SCP-3000-JP - 幻実世界
評価: 0+x
blank.png

アイテム番号: SCP-3000-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-3000-JPは収容が不可能かつ、自己収容状態にあるため、事後処理に焦点を当てた対応を行います。SCP-3000-JPの発生は財団が設置した撮影機器によって監視されます。民間人や一般の撮影機器によってSCP-3000-JPが目撃された場合、記憶処理や記録の削除などの適切な対応をして下さい。

また、潜在的にSCP-3000-JPによって収容違反が発生する可能性のあるオブジェクトには、Euclid以上のオブジェクトクラスが策定され、担当職員にはSCP-3000-JP事象発生時への対応マニュアルを配布します。SCP-3000-JP事象により収容違反が発生したオブジェクトの再収容計画が現在進行しています。

説明: SCP-3000-JPは一定条件下で発生する、クラス-I"イリバーシブル・エントリー"ワームホールと命名された、特定の次元にのみ接続可能なワームホールです。SCP-3000-JPに対象が侵入した場合、正常なジェフスキー重力擾乱機1を使用してもワームホールを維持することはできません。その結果、SCP-3000-JPは発生後1秒以内に目視での観測が不可能になるため、SCP-3000-JPの観測は重力波検出器を用いて行われます。SCP-3000-JPはエレベーター部門虚数現実次元座標に関する研究によって並行世界群MK264B-κに接続されることが判明していますが、その詳細な記録はSCP-3000-JPの特性から特定するには至っていません。

SCP-3000-JPは明確に人類、あるいは地球への脅威となる存在を取り込みます。以下は過去にSCP-3000-JPが出現した条件の一例です。

  • 恒常的、あるいは瞬間的にヒューム値が100を超える、あるいは0.01を下回る実体の発生。
  • レベルⅥ以上の力学的異常の発生。
  • アスペクト放射が100000 Caspersを超える神格実体およびタイプ・ブルーの顕現。
  • レベル6、あるいはそれ以上のピスティファージ実体の顕現。
  • クラスX認識災害実体の出現。
  • その他潜在的にK-クラスシナリオを発生させる可能性がある異常存在。

しかしながら、SCP-3000-JPは物理的に干渉が不可能なオブジェクトや移動が不可能なオブジェクト、形而上の存在を吸収することができません。以下は現在財団が確認しているSCP-3000-JPが発生した事を確認している例です。

日付 視認したSCP-2731-JP 発生した異常現象 被害
内容 内容 内容
内容 内容 内容 内容

補遺: 現在、XACTSを利用し、意図的にヒューム値を上昇させることで、SCP-3000-JPの内部探査を行う計画がO5評議会によって進行しています。詳細はこちらを参照して下さい。


サイト-8129の旧研究棟にシャンク-アナスタサコス恒常時間溝と日本支部には1つしか存在しないシャンク=スクラントン因果擾乱器が運び込まれる。

警備員に囲まれながら白い殺風景な部屋に連れられてくる。私はギシギシと揺れる机の上で遺書を書いた。つらつらと御託を並べていく様子は死刑執行前の遺書を書く時間と同じ様であった。


SCP-3000-JP、それはこの世界の便利なゴミ箱だった。


世界にとって都合の悪い奴を喰らい、別世界へと運び、それ以降奴らが帰ってくることは無い。

今回の探査は私がそのゴミ箱へ行き、その世界がどうなっているかを見てくるという体裁を取っている。

私は数ヶ月前にクリアランス違反を犯した。SCP-3000-JP報告書を読んだのだ。担当してもいないKeterクラスオブジェクトの報告書を。

私に存在したたった1人の友人はSCP-3000-JPに飲み込まれた。理由はわかっている。高ヒューム空間への探査、その過程での3000-JPの出現。付近の現実性毎飲み込まれたというわけだ。当然彼は行方不明、私はSCP-3000-JP内部探査に適任であると言われた。

