識者の目線 - 南関東大災害から5年
評価: 0+x
blank.png

識者の目線 - 南関東大災害から5年

logo_seidan.svg

世説通信
2022.12.17 09:17

20221217_gov.png

黙とうをお願いする政府広報の広告

2017年12月17日、日本は未曽有の大災害に見舞われました。南関東大災害では現在までに900万人以上の死者・行方不明者が発生し、この災害は今なお継続しています。3000万人以上の被災者のほとんどが、5年経った今も避難生活を余儀なくされています。同災害によって生じたトウキョウ・ショックは国際政治・世界経済に深い傷跡を残しており、日本社会の再建は見通しが立っていません。

5年という節目を迎えた今、南関東問題に詳しい専門家の方々とこの大禍を振り返り、日本の行く末を考えていきます。

南関東大災害とは何か(玉城 隆)

玉城 隆(たまき たかし)
1970年千葉県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。98年に文部科学省室戸研究所へ入所。防災研究室長。

——南関東大災害は、世界史上有数の災害となりました。

今世紀の自然災害としては最大規模の物となった南関東大災害ですが、既に知られているように関東地方でこのような災害が発生したのはこれが初めてではありませんでした。これは、大規模現実崩壊性災害群という現実崩壊が要因で様々な異常現象が発生する自然災害にあたります。自然災害としての現実崩壊は様々な要因が重なって発生すると考えられており、その仕組みは未だ科学的に解明されていません。現在要因として考えられているのは、地震や噴火のような自然災害、複雑なレイライン網の破綻、巨大実体の動き、信仰の集積や流動、集合認知などですね。関東地方は歴史的にこの種の災害が発生しやすいことで知られていて、関東大震災や第二次世界大戦末期などでも大規模な現実崩壊が発生していたことがヴェール政策崩壊後の情報公開で明らかになっています。

——政府や正常性維持機関の防災対策不足も指摘されています。

ヴェール政策施行期から、日本政府や正常性維持機関は協力して「関東大規模現実崩壊性災害群」への対策を行ってきました。元々古代の「要石」や江戸幕府の「大江戸風水大結界」は、この災害の抑止を1つの目的としていましたから、ノウハウは十分にあったんです。史跡の保護と防災の更新のせめぎ合いという難しい問題はあるものの、この試みはある程度成功していました。小規模な現実崩壊性災害は何度か発生したものの、全体としては災害を封じ込めることができ、世界有数の都市圏「東京」を保護することができていたんです。ヴェール政策崩壊後も、自然災害としての現実崩壊・現実崩壊性災害の危険性を周知していました。人為的にではありますがポーランドやアメリカ、スペインなどで度々現実崩壊に由来する被害が多数発生していたという背景もあります。

死者行方不明者900万人というのは確かに歴史上類を見ないものですが、それは災害の規模も同じです。むしろ、これでも犠牲者はかなり抑えられていると言っていいと思います。

——ではなぜ今回のような破局的災害が発生したのでしょうか。

研究も進んでいませんから、何かを断言することはできません。災害規模の違いがあるのではないかとか、彼帷科学の普及や他人類共存が現実性の揺らぎを増幅したのではないかとか、色々なことが言われています。近年有力視されているのが、「集合意識論」とH. G. バークレー氏の提唱する「認知現実論」に基づく「畏怖増幅論」です。1998年以降、人類は現実崩壊による悲惨な出来事を何度も目にしてきました。その中で、自然現象としての現実崩壊の危険性を周知されるとどうなるでしょうか。当然いつか来るかもしれない災害への恐怖心は高まることとなります。人間の現実性は周辺環境のそれよりわずかに高い(バークレーのパラドクス)ことが知られています。それ自体では大きな問題にはなりませんが、関東に住む数千万人が「現実崩壊性災害」への恐怖心を抱くと、どうなるでしょうか?この災害に関しては、東京都市圏そのものが一種の現実改変者のようになり、政府や正常性維持機関の想定をはるかに超える破局的災害の一因となった、というのがこの仮説です。高い防災意識が、却って仇となったということですね。

——現在も続く南関東大災害ですが、被災地域では具体的にはどのような災害が発生しているのでしょうか?

