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Title: ワンクリックコピーツール
Author: 7happy7
Adviser: C-take
License: CC BY-SA 3.0
Title: サイドバー
Source: SCP-JPサンドボックスII
Author: UNKNOWN, SCP-JPwiki
License: CC BY-SA 3.0
去ねッ!
この路地ではとある四天王がちょっと大事な会議を行うッ!
関係者以外の立ち入りはそんなに嬉しくないッ!
これが本音だッ!
覗くなとは言わんッ!だが一言言わせてくれッ!
覗くなッッッ!!!
議事録
・対比は入れていきたい
・排撃班には全滅してもらうか?
1.10/31までに娘が登場する話(7話?)までは行きたいですね
2.今後はストーリーを詰めていきましょう(このページのやり方)
3.ハブページとテーマカラー(紅白+α?)
4.各勢力の象徴文が欲しい(叙述トリックも仕込める)
5.落としどころ→ひとまずアレンラスボス案に向かう?
6.今後、蛇の手の能力と図書館への入り方について何か見えたらやっていきたい
7.後半はパート担当が組み変わる可能性がある事を念頭においておきましょう
プロット
レンジ(櫺)
男性、二十代。蛇の手の過激な一派である"百歩蛇ひゃっぽだの手"の元殺し屋。GOCが用いる生体エネルギー放射視覚化戦術認識システム(VERITAS)に対して、完全に透明になれる。獲物はホームセンターで買ったネイルハンマー。相棒のラムダに付き合い組織から逃亡するが、目的意識は希薄。
ラムダ・シナフス
精神的には女性、精神的には十代後半。レンジの相棒。謎の流体金属生命体。ミーム歪曲フィールドを展開して、周囲に「ごく普通の少女である」と認識させられる。人殺しを厭いとい、組織からの逃亡を決意。……レンジを「デカい弟」と呼ぶ。
ナギ
男性、二十代。GOCの6311排撃班("ヤシオリ")の班長。前班長の殉職に伴い、班長に就任したばかり。班長を殺害した蛇の手の暗殺者を追う。ヤシオリ班長専用のブレードを受け継いでいる。役割に己を押し込んでいる。
キョウ
男性、二十代。ヤシオリの隊員。ナギの昇進に伴い、副班長に就任。冷静沈着なサブリーダーとしてナギを支える。
マガタ
男性、二十代。ヤシオリの隊員。血の気の多い熱血漢。前班長の仇討ちに執念を燃やす。窮地には鋭い機転を見せる。
ルル
男性、二十代。ヤシオリの新入り隊員。メンバー中唯一の呪術師で、後方支援を担当。飄々ひょうひょうとした性格。
※あくまで案です。担当の方は「こいつ…妄想してやがる」ぐらいにお考え下さい★
これは復讐の物語である。
*
視界の果てまで続く空っぽの本棚1の谷間を、ラムダは相棒の姿を求めてふらふらと彷徨っている2。
「レンジ──どこにいるのよ」
泣き出しそうな声だった。いつも"頼りない相棒"を引っ張ってきた、しっかり者のラムダはどこにもいない。少し前に目撃した光景に、彼女は思い知らされていた。自らの選択が招いた結果を。
本棚にもたれて死んでいた、かつての仲間たち。
「アレン、雛山、パヴェル──シエスタ」
一人一人呼びかける。虚空に墓碑銘を刻むように。
(ごめん──あたしのせいだ)
きっと彼らは、自分を裏切り者と憎みながら死んでいったのだろう。事実、その通りだ。自分の我儘がヅェネラル隊とGOC排撃班、二匹の蛇を出会わせ、復讐の絡み合いを演じさせた。
それなのに、自分だけがこうしてのうのうと生きている。
「レンジ、どこに居るの!?」
排撃班に発見される危険も忘れて、ラムダは相棒の名を叫ぶ。いっそ、排撃班の連中でもいいから、生きて姿を見せて欲しかった。しかし──。
「!」
本棚を回り込んだラムダは、息を飲んだ。排撃班の隊員たちの死体と、本棚にもたれたまま動かない相棒の姿を見て。
慌てて駆け寄る。排撃班の隊員たちは、全員が額を粉砕されていた。レンジが一人でやったのか。見たところ、彼は大きな怪我はしていないようだが。
「レンジ、あんたはまた無茶して──」
ラムダの言葉が凍り付く。駆け寄る彼女の震動のせいか、ぐらりとレンジの身体が傾き、倒れる。そこで初めて見えた。何らかの爆発物にやられたのだろう、レンジの身体が半分になっているのが3。そんなになってもなお、レンジの手は獲物のネイルハンマーを握り締めていた4。
「────」
ラムダは絶叫しているつもりだったが、実際にはひゅうひゅうという病人のような吐息を漏らしているばかりだった。
よろよろとレンジの死体にかがみ込む。その懐から一冊の古文書が覗くが、彼女はそこまで気が回らない──この本なき図書館で、それはあまりに不自然な光景だと言うのに5。
