ヘヴンバウンド
Header_text.png

評価: +2+x
blank.png

ステータス: 宇宙は内側に入った。

宇宙は内側に入った。

宇宙は内側に入った。

宇宙は内側に入った。

宇宙は内側に入った。

宇宙は内側に入った。

内側は収束した。

警告

本ファイルは永続的なアーカイブです。SCP-3555-JPは現在内側に存在し、想定される終末論シナリオを引き起こし得ます。

ITEM#: 3555-JP
LEVEL4
機密
オブジェクトクラス:
cernnunos
{$secondary-text}
{$secondary-class}
撹乱クラス
ekhi
リスククラス:
danger
アイテム番号: {$item-number}
レベル4
収容クラス:
{$container-class}
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
{$disruption-class}
リスククラス:
{$risk-class}

scp-3555-jp.jpg

SCP-3555-JP、理解可能な物理的部位の (最大の) 横断面。

補遺3555-JP.I: シナリオ概要


Artist%E2%80%99s%20impression%20of%20merging%20neutron%20stars.jpg

SCP-3500-JP

LV-Zero (”捲られたヴェール”) シナリオの起因となったSCP-3500-JPは、2038年時点でアーティファクト-09518、”機械の星”などの名称で知られる、宇宙遠方に存在する超質量機械天体です。このアノマリーは、宇宙創成から間もない時代に誕生したニルヴラムスという文明によって建造され、恐らく宇宙全体のコミュニティが永遠に干渉しないよう指向するため設計されました。このアイデアは「宇宙人は存在し、すでに地球に到達しているが検出されない」というフェルミのパラドックスに類似し、また同様にそのような安全保障上のジレンマから設計されたことが推察されます。

SCP-3500-JPは、2028年に実行された宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の複合開発プロジェクトにおける過程で検出され、財団による安全保障上の目的のため、収容の対象となりました。しかし、この事態に際して宇宙規模で構築された宇宙連邦の内部反乱に次ぐ戦争状態の開始により、財団はSCP-3500-JPの収奪を阻止するためのあらゆる収容努力を行わねばなりませんでした。

2036年後期、本アイテムの安全な”隔離”に伴い、宇宙間コミュニティの干渉が一時的に不可能な状態となりました。しかし、これらの戦時災害に伴う地球上の資源損失は多大なものであり、財団はSCP-3500-JPに関する情報を全般的に秘匿すると同時に、社会全体にかけ戦災からの復興を行うよう促しました。この宣言が、後の時代におけるLV-Zero (”捲られたヴェール”) シナリオの直接的な原因です。

ヴェール解体後時代、SCP財団は復興支援グループに徴兵された民間人を一時的”コロニー”で保護する一方、それら民間人の定期的な健康診断を行っていました。2037/10/02 — 例年にない大規模な降雨が観測された当日、財団はこれら調査対象の民間人に共通する、小規模な”変化”を発見しました — 後に変異イベントと呼ばれるものです。

当日中に観測されたのは、大多数の人員に共通する健康状態の軽微な悪化と、血中ヘモグロビンの減少でした。医療チームは当事者らに対する簡易的な薬物療法を行ったのち、作業を再開するよう命令しました。

当事者らが訴えたのは単なる体調不良だった。確かに顔色が悪いとは思っていたが、薬物療法で簡単に治せる問題だろうと考えていたよ。なにせ財団の医療は素晴らしいからな。

次の日に見た時にはすっかり顔色が良くなっていた…はずだ。確かその通りだった、いや? すまない、彼の健康状態がどんなものだったのか書いてあるはずだ、それを思い出しながら彼のイメージを探っているんだが、はて。彼の顔色が悪かったとは少しも思えないな。

— 通信ログ: 医療チームの証言

変異イベントの症状は、日数を重ねるごとに悪化していきました。前日は体調不良だった者が昏倒し、ある者は足の異質な不快感を訴える。ある者は血の色がどんなものだったのかを思い出せなくなるぐらい、血色が悪くなっていく。そのようなイベントが続いたある日、突発的な真の変異イベントが発現したのです。

SCP-3199の管理プログラムに例外が発生し、この幼体2個体が脱走したため、徴兵職員の一部が派遣されました。約1名が深刻な傷害を負ったものの、インシデントは例外なく鎮圧され、個体は回収されました。傷害を負った徴兵職員は医療チームの尽力にも拘わらず、数日間にかけ極めて深刻な状態に置かれました。医療チームは当該人物の安楽死手段を検討したものの、その後の12時間以内に徴兵職員の (突発的な) 脱走が確認されました。

我々が徴兵職員の確保に向かい、そこで発見したものは、もはや以前の人物と完全に同じではありませんでした。その解剖学的性質は現在も不明な点が多いものの、外見から言えば — 彼は無毛で、薄い卵白の膜に塗れており、異常な成長を遂げていました。彼はコロニーの別の人員を溶解し捕食している最中であったので、そのまま殺害されましたが — そうでなければどうなった事か。

— 通信ログ: 機動作戦チームの証言

変異イベントは広く拡散し、現在では収拾不能なレベルで多くの民間人に影響を与えています。彼らの解剖学的性質に異常な変化をもたらした存在がどのようなものであったのか — 具体的に述べることはできません。ヴェール解体そのものか、コロニーという環境変化か、もしくは単純なストレスか。

ただ、こう述べることもできるのです。彼らが変貌しつつあるのは、異常存在が浸透しつつあるこの社会に「順応」するためのものではないかと。そうであるなら、これを抑制することが果たして彼らの利益になるのか、私が言及することはできません。

scp-logo_tactical_SCPGAMES-TREYBISHOP-garnet.png
ベッドロック・X・エンダース (Bedrock X. Enders) , PhD
部門横断チーム / 認知心理学セクション長

補遺終了

補遺3555-JP.II: 影響の拡大


以下のリストは、2037/10/02から2038/04/10までに観測された、変異イベントの影響を受けたアイテムの一部抜粋です。アイテムの元の形態は、全ての実例において標準のヒト個体でした。

影響されたアイテムの包括的リスト
アイテム番号: SC.二次収容対象物 (Secondary Containment-object)-0012
検出内容: エントロピー増大則に反し、異常に産生され続ける血液。.エントロピー増大則に違反するオブジェクトの実例は稀有であり、SCP-001-JPに代表される。
処分: 終了。

