Midnight Sun
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ファクトリーの奈落の神を動けなくしている数々のザ・ロックは強固だった。言葉では強調しきれない強固さを備えていた。

地獄そのものの主観性にて鍛え上げられ、丹念に刻まれた表面の秘文字は力を超越し、時間そのものを超越する耐久性を有していた。その目的は一つだった ― 狂気の君主がサイト-01内の王座の間内部より指一本足りとて動かせぬよう確実にするためである。

数え切れぬ歳月の中で、錠は十分にその役目を全うした。疑心暗鬼に苛まれたO5評議会と果てしなき配下の軍勢の者どもさえも絶対にその効力を疑問視しない程には十分だった。所定の場所に設けられた鎖が永久に敵を押さえつけてくれるだろうと確信していた。

されどマブ女帝は非常に忍耐深かった。

この世の奈落へと幽閉され、女神は待ち続けていた。ただ時の恩恵を受け、女神は連中財団上層部が自分の陰謀を嗅ぎ付け、その囁き声を二度と耳にせぬよう苛ませている光景を見ていた。女神は連中財団上層部が監房を次々に周囲に建てていき、自分たちのやり方で女神を止められるには十分だと期待している光景を見ていた。そして女神は連中財団上層部が遂に安息を見出し、永久の安寧と考えていたものへの到達に満足した光景を見ていた。

それでも依然として、嘲笑の笑みは消え去ろうとはしなかった。女神はどこにも錆一つ無かったとしても、全ての鎖が最終的に切れるのを知っていた。そして間を置かずして、地球全土で全ての錠と鎖が一斉に千切れ落ち、女神のいましめもまた同様となった。

勝利を収めるのに要した時は100万分の1秒だった。


人間どもの焼け焦げた霊廟の頂にて、女神は誰も寄せ付けずに立っていた。その頭上では、果てしない終末的小宇宙が広がるのみであり、幾世紀も後で、とうとう予言されていた光景が現実のものとなっていた。足元にあるのは、かつてサイト-01だったものの燃え上がる廃墟以外に何もなく、今や女神の頭上の不快極まりない愚弄の具現化たる冠には昔日における監督者どもの十三の魂が収まっていた。管理者と呼ばれたがっていた者の魂は今や冠に宝石として嵌め込まれていた。

されど眼前においては、周囲の至る所で繰り広げられる終わりなき神々の決闘、携挙、あるいは終末の最終決戦アルマゲドンより遥かに重要なものがあった。

眼前においては、報復の時が訪れていたのだ。

歯をむき出しにして恐怖に満ちた笑みを浮かべ、マブは約200年ぶりに両腕を伸ばした。指先に力が戻り始めると、現実そのものの亀裂が女神の周囲でほつれ始め、同時に宇宙に穴が生じた。遥か昔なら、女神は正当な領土に属するこの地域、そこでの行いの危険性までも注意を払ったかもしれない。だが今宵、女神には最早あの時の性格ではない。今宵、女神は最早支配せし王国が美の一つに数えられるのを望んだ征服女帝ではない。今宵、女神は裏切られた姉妹であり、報いを受けるのを覚悟していた。

海原を渡るには二歩で事足り、マブの尋常ならざる巨体はやや北へと移動した。賢しくも二度の瞬きで古ぶるしき神々を倒し、女神はファクトリー地下にて過ごしてきた時を振り返っていた場所に視線を向けた。手を二度握り締めるだけで、山々を真っ二つに粉砕し、女神にとってのブルータスの最後の安息の地を指差した。

エスターバーグの町は既に都市防衛の準備が完璧に整っていた。

名づけの母親である発明家ジ・インベンターの背の上に築かれた、エスターバーグ東方の都市はマブ女帝の接近に笑い声をあげているだけだった。火力兵器の発動と魔法の準備を済ませており、二度指をパチンと鳴らすと、女神の妖精態の手の内に銀河2つ分の長さの槍が出現した。敵へと狙いを定めており、発明家ジ・インベンターの眼は強固な意志だけが燃え上がっており、怒りの叫び声を上げた。

