに登場することがある、各派生タイムラインをまとめたページ。
その他のリソース
いずれも外部サイトのもの。
🏛️ 「1998年」カノン史をつくろうのコーナー
1998年カノンがどう発展していったかを綴る、メタ的な年表。
🏆 1998/イベントアーカイブ
1998年カノンに関係して行われた、コンテストなどのイベント集。
💡 1998年、胡乱
1998年カノンの今後の構想、ないしは妄想に関する公開メモ。
サイト未導入のエッセイ
- それで、結局98って何読めばいいんですか? (by santou)
サイト未導入のカスタムテーマ/コンポーネント
- 東京事変テーマ (by sendoh-oroka)
- 地下東京テーマ (by RTa_technology & SOYA-001)
- Qingtanとその使い方。 (by Mishary)