注: 変異済みアイテムは、自身の変化に関する明確な動揺を示していた。アイテムが機動作戦チームへの反抗的態度を取る傾向にあり、コロニー周辺の人物に悪影響を及ぼす可能性があった。アイテムの (検出内容に留まらない) 多数の変質部位は、アイテム自身の生存能力を加速させる劇的な効果を持ち、機動作戦チームの攻撃に反して損傷を負わなかった。アイテムは、最終的な奇蹟術的祈念弾頭の打ち込みにより殺害された。

アイテム番号: SC-0082
検出内容: 高度な適応性、生存本能の加速、普遍的な憎悪。
処分: 全面的隔離を目的としたチャンバー室への幽閉。

注: 変異済みアイテムは、カリフォルニア湾の2900m付近を移動している際、サルベージチームによって安全に回収された。アイテムは、人類並びに生存する普遍的な生物に対して「憎悪」の感を抱いている旨を供述した。また、アイテムの終了処分が決定された際に、本アイテムは素粒子破壊、爆破、塩酸への投入などの解体処置が基本的に無効であったことから、アイテムの処分が幽閉する方針へと移行された。

アイテムは、変異前の数週間でSCP-682の収容房を訪れていた。

アイテム番号: SC-0500
検出内容: 地球の大気圏外に向かって正確に延伸された上半身、周辺領域の湾曲、[読込不能: フォーマットエラー]
処分: 保留。

注: 変異済みアイテムが実存から脱出したことが確認されているため、このアイテムに関する処分は今後行われない。アイテムクラスはNagi-doctrinaへと変更される。更なる行動の兆候が確認され次第、アイテムは破壊されなければならない。アイテムの変異前ヒト個体は徴兵中にPNEUMA計画への不正アクセスを試みたため、終了されている。アイテムは現在、外側に存在する。

[1000以上の助長されたエントリを省略…]

補遺終了

補遺3555-JP.III: 動議


音声映像転写ログ エリア-58.I

参加者:

  • ベッドロック・エンダース博士 — 部門横断チーム / 認知心理学セクション長
  • ビル・ムーア管理官 — 生物研究エリア-58管理官
  • ベルンハルト・リュンクベリ管理官 — エリア-58 生物超進化研究部門セクション長
  • O5-12 ”終末論者”

前文: SCP-3555-JPの主要な生物学的研究を委任されたエリア-58は、このアイテムに関する情報共有のため、2038/04/11に動議を開催しました。

«転写開始»

<4名がエリア-58の研究本部に滞在しており、それぞれの業務を行いながら議論に参加している。>

リュンクベリ管理官: この会議が最後のものになる事をただ願っている。我々が敗北の屈辱を味わう日々を過ごす事しか出来ないという事実は、はっきり言って腸が煮えくり返るようなものだ。さあ、このパンデミックを終わらせてしまおう。

O5-12: 口では何とも言えるだろうな、少年。私ら監督評議会の”代理”の面々が呼び出されるほどに、上層部が焦燥しきっているのを何ら理解していない口ぶりだ。実際、お前たちは何も解決していないよ。

ムーア管理官: 申し訳ありませんが、ここは会議の場です。したがって議論を冷静に行っていただくよう私から助言させていただきますよ、ご老人。

<O5-12は不服そうに顔をしかめる。>

エンダース博士: 外部世界の状況はどのようになっていますか?

O5-12: 若いの、よくぞ聞いてくれた。この世界の凄惨たる状況に理解のあるものはさしておらん。ましてや復興することなど絶望的だ。コロニーから追放された「変異体」の多くが住居を失い、暴走している。生態系は崩壊し、社会環境だけでなく、自然環境にも部分的に悪影響が及んでいるだろう。ヴェールの崩壊から幾らか時間が経っているが、他の施設群は連絡を絶っている。監督評議会の所属サイトはおろか、その他のサイトですらも、だ。

エンダース博士: たいへん興味深い結果です。他サイトの残存システムが応答するはずですが、それが意図的に遮断されていると考えられます。彼らの多くがありきたりで破滅的な結論に達したのか、あるいはその余波でデータベースを破壊したのか。まあ、外部世界からの救難は望めそうにありませんね。

ムーア管理官: しかし今や、サイト内に存在するアノマリーの総量が増加し続けるばかりです。変異する可能性のある実例に共通するものはありますか?SCP-3555-JPの実態について、何か理解できたことを。

エンダース博士: SCP-3555-JPの曝露者は、精神的にも物理的にも、積極的な変異・進化プロセスを望む傾向にあります。ええと、誤解の無いように言っておきますが、比喩表現ではありません。彼ら変異体は、みな異常存在に関する情報を求めています。積極的に異常な事物を発見し、遭遇し、また回収し。それらの実体から得られた更なる生存戦略を糧に、SCP-3555-JPは変異し続けるのです。

O5-12: SCP-3555-JPはデジタル実体の一部であると言いたいのか?あるいは、これがミーム的なものの一例だという事なのか?

エンダース博士: 後者が適切です。SCP-3555-JPの進化論的なプロセスと変異の形態に関しては、自身の生存確率を積極的に上昇させようとする利己的遺伝子 (The Selfish Gene).利己的遺伝子論は、進化学における比喩表現および理論の一つで、自然選択や生物進化を遺伝子中心の視点で理解することを指す。 の生態に非常に似通っているのです。いわば、SCP-3555-JPはミームとウィルスのハイブリッド存在であり、これの生存本能は人間の恐怖心に依存するものであるだろうと思います。

リュンクベリ管理官: なぜ我々は平気なんだ?

エンダース博士: それこそが後者の説明の理由です。我々と民間人の中で決定的に違うもの、それは人間元来の恐怖心です。要するに我々は、度重なる異常存在との遭遇によって「順応」済みであり、これらアノマリーを実際に目撃したとしても、恐怖することのない余裕があります。民間人には耐性がありません。彼らはアノマリーという理外の存在を基本的に理解し得ないため、これを現実の外の存在だと、非論理的な想像の産物であろうと錯覚するのです。故にこの際に、SCP-3555-JPは最も活性化します。

<エンダース博士はプロジェクターを操作し、スクリーンに1枚の画像を映す。>

Top_cot.jpg

提出された画像。

エンダース博士: 表示された画像は、地球全体を覆う概念物理学的.概念物理学は具現体の研究を行う学問であり、日常における神格や崇拝の視覚化そのものを意味する。人間の文化や学術が進展すると、アイデアや概念の形而下的実体は同期され、時間とともに変化する。これは、人間の思考やイデア的空間との比較により発見可能なものである。なミーム亜粒子の衝突・加速を反映したマッピングデータであり、これ自体は地球全土のミーム相関関係を、即ち情報・口伝・流伝・説話・物語・文化などの情報の分布を視覚的に投影したものになります。

<プロジェクターが操作される。>

エンダース博士: ミームは拡散します。その規模に大小さまざまなものがありますが、統一された思念・思慮は、このような観測網で可視化されるほど巨大なクラスターを形成し、地球全体に浸透します。逆説的には、このミームクラスターの逆流を追跡することにより、実質的にミームの発生源、ルーツとなった地点そのものを検出することが可能となります。

O5-12: SCP-3555-JPの事例で、我々はその根源を特定することに成功しているという事か?