要するに、良く言えば流刑、悪く言えば死刑だ。

遺書を書き終わると、目の前に人1人が漸く乗れる様な複雑な装置が存在している。

「ジェムスキー重力撹乱機、シャンク-アナスタサコス恒常時間溝のセットが終わりました。これよりシャンク=スクラントン因果攪乱機のスイッチを入れます。ご搭乗を。」

「こんな犯罪者に手厚いケアをありがとう。」

窓から覗く夕焼けの橙はこの世界がまるで私を引き止めているようだった。

二度とここへ帰っては来れないだろうが、最善を尽くすしかない。

「因果攪乱機を稼働させました。これより旧研究棟から撤退します。」



周りの景色が濁った灰色に変わる。



「内部ヒューム値を1000Hmまで上昇させます。複雑な現実改変イベントが発生する可能性があります。機動部隊に周囲の警戒を。」



涙は自ずと出てしまう。こんなゴミ箱に入れられるのが私の人生の最期でいいものか。






ふと前を覗くと赤黒いポータルの出現が確認できる。









装置はガタガタと揺れ、ジェムスキー重力撹乱機の数値はワームホールへの侵入を示している。












私が現実を見ているとは到底思えなかった。

あれから、何時間が経ったのだろうか。

ワームホールの内部は自らの視覚を欺く様に風景が定まらない。私が今どこにいるのかということは、さらに知り得なかった。

時間が進むという感覚はとうに忘れ、ワームホール通過時特有の重力酔いをいつまで感じていたのかは覚えていない。








突然、急ブレーキのような感覚に襲われる。







突如として視界が開け、赤黒い大地が見える。






機体は轟音とともにその大地へと墜落し、私も一瞬意識を失うこととなった。



目を開けると前方から黒い武装に身を包んだ人間が6人ほど現れる。

「これは驚いた。」

命が助かったことを知ったにもかかわらず、不思議と涙は出なかった。


「まさか普通の人間がこの世界にやってくることがあるとはね……噂には聞いたことがあるけど。これは財団の紋章?懐かしいな。君たち、鑑定をよろしく。」

目の前で黒い武装を外しだすと女であることがわかる。

「財団を知っているんです?」

女は何も答えない。

「低品質なジェムスキーに、不安定な現実改変の痕跡、挙句の果てには明らかにあり合わせの素材で作られた装置。あんた、なんか悪いことでもしたのかい?」

私は答えない。

「まあこんなところで罪の告白しても長話になるから危険だね。ほら、ついてきて。」

何が起こっているのかさっぱりだった。ここは事前情報によればここはゴミ箱。ここで生きている連中が碌な奴らじゃないことだけはわかる。それにしても、普通の人間みたいであるから頭が混乱する。

「待機所まで10分は歩くけど、歩けるよね?」

頷く。

「自己紹介がまだだったか。私は旧日本第四地区担当ガンマクラス司令官の柊と言うんだ。よろしく。恐らく君が知っている呼称を使うのであれば、カオス・インサージェンシーの上級職員だね。」

私は驚いた。


人間とは心底くだらないもので、敵だとわかってもなお、この場所が危険だとわかっていると、のこのことついていってしまうものだ。

「そういや、あんた、クリアランスはどれくらいなんだい?」

噂話に飛びつく人の様な顔で私へ質問をする。

「3だ。」

死ぬよりはマシだとはいえ、私の表情は不快感で包まれた。

「ふーん。なんだか愛想がないね。まあ無理もないか。敵に連れられてるわけだからね。」

じゃりじゃりと砂浜を歩くような音がする。横に見えるのは海だろうか。写真を撮る。

<写真を挿入>

声をかけられる。

「写真を撮っている暇はないよ。いつ何が来るかなんてわかったもんじゃないんだからね。私らは観光業者じゃないんだ。」

周囲の人間の武装を見る。

「敵はこの人数じゃあ制圧できないのか?」

「あんたの通ってきたワームホールからは現実子の流動が確認できなかった。だから近接部隊は現実改変に対応する武装は最低限だったんだ。さらに、周囲にはいくつかの部隊が哨戒している。勿論即応も可能だよ。……今回はね。」