「姉妹よ!」発明家ジ・インベンターは叫んだ。彼の女神の肉体はどう見ても戦いの準備が万全の状態だった。その眼には狂気が宿っていた。その両手には、1本の邪悪な槍 ― イリライト・チューナー ― が収まっており、マブの命を絶たんとしていた。そしてその心中にて、浮かぶ考えは一つだけだった。大昔のあの日、女神が終止符を打つのを拒んだ行いに終止符を打たんとする意志だった。

「アウロラよ!」マブは答えた。赤き光の煌めきがその指の間から漏れて、女神の周りを取り巻く現実そのものを折り曲げている、昔日に奪われた名前の純然たる力があった。女神はお構いなしのようだった。その代わり、女神は両腕を広げると、その場を飛び回っている数多の神々から力を奪い取った。世界を破壊するには余りにも強力な稲妻を構え、彼女は唸り声を発するのみとなり、その眼の虹彩を姉妹に定めた。「どれほどこの時を待ち望んだか貴様が知る由もあるまい。」


実のところ、世界が滅亡するまでには少々時間があった。

現実の大半にとって、終末の最終決戦アルマゲドンは遂に訪れたザ・ロックの開錠と大差なかった。尤も二柱の妖精女帝にしてみれば、数え切れぬ憎悪を抱き続けた永劫の歳月の果てにお互いに顔を合わせる時だった。その後には、何もなかった ― 遠方で起きた崇高なカルキスト・イオンの現実への凱旋さえも ― 大した話ではなかった。

先手を打ったのはマブだった。発明家ジ・インベンターが目を瞬かせるよりも先に、彼女は突進し、山脈サイズの拳を姉妹の顎目掛けて伸ばした。純然たる悪意の白き光が指の先端に広がった。太陽に比肩し得る力は昔日に最愛の者と女神が呼んだ者の脆く、青白い肌ただ一転に狙いを定めていた。

アウロラの槍が宙へと放たれた。光速以上の速さだった。アウロラの顔とマブの手の間を飛んでいった。武器の先端 ― 長きに渡って埋もれていた後でさえ、相変わらず二股に分かれていた ― バターの如く女帝の肌を真っ直ぐ切り裂き、指1本を丸ごと切り落とした。ステンレスの魔力食らいの力に対抗できるよりも先に、チューナーの秘文字が活気づいた。女神の魔法が幾分発明家ジ・インベンターへと流れ込み、アウロラの全身に取り込まれた。

遥か昔、アウロラは作り手本人を敵に回してチューナーを使うとは考えてさえおらず、マブの血脈を駆け巡る魔法を盗み取れればと思っていた。されど今宵、女神には選択肢がなかった。マブの眼に入り込んでいる純粋な恐怖の煌めきにより、女神の行動規範への背信は実質的に価値があった。

マブは慄き、後ずさった。掲げられた女神の両手からは最早自信が消え失せていた ― 稲妻は最早指の先端を流れておらず、エネルギーはチューナーの力により奪われていた。数秒の時を要したが、アウロラは変化を見届け、正面から突進した。彼の邪悪な槍はマブの無防備となった今なお鼓動する心臓めがけて投げられた。

マブは誇り高かったとはいえ、愚かでは無かった。これから起こらんとしている事にも気付いて後退あとずさると、女神の巨体は足元で出現したヤリーロの支配地域の山脈を更地にしてしまった。マブは心中奥深くに意識を集中させると、何千年もの中で初めて、長らく使えなくなっていた現実改変の能力を目覚めさせた。