(あたしが、あたしがこいつを付き合わせたから──)
相棒に頼っていたのは、自分の方だ。本当にレンジのためを思うなら、一人で逃げるべきだったのだ。こいつなら、ヅェネラル隊に残るにせよ、どこかへ移るにせよ、きっと上手くやっていけただろう。正義だの信条だの、そんな御為倒しにすがらない、適当で強いこいつなら。
ラムダの拳が震える──許せなかった。レンジを殺した不寛容な世界も、相棒を守れなかった不甲斐ない自分も。
何もかも、消えてしまえと思った。
その目から、漆黒の液体金属が流れ落ちる。否、涙などではない。人間ではない彼女に、そんなものは流せない。強烈な自己否定が身体の結合を緩め、崩壊を招いたのだ。それは、あたかも受け止めるかのように、開かれた古文書のページに零れ落ち6──。
「消えろ、消えちまえ、みんな、みんな、みんなみんなみんなみんなみんなみんな──!」
*
ラムダの慟哭に呼応するように、世界が歪んでいく。
公園の木々は生首を生やした植物7にとって変わられ、散歩中の犬は鎖に繋がれた奴隷に変貌し、東京スカイツリーはねじれたピラミッドのような建物へと姿を変える。
誰もそれを異常だとは思わない。あらゆる文字が見たこともない象形文字に置換されても、元からそれを使っていたと皆が信じて疑わない。コロシアムでは人々が奴隷試合に熱中し、母親たちは嬉嬉として我が子を生贄に捧げ、通りでは偉大なる女王の3000歳8の誕生日を祝うパレードが行進している。
最早、ラムダやレンジが生きていたことなど、誰も覚えていない。その喜びも、悲しみも。
それはある意味、究極の救いではないだろうか──9。
*
こうして、彼らの復讐は終わった。
※ここでバーンとタイトル画像(準備中)などを出してもいいかも?
+パート3(蛇の手視点・担当ykamikura)
※あくまで予定です。全体の完成度のためには、いくらでも改変します★
真夜中の横浜市中央図書館に忍び込むレンジとラムダ。横浜市立図書館の中枢を担う施設で、市立図書館の所蔵数では大阪市立中央図書館についで日本で2番目の図書館である10。
「昼間に来ても良かったんじゃないか?」
「駄目よ、どこに焚書者が潜んでいるか分からないでしょ」
「めんどくせえなぁ」
レンジは相変わらず緊張感がない。やっぱりこいつには自分が付いてやらないと、ため息をつくラムダ。
*
それより、少し前。
廃ビルに潜伏して、今後のことを相談する二人。おそらく市内の交通機関には、焚書者の監視網が引かれている。普通に脱出するのは難しい。そこでラムダは放浪者の図書館へ逃げ込もうと提案する。運が良ければ、他のもっと穏健な手のメンバーと接触できるかもしれない。
(ここで図書館と蛇の手の関係について、軽く説明)
「ヅェネラルは以前から横浜を熱心に調べていてね。おそらく図書館への通路を探していたんでしょう。他の手の管理下にない、自分だけの道を手に入れるのは、あいつの悲願だったからね」
「へえ、知らなかった」
「はいはい、どうせあんたは、そういうことには興味ないでしょうよ」
図書館への道の形態は様々である。一番多いのはドアだが、泉や鏡と言った例もある。だが、一つだけ共通点がある。その周囲には「失踪」「神隠し」「異世界」「異種族」「秘密の場所」などに関する伝承が付きまとうのだ。これまでにも、蛇の手は文献調査などの地道な調査から、いくつも道を発見してきた。二人もそういう任務に関わったことはあるから、やり方は分かっている。
「でも、横浜だぞ。そんな伝承あるのか?」
「そうなのよねえ」
妖精伝承が今も息づくヨーロッパの片田舎ならともかく、横浜は現代の都市だ。過去を尽く埋め立て、その上に墓標の如くそびえるビルディング。そこに道にまつわる伝承が生き延びる余地はあるのか。
ラムダはスマホで──万が一、焚書者に探知されても大丈夫なように、スリ取った物を使う──懸命に検索するが、横浜港の片隅で人身売買が行われているなど、生々しくも眉唾な都市伝説しかヒットしない。
だが、そこである検索結果が目に付く。
「これって、確か──」
*
(赤い靴の歌詞引用。著作権は切れてます)
『シャボン玉』や『七つの子』でも有名な、野口雨情の童謡だ。9歳で亡くなった実在の少女、佐野きみがモデルという説もあるが、横浜市民の多くはもっと普遍的な──横浜港から旅立ち、そして二度と戻らなかった旅人たちの哀愁を重ねる。横浜港を象徴する曲として愛され、港を望む山下公園には『赤い靴はいてた女の子の像』も置かれている。
「異人さんに連れられて──遠い異国へ」
