

メタファウンデーション (Metafoundation) は、SCPwikiの相互接続したストーリーのために建てられた新たな体制「メガカノン」 (Megacanon) の第一弾だ。それはテーマ面やナラティブ面といった点で互いに大規模に繋がっている、各種カノン (そしてそれらを参照する一部の作品) のシンジケートと言える。
メタファウンデーションは一連のコア・カノンを軸に成り立っている──これらはメタファウンデーションの全体的なアイデンティティに必要不可欠と考えられるカノンであり、ものによってはそのコンテンツの圧倒的多数を形成している。
MetaFのコア・カノンは通常、歴史的に密接な互換性を維持してきたものや、頻繁にクロスオーバーしているものである。このプロジェクトは、数人の運営著者たちが、こうした既存の繋がりを (「マルチバース」の形で) 公式化し、前向きで協力的な環境の下で促進させていこうと望んだ結果生まれた。
我々はメガカノン内における、コミュニティの表現・コンテンツ製作の自由の確約を重視している。メタファウンデーションは自由な創作のためにあるのであって、制限のためにあるのではない。
このような体制が拘束的なものになると経験上考えてしまう方もいるかもしれないが、我々はその予想を覆してみせよう。
— メタファウンデーションDiscordサーバ #info "What is Metafondation?" 和訳
概要
メタファウンデーションとは、主にENの有志が集まって2022年前後から動かしている大型プロジェクトです。これは複数のカノン、シリーズ、設定を相互にクロスオーバーさせて、より大きな設定体系“メガカノン”を構築しようという試みです。
こう言うと物凄く難解なプロジェクトにも思えるのですが、実態としては「色んなカノンやシリーズで緩く同盟を組んで、設定の貸し借りとかをしやすくしようぜ」というものが近いかな、とは感じます。メインライターの一人であるラリストン氏によれば、「最近は著者個人が独自路線を突っ走ることが多く、共同創作性が薄れてきているので、もう一度それを再興するための試み」とのことです。
現在、10を超えるカノンやシリーズ、数十人を超える著者たちがプロジェクトに携わっており、最近のEN動向を追ううえでは極めて重要な存在となりつつあります。SCP-ENの2022年7月号の新聞でも、メタファウンデーション特集として中核メンバーへのインタビュー企画1が組まれたりもしており、注目度は確実に上がっています。
実際のところ各カノンは微妙に設定が違っていたりもするので、矛盾回避のためにMetaFは独自のタイムライン・システムを採用しています。カノンやシリーズごとに複数のタイムラインが存在しており、それらTLの財団 (ないしは財団相当組織) は、1981年多財団連盟協定と呼ばれる協定で同盟を結んでいます。この財団たちの同盟が、作中世界におけるメタファウンデーションです。
とはいえ、大体の場合、このタイムライン・システムはほとんど気にされず、各作品は縦横無尽にクロスオーバーしています。メタ的な著者たちの議論や、マルチバース的な壮大な話をするときを除けば、基本的には意識する必要はありません。
コア・カノンと見なされるものは時期や人により流動しますが、メタファウンデーションDiscordサーバの#infoチャンネルに上げられているリストでは、以下10個のカノンをコア・カノンとしています。
- オンガード43 (OG43)
- 120の記録書庫より (F120A)
- S&Cプラスチック (S&CP)
- ノー・リターン
- リザレクション
- サイト-17深淵目録
- 全ての戦線で戦え
- AIAD
- この素晴らしき世界
- メキシコ湾
特に、OG43、F120A、S&CP、ノーリターンあたりが根幹要素を担っています。そのため、メタファウンデーション関係をなるべくリアルタイムで追っていくためには、これらカノンの翻訳を共同で進めていく体制の構築が重要になりそうです。
基本的には、特定の施設やロケーションに着目しており、他のカノンと衝突しづらいものを中心に構成されています。とはいえ、深淵目録のように、根本的に世界観が異なるものも一部マルチバース経由で取り込まれています。
具体的な境界線もないので、MetaFは事実上あらゆるカノンやシリーズと融合可能です。とはいえ、宇宙論的に噛み合わない第三法則やトラッシュファイア、あるいは著者が参加を拒絶している『ユグドラシルの測量技師』シリーズなどは珍しく明確にMetaF外と言えるかもしれません。とはいえ、設定レベルでなら取り込まれることもあります。