現実崩壊が要因で発生する災害は多様です。南関東大災害発生当初から観測された人体発火現象や気温・気圧の急変、ビル雨、未確認実体出現、心身の変容などは今なお観測されています。それ以外にも広範に見られる特徴的な災害が多数あるので、その中から幾つか紹介しましょう。

例えば時空間異常です。南関東地域では、単純な現実崩壊に加えて、近傍の並行宇宙や別空間との融合・分岐・離散が発生しているとみられています。南関東省の調査では関東平野の実面積は10倍以上になっており、いたる所で時空間の歪みが発生しているようです。地図上では同じ距離に見えても、ルートや方向によって距離が伸びたり、横断にかかる時間が長くなったりするわけですね。災下東京(被災地域)全体としても、地域外に比べ時間経過が有意義に早い傾向にあることが、帝都大学などの研究によって明らかにされています。

もう一つ特徴的なのが、能記災害・所記災害。これは認識災害や記憶災害の1種で、言語学でいうシニフィアンとシニフィエに混乱をもたらします。シニフィアンというのは「りんご」という音や文字表現、シニフィエはリンゴという概念やそのイメージをさします。これが混乱する訳ですから、リンゴを指す単語が「りんご」ではなくなったり、或いは「りんご」という語の指す対象がリンゴではなくなったり、広がったりするわけです。

emblem_chybar_city.svg

チャイバー市(旧千葉市)などの特別自治区の名称も、能記災害の影響を受けている。

最後に挙げたいのが、空間変異・異空間接続です。先ほど「近傍の並行宇宙や別空間との融合・分岐・離散が発生している」と申し上げましたよね。実はこれ、世界各地の現実崩壊性災害で類似現象が多く確認されています。神隠しや稀人、或いは現代のネクサスや跳躍路をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。あるいはアフリカ・南アメリカで発生したような現象が断続的に発生していると想像していただいても構いません。「何らかの理由で異空間や並行宇宙と接続し、互いの構成要素が行き交う」という現象が、南関東でも発生しています。一部の学者は、これについても認知現実論的な増幅効果が働いて、大量の物質や存在が災下東京に「顕現」しているのではないかと主張しています。具体的なメカニズムはともかく、事実として、災下東京には多種多様な環境や物質・存在が出現しています。目まぐるしく景色が変わり、現実には存在しないような物質や生物が至る所に存在する危険地帯。それが現在の災下東京です。特に災害の激しい地域では、特区などの安全地帯を除き、生身では数十秒~数分生き延びられれば運のいい方だと言われています。

——南関東大災害が収束する日は来るのでしょうか?

地球史規模でみれば、このような大規模な現実崩壊性災害は何度も発生しています。今回の災害も、将来的には安定化するものと考えられています。ただその期間や過程については不確かです。数年で安定化するかもしれませんし、数百万年を要するかもしれません。

ただ、現実崩壊性災害は必ずしも悪影響のみを残すものではありません。関東平野も含め、大規模な現実崩壊性災害のホットスポットは多くが文明や文化が発展した地域と重複しています。現実崩壊による現実の揺らぎとエネルギーが文明の発展を刺激してきたと考えられています。同じ関東で発生した大規模な現実崩壊性災害の後は、関東大震災の後も、第二次世界大戦の後も、関東・東京は大きく発展しました。関東が再び飛躍の時を迎える可能性も、十分あると考えています。

日本は復興できるのか(滋野 重蔵)

滋野 重蔵(しげの じゅうぞう)
1959年徳島県生まれ。早稲田大学政治経済学部修了。1982年、通商産業省に入省。2003年、退官。同年衆議院選挙にて比例四国ブロックで当選。以降5期を務める。南関東大災害で重傷を負い、議員を辞職。日本新科学大学名誉教授。