図書館への道の伝承には、もう一つ共通点がある。プラスにしろマイナスにせよ、人々の心を捉えて離さない魅力があることだ11。辛い日常から連れ出してくれる、現実逃避の象徴として。蛇の手のメンバーの多くはそれに惹かれて、図書館を訪れたことがきっかけで組織の一員になる。しかし──。
(そんな都合のいいものはなかった)
(戦場から逃げ出して辿り着いたのは、別の戦場だった)
赤い靴をはいていた女の子も、きっと異国で幸せになどなっていない。
*
ヅェネラルも赤い靴の童謡に、図書館への道の手掛かりが隠されていると考えていた。二人はそう推測した。
まあ、勘ではある。しかし、抜けたとは言え、二人も元蛇の手。図書館に関する嗅覚はあると自負している。ただし、山下公園に設置された『赤い靴はいてた女の子の像』が道への入口になっているとしても、問題がある。道は一定の手順を踏まないと開かないのだ。手順は道ごとに違う。供物を捧げる、踊る、コスプレをする……。
「像の前で童謡を歌うとか?」
「そんな単純な手順だったら、とっくにヅェネラルが見つけてるわよ」
ネットでざっと調べた程度では、表層的な情報しか手に入らなかった。もっと専門的な文献を当たる必要がある。かくて二人は図書館ならぬ横浜市中央図書館に真夜中に忍び込むことになった。
レンジがラムダを抱き抱え(お姫様抱っこ希望)、VERITAS無効化の応用で監視カメラから姿を隠し、ラムダが鍵に変形してドアを開ける。
「まずは郷土資料コーナーから回ってみましょう」
「……俺が抱えたままでか?」
「お、重くて悪かったわね」
「いや、重くはないが」
目ぼしい本をピックアップする。過去に道に迷い込んだ人間の逸話でも見つかればベストなのだが──。
「! これは」
1冊の本にラムダの目が釘付けになる。『赤い靴~知られざる逸話~』それは簡素な装丁の本で、一般向けのガイドブック的なものではなく、地元のアマチュア研究者が自費出版したもののようだ。
表紙に放浪者のシンボルが落書きされていた。意味は「ここに道がある」。
「ヅェネラルが描いたのか?」
「あいつが他人と情報を共有するとは思えないけど。とりあえず読んでみましょう」
斜め読みすると、ページが破られている。直前の文章は「童謡赤い靴には未発表の5番があり」。
「ああっ、いかにもそれっぽいのに! うーん、他の図書館で探すべきかしら?」
「ヅェネラルが破いたのか?」
「それなら、わざわざ手掛かりを残す意味が──」
この矛盾は何を意味するのか──まさか。
その可能性に思い至った瞬間、背後に気配を感じて、慌てて身構える。観葉植物がめきめきと変形し始めている。
「まさか、罠?」
先にこの本を読んだ者が、情報隠蔽のついでに仕掛けていったのだ。表紙に描かれたシンボルに反応して、うかうか本を開いた者に反応するように。
(何やってんのよ、私がしっかりしないといけないのに。私がレンジを付き合わせたんだから──)
観葉植物は人型になるが、襲っては来ない。
「待ってくれ、罠じゃない。シエスタにはそうしろと言われたが」
「アレン? そうか、ドリアードを通して話しているのね。でも、シエスタって」
「ヅェネラルは死んだ。今はシエスタがリーダーだ」
「なんですって!?」
アレンからアジトがGOCの襲撃に合ったことを聞く。
「シエスタは君たちが焚書者にアジトの情報を漏らしたと考えている」
「そんなことしてない」
「では、どうして無断で脱退を?」
「ヅェネラルが黙っていたからよ! あの男が同級生の父親だってことを!」
「そうか──では、もう戻るつもりはないと?」
「──当然よ」
「では、提案がある。一度死んでみないかね?」
慌てて身構えるが、アレンは苦笑して続ける。
「本当に死ぬ訳じゃない、シエスタやGOCに自分たちが死んだと思わせるのさ。上手く行けば、もう追われなくて済むだろう」
どうやってと聞くラムダに、アレンは植木鉢から手のひらサイズの土人形を取り出す。彼が呪文を唱えると、レンジとラムダそっくりになる。さらに地面に叩きつけると、本物そっくりに血を撒き散らした死体になる。本番では実寸大のものを使うという。
「シエスタたちと焚書者、両方の目の前で死んでみせる必要がある訳ね」
「ちょうどいいことに、近々シエスタたちは焚書者たちと戦うつもりらしい」
シエスタはすでに図書館への道を見つけている。逃げ込む振りをして焚書者たちを誘き出し、皆殺しにするつもりなのだという。
「そこに君たちも乱入し、図書館を通って逃亡するつもりが失敗、シエスタあるいは焚書者に殺害される──というシナリオはどうだろう。もちろん、本物はそのまま逃亡さ」
「随分用意がいいのね?」
「元は龍三郎のために用意したものだからね──でも、彼はここから出て行きたくないようだから」
「あんたこそ、出て行きたくはないの? もう、レナーデはいないのに」