前方には崩れ去った建造物が10棟ほど確認できる。荒廃ぶりは予想通りだ。

「私を連れて行くだけなら自動車かなんかで機動部隊にすればよかったんじゃあないか?ぱっと見悪路は無い、そこまでデメリットがあるようには思えないが。」


  あんた。前の次元の時の役職は何?」

「研究員、その前はCクラスの指揮官だ。」

「戦闘は?」

矢継ぎ早に聞かれる。

「できない。あくまで後方指揮だ。」

「そのできないはこの世界では''できる''に入る。」

目の前に突如大きな構造物が現れる。まるで大きな駅舎の様だった。


少しばかりの沈黙が流れる。


「なあ、あんた。財団から離反する勇気はあるかい?」

私は黙った。


<写真>

駅構内を歩いていると、その女は沈黙を破った。

「さっきの質問なんだが、少し急だったね。すまない。」

「気にしてない。」

噓だ。

「代わりといっては何だがこの駅舎の説明をしようか。この駅舎は建材に反ミームを仕込んだ特殊な建造物だ。駅舎の人物に許可を出せば反ミームの強度を緩和することが可能なんだ。公然と駅舎を作るにはうってつけというわけだね。」

「電車が来るのか?」

女は腕時計を確認する。

「ああ、あと3分で。」

駅舎は思ったよりも綺麗で、夢の中にいるようであった。すぐ横にあった鉄製のベンチへと私は腰掛ける。そして私は質問をする。

「いくつか質問がある。」

女は振り向いた。

「違反行為にならないのであればなんでも答えてあげよう。」

快諾されるとは思っていなかったが、私は質問を始める。

「一つ目は、なんでワームホールの発生を検知できたのか、だ。予想外の場所に来る可能性はなかったのか?」

ホームであると思われる場所につくが、線路は存在していない。

「それは私も知る余地がないとしか言いようがないな。デルタコマンドの指令だから絶対というわけだね。」

デルタコマンド、要はO5のような輩なのだろうな。

「では、2つ目。なんであんたみたいな上級職員がわざわざ戦闘に来たんだ?」

相手は即答する。

「趣味、だね。場合によってはお前みたいな面白い奴と話せるからさ。この世界はいつも混沌としている。そうなってくるとどうしても行動範囲と話し相手は限られてくるんだよ。」

「じゃあ最後の質問だ。なぜ電車は使う事ができるのに自動車は使えない?」

相手は数秒黙る。

「乗ればわかるさ。」

轟音とともに電車が現れる。赤い塗装には大量の銃器が搭載されており、装甲列車と呼べる代物であった。

ドアが開くと、人が現れる。どうやら護衛用の戦闘員のようだ。

「柊司令、只今到着しました。……ところでそこの人は一体?」

「普通の人間、今回の鹵獲品だよ。」

戦闘員であろう男は驚愕の色を隠さない。

「……司令、お言葉ですが鹵獲品の事故はこれまでに何件あったと……」

「こいつは明確に敵対の意思を見せていない。それに鹵獲品の事故は9割が財団による襲撃で偶発的に起こったことじゃないか。問題ない。しかも、こいつは面白いから大丈夫だ。」

男は心底呆れた表情で私と女司令を交互に見る。

「さあ乗るぞ。車澤君、鹵獲品を指令室に連れていって。」

車澤と呼ばれた男は渋々同意する。

「……わかりました。」

男は私への敵対の姿勢を明確にし、睨み付ける。

流刑のほうがマシだったかもしれない。そう思った。


司令室、と聞いた時は一際豪華な部屋に連れていかれるのだろうと予想していたのだが、安楽椅子が1脚とパイプ椅子の様なものが1脚あるだけの粗末な部屋であった。

「こんなぼろの椅子ですまないね。戦闘にリソースをつぎ込むとどうしても生活面が疎かになってしまうんだ。」

窓の外の景色は変わる気配がない。

「さあて本題に入ろう。君をここまで連れてきたのは勿論、戦闘員としてスカウトするためだ。まずはこの報告書を見てくれ。」




  意味がわからなかった。

私はそのファイルを平行世界に関する研修で見たことがある。当時の感想はこんなことが起こるわけが無い、というものであった。

「あんたにはここまでしか見せることが出来ないけど、今この世界に何が起こったか少しだけ分かったかい。」

何も分かってはいなかった。

「まぁ、いきなりこんなところに連れられてきて何も分からない、というのも無理は無いさ。実際、ここに来た普通の人間は皆そういう反応をするんだ。」

線路を走っていないのにもかかわらず、規則的な音が下から響く。まるで私の決断を焦らせるようであった。

「直ぐには決めなくてもいい。じっくり考えてくれ。ただ1つだけ言えるのは、もし同意しなければ予防拘禁措置という措置を取らなくてはならないんだ。恐らくだが、世界オカルト連合に身を引き渡すことになるだろうね。」