——南関東大災害によって、日本は致命的なダメージを受けました。

大災害によって西宮総理を始めとする行政・立法・司法の三権の中核を担う人物の多くが死傷しました。体制の立て直しが速やかにおこなわれたのは、残存議員・閣僚の協力と「一般協定」に基づく正常性維持機関の施政あってのものです。一方で、「一般協定」に基づく施政や日本自由党政権には「主権侵害だ」「翼賛政治だ」などと国内外から批判が浴びせられています。

しかしですよ、南関東大災害によって日本は東京という政治・経済・文化の首都(集積地)を一度に失ったわけです。人口の7%を失い、東京危機によって景気の著しい悪化と日本円の信用不安が発生した中で、この一連の東京事変と称される政治改革は最善に近い選択肢であったと考えられます。体面であっても日本の自治独立は守られた上で正常性維持機関の全面的な支援を受けられたということは、今後50年、100年を見据えたとき有効に働いてくるでしょう。この過程なしに、日本が再び日本としてやっていけるだけの土台が作られたとは考えにくい。

——国家存亡の危機にあっては、ある程度統制的・独占的にならざるを得ないということですね。

そういうことです。ただ、このまま現行の体制を維持すれば良いとも思いません。独裁や統制が長期化すると、それは社会が倦む要因となります。歴史上何度も繰り返されてきた長期独裁政権の失敗に学ばねばなりません。

——細谷総理は近年健康不安が囁かれています。

細谷さんは西宮内閣では総理補佐官を務めておられました。超常関係政策を担当されていたことや西宮派でのポストが理由で、成り行きで若くして総理代理、総理となりこの難局に立ち向かってきたわけですから、ストレスも尋常ではないでしょう。ただ細谷総理が退任されるとなると、後任を巡る議論も激しくなると考えられています。日本自由党は「一般協定」施政下に成立した呉越同舟の翼賛政党ですから、二沢政務会長が「自民党と新進党の悪いところを集めた」と喩えたように深刻な党内対立を抱えています。最悪のシナリオは、日本自由党が分裂して新党が乱立するパターンでしょう。船頭多くして船山に登ると申しますが、喧々諤々の政争が繰り広げられて組閣もままならなくなることは避けていただきたい。

——経済についてはいかがでしょうか。

経済も政治同様、ある程度国内経済が自立してきた段階で再び市場の自由化を促進するべきでしょう。この経済の自立とは、国内企業が正常性維持機関や国際資本系の巨大企業群に相対できる程度に発展することと考えております。

——国際資本に対抗できる日本企業というのは、実現可能なのでしょうか?

世界経済レベルで対抗するのは暫く難しいでしょう。けれども、日本あるいは南関東というローカルな場であれば今でも十分太刀打ちできる可能性はあると思います。日本政府は国内企業に対する優遇政策も取っています。例えば薬品業界の企業連合Yakushiのように、産業の集約を図って外資に対抗するというのは、一つの選択肢足りえるでしょう。或いは正常性維持機関ら「四頭」の庇護下に入ったり協力関係を築いたりして、そのノウハウを吸収するようなしたたかさも必要になってくると思います。

20221217_yakushi.png

南関東大災害を追悼するYakushiの広告

南関東事業の功罪(七種 真琴)

七種 真琴(ななくさ まこと)
1985年京都府生まれ。京都大学人間・環境学研究科修了。MC&D、ゾフテカ、プロメテウス・ジャパンを経て2021年より関東先端科学技術大学教授。

——南関東州はどのような状況にあるのでしょうか?