アレンを疑った罪悪感を誤魔化そうと、つい挑発的なことを言うラムダ。しかし、アレンは寂しげに応える。
「まだ、彼女が愛した者たちはいる」
アレンは細かい打ち合わせはこれでと、連絡用の護符12をラムダに渡し、観葉植物に戻る。
「めんどくせえなぁ、でもずっと逃げ続けるよりはマシか」とか呟いているレンジに、ラムダはたまりかねて訊く。
「ねえ、前から聞きたかったんだけど──怒ってないの?」
「怒る?」
「私、同級生だからなんて、下らない理由であの子を見逃したのよ」
「下らなくないんだろう。お前にとっては」
励ますでもなく、当然のように言われ、ラムダは言葉に詰まる。
「ほら、もうここには用はないから、とっとと出るわよ」
「おい、一人で行くと監視カメラに映るぞ」
「わ、分かってるわよ。さっさと抱えて」
*
図書館の外の暗がりで、VERITASを使って周囲を監視しているヤシオリ。GOCブラックリストの固有エーテル性エネルギー場(AEF)データと連動しており、該当者を補足すればすぐ知らせてくれる。
だが、真夜中の住宅街はガランとしており、時折野良猫が映るぐらいだ。
『焚書者どもに伝えろ、レンジとラムダは中央図書館にやって来る』
横浜市中区の各警察署に、そんな通報があった。声門分析の結果、百歩蛇の手の新リーダー、シエスタ・シャンバラの声に間違いないと判断された。
レンジとラムダ、前班長の仇だ。その二人をなぜあの女が売り渡す? 百歩蛇の手にとっては、長年の怨敵を倒してくれた功労者だろうに。
「信用できるんですか?」
「信用などしていない。だが、無視する訳にもいくまい」
面白くなさそうなマガタをなだめるナギ。今はどんな細い糸でも手繰らなければいけない。
「あれ、故障かな」
「どうした?」
「いえ、カップルっぽい奴が歩いてるんで一応見ていたんですけど、何かVERITASに映らないんですよ」
それを聞いた瞬間、ナギの脳裏に稲妻が閃いた。前班長の自宅周辺は、街灯に偽装されたVERITASで常に監視されていたという。にも関わらず、警報は発せられず、結果前班長は不意打ちされたと見られている。ブラックリストに該当するデータがなかったためとしか考えられないのだが、そんなはずはないとナギは思っていた。
休暇中でほぼ丸腰だったとは言え、前班長を殺害出来るような使い手が、GOCが世界各地で展開しているVERITASに一度も補足されたことがないと言うのか?
(そんなことが有り得るのか。幽霊だってVERITASには映るのに)
「俺があの二人を足止めする。妙な動きを見せたら撃て。責任は俺が持つ」
「は、班長?」
言い残して、隠れ場所から飛び出す。
(──してやる)
湧き上がる凶暴な衝動に、ナギ自身が戸惑っていた。
(VERITASに映らないだと? たったそれだけで、あの人が欺かれたというのか──認めるか)
*
「警察の者だが」
二人の前に立ちはだかるナギ。ちなみに、まとっているのは警官の制服に偽装したブラック・スーツだ。拳銃弾程度なら防げるが、当然ながら邪経技術による特殊効果など搭載されていない。さすがに市街地をホワイト・スーツを着たままうろつく訳にもいかない。
長身の青年と小柄な少女──前班長の娘の目撃証言と特徴は一致する。そしてレンジとラムダ、お互いをそう呼んでいたと。
「今、図書館から出てきたな? ちょっと署まで同行──」
言い終える間もなく、青年が腕を振り上げる。そこには、いつの間にかネイルハンマーが握られている。脳天目掛けて振り下ろされる雷光のような一撃を、かろうじて避ける。空を切ったネイルハンマーが、道路を穿ち──。
ぱっ、と何かが弾けるような音と共に、蜘蛛の巣のようなひび割れが路面に走る。その中央は、きれいに円形に陥没している。避け損ねていたら、あれがナギの頭蓋骨に開いていた訳だ。何という馬鹿力だ。
身を起こす動作から、流れるように逃走に移る青年──いや、今やレンジで間違いない──。のみならず、咄嗟に相方のラムダを抱える。小柄な少女とは言え、人を抱えているとは思えない速度だ。かすかに彼らのやり取りが耳に入る。どうしてここが──多分、シエスタが密告を──。
思わず舌打ちする。青年がわざわざ大きく腕を振り上げたのは、ナギを退かせるためだろう。バレていたのだろうか、彼に背中を向けて逃げていたら、ライフルを構えているマガタに正面から突進する羽目になっていたことに。
逃げる青年の足元で銃弾が弾ける。マガタも腕は悪くないが、遠距離射撃ではチーム1のキョウにはさすがに及ばない。ナギも拳銃を抜き放ち、青年の背中を狙うが。
にゅるりとでも形容すべき動きでラムダが服ごと溶け崩れ、青年の背中に覆い被さる。液体のような振る舞いなのに、金属のような硬さで銃弾を弾き返す13。
