精神同調機器を応用した任意神格の召喚手順確立のための認可計画

前言

以下は1996年に火災事故によって焼失したプロメテウス・ニューロンズ1から回収された文書です。当文書は現在闇社会で流通している精神同調機器、およびそれを用いた神格降臨技術に関連していると判断されています。戦術神学部門クリアランスを有するか、RAISAから適切なクリアランスを発行された人員のみが、当文書およびその関連文書群へのアクセスを許可されます。

プロメテウス・ニューロンズは、ポーランド共和国クラクフ市に設立されたプロメテウス研究所の子企業・子研究機関でした。同社は脳神経科学を中心に、超心理学無意識に関する研究、信仰意識に基づく神聖工学などについて手広く研究開発を行いました。

1996年に同社施設は火災事故に見舞われました。この際、財団側の人員によって同社の残存する資産や資料が差し押さえられました。この事故は当時偶発的なものか、一般市民による無差別放火事件であったと判断されていましたが、現在はGoI-484E (”聖ショパン再誕のための音術師協会”)、通称MARCHが同社資産の奪取を目的に人為的に起こした事件であったという見方が主流です。

MARCHによって回収された資産は1998年のイベント・ペルセポネにおける神格の召喚に利用されたものと見られています。その後、流出した資産、技術、社員により、この召喚方法はカオス・インサージェンシーやスカーレット・ハンマーを含む複数の団体へ広まったものと考えられています。

当文書は上述する神格召喚技術に関連していると判断されています。戦術神学部門クリアランスを有するか、RAISAから適切なクリアランスを発行された人員のみが、当文書およびその関連文書群へのアクセスを許可されます。

問題


信仰連結性実体 (FCE) は、人間あるいは知性体と信仰糸を介した交易関係を結びます。いくつかの中小規模の宗教団体は、この信仰・供儀↔御恩・奇跡の関係性によって成り立ちます。

ここ10年ほどのヴェール政策の弱体化の一因には、こうしたカルトによるFCEの召喚や、その交易関係の暴走があります。そして今なお彼らはヴェールへと損傷を与え続け、SCP財団や世界オカルト連合といった正常性維持機関はその対応に全世界的に苦慮しています。

いつ、どこで誰が何かを召喚し、世界が終わってしまうのかわかりません。しかし、こうしたFCEの研究はあまり進んでおらず、有効的な手立ても経験則的なものが大半を締め、理論面は構築の途上に留まっているというのが実情です。

我々は人為的に制御可能な形でFCEを召喚し、その研究を進めていかなくてはなりません。

解決策


ここで信仰糸について話す必要があります。信仰糸は、宗教・神学・奇蹟の研究に主眼を置いたプロメテウス・ミラクルの研究チームによって、1987年に理論化された現象です。信仰者とFCEの間には、その交易関係を成立させるための亜次元的な”導管”が構築されます。この導管を通って意思エネルギーの行き来が発生するために、”信仰糸”と呼ばれるのです。信仰糸はその名の通り、どこか糸のような反応を示します──信仰者とFCEは特殊な環境にでも置かれない限り、信仰糸を通って繋がり、その関係性を維持します。

近年のサイオニクス研究の過程において、我々はこうした亜次元的な意志エネルギーの通路を調査してきました。たとえば東アジア地域に見られる”紅線” (ホンシャン) や欧州地域に見られる”双子の炎” (ツイン・フレイム) といった現象などです。これらの研究成果として、我々はこの種の”糸”に対して、より合わせる、増幅する、均衡を崩壊させるといった操作が可能なことを見出しました

我々は、"ORDER"式精神同調操作機器を用いて人々の意識とその傍側現実への操作を行うことで、任意のFCEを呼び出す技術の開発を提案します。

元来、宗教集団において複雑な召喚儀式を行う一因としては、術式を通して信仰者の意識を統一し、複合し、均衡を調整する操作の役割があることを我々は突き止めていました。こうした操作を人為的に専用の機器を通して行うことで、より短時間かつ簡便にFCEを召喚することが可能となります。

より小洒落た言い方で例えるならば、我々はマリオネットの糸を一度に引いてやり、人形師を舞台に引きずり降ろすのです。

事業例


まず”問題”の項でも述べたように、この技術は今後の我々の研究計画において利用することができます。任意のFCEを召喚するには、既存の仮想宗教コミュニティ・プールが利用できるでしょう。いずれ特殊に調整された認識災害技術などによって、より安価に信仰糸を繋ぎ維持する技術が開発できたのならば、今以上に簡便に任意のFCEを召喚することも可能となるでしょう。

安全性確保の観点から、呼び出すFCEは中小規模のものに限られるでしょう。しかし深宇宙や小型宇宙の開発が進んでいけば、独自に構築された安全圏と文明を用いて、大型FCEの召喚・研究・処理も可能となり得ます。

この技術の使用は内部に留められ、機密事項として扱われることが想定されています。多くの宗教集団がこの技術を求めることが予測されますが、十分な知識・技術・資源を持たない集団による利用は、致命的な現実・文明の破綻を招く恐れがあります。これはヴェール政策へも損害を与えうるため、社外への販売は実施されません。

またその技術が持つ本質的な危険性から、SCP財団や世界オカルト連合といった正常性維持組織も開発に反対し、最悪の場合では直接的な妨害行動をとることが考えられます。このため、これら機関に対しても計画の情報が与えられることはありません。

資金の使用


既知の問題


上述したように、適切な取り扱い方をとらない団体の手に渡れば、この技術は悲劇的な結果を招きうるものです。徹底的な社外秘が要求されるためにギアスの使用が検討されていますが、セタンタ事件による社員の反対もあってこの部分は今なお係争中です。

また、FCEの召喚に伴って発生する諸影響やバックラッシュを適切に処理できなかった場合、周辺現実への大きな改変が発生する可能性もあります。巨大なクレーターの出現、空間断裂による他現実との永続ポータルの発生、施設の倒壊、認識変貌などの多様な影響が考えられます。

そして現状もっとも大きな問題として、侵襲的な精神操作による使用信仰者への精神・神経に対する破壊的影響が挙げられます。これらの影響は軽いものでも継続的な障害を残しかねず、高い確率で自我や身体制御能の喪失を招くと考えられます。再利用不能な信仰者はコストの損失へ繋がるため、この負の影響の軽減に注力していく必要があります。

追記

1996年の火災事故で倒産し、財団フロント企業に買収されたプロメテウス・ニューロンズですが、「プロメテウス・オルタネイティヴ・ニューロン」 (PAN) を称するプロメテウスの子企業が復興されたクラクフ市に新たに設立されました。同社の研究内容は旧ニューロンズと同様であり、研究計画の一部は旧社と同一またはその発展型です。PANが再び類似の研究を企画/進行している可能性について、調査が進行中です。

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