メタファウンデーションの中核記事として、以下の2作品が将来的に投稿予定のようです。
- MSCP-1981: 1981年多財団連盟協定とメタファウンデーションの概要に関する作中世界の報告書。
- メタファウンデーション抄録: メタファウンデーション関係の設定資料集。年表などが含まれる予定。
2022年末〜2023年始頃の投稿を予定されているようでしたが、著者たちが多忙のため、この投稿は更に遅れる……かもしれません。
上でも言及されていますが、メタファウンデーションには専用のDiscordサーバが存在します。招待リンクはこちらです。
割とラフな雰囲気の場所ですが、参加カノンの専用チャンネルが取り揃えられています。どちらかと言えば、メタファウンデーション全体の話をするというよりも、これらチャンネルで各カノンの議論や雑談をしていることの方が多いかもしれません。
関連カノンについて執筆・翻訳予定がある方は、何か気になるときにここで質問できるので、サーバに参加しておいてもいいかもしれませんね。
以下は細かい話です。別にこの辺がよくわかっていなくてもそんなに困らないので、変なオタクだけ来てください。なお、この解説は個人的な認識に基づいているので、誤った情報もあるかもしれません。
タイムライン理論や諸設定
1981年多財団連盟協定

MSCP-1981はメタファウンデーション超時間連盟協定──様々な因果枝中の代替財団様存在の可変的・分権的なネットワークによって維持される、異常な逆因果的契約──に対する指定です。別名1981年多財団連盟協定としても知られるこの契約は、批准者・非批准者全体のクロスタイムライン的相互作用についていくつかの原則を取り決め、過去遡及的に施行します。
— MSCP-1981
1981年多財団連盟協定は、複数のタイムラインの財団 (および同等組織) 間で結ばれた協定です。メタファウンデーションの世界観では、ピボット (歴史的分岐点) の通過や、過去改変によってタイムラインが分岐すると考えられており、宇宙にはそのようにして生まれた様々なタイムラインが存在しています。
各カノンやシリーズ (あるいは作品) はそれぞれのタイムラインに所属しており、特にOG43とS&CPの共有タイムラインが全ての根源であるTL-001-PRIMEとして扱われています。
1981年多財団連盟協定で連携した財団たちの集団こそがメタファウンデーションであり、彼らはMSCP-0001、「異常に対処する人々の物語を生み出すため、タイムラインに干渉して分岐/融合/破壊している超宇宙的現象」に対抗するための財団連合というかたちでまとまっています。
1981年多財団連盟協定の内容は、主に以下のようなものだとされています。
1) 時間異常部門の全てのバージョンは、連盟内に財団の最も平均的なバージョンに属するものによって調整され、またその指揮下にあるものとする (このバージョンはプライム・タイムラインと呼ばれるが、連盟内のいくつかのタイムラインが誤って自身をプライム・タイムラインだと言い続けている)
2) 財団職員は、RCTの各バージョンによる厳格な監督・許可が無い限り、自身の他のバージョンと交流することは許されない。
3) 何らかの一般的な終局的シナリオ発生時、他タイムラインへの避難は物品・情報のやり取り同様に禁止される。ただし、
4) そうしたシナリオに関する文書は、調査のために他全ての連盟に参加している時間異常部門のバージョンに送付しなければならない。
5) 連盟に参加している・していない双方のタイムラインに悪影響を与える可能性を踏まえ、連盟に参加している財団のバージョンは、その上にある“高位現実”を破壊、ないしは影響を与えないことに同意するものとする。
— メタファウンデーションDiscordサーバ Placeholder氏の発言より
タイムライン関係

Jaisu氏作成、Witherite氏翻訳。主要なタイムラインについて以下に記します。
- TL-001-PRIME: オンガード43、S&Cプラスチックのタイムライン。SCP-6500/難局を経て2つのタイムラインに分化するが、上記2カノンではスレッショルドタイムラインの方のみが描かれる。SCP-5243やREISNOカノンの存在によって代替タイムラインが複数発生しているため、少しややこしい。
- TL-1911: 120の記録書庫よりのタイムライン。財団の体制改善を目指す“指令1911-アルファ”の発令をきっかけに分岐している。こちらもSCP-6500/難局を経て2つのタイムラインに分化する。構想中カノン『海と岸』は派生タイムラインであるTL-1911/184で展開される。