(なるほど)
隠密力、破壊力、そして防御力。全てを兼ね備えている。ナギは妙に納得していた。
(あの人がやられる訳だ)
レンジの前を一台のバイクが通り過ぎようとして──。
「んがっ!?」
レンジが運転手に飛び蹴りをくらわせ、吹っ飛ばすと同時に乗っ取る。ハリウッド映画のスタントマンもびっくりの曲芸だ。
「今、バイクを乗っ取った奴か?」
キョウから通信が入り驚く。彼とルルは仮眠中だったはずだが──見ると、寝床に借りたウィークリーマンションのベランダから、二人が身を乗り出している。マガタが起こしてくれたのだろうか。それにしても、もうライフルを構えているのは、さすがと言うべきか。
「そうだ、帯電弾を使え!」
どういう原理か知らないが、ラムダの防御は液体金属によるものらしい。ならば電気は有効かもしれないと思ったのだが。ナギの声が聞こえたのか、人間形態に戻りかけていたラムダ──少女の頭を付けたナメクジのようだ──が、ぎくりと顔を強ばらせている。図星か。
キョウのライフルが弾丸を吐き出す。それはルルの呪術で黄金の稲妻をまとっている。
その瞬間、ナギは何を感じたのか。これで前班長の仇討ちから解放されるという安堵か。仇討ちという辿りやすい道が、ここで終わってしまうという虚しさか。いずれにせよ、それは果たされることはなかったが。
稲妻がバイクを直撃する寸前で、不可視の壁に弾かれる14。信号機に流れ弾が命中し、無数の電光を撒き散らす。
(何だ、あんな能力もあるのか? それなら、なぜさっきは使わなかった?)
レンジとラムダは一瞬こちらを振り返った。何だか、彼らも戸惑っているように見えた。
*
ヤシオリたちがレンジとラムダを追って去った後。
そこからほど近い場所で、声を潜めて会話している者たちがいる。
「ほんとにあのビルから撃ってきたわね」
「ほら、おいらの予言通りだろ?」15
片方は十代後半ぐらいの少女、もう片方は妙に甲高い声なのだが──どこにも姿が見えない16。
「通りだろ、じゃないわよ! 死ぬところだったじゃない」
「死なないって、あんたのダンスは無敵なんだから」
「そ、そうは言っても、怖いものは怖いわよ」
少女は己の肩に向かって話しかけている。まるでそこに誰かいるように。
「うーん、どっちも手ブラだったなぁ。本を持ってるのは、あいつらじゃないのかな?」
「そう──」
少女はため息をついて、レンジとラムダが去っていった方を見つめる。
「一緒に居た子──確かに凛音だったな」
書き途中です
シーン1:
評価班視点でレンジとラムダを描写。直接の恨みは無いにしても2個排撃班を始めとした多数の死者を出してる連中相手にはそれなりの嫌悪感を抱いている。それ以上に『他人の復讐劇に助太刀する覚悟』が強い。
窓の外から一羽のカラスが飛び立つ。同時にレンジが静止する。何だありゃ?俺たちは今何を見ているんだ?
撤退も視野に入れて少し距離を取りながら氷菓任務を続行。ただ不穏な時間が過ぎていく。
シーン2:
ドリアードの展開と同時に認識を歪めるミームフィールドを構築して対談の場を設ける。地の文中心にアレンが百歩蛇壊滅の経緯とここまでの動きを説明。レンジとラムダから逃走理由を聞かされ愕然とするが、元より「レナーデに愛されていた二人(主にラムダ)がこれ以上地獄を味わうべきではない」という気持ちもあったため、逃走援助を決意。偽装死体用ドリアード、ヅェネラルの書庫からかろうじて持ち出したアーティファクトを託して消える。ドリアードの崩壊とフィールド喪失と同時に、二人組は3階の窓を突き破るべく駆け出す。
シーン3:
ドリアードの搬送に使用したカラスが、横浜市内に潜伏していたアレンの手に止まる。百歩蛇の各位はヒナが具現化したキャンピングカーの中で休息中。ここでシエスタに「何故二人組が図書館へ行くと解ったのか」を説明させる。
シーン4:
行かせるものかと飛びかかってきた四ツ角実働班の2名を2人組が瞬殺(一応四ツ門もしっかり奮戦するが、レンジが多用する中途半端に磨き抜かれた複合型の徒手格闘術を前になすすべもなくボコボコにされる)。実働班のうち1名が片耳を釘抜で引き裂かれた結果、“目”の血液を摂取していた全員が同時に耳を失う(ダメージがフィードバックするため、遠隔地にいたロード2も重症を負う)。無力化を確認しようとした後窓から飛び出したレンジだったが、滑空翼モードに変形する直前だったラムダにとっさの判断で放たれたロード3のテーザーガンが直撃。立ち往生していたところをフラッフラのロード4が突き落とす。レンジとラムダは3階からモロに落下する。(テーザーガンの登場を早めて、墜落させる役をキョウに回したほうがいいかも?)
