”零下現実”への提言
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Item#: SCP-001
LEVEL5
最高機密
収容クラス:
tiamat
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撹乱クラス:
amida
リスククラス:
danger
アイテム番号: {$item-number}
レベル5
収容クラス:
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副次クラス:
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撹乱クラス:
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リスククラス:
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SCP-001の全域スキャン結果。画像は編集されている。

ALTIUS_DigitalSimulation_Systems.jpg

アルティウス・デジタルシミュレーション・システムズ、内観。

補遺001/III: 議事録


音声映像転写 2038/05/18

前文: 本ファイルは、廃止されたプロジェクト: アルティウスの過去の議事録について言及しています。当時、プロジェクト: アルティウスの現場監督であり、形式セクション議長を務めたイライジャ・パーシヴァル管理官は、この時点で確認されていた問題に対処すべく、関係者間の合同会議を招集しました。

参加者:

  • イライジャ・パーシヴァル管理官、
  • ビル・ムーア管理官
  • ベッドロック・エンダース室長.サイト-17収容スペシャリスト。認知心理学を中心とする研究セクション (モノゴン・ディヴィジョン) において革新的な収容作戦を成功させた経歴を持ち、その功績に応じて召集された。
  • 塚原 ██主任.形式セクション研究主任。
«転写開始»

<4名は監督サイトの司令室に滞在している。>

塚原主任: さて、諸問題をさっさと片付けてしまいましょうよ、門外漢さん。

エンダース室長: 君がこの議題について理解していることを願うよ、頼むから。知っての通り私の管轄は認知心理学だが、生体の脳活動についても研究している。だがな、管理官。君のその非生産的な業務内容の中で一体全体何を発見したって言える?君の部門は知っての通り単純明快で不利益な作業しかしない。あらゆる天文学的・科学的・熱力学的その他もろもろの自然条件を調べまくった挙句、それぞれの相互作用がどういう可能性を導き出すのか解析する、実に非効率だ。

パーシヴァル管理官: 形式部門について侮辱するのを今すぐ止めてもらおうか。

ムーア管理官: この会議を遅延させる理由はありません。イライジャ?あなたの説明を待っていますよ。

パーシヴァル管理官: (間を置く) — よかろう。諸君らに集まっていただいたのは他でもない、この崇高なる形式部門の研究途中に出現した新たなる脅威への対策と、対応のためだ。(笑う) — 知っての通り、私はイライジャ・パーシヴァル、形式部門の担当だ。形式部門とは、異常性が発揮される条件を研究する例外的な担当部署であり、その想定されるあらゆる — 非論理的な — 可能性、形式を追求し、新たなる異常特性を解明するため活動を続けている。

塚原主任: ここで述べる「形式」には、一切の科学的根拠を追求するつもりはありません。例えば因果関係のない雨天と雨傘を分析することで、その存在が実際に概念的関係図に異常を持っていることが判明したり、または類似するケースで — 要するに「数学的に」関係性のないと思われる場所にこそ存在する、アノマリーの収容を担当とするのです。

パーシヴァル管理官: アルティウスにおける地球全土の探索・解析オペレーションは、つい前日までは順調に進んでいた。この先端的開発目標は、アルティウスと呼ばれるプロジェクトの管轄で地球全土を全般的に観測することで、あらゆる異常特性を未然に発見することを目的としていた。太陽フレアの変動から、今日の出生数に至るまで — あらゆる条件を観測することが目的だった。

<プロジェクターが起動し、前面に画像を映し出す。>

パーシヴァル管理官: このプロジェクターに示された情報は、地球電離層における先日中の電子密度変動の具合と、地球全体における障害発生数の推移を示したものだ。このデータに示される通り、先日中における電子密度の変動は、太陽フレアに依存したデリンジャー現象にも匹敵する異常な撹乱が発生したことを示唆している。当然だが、当日中に太陽フレアの大規模な変動は発生しておらず、これが太陽由来のものではないことが理解できる。

ムーア管理官: こちらでは確認されていません。

塚原主任: この変動を原因である異常な周波数複合電磁波は、物理的に観測できるものではありません。先日発見された電気素量に関する最新の理論はご存じですね?ええ、微視的スケール多元宇宙に依存した「端数」にまつわる観測データです。我々はこれを「零下現実 (Reality Below Zero)」理論と呼んでいますが — とにかく。「零下現実」理論に基づく最新の観測データでは、このデリンジャー現象が確認できます。そして、その周波数特性を詳細化すると、個別の周波数帯域はかなりの精度で一定周波数を保ち続けていました。