- TL-4755: 深淵目録のタイムライン。SCP-4755の発見をきっかけに分岐している。SCP-4755により“防護”されているため、このタイムラインは難局を経験しない。訓戒シリーズは派生タイムラインであるTL-4755-AとTL-4755-Bで展開される。
O5評議会 (オリンパスV)
プレースホルダー氏の構想です。これについては、あまりメタファウンデーション全体との関わりは無いかもしれません。一応、SCP-6500で登場していることもあるので、TL-001-PRIMEに相応の影響力はあるのかもしれません。中でも重要人物となるのはO5-0とO5-9です。
“避けえないもの”で言及されたO5の役職
O5-1/議長 (Chair) ― 行政
O5-2/記録官 (Archivist) ― 記録・書類
O5-3/取締官 (Regulator) ― 内部規則・法規
O5-4/戦術家 (Tactician) ― 研究・実験
O5-5/連絡官 (Liason) ― 外部関係・法規
O5-6/経営者 (Operator) ― 物流・(人材以外の) 資源
O5-7/戦闘員 (Combatant) ― 軍事展開
O5-8/相談役 (Advisor) ― 特殊プロジェクト・部隊
O5-9/神託 (Oracle) ― 時間知識・活動
O5-10/人道家 (Humanist) ― 倫理問題・人材
O5-11/タウミエル (Thaumiel) ― 地球外/次元間問題・関係
O5-12/万人 (Everyman) ― 人類・ヴェール代表
O5-13/調停者 (Mediator) ― 行政的衝突の解決
O5-0/異端者 (Heretic) — 汚名を負って初代財団運営陣を離脱したメンバーで、そうした称号を公的に受け取ることを拒絶していた。評議会により幽閉された (スレッショルドでは)。異常事物/機構ならびに有用な (強引でない/倫理的な) 収容の総合エキスパート
— メタファウンデーションDiscordサーバ Placeholder氏の発言より
O5-0はSCP-6500/ノー・リターンカノンにおける最重要人物であり、かれ (They) の残した手がかりを頼りに回収した遺物によって、財団はSCP-6500を食い止めることができました。
また、O5-9は時間関係担当の監督官であり、このため時間異常部門の管理を担当しています。各タイムラインのイルゼ・レインデルスたちがそれぞれのO5-9に働きかけたことで、1981年多財団連盟協定が成立しました。O5-9たちは時間を超えて繋がっており、オラクル・コレクティブ/O9を形成しています。
時間異常部門 / RCT-Δt
研究・収容チームΔt (RCT-Δt)、あるいは時間異常部門は、元々HammerMaiden氏が生み出した部署、あるいは彼らを取り巻くシリーズでした。メタファウンデーションとRCT-Δtシリーズは直接繋がってはいないものの、一部の設定 (RCT-Δtの存在や世界観など) を継承しています。
MetaF周りでは、シャンクの後釜としてOG43カノンのイルゼ・レインデルス博士が時間異常部門長に任命されており、主に彼女が時間異常部門の代表として活躍することになります (何故かシャンクはメタファウンデーションの敵対存在として扱われているようです)。「本線から分岐していくタイムライン群」という設定が前提になっているため、メタファウンデーション周りでは時間異常部門が頻繁に登場することになります。
SCP-6500/難局
2021年に発生した、極大規模の異常消滅/減衰現象です。財団の収容活動が原因となって発生し、その結果多数の異常存在が無力化されてしまうとともに、財団はその在り方の変化を迫られます。
一連の事変の最後に下される「財団を解体するか否か」という究極の決断により、TL-001-PRIMEは2つのタイムライン──スレッショルドとヴァンガードに分岐することになり、また他多くのタイムラインも同様に二分割されることになりました。
各設定解説

*タイムライン関係のゴチャゴチャは、プレースホルダー博士関係を除いては大体後付かつメタ的に分類するためのものなので、あまり気にする必要はありません。
オンガード43
カナダに所在するサイト-43、その職員たちのヒューマンドラマ、そして彼らが収容しているアノマリーや、担当している要注意団体などを扱うカノンです。一言で言うなら「サイト-43関係」といったところでしょう。