シーン5:
時間が少し戻って、中学校の校庭で待ち受けていたナギへと視点が映る。評価班戦をスマートフォン型端末で見つめる最中、レンジの戦い方がやけに空虚、中身のない、空っぽな動きであることに気づく。
ついでに評価班へのトドメが無かったことから『二人組が殺しを自ら封じている』ことを悟らせる
もうちょい足せそうかも?
シーン6:
学生服型のブラックスーツに見を包んだマガタ、チェロケースを片手に登場。“閃”のエージェント6名もナイフと拳銃を装備して駆けつけている。
「“レンジ”と、そっちのスライム…女がラムダか」
「だったら何だ」
「今ここでぶっ殺す」
戦闘開始。チェロケースの中に収納されていたグレネードランチャーから放たれる『暴徒鎮圧用の十字形に展開する弾』がSBFモードの二人組みを軽々とふっ飛ばすが、徐々に慣れてきたレンジは途中から弾を叩き落とせるようになる。ついでに“閃”のエージェントを2名ほどダウンさせる(ここで『もしかしてコイツら殺しを自ら封じてる?』の仮説を確信させる)
敵の懐に飛び込み、友軍誤射を恐れるGOCエージェントらを盾にしながら戦場を縦横無尽に駆け回る2人組。テーザーガンも撃たれるが、放たれたコードと針はレンジが痩せ我慢で素手でキャッチするため効力を発揮しない。レンジはマガタへと急接近し、最大脅威であるグレネードランチャーを零尺砕頚砲(腕ではなくハンマーにラムダを纏わせるタイプのもの)でチェロケースごと粉砕する。マガタは反動で図書館の壁に激突。閃所属エージェントも残り2名に。
[ここに最高にかっこいい掛け合い]
麓から迫る一発の弾丸(キョウが撃ったもの)をラムダが察知。防御力を最大に引き上げるが、弾丸には事前にルルによる電撃が付与されていたため、着弾時にラムダが硬化。ガラスのように弾け飛ぶ。
(ここで切り上げてもいいかもしれません)
シーン7:
爆風を利用して麓からすっ飛んできたルルが加わり、ヤシオリらは防御手段を失ったレンジを頂上部へと追い詰める[加筆]
※あくまで予定です。全体の完成度のためには、いくらでも改変します★
そこは不思議な空間だった。洞窟でありながら、どこからともなく差し込む光に照らされ、青々とした牧草が生い茂っている。
その入口から入ってきたのは、シエスタ一行である。雛山は目を丸くしている。無理もない。野毛商店街17のシャッターが閉じたままの店、その奥のドアを開けたらこんな場所にいたのだから。
「こ、ここは?」
「スペインのバルセロナ辺りらしいよ。だが、普通に探しても見つからないだろう。あの秘密の入口──いわば、人工の〈道〉を通らない限りは」
「〈道〉を作れるなんて、すごい魔法使いなんですねえ」
牧場の中心には農家風の家が建っている。玄関ドアに下がるライオン型のノッカーをシエスタが鳴らすと、顔のような形に変形して喋りだす。
「何じゃ、ヅェネラルの飼い犬どもか。入るが良い」
中はいかにも魔法使いの家といった雰囲気だった。机には偏屈そうな老人が座っている。彼こそ魔術界の生き字引として知られる、トンガラシ翁18だった。図書館を利用できる蛇の手メンバーとは言え、自力で全ての本を読み解ける訳ではない。そんな時は彼を頼るのだった。ただし、少々厄介な代償が必要だ。
「報酬は用意しとるんじゃろうな? 言っとくが、金には興味ないぞ」
「分かっている。これでどうだ?」
シエスタは干からびた腕のようなものを差し出す。途端に目を輝かせ、身を乗り出すトンガラシ翁。
「お、おお! まさしく河童の腕! これであの料理が完成するぞ!」
(え、あれを食べるんですか、あの人?)
(何でも、不老不死の料理の材料19らしいよ)
(不老不死ぃ? 男なら太く短くだろうが)
トンガラシ翁に払う代償は、不老不死に関する物品だった。彼はそれを集めるために、蛇の手のみならず多くの超常組織に広く顧客を持っている。
「良かろう、何が知りたい?」
シエスタが本を開き、その中の一文を見せる。
「この呪文の正確な発音が知りたい」
肉の邪教徒どもはまず、帝国の叡智の源泉たる図書館に攻め込んだ20。女王の寵愛深きアブ・レシャル将軍21は、図書館で邪教徒どもを待ち伏せた。押し入ってきた邪教徒どもを前に、将軍は声高に呪文を唱えた。「大いなる知恵の蛇の名において命ず。授く主ナハシュ22の名において命ず。放浪の図書館よ……
(以下はこのパートではまだ出さない方がいいか? 実際に呪文を使う時に出す?)
……我が意のままに姿を変えよ」たちまち図書館は、将軍の命ずるままに構造を変化させた。邪教徒たちは本棚に押し潰され、書物の洪水に飲まれ、あるいは百年歩き続けても出ること叶わぬ書庫に落とされ、あえなく全滅した23。
「ふむ、ダエーバイト語か」
(ここでダエーバイト帝国に関する説明、パート8(栞とドリームマンの出会い)より、より学術的な内容?)