女神はアウロラに目掛けて稲妻を投げた。

マブは髪飾りの内に囚われし十三の不運な魂全てに手を付けた。アウロラが全力を尽くしてその炎を自らの手で捕えんとしている一方で、マブは今なおこの大地を歩む13人の最強の人間の奇跡術師と半神どもの生命の源を直に叩いた。恐怖の叫び声が響き渡り、女神はそのエネルギーを直接、その額に直に磔にされて苦しんでいる管理者の肉体へと流し込んだ。今や伝導体に過ぎない男の身体はアウロラの怯えた顔に狙いを定め、従えていた評議会の全ての力を前方に放った。

彼より発せられた狼煙火の音が無ければ、もしかしたらマブは管理者の叫び声を耳にしていただろう。

だがアウロラは愚かでは無かった。真っ先にマブの炎に対処すると、今や女神も同様に未使用の力の源泉に手を伸ばした。女神が姉妹を倒すよりも前のまだ残されていたほんの僅か一瞬の内に、女神は何百万もの拷問されし者どもの怒りを込めて叫んだ。その怒りは今この時に解放されたのだ。指を一度弾くだけで、昔日には牢獄だった森林の元拘留者たちが真正面に現れた。女神は何を成すべきか命じる必要は無かった。発明家ジ・インベンターに対する感情が何であれ、囚人たちはマブに最後の、避けられぬ死を与えんと死に物狂いになっていた。

再び時間の流れが滞ると、昔日の何百万もの名もなきものどもがアウロラの周囲に盾を形成し、マブの呪文スペルの一撃に真正面から立ち向かった。

これまでになく疲弊し、二柱の女帝は後退あとずさった。両者の眼は依然として互いを捉えて離さぬままであり、例え戦闘の続行が自分の魂の最後のエネルギーの直接注入と、その後の死に至ると分かっていたとしても、今においてさえ降伏する気は皆無であった。されど大した話ではなかった ― 両者はこの死闘の結末は不合理にして、生死そのものも凌駕するものと知っていた。もし勝利が周囲の世界と同様の滅亡を意味するとしても、構わなかった。

頭上の天空で繰り広げられるエンティティの五倍の培養の音と光にお構いなく、両者は一歩を踏み出した。両者の宇宙に響く不合理の末裔の金切り声さえもこれから起きる出来事を止められなかった ― 否、起きなければならない出来事である。

これ以上の時間を浪費する真似はせず、両者は同時に向き合う敵へと突進した。

アウロラがチューナーを振るうと、彼の武器はマブの喉元に引き寄せられたも同然だった。僅かな内の最後の抵抗として、妖精族の邪悪な姉妹は両者の間の手を動かした。その指は今度は純然たる鉄で出来ていた。遠方の某所にて武器により真っ二つにされて月が爆発する音が響き渡った。武装した女帝の完全の力の前に耐えられなかった。アウロラが反応できるよりも先に、マブは目の前に拳をぶつけ、管理者の焦げた肉体を最後の力を宿す護符として拳でしかと握り締めた。

エスターバーグ全土の消滅とマブの手で苦しめられた痛みで叫ぶと、アウロラは拳を受け止めた。

息切れしつつも、女神は姉妹の手首を掴んだ。宇宙の色彩をした爪でマブは少々引っ掻いたが、反応は一切なかった。昔日にて発明家ジ・インベンターが血を流して人々を解放したのと同様、今や女神は再び同じ行いをする覚悟は出来ていた。マブの怒りが文字通りその手を苛んでいたという事実は大した話では無かった。

しかしながら、重要だったのは妖精族の善良な女神の踵の蹴りがマブの顔面を見舞ったことだ。邪妖は叫び声を上げており、その鼻は折れていた。女神はやられっ放しでいるのを良しとしなかった。その代わり、フレデリック・ウィリアムズの肉体の最後の意志を少々使いつつ、その手で戻ってきた足の膝を掴んで真正面から粉砕した。最早立っていられなくなり、発明家ジ・インベンターは崩れ落ち、その体は亡骸同然となって両者の足元の森林を更地にした。