サイト-43は規律が緩やかで、ある種大学のような人間関係で職員たちが相互交流しています。従来の手法に囚われない非定型的な収容方法を採ることも多く、その一例がSCP-5056 (職員に取り憑いたミラーモンスターをそのまま置いておき、サイト内で非公式のマスコット的に扱われている) やSCP-5494 (先住民の崇拝する湖の水中豹に対し、周辺地域をネクサスとして共存する形で処理) などです。
OG43は主に以下3つのシリーズから構成されています。
- 本編となる『力と毒の言葉』
- 同名GoIに関する『ヴィキャンデル=ニード・テクニカル・メディア』
- 近未来の空想科学関係の連作である『アーキティピカルズ』
OG43は様々なカノン・シリーズとクロスオーバーしており、メタファウンデーションの中核カノンとして扱われています。例えばAIADの“リミテッド・メモリ”やリザレクションの“旧敵たち”はOG43本史の過去編に組み込まれ、S&CPやF120Aとはよくクロスしています。SCP-6500の前提カノンの一つでもあり、難局後はスレッショルド・タイムラインを採用しています。
特にOG43とS&CPは同一タイムラインの出来事とされており、ともにTL-001-PRIMEに指定されています。
S&Cプラスチック
アメリカ合衆国 ウィスコンシン州にある田舎町、“スロースピット”は、物語や噂話が現実になるという特性を持っており、町全体が物語の法則 (つまり、フィクションあるある) に縛られています。このため財団は町全体をNx-87 (ネクサス-87) に指定して、管理下に置いています。Nx-87内にある財団施設がサイト-87であり、表向きはフロント企業の“S&Cプラスチック”を名乗っています。
サイト-87は他の財団施設と比べて緩やかであり、カノンはその職員たちのスライス・オブ・ライフ (日常のワンシーン) を綴るTaleを中心に構成されています。メインキャラクターの一人であるキャサリン・シンクレア博士は奇跡術師であり、このことから奇跡術方面で彼女が登場する場合があります。OG43とは全体的に空気感が似通っており、実際にいくつかの記事でクロスオーバーするのみならず、同一タイムライン (TL-001-PRIME) であることが明言されています。
スロースピットの物語と結びついた性質から、S&CPは後に空想科学 ('Pataphysics) と習合することになりました。この一つの到達点が『I・H・ピックマンの提言 - あなたの人生の物語』です。同提言では、1. 世界は上位存在の干渉を受けている / 2. 世界は物語の法則に支配されている / 3. 作中人物はそれを理解し対処できる、といったスタンスが示されていますが、これはS&CPのみならず、メタファウンデーション全体に通底しています。特に、これはプレースホルダー博士関係で顕著であり、S&CPとOG43カノンを跨いで展開されるアーキティピカルズ・シリーズなどにも繋がっていきます。
SCP-6500の前提カノンの一つでもあります。難局後は、OG43同様にスレッショルド・タイムラインを採用しています。
なお、S&CPは10年以上の歴史を持ち、かつその時代に合わせて変化と発展を続けてきたカノンです。このため、OG43登場前はこちらがEN最大のカノンとして君臨していたりもしました。
120の記録書庫より
ポーランドのサイト-120と職員たち、同国の異次元都市エスターバーグ、かつて地球上に存在した妖精帝国とその残滓……といった幅広いテーマを扱っているカノン。全体的に、ちょっとファンタジー風味が強めです。また、このカノンの財団は自身の体制改革を推進しているという特徴があります。
サイト-120は親異常的な財団施設であり、特に魔術・現実改変に特化しています。このカノンも非定型収容ものの一つと言えるでしょう。
MetaFの中核カノンの一つであり、OG43などとは頻繁にクロスオーバーしています。特に、サイト-120や、F120Aカノンの主人公格であるダニエル・アシュワースが出てくることが多いでしょうか。ただ、OG43やS&CPとは微妙に設定のズレがあるため、タイムライン的にはTL-1911という別タイムラインに設定されています。このタイムラインは、ラリストンの提言で発生したファクトリー大殺戮 (F120Aカノンの諸悪の根源・マブ女帝が素性を偽って管理者と契約した結果、大量の妖精の殺戮と名前喪失が発生した事件) を重く見た財団が、自身の体制改革を決意した指令1911/アルファに伴いTL-001-PRIMEから分岐したとされています。その後、1985年にはO5-9が死亡し、F120Aカノンにおいては永久に空席となっています。