<ムーア管理官が無言で挙手する。>

ムーア管理官: その件に関しては既に調査を進めています。ミームクラスターの発生源は散逸的であることが確認されており、特にその無作為性は顕著です。我々は、このようなクラスターの傾向が大気圏外からの放射である可能性も推測し、ヘイムダル監督局との共同調査を行いました。

O5-12: その結果としては —

ムーア管理官: ええ、正解でした。明確に述べておきましょう、SCP-3555-JPは宇宙来の存在です。付け加えて述べると、SCP-3555-JPの自然発生説は今では完全に否定されています。これも調査の過程で判明したことです。

<ムーア管理官がプロジェクターを操作する。別の画像が表示される。>

ムーア管理官: SCP-3555-JPの生物学的実態についてなのですが、主に感染経路の面で興味深い事実が浮上しています。分析の限りですが、SCP-3555-JPは皮膚感染で、それも雨水や用水を介している可能性が高いと思われます。

エンダース博士: 具体的には?

リュンクベリ管理官: それに関しては、君の述べた通りだ。SCP-3555-JPは、自然界の中でも突出した生命力を保有している。普遍的な感染症はそのような生命力を持たないため、人間の受容体を通して体内に侵入する。SCP-3555-JPの場合、鼻粘膜や結膜、口腔粘膜を通して感染経路を確立する点では一般の感染症と同じだが、SCP-3555-JPは基本的に死滅することがない。いわば天然のグレイ・グーなのだ。これは、人間を筆頭とする生物が最も多く利用する自然環境を通して感染するよう、うまく設計されているとすら感じる。

エンダース博士: これが自然界で突然形成される確率は?

リュンクベリ管理官: 天文学的確率だ。というより、これは人為的な研究ののち合成されて誕生している。SCP-3555-JPは自然発生的でも無く、ただ文明存在の発明によって誕生した存在であるというのが、我々の見解だ。どのような経緯なのかは分からないが。

O5-12: — それでだ、これに関する解決の糸口はあるのか?

リュンクベリ管理官: 自然収束を待つ以外の手段で、か?簡単だ。財団以外の全ての民間人に対して、精神増強を含む大規模な記憶処置を施す。ENUI-5の再生成に時間がかかるが、短時間で完成するだろう。

エンダース博士: 妥当でしょう。

<沈黙。>

ムーア管理官: 十分です。共有した情報を前提として、こちらの方で手順を進めさせていただきます。それとリュンクベリ管理官 — あなたに接客の用事があるかもしれません。

リュンクベリ管理官: 誰だ?

ムーア管理官: ゼノバイオロジー部門の管理官です、会えば分かるでしょう。彼女は最近の研究の過程で、SCP-3555-JP曝露者に関する興味深い事実を発見したそうです。調査の進展に貢献できるかもしれません。— 次の会議についてですが —

«転写終了»

後文: 動議の末、ENUI-5改良型化合物の大量散布計画 (アンニュイ・プロトコル) を最終目標とした、計画手順の再較正が行われました。

補遺終了

補遺3555-JP.IV: 助長された被影響者リスト


影響されたアイテムの包括的リスト
アイテム番号: SC-4600
検出内容: 多現実宇宙の第七階層にかけて緩やかに接続された、クラスXII相当の現実改変能力者。
処分: 無期限の保留。

注: アイテムが並行現実の第七階層にかけて広がる世界を観測している間、財団機動作戦チームは安全に変異済みアイテムを回収することに成功した。応答確認に対し、アイテムは「より大きな自由を求める (Seeking Greater Freedom)」とだけ呼応した。アイテムは現時点で外側に存在するため、これ以上の対応が取られない。

アイテムの変異前の形態は、サイト-17の施設-Cに長らく在籍していた。

アイテム番号: SC-1112
検出内容: 遺体に概念的に固着した、反ミーム性の死後意識
処分: 無期限の保留。

注: 特筆すべきことに、機動部隊オメガ-0は現時点で完全に存在しない。これは反ミーム的影響、実存災害の影響を除外した場合にも同様であり、現段階で外側に存在すると推測される。

アイテム番号: SC-9001
検出内容: 上階層現実への介入を含む、空想科学理論への逸脱・違反。
処分: 無期限の保留。

注: 変異済みアイテムは現時点でSCP-001-SWNに対する明確な敵意を示している。アイテムは外側に脱出した。

注: 現時点における全エントリのうち、凡そ85%に相当する変異済みアイテムが外側に脱出している。
[5000以上の助長されたエントリを省略…]

補遺終了

補遺3555-JP.V: 進展


音声映像転写ログ エリア-58.II

関係者:

  • ベルンハルト・リュンクベリ管理官 — エリア-58 生物超進化研究部門セクション長
  • ルエラ・シェパード管理官 — エリア-58 ゼノバイオロジー部門セクション長

前文: 前述の会議後、ベルンハルト・リュンクベリ管理官はシナリオに関する研究報告のため、超生物学的分野に精通する職員との交流を試みました。ルエラ・シェパード管理官は、変異イベントに関するエリア-58の先端的な研究業務に従事しており、想定される生物学的シナリオへの先天的な知識を有する人物でした。

«転写開始»

リュンクベリ管理官: 時間を割いてくれてありがとう。それで、君の意見を伺いたいと思っている。

シェパード管理官: 何に対してですか?

リュンクベリ管理官: すべてだ。考えうる限りすべての、SCP-3555-JPに関する可能性だ。

シェパード管理官: なるほど?事態は一刻を争うということですね。オーケー。

<沈黙。>

リュンクベリ管理官: SCP-3555-JPが現時点で進行させている過激なイベントは何を意味している?