パーシヴァル管理官: 注意すべきなのは、これらの周波数はすべて人間の脳活動に起因する正常脳波のδ・Θ・α・β波に対応しており、その比例的な逆位相の位置にあることが推測されている点だ。つまり、人間の脳活動に類似した、非常に高周波の逆移送電磁波が繰り返し発信されており、それが地球全土を内包するレベルで — あるいは太陽系か、銀河系スケールで — 拡散されていることを示している。

エンダース室長: 単なる偶然かもしれない。あるいは確率収束アノマリーの類だ。

パーシヴァル管理官: ボルツマン脳のような天文学的確率だ。それがこのような偶発性を持つとは考えにくい。更に述べると、この逆位相電磁波が発信され始めた頃から、一般人の脳活動に明確な異常現象が生じていることが現時点で判明している。仮にこの周期的電磁波のことを「A-87放送」とでも呼称しよう。次の画像を見てほしい。

250px-Spike-waves.png

人間の脳波。

パーシヴァル管理官: この図に記録されていないものがある。A-87放送の後、我々は40名以上の被験者を集め、同様の脳波測定を行った。その結果、元来より一般的に観測されるヒトの基礎律動脳波φ波.基礎律動脳波に関係する特定の周波数を指す。、睡眠第5段階脳波.睡眠時脳波に関係する特定の周波数を指す。、頭頂部鋭波ζ律動.鋭波律動に関係する特定の周波数を指す。が完全に沈静し、代わりに他の基礎律動脳波が異常に活性化していることが確認された。この現象を踏まえると、A-87放送は明らかに人間の脳活動を抑制し、代わりに特定の脳活動を異常に増幅させていることが理解できる。

エンダース室長: ちょっと待て。人間の脳波と電磁波放送がどのように相互作用するのか理解できん。

パーシヴァル管理官: 人間の脳が機能するときには、ニューロン神経細胞から一定間隔で電気信号 (impulse) が発生し、これを通して情報が伝達するような仕組みになっている。この樹状突起と軸索の間に存在するシナプス空間には、基本的に外因性の異なる電気信号は伝わらないように防護されている。しかし、先ほどの「零下現実」理論によると、このシナプス空間にも若干量の電気信号が流入することがあり、特にA-87放送のような逆位相電磁波が流入すると、このインパルスはノイズ化してしまう。結果、特定周波数に依存した脳活動が抑制されてしまうことがある。

ムーア管理官: これが偶発的に起こる確率は?

パーシヴァル管理官: ゼロだ、全くもって。我々はこれらのインパルスをそれぞれ、現時点で持続している正常脳波を「プネウマ」、抑制されてしまった異常脳波を「クオリア」と仮に命名している。A-87放送とクオリアにどのような関係性があるのかは不明だが、現時点ではもはや解析することすらできない。

エンダース室長: ほう、なるほど。現時点で起こり得る問題はほとんど把握した。要するに君ら形式部門は、その異常脳波を抑制している疑いがある異常な宇宙放送について研究していて、それが全くもって悪意ある攻撃であるとさえ考えているのか。

パーシヴァル管理官: そうだ。我々はプロジェクトに対する追加支援を要求しようと考えている。

<エンダース室長が複数の書類を取り出し、それをパーシヴァル管理官へ突きつける。その書類にはO5評議会 (監督評議会) のサインが記入されている。>

パーシヴァル管理官: これは……?

エンダース室長: 監督評議会による現時点での見解を示した文書だ。これと君の述べた情報が正確であれば、監督評議会は恐らく君たちに対して追加支援を行う気はさらさらないものだと考えていい。加えて述べると、監督評議会はプロジェクト: アルティウスに対して特別な興味を示していない。

パーシヴァル管理官: 絶対に重視すべきものだ。これを無視すべきでない。

エンダース室長: 監督評議会はこれについてより良い対策方法があると述べている。最もコストパフォーマンスが高く、ヴェール前線に影響を与えることのないものだ。私は結局、これだけを伝えに来た。

パーシヴァル管理官: ペテン師め。

«転写終了»

後文: プロジェクト: アルティウスの最新の分析では、地球電離層にかけて微視的スケールの異常現象が発生していることが判明した。それにより、人間脳活動の一部が異常な形で抑制され、そのイベントは現在も解消されていない。監督評議会はこれらの事象に対し、関連するイベントを対外的に秘匿し、依存する学術的情報を全般的に抹消することが最も効果的であると判断した。現象の根本的な解決には至っていない。

補遺001/V: 科学的文脈


2

零下現実


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