メインライターであるラリストン氏が全カノンの踏破を目論んでいる人物であるため、F120Aはメタファウンデーション以外にも各所とクロスしていたりします。例えば、第三法則はMetaFには入っていませんが、F120Aは第七次オカルト大戦周りの設定を第三法則から継承していたりします。別著者の構想中カノンである『海と岸』とも一部重複しており、こちらはTL-1911の更なる分岐タイムラインであるTL-1911/184での出来事とされています。
難局後はヴァンガード・タイムラインを採用していますが、TL-001-PRIMEで財団→ヴァンガードがスムーズかつ即座に再編されたのに対して、F120Aはもう少し現実的に、10年ほどかけて緩やかに入れ替わっていったという見方を採っています。
マルチバース理論として、F120AはSCP-6172 (多元宇宙羅針盤) を採用しています。これも時間異常部門が対処しています。MetaF、実は案外その辺融通きくみたいです。
なお、F120AカノンのハブにはメタファウンデーションのDiscordサーバへの招待リンクと、メタファウンデーションのタイムライン関係をまとめたマップが掲載されています。メタファウンデーションとの初遭遇がここだった方も多いのではないでしょうか。
ノー・リターン
2021年にSCP-6500/“難局”が発生した結果、以前とは変わってしまった世界を描くカノン。SCP-6500は財団オールスターの超大長編作品であり、OG43やS&CP、WoAF、リザレクションなどの文脈を継承しています (特にOG43カノンの要素が強いです)。記事の最後に読者 (O5-13) が採った選択により、世界はスレッショルドとヴァンガードの二つに分岐します。
スレッショルドは財団が存続し、最低限の対応だけをして収容活動を続行するタイムラインです。財団は難局の原因が自身であることを表向き隠し通してはいますが、既に超常コミュニティの誰も (そして一部の財団職員) が原因を把握しています。OG43とS&CPはスレッショルドを標準タイムラインとして採用しています。
ヴァンガードは財団が解体され、複数のGoIと合併して新組織“ヴァンガード”となり、がむしゃらな収容をやめてヴェールを撤廃するタイムラインです。120の記録書庫よりはヴァンガードを標準タイムラインとして採用しています。
この他に、O5評議会が決断を下さなかったまま保留するタイムラインもあったのですが……その後すぐに消滅してしまったようです。2タイムラインは安定したまま並行に存続していきます。
リザレクション
アノマリーの増加・激甚化に対し、財団は“プロジェクト・リザレクション”と称して、有用なアノマリーの利用を始めとする旧来手法の再導入を試みます。プロジェクトの中心である、かつての機動部隊Ω-7を継承した新部隊、Α-9 “最後の希望”を主役に、長編連作を展開していくカノンです。とはいえ、メインライターの活動停滞から、現在はメインストーリーは半ば停止状態にあります (一応デッドリームースがまだ関連活動を続けようとはしているようです)。
このため、停滞したカノンに新たな風を吹きこもうとする企画、2020年カノン復興コンテストにおいて、リザレクションカノンを題材とした2つのスピンオフシリーズが登場しました: 『新顔たち』 (ニュー・フェイシズ) と『旧敵たち』 (オールド・フォーズ) です。
『新顔たち』はΑ-9の新規メンバーに関する群像劇であり、『旧敵たち』はバウ将軍率いる財団排除連合 (FEC) とダン博士を筆頭とするETTRAの抗争劇です。特に、『旧敵たち』の設定はOG43の正史に組み込まれており、FECやETTRA、一連の騒動の設定が継承されています。(なお、ETTRAの本部はエリア-09にあるそうです)
また、コンテスト後には2シリーズの続編となる新シリーズ『His Will Be Done』が連載されています。主にこの3つのスピンオフシリーズが、メタファウンデーションと繋がっている部分です。
AIAD
人工知能やサイバー異常を扱うIT部門の“人工知能適用課” (AIAD) に関するカノンです。財団製人工知能であるAICの設定が便利なため、その辺でよく参照されます。
また、2020年カノン復興コンテストで書かれた『リミテッド・メモリ』シリーズはプレースホルダー博士の過去編に相当し、OG43の正史にも組み込まれています。なお、サイト-15にAIAD本部があるようであり、この施設もたまにMetaF内で言及されることがあります。
プレースホルダー博士