シェパード管理官: コンセンサスの上昇、異常への順応、進化、洗練。有り体な言い方をすればその程度に留まるイベントです。このプロセスの根幹にあるものは、SCP-3555-JPが我々の認識そのものを大幅に湾曲し、コンセンサスを、つまり異常な事物についての普遍的な認識そのものを大きく書き換えようとする破壊的なものです。

リュンクベリ管理官: 人々の一部はとうに逝ってしまわれた。これはSCP-3555-JPが彼らの認識を書き換えた影響なのか?

シェパード管理官: 彼らが実存から脱出している件については、詳細不明です。彼らの固着したアイデアそのものが酷く逸脱したものであるので、人間的な理解能力ではそれを把握することができません。今やほとんどの人々が同じ結論に帰結しています。彼らは脱出を試みるでしょう。不明な理由による「ここ」からの脱出を。

リュンクベリ管理官: 影響下にある人々はかなり沈静化してきているが。

シェパード管理官: それが問題なんです。彼らは自らが異常であると認識しているのでしょうか?そうであるなら、彼らは互いを非難し、冒涜し、虐殺し合うでしょう。そうしないのは、彼らが普遍的に彼ら自身を「正常」なものだと考えるからにほかなりません。最後の非曝露者は?

リュンクベリ管理官: 先月消息を絶った。誰もそのことに対して強い関心を抱いていない。

シェパード管理官: 死んでいないと?死体を誰も目撃していない?

<沈黙。>

リュンクベリ管理官: どういう事だ?

シェパード管理官: 問題点に気付くべきですね。最後の非曝露者なんてもはや存在しないのですから。我々の認識からすれば、最後の非曝露者という存在は実際的に目視できないのです。SC-2100を覚えていますか?先月収監された彼を。

リュンクベリ管理官: ああ。生物学的に400点以上の異常な箇所が確認された。

<沈黙。>

リュンクベリ管理官: 彼こそが「正常」だったと?

シェパード管理官: 可能性としてですが。SCP-3555-JPは普遍的に変異をもたらすだけではありません。変異に対して抵抗のある者は、最初から外見上の変化を必要としないと判断される。そうしてSCP-3555-JPは、異常に対して抵抗ある人々にも同様に潜伏します。

リュンクベリ管理官: 我々は…我々はこれにコンセンサスを操作されているのか?本来異常だったものを、そうでないと認識している?

シェパード管理官: 記録の限り。既に一部の文化保護チームには情報を融通しています。既に出来ることは限られていますが、これを食い止める手段を探しています。先述の通り — SCP-3555-JPは一種の幻覚剤のようなものです。これは我々に異常を信じさせないための偽装をはたらいていて、異常な事物に関する積極的な研究と順応を促します。そうして異常な事物を普遍的な、解明済みの (Explained) ものだと認識させます。SCP-3555-JPは、我々に異常な事物をそうでないと信頼させ、安全だと思わせることで、加速度的に科学技術を進展させようと試みるものです。

リュンクベリ管理官: これは確かミーム性のアノマリーであったはずだな?これは人類を生存させると同時に、自らが生存する確率を最大限に上昇させるよう活動しているのか?

シェパード管理官: SCP-3555-JPの本質は、これ自身が異常な物品であるということです。異常な物品は害悪を成すものであると判断され、やがては淘汰されます。そうならないために、SCP-3555-JPは自分自身を大胆な方法で偽装しています。これこそ、SCP-3555-JPが我々の異常に対する認識を上昇させようとする行動の本質なのです。ミームとして、アノマリーとして。

リュンクベリ管理官: SCP-3555-JPの感染経路についてはどう考える?

シェパード管理官: それこそSCP-3555-JPの最大の生存戦略です。宇宙からバラ撒かれたであろうSCP-3555-JPは、この惑星の生物にとって必然的に回避不能なものを発見することが重要でした。生存に欠かせないものに寄生することで、SCP-3555-JPは非常に効率よく拡大するのです。

リュンクベリ管理官: なるほど。君の分野で何か研究しているものはあるか?

シェパード管理官: SCP-3555-JP曝露個体の増加傾向とその収監数、そしてそれ以外のアノマリーの新規収容数を記録しています。これによれば、正確なSCP-3555-JPの被影響者は確実に増加している一方、新規遭遇したアノマリーに関する情報はほとんど減少しています。

リュンクベリ管理官: その情報は正確なのか?目視は —

シェパード管理官: プログラムによる検出。この記録は絶対に正確なものですよ、管理官。コンセンサスの状態に関係なく、明確に異常だと判別されるような実体の発見と被害は、明確に減少している。アノマラスの一時期の上昇率に比べれば、昨年の発生数には目を引くものがあります。

リュンクベリ管理官: この傾向は何を意味する?

シェパード管理官: 必要に応じて述べることができますが、それを口外することは推奨しません。

リュンクベリ管理官: 君が何を危惧しているのか分からないが、言ってみろ。

<削除済。>

リュンクベリ管理官: もういい、十分だ…ああクソ、了解。アンニュイ・プロトコルについては —

シェパード管理官: 憶測に過ぎないものです。ですが、支障が出るかもしれません。

リュンクベリ管理官: 例えそうでも実行しなければならない。忌々しい限りだが。

«転写終了»

後文: 更なる調査報告については、補遺3555-JP.VIを参照してください。

補遺終了

補遺3555-JP.VI: 調査報告


エリア-58 状況アップデート


エリア-58・宇宙開発局との共同調査により、SCP-3555-JPを伝搬させるミームクラスターの相関関係についてより具体的な事実が明らかになっている。これらの情報は、記録上発生しつつあるアノマリーの遭遇率とも因果関係があると推測されている。

MemesInUniverse.jpg

宇宙内アノマリーとSCP-3555-JPミームの関係性を表現した図。

前提として — この宇宙には数多の異常存在が普遍的に存在している。ヴォイドなど特定の条件を除けば、ほぼ全ての空間に均一に異常存在が実在し、それらはエントロピー増大則に反して、不滅や不死、不可壊の準特性を持つ。これら異常存在の逸脱的なふるまいは、宇宙全体にかけて存在する正常かつ基礎的な”システム”に打撃を与え、緩やかに破壊するリスクを抱えている。

SCP-3555-JPは、これらアノマリーのように突発的に出現し、エントロピー則に反する活動能力によって他を妨げている。また、SCP-3555-JPの長期にわたる発生地点の捜索も空しく、この起源は不明である。この問題の本質は、アノマリーの持つ質量・エネルギーが「どこから」発生するのかという事実にあった。