「この呪文は──くくく、お主、何を企んでおる?」
「お前には関係ない。やるのか、やらんのか」
「やるともやるとも、儂が興味あるのは不老不死だけじゃからな。イシュケンペ、辞書を持って来い!」
二足歩行するアルパカに辞書を運ばせ、翻訳を始めるトンガラシ翁。
「私は気が進まないよ、シエスタ。下手をすれば、L.Sまで敵に回してしまうかも」
「え、L.Sって、蛇の手で一番偉い人ですよね!?」
「そりゃいいや、強いんだろそいつ?」
「我は百歩蛇の手の指導者だ。誰にも口出しされる謂れはない」
シエスタはあくまで強気(半分演技)。
「終わったぞ、大体こんな感じじゃな」
「待て、覚えるのは我だけでいい。お前たちは先に出ろ」
雛山が悲しげに呟く。
「僕たち、頼りにされていませんね」
「そうじゃないよ、彼女は──全部、一人で背負うつもりなんだ」
*
シエスタたちが帰った直後。
「さて、では早速料理の支度を──なんじゃい、また客か」
次にやって来たのは、ヤシオリの4人。
「KTE-3119-Mago de gastrónomo"トンガラシ翁"24、バルセロナ条約に基づき協力を求める」
GOCは情報収集、特に図書館に関する情報収集のために、あえて彼を泳がせている。噂ではこういう「協力者」は、他にもいるらしい。面白くなさそうな顔をしているマガタを、ルルが抑える。
(くそっ、こいつも蛇の手の同類じゃねえのかよ)
(堪えて下さい、壊すばかりが我々の仕事じゃありまへんで)
(分かってる、分かってるけどよ)
「代償はこれでどうだ?」
ナギが取り出したのは、赤い錠剤だった。それを見て、マガタが目を丸くする。
「は、班長、そいつは万能薬じゃあ」
財団ではSCP-500に登録されているはずだ。GOCも複製には成功していない。
「い、いいんスか? そんな貴重な物をこんな奴に!」
「必要な経費だ。それから、協力者には敬意を払うように」
「フン、飼い犬はちゃんとしつけておけ」
「──失礼しました」
(あれを使えば、誰かが助かったはずなのに──)
拳を握り締めるマガタ。ナギは言うべきかどうか迷って、結局黙った。この薬も異常存在、本来なら粛清の対象であることを。
トンガラシ翁はさして嬉しそうでもないが、一応受け取る。
「寿命が伸びる訳ではないが、まあ保険にはなるかの。何が知りたい?」
「この4人が今、どこにいるのかを」
襲撃時に撮った、シエスタたちの映像を見せる。
「ああ、ついさっき来おったな」
「おい、嘘付くなよ。ここの入口は24時間体勢で見張ってるんだぞ」
「くくく、お前らはトーキョーの出入り口から来たのじゃろう? 奴らが使っているのはヨコハマの出入り口じゃからな。客同士がかち合わないように、出入り口は別にしてあるんじゃよ」
「や、奴らは横浜にいるのか!」
「翁、もう少し位置を特定してくれないか?」
「それにはもう1錠ぐらいくれんとなぁ」
「こ、このジジイ──」
本棚から、一冊の本が落ちる。開かれたページには、本棚が並ぶ部屋に立つ、黒いドレスを来た女性が描かれていた。
ページがひとりでにめくられる。次のページにも同じ絵が描かれていた。次のページにも、次のページにも、その次のページにも──いや、ページが進むごとに、女性が少しずつ前に出てきている。まるでパラパラ漫画のように。
「こ、これはまさか──」
トンガラシ翁の顔に恐怖が浮かぶ。そして、女性がこちらに向かって手を伸ばす絵になった瞬間。
絵からにゅうっと女性が伸び上がる。黒いドレスに黒いヴェールを被った、黒髪の女性25だった。近寄りがたい威圧感を放っている。
「え、L.S、何の用じゃ!?」
(L.S!? この女が──)
「利用者番号715373、エンリケ・カバソス・ガルベス、禁断の呪文を漏洩させた罪で逮捕します」
「そんな権限はお前にあるまい!」
「先日、図書館に貢献が認められて、筆頭司書に任命されました。これからは、規則違反には厳しく当たりますよ」
トンガラシ翁が火球を放つが、L.Sにあっさり弾かれる。吹き飛ぶ小屋。ルルが咄嗟に防壁を張り巡らさなかったら、排撃班まで吹き飛んでいた。
L.Sの黒髪が蛇のようにトンガラシ翁に絡みつき、動きを封じる。周囲を見渡し、呟く。
「漏らした相手は──もういないようですね。まあ、直に見つかるでしょう」
排撃班には目もくれない。
「ま、待ちやがれ!」
マガタが追いすがるが、L.Sは本に戻ってしまう。いくらめくっても、あの挿絵はどこにも描かれていない。
トンガラシ翁が消えたことで、空間が崩壊し始める。慌てて逃げ出す。
(異常存在どもの壮大なゲーム──俺たちはその駒ですらないというのか)
実はマガタ以上に怒りと無力感を覚えていたナギ。
(そうはさせるか。必ず同じ盤面に上がってみせる)
そして、弾丸を届かせる。
表現したいもの
1. 情報屋との接触、というスパイものでありがちなシーンのファンタジー版
2. 図書館を制御する呪文の伏線 伏線なしの使用は、ちょっとご都合主義っぽくなりそうなので……。
3. L.S登場の大物キター感 彼女にヅェネラルの情報を漏らされていた……という伏線にもなるかも。
4. 図書館のルールの厳しさ 他パートでも図書館に関する説明で盛り込むことは可能だが、やはりペナルティが下される瞬間を描写しないと読者は実感出来ないかも。
5. 異常存在と戦うために異常存在に頼らざるを得ない、排撃班のジレンマ これはGOC全体にも言えるかも。パラテックって異常な技術じゃないの?と。
6. 排撃班にシエスタたちが横浜に居ることを伝える。 もう既に知っているなら、トンガラシ翁が与える情報を「彼らは図書館に逃げ込むつもりだ」か「図書館を操る呪文を教わりに来た(いずれL.Sに逆らうつもりかも)」に変更してもいいかも?