1キャラクターではありますが、彼は裏設定がエゲツない盛られ方をしており、なおかつMetaF全体に関わる重要人物となっているので、専用項目を設けて解説します。
彼はもともとネイサン・ヴァリス博士という名前で、サイト-15 (AIAD本部) で働いていました。彼はいくつかのAICの開発に携わり、AIADカノンの“リミテッド・メモリ”シリーズではサイト-15を襲撃してきた反ミーム勢力 (自称WANに率いられている) に対応します。
事件後、サイト-15で彼が記号論関連の研究をしていたところ、決して名付けてはならない妖精の神 (SCP-INTEGER、LOGICIAN) を発見、命名してしまったことでアイデンティティが一部交換され、神に呪われたことでプレースホルダー・マクドクトラートという無茶苦茶な名前にされてしまいました。
実は、マルチバースレベルでプレースホルダー博士の同位体たちがそれぞれ同じ目にあっており、皆が同様にアイデンティティの抽象化を受けていました。そう、カノンや記事ごとにたまに彼の名称表記が違っていたのは、タイムラインが違うことを示唆していたのです。
この際、彼の持ち物であったルービックキューブも大規模な抽象化を受け、マルチバースレベルで同一化、SCP-6416となります。どうもSCP-6416はLOGICIANとプレースホルダー博士を結びつける一種の楔と化しているようであり、これを通してLOGICIANはプレースホルダー博士が面白い物語の語り部となるように彼に強制しています。
こうした事情を踏まえ、プレースホルダー博士は、LOGICIANは著者実体 (著者のプレースホルダー氏) が部分的に下位現実に顕現したものではないかと考え、サイト-87の空想科学部門へ異動しました。後に空想科学分野における偉業から、彼は部門長へ昇格します。
その後、彼は著者存在からの呼びかけらしき奇妙な空想科学的現象を観測したことで、脇役キャラクターたちを寄せ集めて“原型課”を設立、OG43カノンのアーキティピカルズ・シリーズの主役となっていきます。この際、彼が利用しようとした装置がプレースホルダー探索エンジン (Placeholder Exploratory Engine, PEE) でした。
なお、ちょうどアーキティピカルズ・シリーズと被る2030年代に、彼は時間異常部門にある装置を紹介されます。REISNOカノンと呼ばれるそれは、過去の自分自身と同調し、指示を与えることができる因果調整装置でした。この装置は、かつてプレースホルダー博士が未来の自分自身に連絡を受けて構築したものでした。そこで未来の彼が時間異常部門から連絡を受けたのです。
この装置はあくまでも因果をあるべき形に調整するためのものであり、過去改変のための装置ではない……のですが、サイト-43のドゥーガル・ディアリング博士がこれを過去改変に使ってしまったことでタイムパラドックスが発生、TL-001-PRIMEから分岐した別の終末タイムライン (TL-5956-X) が発生してしまいます。このパラドックス・タイムラインのプレースホルダー博士もREISNOカノンを作成するのですが上手くいかず、遂にはパラドックス脱出エンジン (Paradox Exodus Engine, PXE) なるものを作成し、このタイムラインを見捨ててどこかへ飛び去ってしまいます。……いったい何処に行ってしまったのでしょう?
サイト-17深淵目録
支配を中核に置く、邪悪な財団像を前提にしたカノンです。タイトルにもなっているサイト-17がよく舞台になります (サイト-17自体は最初期からある施設ですが、このカノンでは“人型実体が多数収容されている”以外は割と別解釈で捉えています)。
Nagiros氏の作品群 (“生命無きものたち”、“空白”) が中核になっていますが、JPではサブシリーズである“訓戒”の印象で知られています。両者は「財団がろくでもない」ところや一部設定は共有しているのですが、作風は全く違います。Nagiros氏のSCP-4755 (難解な内容・自身を概念的に全ての至上に置く傲慢な財団) を拡大解釈するかたちで発生したのが訓戒シリーズ……と言えるかもしれません。別にNagiros氏は全然良いぜ!と言ってらっしゃるようなので、まあ良いんだと思います。