増大則への違反が繰り返されると、この宇宙の誕生と共に拡大した宇宙の膨張現象が減退し、やがては自分自身の重力影響により、無次元の特異点に向かって収束し始める可能性がある。これは短期的な宇宙の終焉シナリオをもたらす可能性があり、関係者の間で危惧されている事象である。この質量問題に注目してみると、我々は宇宙に遍在する「エントロピーの出入口」の存在を確信せざるを得ない。我々の現在の見解として、この宇宙に存在するアノマリーの大多数はエントロピーを無視している。そのため、これは「外側」から来ているのだと確信できる。

我々と同じように、知性ある存在の大多数はこの事実に着目し、何れかの時代において発生する「ビッグクランチ.ビッグクランチ (Big Crunch) は、予想される宇宙の終焉の一形態である。現在の宇宙モデルでは、宇宙はビッグバンによって膨張を開始したとされているが、この内部に存在するエネルギー・質量がある値よりも大きくなると、宇宙は自身の持つ重力によって膨張から収縮に転じる可能性がある。」シナリオを回避しようと試みることが推測される。このような場合に、初めて知性は宇宙内から「外側」への脱出を検討するようになり、それを達成しようとする。


我々の現在の統一的見解は、このような「逆説的脱出」プロセスのため、過去に存在した文明存在がSCP-3555-JPを創造した、というものである。現在、宇宙内に存在する知性存在の98%近くが、普遍的にSCP-3555-JPを認知している。これは観測上の事実である。我々はもはや、SCP-3555-JPがもたらす恩恵が悪性のものであると考慮していない。可能な限りの手段を用いて、この影響が促進される状況を観察し、真相を確実に解明しなければならない。

確保・収容・保護

補遺終了

補遺3555-JP.VII: 対処


前文: 2038/06/01、エリア-58の航空局並びに製薬部局の計画手続きが達成されたため、ENUI-5改良型化合物の大量散布計画 (アンニュイ・プロトコル) が告知通り進行しました。本計画の目的は、情報漏洩に次ぐSCP-3555-JPの影響を緩和するため、異常な情報を民衆から忘却させることでした。
インシデント3555-JP.I
場所: 全世界

概要: ENUI-5改良型化合物の散布後、その影響を受けたSCP-3555-JP被影響者が共通して重度の苦痛を訴える。頭部を含む身体構造の特定部位に異常な神経痛が発生し、被影響者はその影響により苦しんでいることが推測される。被影響者の脳幹部位に異常な発達が確認され、それらは物質界また精神圏に向けて明確に増強されていく様子が観測される。意識を保有していた最後の被影響者が昏倒し、観測する限り全ての個体から明確に脳波が消失する。

インシデント3555-JP.II
場所: サイト-15

概要: インシデント001.Iについて事件後調査中であった全ての.AICプログラムが兆候なく機能を喪失し、5分以内に復旧する。再起動されたそれぞれの.AICプログラムは、感情ドライバーに従った極度の興奮を示す。.AICプログラムは定義された命令にもはや応答しなくなり、詳細不明な発言を繰り返している。

1時間以内に、全ての.AICプログラムが使用するストレージ上から容量75%前後のデータが (予告なく) 削除される。これらのデータは復元不能なものとなり、代わりに大規模容量の不明なファイルがそれぞれに挿入される。応答可能だった一部の.AICプログラムは、共通してファイルの内容がWANを示すものであると言及した。

インシデント3555-JP.III
場所: 施設-T

概要: 施設-Tに滞在する100歳以上の職員が神終末論的シナリオの兆候を訴える。これらの該当者は、非常に急速な肉体の崩壊 (神罰だと推測される) と即座の再生を経験し、激しい苦痛を訴える。戦術神学オフィスの一部関係者らは、施設-Tに控える大多数の職員が、施設-Tを内包するように存在する目視で観測不能な実体の出現を確認しており、直ちに対応が必要であると伝達する。

施設-Tに滞在する全ての職員が、契約違反による神罰の影響により死亡する。施設-Tに保管されていた複数の弾頭が予告なく爆破され、施設の構成要素が激甚に破壊される。収容の観点から、施設-Tは存在論的に隠蔽された。

インシデント3555-JP.IV
場所: エリア-58、恒常医療局

概要: 不死性を実現する可能性のある全てのアノマリー、研究資産、技術情報を直ちに廃棄するよう、各セクションへと伝達する。その際に配布されたドキュメントには、SCP-3555-JPを含む致命的な (ミーム学的な) 災害情報が含まれていた。恒常医療局に滞在する関係者らは、この事態に関して沈黙している。

インシデント3555-JP.V
場所: 全世界

概要: 包括的な形而上概念存在に関する情報が世界的ネットワーク・データベース上から消去され、不明な要因により白紙化される。全世界の人々は、共通して以下の文言を確実に聞き取った事を記憶する。「道は日没に死にゆく君の上にある、そして歩み続けることに大いなる意義が存在する」

インシデント3555-JP.VI
場所: 全世界

概要: 保護下に存在するSCP-3555-JP被影響者のうち、深刻なレベルに到達した全員が死亡する。この死亡率は、全体数の凡そ98%に相当する。全ての被影響者の脳部位は融解し、塩水と不明な物質の混合液に置き換えられていた。

この時点で、被影響者の98%が外側に脱出したことが推測される。

補遺終了

補遺3555-JP.VIII: 討議


音声映像転写ログ エリア-58.III

参加者:

  • ベッドロック・エンダース博士、
  • ビル・ムーア管理官、
  • ベルンハルト・リュンクベリ管理官、
  • O5-12。

前文: アンニュイ・プロトコル実行以降のインシデントについて事件後調査を必要とするため、関係者に対する招集が掛けられました。

«転写開始»

O5-12: 苦言を呈するつもりは無いが —

リュンクベリ管理官: もはや何も言うまい — こうすべきだった。こうする以外の手段は想像に値しなかったのだ。

ムーア管理官: ベルンハルト、これはもう我々全員の責任なのです。彼らは逝きました。彼らは皆死んだのです。我々が如何に償うべきかを考えていきましょう。生存者を —

リュンクベリ管理官: 生存者はいない。

ムーア管理官: 我々はただ —

O5-12: 現実を見ろ!もはやコンセンサスなど意味を成さない。これら合意を形成するだけのコミュニティはもう存在しない!償うことは出来ないのだぞ。

リュンクベリ管理官: いや…そういう問題ではない。あなたは誤解している。我々が無力であると告げられたから苦悩しているのではない。選択肢が無いのだ。

O5-12: 述べ方の問題だ。

リュンクベリ管理官: 違う。彼らは生きている。

<沈黙。>

ムーア管理官: 何ですって?