脅しであった。同意しなければ自由は無いということだ。

「1つだけ……1つだけ聞きたいことがあるが、いいか?」

司令は答える。

「答えられる範囲ならば。」

「仮に元の世界へ帰る方法があるなら、同意すべきか?」

「……わからないね。まず、そう簡単に世界への帰還路が見つかることはは無い。今まで見つかった帰還路は合計2つ。片方は非常に危険でかつ元の世界に帰ることが出来る保証は無い。もう1つは我々の管轄外に存在するから何もわからないというのが真実ね。だから幽閉されていたら性格のいい連中が送り返してくれるかもだし、逆に任務をしている最中に見つかるかもしれない。どっちがいいかを判断するのは難しいね。」

帰りたいというよりはこの危険な状況から脱出したい、というのが事実だ。悩む。

「ああ、そうだ。名前を聞いてなかったね。なんて言うんだい?」

「穂竹だ。」

「穂竹君。それではなるべく  

その時だった。

車内に警報音が響く。敵の襲撃だ。

ノックの音の後、部屋のドアが開く。

「司令。北北西方面から敵襲です。恐らく改良型汎用ロボット兵器とタイプ・グリーンの模造品で構成された部隊かと思われます。恐らく旧日本第4地区の主力だと予想。早急な対応を。」

「了解した。なあ、穂竹君。急がないといけなくなってしまった。君、銃は使えるよね?」

私は頷く。すると、一丁の回転式拳銃を手渡される。

「見た目はただのリボルバーだけど、中の弾は++世代の特注品だ。タイプ・グリーンをぶっ倒すことくらいはできる。もし、君が私たちの仲間になってくれるというのならば、タイプ・グリーンにその銃口を向けてくれ。」

私はその重さを確かめる。人を殺す。数年前までは毎月していたことだ。

「車澤君、第三種戦闘配置だ。敵がロボット野郎なら厄介なことになるよ。」

車澤と呼ばれた男は威勢のいい返事で列車の進行方向へと走り去っていった。そして、司令は窓の外を見てこう呟く。

「この規模の襲撃は久しぶりだ。GOCからの援軍も必要だね。」

司令は明らかに時代遅れのはずの固定電話を取り、受話器に向いぼそぼそと話し始めた。

  私は何をすべきだ?

財団はめちゃくちゃになっている。あのくだらないダミーのファイルだと思っていたことは、実際にこのごみ箱で起きていたことだった。それでもこの世界で私は財団職員として生きていけるか?この世界ではカオス・インサージェンシーがまるで秩序を守っているようだ。私が守るべきは目の前の人命、秩序か?それとも使命なのか?そもそも違反行為を犯した私に守れるものなどあるのか?

ふと前を覗くと、司令は内線通話を用いて各方面へ指令を出しているようである。

私にここまで責任のあることができるか?私利私欲に走るような私が……できるのか?

刹那、轟音が響く。

「車内にタイプ・グリーンの侵入があったみたいだ。」

そう言いながら司令は走り出す、

幾度にも渡る銃声。私は司令室のドアの横に立ち、撃鉄をあげる。

ぐにゃりと曲がるドア。視界に灰色が強くなる。

「司令!」私は叫ぶ。

私がドアを蹴倒そうとすると、創造よりも簡単にドアは破壊され、廊下が露になる。

私は右を向く。1人、異形の視認に成功する。……間違いない。タイプ・グリーンだ。

分岐A GOC編

分岐B 東弊重工編

分岐A-1 CRITICS編

分岐A-2 蛇の手編

分岐B-1 財団編

分岐B-2 犀賀編

END-1 現状維持END

END-2 破壊END

END-3 幻想END

—]

付与予定タグ: ここに付与する予定のタグ

http://scp-jp.wikidot.com/scp-1682

Included page "component:non-savingpage" does not exist (create it now)

特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License