C Dives Hideout 5

SCP-C389

rotisserychicken.png
SCP-C389を再現したデジタル画像。

アイテム番号: SCP-C389

オブジェクトクラス: Neutralized

特別収容プロトコル: 事案C389-0の間に回収された全てのロティサリーチキンは、異常性を帯びていないと判断され、サイト-87職員の食料として再利用されています。

事案C389-0に関与した要注意人物らを発見するための取り組みが進行中です。

説明: SCP-C389は2.6m×2.9mの布に描かれた絵画であり、前屈姿勢を取るヒト型の輪郭の下に“ろてぃさりぃちきん”rotissery chicken[原文ママ]というフレーズが記されていました。SCP-C389は財団がその存在を把握する前に破壊されました。SCP-C389の異常性質は、目撃者の証言と法医学的検査から推測されたものです。

広げられた時、SCP-C389は5m以内のロティサリーチキンに適用されたあらゆる偽装工作(衣装や魅力など)を排除できました。ヒト型を取っていたロティサリーチキンは、描かれた輪郭と似通った姿勢になり、その後は身体が崩壊してチキンだけが残りました。SCP-C389がどのようにロティサリーチキンと人間を区別できたかは判明していません — SCP-C389の影響を受けたチキンは何年もの間、疑惑を喚起することなく人間に成りすましていました。

SCP-C389についての全情報は事案C389-0の後に回収されました。事案の詳細はレベル5クリアランス職員に制限されます。

補遺: 職員間の懸念に関する異常影響防止委員会1からの通達。

通常なら、AIPCは単純にSCP-C389の文書に合格点を与え、特に追加説明を要しないものとして扱うでしょう。しかし今回の事例については、以下の覚え書きを主要データベースエントリに添付することを求めます。

SCP-C389のファイルへのアクセス権限を有する善意の職員数名が、SCP-C389は普通の人間をロティサリーチキンに変化させ、他の人々に“犠牲者は人間に化けたロティサリーチキンだった”と思い込ませたに違いないと信じて、ファイルを我々に転送してきました。初めての読者が抱いても無理はない疑惑であり、そうした懸念をAIPCに報告するのは良い習慣です。しかしながら、この文書は額面通りに受け取ることができます

常のように、これらの懸念が最初に提起された時、AIPCはそれを真剣に受け止めて独自調査を実施しました。我々の管轄下に入る類の異常存在アノマリーは — つまり、財団職員の精神に影響を及ぼして、危険を直接報告するのを妨げるようなものは — まず、誤解を招くような情報や危険な情報がデータベースエントリに入り込むのを阻止するための、様々なセーフガードに直面します。

自らのデータベースエントリに影響できる認識災害の共通点は、徹底していることです。こう考えてください。あなたがそれについて何かを知ると、あなたの現実への認識を歪め、その状況の全てがごく普通だと思い込ませる情報災害があるとします。これは一見すると無敵のようですが、実はそうでもありません — 影響者の奇妙な振舞いに気付いた友人、家族、同僚から我々に多数の連絡が寄せられます。もし職務に影響が及べば、それはリソース運用や研究成果の不規則性として現れ、人事部門や会計部門からあっさり検出されます。この手のアノマリーは目撃者や証拠を後に残すので、異常なデータベースエントリにはなり得ません。

では、影響された職員が、故意か否かはさておき、アノマリーの挙動を積極的に隠蔽しているとします。彼らは“素人”の周りではごく普通に行動しながら、経費報告書を偽造し、それに気付いた者を排除または洗脳します。もしアノマリーが細心の注意を払ってこういう行動を取れば、我々の標準的なセーフガードを迂回し、自分についての無効なデータベースエントリを手に入れられるかもしれません。

以上を説明したのは、我々に懸念を報告した職員がいる事実こそ、SCP-C389が人間の精神に影響していないのを示す良い兆候だからです。自らの文書記録を改竄するほど徹底したアノマリーは、そもそも影響されていない人物にファイルを見せず、何かがおかしいと悟らせず、報告させません。文書が公開される前に我々の耳に入っていたはずです。

とは言え、AIPCに自己満足は禁物なので、引き続き文書の実態を検証しました。SCP-C389が疑われる主な理由の1つは、内容が簡潔で、詳細な情報が欠けているからです。これは職員からしばしば“筆者は自分が妙な事を書いているのに気付いていない”と解釈されがちです。今回の場合、補足資料は存在しますが、非常に高いセキュリティクリアランスが求められています。AIPCはこの資料を開示できませんが、SCP-C389ファイルに記載された奇妙な発想や仮定は全て正当であることを確証できます。

SCP-C389が職員の懸念を呼ぶもう1つの理由は、オッカムの剃刀です — 他の条件が全て等しいなら、より仮定の少ない説明が正しいとする考え方です。本質的には、人間がロティサリーチキンに変化する説の方が、ロティサリーチキンが長期間人間に成りすましていた説よりもシンプルに思えます。

同様に、“額面通り”の解釈は、わざわざSCP-C389を作る者が出るほど多くのロティサリーチキンが人間に化けているのを示唆します。職員は、SCP-C389の制作者がお咎めを受けることなく人間をロティサリーチキンに変身させたかっただけだと信じる方がまだしも簡単だと気付きます。

この議論に対する最初の反論は、オッカムの剃刀があくまでも経験則に過ぎず、大っぴらに自然法則を無視できるアノマリーはそれに堂々と逆らうという点です。第二に、“人間がチキンになる”という解釈には、単純にそう想定する以上の仮定が含まれます。

事物は見た目通りであり、具体的に何かが人間のように見えたらそれは人間と仮定できる、というのが一般的な総意です。しかし、この総意には財団の承認が必要です。社会は人々がお互いをロティサリーチキンではないと信じあって初めて機能します、それが良い仮定であろうとも無かろうとも。その反証が存在するならば、財団は隠蔽します。

財団職員はよく、自分たちはアノマリーの存在を知っているので、現実世界の本質にも精通していると信じ込みます。これは必ずしも当て嵌まりません — 財団は社会全体の総意を形作るのと同じように、職員間の総意もまた形成します。世の中はあなたの想像以上に奇妙な場所かもしれませんし、そうではないかもしれません。物事がどのように“あるべき”かという直感は、何かがおかしいのを示す兆候としては信頼できません。

異常影響防止委員会はSCP-C389を懸念度最小と評価し、新たな進展が無い限りこの評価を見直しません。




出典: SCP-C389 - Rotissery Chicken
著者: Communism will winCommunism will win
作成日: 2020/09/23

画像ソース: Flickr
ライセンス: CC BY-SA 2.0

タイトル: Falling Down Drunk II
著作権者: Tony
公開年: 2007
補足: Communism will winCommunism will win氏によって加工(トレース)されています。

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