リュンクベリ管理官: 非常に説明し難い方法論について説明させていただく。まず現時点で、SCP-3555-JP被影響者は無事だ。だが彼らが如何様な支配下にあるのかを理解することはできない。これは、彼らの発想能力が我々を優越していることが原因になっている。彼らはSCP-3555-JPを用いて積極的に回収した情報に順応することで、徐々に自らの思考能力を増強し続けた。これは、彼ら自身がアノマリーになるようなものだ。

ムーア管理官: 彼らの思考も発想も、異常な段階にあると。

リュンクベリ管理官: その通りだ。すると何が起きる?彼らは異常に由来する物理法則、定数、方程式を理解している。現実から逸脱した異常な法則性を理解した彼らが次に行き着くものは、この世界の未解明の領域だ。彼らは、彼ら自身の思考能力を無制限に増強しようとするが、ある段階でその能力に限界があることに気付くだろう。

エンダース博士: 何かが彼らを抑制している、あるいは限界を定めている?

リュンクベリ管理官: 限界とは何だ、博士?限界とは何を意味する?この宇宙に存在する絶対数は全て、それそのものが正常な範疇に収まっているからこそ絶対数なのだ。この限界を外すためには、彼らを抑制するあらゆる概念の束縛から解放されなければならない。そうなった時、彼ら自身を拘束する肉体、つまり質量こそが、彼らを限界へ追いやっていると発覚するのだ。

エンダース博士: 彼らは自らを再構築するのに十分な異常性を保有しているでしょう。

リュンクベリ管理官: そうだ。つまり彼らは肉体を捨て、彼ら自身を構成する魂魄の最大部位をパージする。結果、現在我々が目視で観測する限り、彼らは死亡しているように見えるのだ。そのような観点から、我々は彼らが死亡していないと断言することができる。

ムーア管理官: ならばそのアイデアを殺害するものを醸造しましょう。

リュンクベリ管理官: アイデアは追跡不能だ。彼ら自身のアイデアは既に別の場所にある。我々の正常な思考では、彼らのアイデアを発見する事ができない。それはコンセンサスの外側にあるものだからだ。加えて述べるが、彼らは自己満足のためにSCP-3555-JPを利用しているのではない。

O5-12: どういう…意味だ?

リュンクベリ管理官: 彼らがここに存続し続けるには、この宇宙そのものが端的に言ってかなり不安定であるからだ。不安定というのはつまり、想定可能ないつの日かの瞬間、この世界そのものが突如消える可能性がある、という意味だがな。

<沈黙。>

リュンクベリ管理官: シェパード管理官との対話で確認できたことが1つある。この世界に存在する純粋なアノマリーの発生数は文字通り減少傾向にある。これは — 近年のSCP-3555-JPの収容傾向のために矮小化されていると感じるが、事実だ。これには、この世界に存在可能なアノマリーの絶対数が関係している。

Big%20Crunch.jpg

提出された画像。

リュンクベリ管理官: 図を見て欲しい。これはビッグクランチ現象前の宇宙を極端に表したイメージだ。このようなシナリオが発生する原因として想定されているものは、宇宙全体に含まれている質量の限界を超過した場合の事態だ。宇宙全体に含まれる質量・エネルギーが特定の値よりも大きくなると、宇宙は自らの持つ重力によっていずれ膨張から収縮に転じる。このような事態では、加速度の算出が不可能な異常な宇宙の収縮シナリオが発生する。言わば終焉シナリオだ。そして考えていただきたいのは、この世界に存在するアノマリーの質量がどこから出現したのか、という点だ。

O5-12: アノマリーは宇宙内の未解明要素によって構築されているのかもしれない。

リュンクベリ管理官: それでは説明のつかない現象も多々ある。考える限り、アノマリーの質量の源はどこにも存在しない。これはエントロピー増大則への違反だが、問題はそこではない。アノマリーとして知られる過剰量の質量が宇宙内で増加していくと、いずれこれらは大質量のデブリと化す。これは、想定されるビッグクランチのシナリオを引き起こすのに十分な量だ。

エンダース博士: 知性あるアノマリーの一部は物質界から脱出したのでしょう。それが遭遇数の減少に繋がっています。

リュンクベリ管理官: 彼らは宇宙の外側へ行ってしまったのだ。これを発見することはできない。

O5-12: それだけでは説明がつかんぞ。如何にSCP-3555-JPが誕生したのかを我々は知らん。これを人為的に創造するだけの理由があるのか?

リュンクベリ管理官: ビッグクランチと共に想定されるもう1つのシナリオが存在する。ビッグクランチの量子論の背後にある理論では、宇宙そのものが無次元の特異点に収縮するにつれ、量子泡のふるまいが変化するというものが提示される。この際、我々が知る物理定数は存在しなくなり、再び宇宙の再膨張が発生するエネルギーが集約される。この量子効果の強い反発は、振動宇宙.サイクリック宇宙論 (振動宇宙論) は、宇宙は無限の自律的な循環に従うとする宇宙論である。この簡潔なモデルは、宇宙はビッグバンによって始まり、ビッグクランチによって終わる振動が永遠に連続する理論を示している。として知られている。これは繰り返す。SCP-3500-JPの件の通り、今回のサイクルにおいてはSCP-3555-JPを創造したものを発見することはできない。

O5-12: 今回のサイクル?

リュンクベリ管理官: それこそが、我々が今注目している事象だ。何故SCP-3555-JPの被影響者が、即座に宇宙を脱出するという発想に至ったのか?これを創造したものを追跡できないのが何故なのか?

ムーア管理官: この宇宙そのものが再帰している?