深淵目録のタイムライン (TL-4755) は、財団がSCP-4755を発見したことでTL-001-PRIMEから分岐し、悪の道に進んでいったとされています。SCP-4755は、宇宙の根本に“収容”の概念があるという事実です──どうやら2100年代の財団がすべてを収容して概念層第Ⅴ層 (=万物の頂点) に到達したことで、過去遡及的にこの状態が達成されたようです (そして、このタイムパラドックスにより財団はSCP-4755を実現する必要に迫られます)。TL-4755では将来的に“空白”シリーズの出来事が発生し、創造神を殺し、全宇宙の“収容”を目指す財団と異常との全面戦争に向かいます。
また、深淵目録カノン出身のキャラクターであるライナー・ミラーは、リザレクション: 新顔たちでΑ-9に参加しているため、そちらとも設定上繋がりがあります。
訓戒
深淵目録カノンのスピンオフシリーズですが、どちらかというとメタファウンデーション全体の要素が強いシリーズです。訓戒は基本的に、「超技術を有しており超強力だが、傲慢なのでやらかす財団」に関する難解で壮大な作品群という形をとり、各エピソードごとに異なるカノン・シリーズ (大体MetaF所属) と部門がフィーチャーされます。例えば、SCP-6747ではF120Aカノンと空想科学部門がフィーチャーされました。プレースホルダー氏のとにかく難解・複雑・衒学的な作風が全開で発揮されているシリーズであり、強烈なインパクトから各所で影響を受けた作品が書かれていたりもします。
実は裏設定でOG43と繋がっています……というのも、OG43カノンの終末的な分派タイムライン (SCP-5956に登場するTL-5956-X) を脱走してきたプレースホルダー博士が、深淵目録タイムライン (TL-4755) にやって来たことで訓戒シリーズが始まっているのです。彼はTL-4755に元いたプレースホルダー博士をSCP-6269を用いて排除して成り代わろうとしますが、そこでタイムラインが分岐してTL-4755-Aが発生します。TL-4755-Aに侵入したプレースホルダー博士 (PHMD) はPH-GOSを作成し、SCP-6820の建造に携わります。
SCP-6820による世界の終焉後、メタファウンデーションによる調査結果が過去のTL-4755-Aに伝えられたことで、SCP-6820が建造されないTL-4755-Bのタイムラインが新たに作成されます。TL-4755-Aをすんでのところで脱出してきたプレースホルダー博士が過去の自分と融合し、訓戒エピソード2以降の話が展開されていくこととなります。このため、後のエピソードではPH-OSや、SCP-5956で登場したパラドックス脱出エンジンが登場しています。
なお、諸悪の根源となったパラドックス脱出エンジンですが、実はOG43カノンのアーキティピカルズシリーズで登場するプレースホルダー探索エンジンとは頭文字が一致します。双方ともにカノン間を移動するマシンなので、おそらく本質的には同じものなのでしょう。
ヘカトンケイルズ・サイクル
現代に蘇る古代の神々や文明の残滓と、それに対処していく英国のサイト-91の職員たちに関する壮大なシリーズです。著者がVKTMやヴァンガード関連を書いているGrigori氏であるため、サイト-91とその管理官であるイオナ・ヴァルガはOG43カノンなどMetaFの各所でカメオ出演しています。
海と岸
サイト-184 (そして釣魚評議会) を中心とする、海舞台のシリーズ/構想中カノンです。釣魚評議会シリーズがF120Aカノンと重複していることもあり、『海と岸』カノンはTL-1911から分派したTL-1911/184で展開されているとされます。
上のメタファウンデーションMAPではSCP-6269もここに組み込まれていましたが、だいぶ作風が違うので、本当にここに組み込まれているのかはちょっと……わかりません (SCP-6269自体はメタファウンデーションにがっつり関わっていますが)。
統合プログラム
サイト-322とエリア-179が推進している、有用なアノマリーを財団の施設・職員体型に組み込むプロジェクト“統合プログラム”に関する構想中カノン。非定型収容ものの一つです。著者層が共通しているため、OG43カノンなどとクロスオーバーすることがあります。
その他
The Way It Goes / TWIG
Lyrin氏を中心に構想されているカノン。米国ワイオミング州は異様なまでに物語エネルギーが低く、異常現象がほぼほぼ発生しないため、Nx-150に指定されています。財団はエリア-150を建設し、Nx-150の空想科学的研究を行っていました。ただ、ワイオミング州で異常な現象を起こそうとする組織が出現し……。
本編作品はまだ投稿されていないのですが、メタファウンデーション初期にコアカノンの一つとして計上されていたこともあり、他のMetaF関連作品でNx-150やエリア-150がちらほらとカメオ出演しています。一応これもTL-001-PRIME所属らしいです。