2019年に災害が続く関東平野が南関東州として再統合されたのをきっかけに、「南関東大規模現実崩壊性災害群に対処するための特別法」などの諸法案・政令が制定されました。これによって、具体的な南関東州内の行政機構や産業構造が整備されています。南関東州内に産業研究奨励区域や特別自治区域が設定され、入域免許の取得が義務化されました。

産業研究奨励区域は東京サークル、企業研究都市などとも呼ばれ、企業や団体に優遇措置を与えることで産業・研究の振興と災下東京の開拓、需要創出による景気回復などを狙っています。特別自治区域は災下東京、東京地方などとも称される今尚大規模な災害が継続している地域で、ODSE産業の拠点となる多数の前線自治区が存在しています。

名目上はいずれの地域も日本、南関東州の統治下にありますが、災害の影響もあり高度な自治権が付与されています。産業はODSE産業やNBR加工・研究、復興開拓事業が中心です。ODSE産業というのは別次元・空間探索産業のことで、現実崩壊状態にある東京地方を探索して喪失資産や非基底資源の回収を行うというものです。この産業の従事者は主に被災者や出稼ぎ労働者、中国や韓国、スペインなどから来る難民などで、一般に「探京家」と呼称されます。特別自治区域では多文化が融合した独特の文化が形成されていますね。

20221217_SK.png

探京家を募集する南関東州の広告

——ODSE産業は日本経済にどのような影響を与えると考えられますか?

NBRは、基本的にODSE産業によってのみ獲得されます。東京地方では大規模な現実崩壊が広範かつ長期間継続している為、他地域のODSE産業に比べ大量の資源を比較的安定に算出できると期待されます。またNBRは新物質のみならず新技術、未確認生物、美術品等を含みますから、その意味でも日本経済のカンフル剤足りえるでしょう。

巨大なNBR需要が発生するということは、ODSE産業に巨大な労働需要が生まれるという事です。不況にあえぐ日本では、失業率の上昇を抑える重要な産業とも考えられます。

——ODSE産業では、どのような問題が存在していますか?

第一に過酷な労働条件です。災害が続く東京地方を探索するODSE産業の労働条件は劣悪で、常に死の危険が隣り合わせです。時間経過も早い傾向にあるため、東京生活は寿命を縮めると言われています。しかし世界的な長期不景気の影響で労働力は溢れており、一攫千金を求めて東京へ潜る労働者も少なくありません。

第二に政治と企業、そして闇社会の癒着です。企業・団体への優遇措置を取っている関係上、官民の癒着や汚職に関する疑惑は尽きません。

——どういった企業がODSE関連産業に参与しているのでしょうか?

まず「四頭」と呼ばれる巨大超常組織、すなわちSCP財団、世界オカルト連合、MC&D、プロメテウス研究所です。いずれもヴェール政策の支持者であり、前三者はプロメテウス研究所の主要な株主でもあります。その他に中国の敖光科技、ポーランドのスピリタス、UAEに拠点を置くクッワ、日本のYakushiや福益グループのような巨大企業グループが重要な地位を占めています。他にも神々廻グループや日本生類創研を前身に持つニッソ医機なども存在感があります。中心的な地位にあるのは基本的に多業種の柱を持つコングロマリットで、大災害や19年の大陸変異事件以降没落した企業を吸収して成長した新興勢力が多い印象です。

20221217_nisso.png

南関東大災害を追悼するニッソ医機の広告


logo_seidan.svg

世談通信
世の中をもっと分かりやすくをモットーに。

この著者の人気記事

識者の目線 - 安村幹太郎

19世談通信

none.svg

識者の目線 - スカイ大阪構想

25世談通信

none.svg

識者の目線 - 日枝・貫井問題

16世談通信

none.svg


その他のおすすめ記事

"マジ"の歴史 ⓯

47

none.svgつぼまる
wagamichinori_yonekitsu.png

南関東大災害追悼式典演説全文

11

none.svg記夫
20221217_gov.png

ポストヴェーリズム考

16

none.svg蝮肉団子
none.svg

東京地方各地でのチャネリングのコツ

34

logo_explopolitan.svg探京通信愛好会
none.svg

ちょっとひとたび カメドニア編

18

none.svgJannie Trip
none.svg

アンチ・アンチ・ミーム

30

none.svgうにちゃん
none.svg
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License