落椿
落椿
鮮やかに濡れ
土に咲く
4月20日。天からは穀雨が注がれていた。
落ちていく庭の椿を雨が打ち、地面が赤く染まっていく。そんな光景を目は焼き付け、脳はそれを重ね、口は嗚咽に浸る。書き残した文字には涙が零れて滲む。湿った空気は私の体を包んで溶かしていった。
部屋を出て、無機質で白い部屋へ向かう。そこで私は立ち直らねばならなかった。それでも私は、憶えていたかった。
私と彼は良いペアで、良いフィールドエージェントであった。
落椿
鮮やかに濡れ
土に咲く
備忘録の隅に佇む、僅かに滲んだその光景。
濡れた地面に、椿は咲いていた。
ページリビジョン: 32, 最終更新: 11 Jul 2023 14:44