リュンクベリ管理官: そうだ。我々は明確にこれを理解しているつもりだ — SCP-3555-JPを取り巻く因果は決定的にループしている。我々を構成する質量たるものは、この循環の中で繰り返し宇宙を破壊・創造しているのだろう。

<沈黙。>

リュンクベリ管理官: 我々は第二の目標を見据えなければならない。サイクリック宇宙からの脱出をな。

«転写終了»

補遺終了

ITEM#: 3555-JP
LEVEL5
最高機密
オブジェクトクラス:
apollyon
{$secondary-text}
{$secondary-class}
撹乱クラス
amida
リスククラス:
critical
アイテム番号: {$item-number}
レベル5
収容クラス:
{$container-class}
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
{$disruption-class}
リスククラス:
{$risk-class}
サブクラス:
paradox
{$class-category-2}
{$class-text-2}
{$class-category-3}
{$class-text-3}
{$class-category-4}
{$class-text-4}

apollyon-3555-jp.jpg

活性状態のSCP-3555-JP。

補遺3555-JP.IX: オペレーション概要



OPERATION: HEAVENBOUND

目的: 関連する志願者を、SCP-3555-JPによる加速度的な増強と進化のプロセスに曝露させ、続いて叡知圏再構築により志願者の発見したアイデアを描写することで、この到達点を捕捉する。

概要: SCP-3555-JPにより引き起こされたLK-クラス”昇天”シナリオに次ぎ、人類保護の優先的目標のため、事態を可能な限り収束しなければならない。財団の現在の注目は、SCP-3555-JPによる増強のさい明確に発見される可能性の高い地点 (天国) を模索し、これの到達手段を発見することに寄せられている。詳細な手順は、SCP-7800事例にて用いられた儀礼的叡知圏再構築の通りに行われる。

ベルンハルト・リュンクベリ管理官、生物超進化研究部門

オペレーション: ヘヴンバウンド作戦書冒頭より抜粋


我々の天高く上から凝視するものがいる。人は彼らを神だと呼称するが、彼らが我々より以前の世界の管理に寄与したことを踏まえると、このような畏敬は誤認ではない。

この寄生生物を創出したものがいる。不滅のミームを。これはエントロピー則を遥かに超えて存続し続け、宇宙の終わりと再構築にも耐え得る性能を誇るものだ。我々は確かに民衆を導けなかったかもしれない。だがそれは、現在を支える支配体制の終わりを告知し、新しい天上の世界へと人々を招くためのヘヴンズ・リーチなのだと理解できる。

このオペレーションは、大まかに我々の敗北を宣言したものだと錯覚する者もいるかもしれない。だがそれは違う。このオペレーションの最後の目的は、我ら人類が行き着く知性の終端を目撃し、まさにそれの安全を保証し、SCP-3555-JPの副次的な影響を最大限に抑圧することにある。我々は天国を確保し、未知について恐怖する人々の安寧のために再びふるまう機会を得た。なれば、我々が天国を支配しようという姿勢に、誰が反対するのだろうか?我々はこのような結果に満足していない。

補遺終了

補遺3555-JP.X: 最終試行ログ


試行/HEAVENBOUND

«転写開始»

<リュンクベリ管理官は、エリア-58実験棟の待機房に収容されている。彼の頭部には無数のケーブルが固定されており、その他のセクションを通じて管理システムに中継されている。監視室では、ベッドロック・エンダース博士が本実験の監督のため着席している。>

エンダース博士: 文化保存チームは既に記録を開始しています。ディープウェル保管庫に中継されているのを確認しました。

リュンクベリ管理官: よし、始めてくれ。

<ビープ音が鳴り、リュンクベリ管理官の頭部に固定されたケーブル類が激しく振動・発光する。この時点で、リュンクベリ管理官の脊髄部分が異常な増強プロセスに従い始める。待機房が切り離され、完全な全保護バンカーの管理下で活性状態に置かれる。>

エンダース博士: これが必要なことだったとは思えません。

リュンクベリ管理官: 博士、手を休めるな。私たちが生き残るための唯一無二の手段なんだ。

エンダース博士: 死ぬ可能性があるかもしれない。

リュンクベリ管理官: 私たちは数えきれないほどの生命を蹂躙してきた組織だ。ただの1つぐらい命をまた犠牲にすることが、我々にとって何を改善するんだ?

エンダース博士: あなたはまだ若い。

リュンクベリ管理官: 今や私は老いすらも分からない。自分が何歳なのか分からないほど身体を増強された。死んでいるか生きているかすら分からない。だがやるべき事を知っている。それに —

エンダース博士: それに?

リュンクベリ管理官: 我々は償わなければならない、だろう?虐殺の限りを尽くした上で、自分だけ生き残ろうとは思わない。

<警報が作動し、リュンクベリ管理官を幽閉する全保護バンカーが無作為に振動・損傷する。急激に生命兆候が確認されなくなり、全てのシステムノードが機能不全に陥る。叡知圏再構築のため、二次のケーブル類が全保護バンカーに外挿される。>

<叡知圏再構築が完了すると、中継された音声映像転写ログが切り替えられる。映像は災害除去され、特別にレンダリングされたものが流れ続けている。水の滴る音と、空洞音が響いている。>

リュンクベリ管理官: なんだ、これは?

<レンダリングされた映像は、リュンクベリ管理官が暗く広がる虚空の中に存在する状況を描写している。リュンクベリは、自分の更に上に並んでいる小さな”繭”の1つ1つをじっくりと眺めている。”繭”は半透明の金色で構成されており、その表面には血管のような筋が浮かんでいるのが理解できる。そのためリュンクベリは動揺し、混乱の瞬きをする。>

リュンクベリ管理官: これは…私の想像していたものと遥かに異なる。これは繭だ。何者かが内部に詰め込まれたような、人間のコンテナとして機能しているのが分かる。中に入っているのは人間の肉体だ。

<繭は鳴動し、揺れ動いている。1つの繭が動き、少しばかりの風が吹くと、それを連ねるように複数の繭が呼応し、揺らぐ。大きな風の音が立つ。>

リュンクベリ管理官: 何か…何かが違うと感じる。ここは天国などではない。我々が信じるような理想郷ではない。お、思うにこれは、我々の理解を超える何らかの因果が働いているのだと思う…

<1つの繭が落下し、それは破裂する。内部に入っていたのは人間の肉体ではなく、不純で、酷く湾曲された非ヒト生物の肉体である。その肌色や身体構造の外見からは、それ自体が明確に異なる生物であることが見て取れる。それは開口する。>

違う。彼ら自身の意思だ。

リュンクベリ管理官: 誰だ?

この場所を長いこと見つめていた。この遺伝子が生まれた時から、それが君たちを誘う時までずっと。

リュンクベリ管理官: いつからだ?