メキシコ湾
2016年代から存在する老舗カノン。米国南部 (特にメキシコ湾周辺) を舞台に、ローカルな財団像で展開される、いくつかの設定・タイムラインを共有した作品の集合体です。初期は“メキシコ湾: 炎上”と称して米国南部で巻き起こる大規模収容違反か何かの連作を構想していたようですが、メインライターの一人であったマックティリス氏が失踪したため、わずか2作で終わりました。
とはいえ、ローカルで人間的な財団像がコアな人気を博していること、また、SUSEOCT/米国南部超常組織協力条約 (財団はそれほど強大ではなく、他のGoIと協定の下で協力/法廷闘争しつつ共存している) の設定が便利なことから、未だにちらほらと記事が書かれ続けています。
メタファウンデーションとの関係は現状ほぼ全くないのですが、おそらく設定上衝突しないために (そしてメインライターの一人であるシメリアン氏がMetaFに参加しているために) コアカノンに組み入れられています。
この素晴らしき世界
ワンダーテインメント博士の掘り下げカノン。ただし、WWS史を扱うTake It Away, My Darlingシリーズも著者が共通するためここに組み込まれていたりします。
メタファウンデーションのコア・カノン、およびノー・リターンの関連カノンに指定されていますが、実際のところそれほど深い関わりはありません。おそらく設定上衝突しないために (そしてメインライターの一人であるDarkstuff氏がMetaFに参加しているために) コアカノンに組み入れられています。とはいえ、ワンダーテインメントやWWSの描写はこのカノンの影響を多少意識したほうがいいのかもしれません。
全ての戦線で戦え
1988年の怪獣ワニイカによるハイ・ブラジル島襲撃を始まりに、いくつかの異なるストーリーを描く怪獣ものカノン。3つの並行するサブカノンを内包しているのが大きな特徴です。
- 《学問》 — ハイ・ブラジル島襲撃を最後にそれ以上怪獣が現れず、怪獣が残した諸々にGoIがどう反応するかを描くサブカノン。最もメジャーカノンに近い。
- 《黙示》 — 怪獣の起源を探る財団が怪獣まみれの異世界に踏み込んだ結果、膨大なワニイカが基底現実に押し寄せて世界が滅ぶサブカノン。
- 《復活》 — プロメテウス研究所がうっかりワニイカを蘇生させてしまった結果、世界中に眠る巨大生物たち (LSA) が一斉に活動を開始し、滅亡に瀕する世界で、財団がKEYプロジェクト──超常技術を結集して作り上げた巨大人型兵器で怪獣たちに立ち向かうサブカノン。
メタファウンデーションでは主に《学問》タイムラインが採用され、ハイ・ブラジル周りの設定を出すかたちで使われます。この他に、《復活》カノンのLSAやKEYプロジェクトの設定も継承される場合があります。
また、F120AカノンのHomo sapiens sidheは元々『全ての戦線で戦え』で登場した学名でしたが、F120Aカノン側で設定が独自化したことを受けて、『全ての戦線で戦え』側は学名を変更していたりもします。
戦術神学部門
宗教や神々といった問題に対処する部署、戦術神学部門。カナダのエリア-27を拠点としています。OG43カノンや訓戒シリーズで戦術神学部門が取り上げられたことなどもあってか、MetaFの初期の参加施設リストの中にはエリア-27も掲載されていたりしました。
アンダーベガス
ラスベガスの地獄重複地帯、アンダーベガス。財団はラスベガスにサイト-666を置いて、悪魔関連の外交や異常問題に対処しています。非定型収容系の1実例であるため、他の非定型収容系カノンとしばしばクロスオーバーします。MetaFに入っているかは明言されていませんが、出番は多いです。
サイト-7
Rounderhouse氏 (そしてaismallard氏) が中心になって進めているシリーズ。こちらはRAISA本部のあるサイト-7を取り巻く作品群であり、カノン-RUの『サイト-7』とはまた別物です。MetaFに入っているかはやや微妙ですが、SCP-5900/PANOPTICON全世界監視システムの設定がF120Aカノンに取り込まれていたりします。
Goldbaker-Reinz社
SCP-6987。多元宇宙全体を跨いで活動する保険会社で、契約の下に財団の収容活動を支援しています。その性質上、メタファウンデーション関係ではちらほらと言及されます。
他にもあれとかこれとか、何か色々構想されているみたいです。
おまけ: カラーリング情報