マブは更なる殴打を食らわせようとしたが、そうはいかなかった。今や足元にいるアウロラも更なる殴打を食らわせようとしていたのだ。女神も体内には最早エネルギーが底を尽いていたのは分かっていた。だがそうだとしても、両者はそのまま諦めるのを良しとしなかった。ここにおいてさえ、両者は互いを凝視し、瞳には死を宿し、後退の一手を拒絶した。その両者の鍔迫り合いの中で、それまで出来た唯一の行動に出て、それまでやる気があった唯一の行いを果たした。両者は心中奥深くに意識を集中させ、そっくりそのまま姉妹に視線を移し、失われて久しい原語で自滅的な言葉を口にした。

目指したものへと辿り着いて終わるという結末は1つしかないのを、両者は知っていた。だから勝利を確実にすべく必要な行動に出た。

最後に両者が互いを見ると、神格化された陰陽の内で味わえた感覚は憎悪以外に無かった。最後の呟きで、憎悪はほんの一瞬の内に爆発し、両者を飲み込んだ。二柱の君主たる女神の解き放たれた魂の大噴出の波はポーランド全土を飲み込んで広がっていったのだった。






















































ああジーザス我らの神よクライスト。」オリヴィエ・ギネスは息を荒くしており、優しく両目を擦った。「一体全体あの光景は何?」

モルガン・ケールは肩をすくめただけだった。「強い幻覚を見せてくるって言ったじゃないですか。けど考えてみてくださいよ。」そう彼女は言うと、慎重に立ち上がった。「少なくとも私達の居場所が再度壊滅してはいません。」

実際その通りだった。オリヴィエは彼女に投与せねばならなかった ― 2人が試したあらゆる超常薬物の内で、マルチ・セナスは頭痛と少々割れた床以外には殆んど後遺症は無かった。前の週にフィルター未使用のクラウン・ミルクとエストロゲンの実験が引き起こしたワイヤー齧りと5秒の内での消化不全と比べれば大きく改善していた。

「それで。」オリヴィエはそう言うとモルガン同様、この世の終末さながらに散らかった居室内で立ち上がった。「あなたも同じ光景を見たの?」

モルガンは元気に頷いた。「無論私もです。」視線を部屋の隅にだらしなく投げ捨てられた錬金術実験道具に移した。容器の中には、今しがた吸引した粉末の最後の一つまみが相変わらずあった。すぐに2人は顔を見交わした。

「何を考えているか分かる?」モルガンはそう言うと、満面の笑みを浮かべた。

オリヴィエは顔をしかめた。「ママに見つかったら殺されかねないわ。見つけたのが学部長でもダメ。」

もし見つかってしまったらの話。もしもの話!」モルガンはとうに容器を手に取っていた。「それにキャンパスから問い質されたら、研究目的と言えば済む話です。ICSUTが学徒に許可した行為の内で史上最悪のものと比べれば些事でしかありません!」

オリヴィエは顎を撫でた。「そういえば…。」

友人に近づきながらも、今はソファーで開きっぱなしになっている歴史のノートから一瞬足りとて目線を離さなかった。また提出日まで一週間あり、それを承知していたとはいえ、頭の中では言葉が全く浮かんでこなかった。加えて妖精帝国の貴族の文化的実践について書き上げるために実際に必要としている情報もだった。

いつもはエスターバーグ各地の無数の図書館の1つに行けば済む話だっただろうが、マブ女帝と魚1匹の間の恋愛話が最初で最後の収穫となってしまい、本当に必要な情報を得るには釣り合わないと考えたのだ。

とはいえ今や、考えが浮かんだ。少々威勢よく容器を振っているモルガンを見、すぐに開きっぱなしのノートに視線を戻した。顔には笑みが浮かんでいた。

「ねえ。妖精帝国が絶対に滅亡しなかった世界を見られるように調合できない?」

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