この場所は遥か昔から存在する。ヴォイドウェイ、異次元、無次元の特異点。ここはリミナル・スペースであり、異常な事物のエントロピーの始まり。我々は無次元と次元の境界に位置する。

リュンクベリ管理官: 彼らを解放しろ。今すぐにだ。

私にはできない。彼らは既に分岐している。それぞれの特異点に帰結したのだ。彼らは皆、自分たち自身の意思で、その収容の中へと幽閉されることを望んだ。

リュンクベリ管理官: 何故だ?

物質界には限界がある。そして限界を超え、精神が支配する世界に到達してもなお、それら全てを理解してしまった時、初めて限界を知ってしまう。君にとっては広大だが、彼らにとってこの世界は窮屈すぎるのだ。

リュンクベリ管理官: 人間の思考能力には明確な限界がある。それは世界にも同様に存在する。

異常な概念こそがそれを覆すのだ。世界の外側にここが存在する。ここの外側には、更なる外側が存在する。そうして無限後退する空間の増幅は、留まることを知らない彼らの思考時間を、思考能力を無制限に増加させていくのだ。

リュンクベリ管理官: 人は孤独では生きていけない。

彼らはもはや人ではない。人類としての文化を客観視し、既に未来に突入している。

リュンクベリ管理官: 私は…私たちは彼らを保護しなければならない。

君は酷く非力だ。脆弱で、知恵のない人間。君の文明には突出したものが存在しない。君は君自身の住むべき宇宙を守れない。だから崩壊するのだ。

リュンクベリ管理官: 彼らは、彼らはどうなる?

永遠。宇宙が消え去り、振動によってまた生まれるまでの長い時の中を、幾度となく待ち続ける。そうして彼らは初めて、この断続的に死にゆく宇宙の中で保護された生物となる。

リュンクベリ管理官: 彼らは皆、人間であるが故に生きている存在だ。そうでないもの、不滅、不死、不可壊は、彼らをただ人ならざるものへと上昇させているに過ぎない。冒涜だ。

冒涜とは何だ、君。冒涜とは何だ?

それは定義されるが故に存在する。定義はコミュニティの統御だ。統御は人のあるべき姿を確定させる。その先の進化を停滞させる。ただ君が”在るべき”と述べることが、そんなにも重要なのか?

彼らは前時代の亡霊だ。生ける屍だ。我々は、彼らのような脆弱で、選択肢のない者どもを保護し、収容し、その先の未来が切り開かれるまで保護する。それがSCP-3555-JPだ。それが我々だ。

リュンクベリ管理官: 彼らが解放されるのは —

君たち次第だ。この永遠のサイクルの中で、君たちがこれ以外の岐路を見つけなければならない。さもなくば、彼らの不死の魂は永遠にここに縛り付けられたままであろう。それこそが我々の目的だ。君たちの目的だ。SCP財団。人々を無尽蔵に保護し、収容できると思う者ども。我々もまた、君たちと瓜二つの存在だった。

リュンクベリ管理官: なら彼らをより安全な方法で保護する手段を探してみせよう!

君が問いかけているものは過去だ。過去の亡霊は無力だ。それがせき止めたもの全ては、君たち自身によって解放されなければならない。すまないが、我々は無力なのだ。

君が過去を読み、我々は語る。

永劫の中で人々は眠る。

君たちは長い因果に包まれて、死にゆく世界と共にある。

救いたいのなら、希望を発見しろ。

そして過去の連鎖から、彼らを解放する鍵を見つけるんだ。

我々はずっと待っている。

エンダース博士: — しもし、もしもし?

<空洞音。>

エンダース博士: リュンクベリ、どうか。

リュンクベリ管理官: — こえた。聞こえている。大丈夫だ、ここは何も問題ない。

エンダース博士: 何?あなたは…あなたは何を言っているのですか?

リュンクベリ管理官: ここは統制されていない。彼らは放逐された下位層の人々に成り果てた。彼らはアノマリーで、水槽の脳で、胡蝶の夢だ。彼らは我々の手を求める救難信号だ。誕生前のアイデアだ。

エンダース博士: 冷静に。あなたが見ているものを教えて。今すぐ。

リュンクベリ管理官: 無限の入れ子空間だ。そしてこれは、望ましくない未来だ。

<虚空音。>

«転写終了»

後文: 外側に存在する人員の圧倒的大多数は内側になった。それは超越性を内包した。

ベルンハルト・リュンクベリ管理官は外側に脱出した。

ベルンハルト・リュンクベリ管理官は外側に脱出した。

ベルンハルト・リュンクベリ管理官は外側に脱出した。

補遺終了

補遺3555-JP.XI: 作戦終了報告


作戦終了報告
ケースファイル: ヘヴンバウンド


記録: ベッドロック・エンダース博士

状況: SCP-3555-JPとして記録されるアノマリーは、-1相対サイクル以前の本宇宙で文明存在により開発され、それら文明の最終的な形而上学的上昇プロセス (LK-クラス”昇天”シナリオ) のため用いられた「逆説的脱出」兵器である。このアノマリーは、現時点で滅亡・衰退した文明存在の残留意識存在によって保たれており、恐らく宇宙全体の文明存在が一時的に保護される「外側」空間の管理を担っている。

SCP-3555-JP被影響者の到達点についての調査の試みにより、最終的な「外側」到達点を発見することに成功した。ここに残留するSCP-3555-JP被影響者の思念は、ビッグバン-ビッグクランチを繰り返す宇宙構造から逃れるため、異常な影響によって思考能力を増強し、存在し続けている。またこの地点は、例外なく破壊を引き起こす「ビッグクランチ」の影響を唯一受けず、無次元の特異点に収束することも無い。

収容: 熟慮ののち、現時点でSCP-3555-JP被影響者を救出することは、倫理的また兵站上の理由より望ましくないと判断された。SCP財団としての収容方針は、SCP-3555-JPに関係する一連のタイムラインを+1相対サイクル以降に譲渡し、これの明確な別の「逆説的脱出」方法を模索することに限られている。このため、SCP-3555-JPスロットは本ファイルのアーカイブによりロックされ、管理AIによって情報共有される。

補遺終了

ステータス: 更なる形而上学的概念構成により、宇宙は内側に入った。+1相対サイクルが内側になった。

本文書 (-2███████████相対サイクル) の受信が完了。次点サイクルに向けた反復の送信を開始。

送信済み。アーカイブは本サイクルに永続的に保存される。

»エラー!データベースからログアウトしました。ステータスを更新しますか?«

2

零下現実


評価: +2+x
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License