心配な点
1. ダエーバイトに関するネタバレが早すぎるか? そして、ほぼ確実に、シエスタが持っている本が年代記だとバレますねえ。
2. ダエーバイトに関する説明が重複するか? パート8での説明は「ファンタジーの設定みたいな」感じにすることで、差別化するか? いっそダエーバイトの下りはカットする手もあるが、それだと伏線不足&ボリューム不足か?
3. 栞を介入させる余地がない 次パートを崩壊の影響で入口が混線して、蛇の手組と排撃班が鉢合わせする&ルルが入口を操作して横浜に出る……などの展開にすれば、両者の争いを止めようと介入できるか?
※あくまで予定です。全体の完成度のためには、いくらでも改変します★
シロは正直なところ、父が好きだったかどうか分からない。
幼い頃に母を亡くした自分を、父は男手一つで育ててくれた──と言うには、少々語弊がある。何しろ、仕事が忙しくて、ほとんど家に帰ってこなかったのだ。頻繁に訪ねてきてくれる叔母が、実質的な育ての親だった。彼女はよくこう言っていた。
『叔母さんも詳しくは知らないんだけど、お父さんはこの国を守るお仕事をしているらしいのよ。シロちゃんが住んでいる、この国をね』
だから、お父さんを許してあげてね。そう言われては、駄々の捏ねようがなかった。いや、そもそも、父にもっと家に居て欲しいと、彼女自身が思っていたのかどうか。
何せ、父が自分を愛していたのかどうかも分からないのだから。
父はとにかく寡黙な人だった。たまに帰ってきた時に、シロから友人や学校のことを聞いても、「そうか」とか「ああ」とか呟いて頷くだけ。ひょっとすると、父は自分に──と言うより、仕事以外のことに興味がなかったのかもしれない26。その可能性に思い至った時には、彼女はすでに親に甘えたがる年頃ではなかった。
何となく、こんなものかなと思った。現実にはアニメや漫画のような、濃厚で鮮烈な人間関係なんてそうそうない。好きでも嫌いでもないが、無理して離れる理由もない。だから一緒にいる。現実の人間関係なんて、大半がそんなものだろう27。そう思っていたから。
『お父さん?』
リビングに血まみれで倒れている父を目にしても、どう反応すればいいのか分からなかった。
今でも、分からずにいる──。
*
気が付くと、シロは小高い丘の上に居た。眼下の街並みは、古い映画のように色彩に乏しい。
(どこだろう、ここ)
ベイブリッジ28が見えるから、自宅近辺ではあるのだろう。いや、その手前の街並みは、いつか映画で見たビバリーヒルズに似ているような──よく見れば、マリンタワー29だと思っていたのは、叔母に連れて行ってもらった江ノ島の灯台にそっくりだ。ああ、そうか──シロは気づいた。ここは夢の中だ。だから、自分の記憶のパッチワークで構成されているのだ。
夢の中でこれは夢だと気付く、いわゆる明晰夢は疲れている時に見やすいという。
(まあ、確かに疲れてはいたかな)
父が死んでからの数日間は、嵐のようだった。警察に事情聴取され、叔母には泣きながら励まされた。挙句の果てには父の部下だという人たちに、お嬢さんも犯人に狙われる可能性があるからと、何やら警備の厳重そうな施設に匿われることになった。
目まぐるしく現れ、入れ替わる人々の渦の中、当のシロだけが台風の眼のように静かだった。問いかけに対しては、ひたすら事務的に応えていた。周囲の人々からは、ショックのあまり感情が麻痺しているのだろうと哀れみの目で見られていた。実際は、そう思われている方が楽だから合わせていただけだ。ちょっとずるいかな、とは思ったが。
シロは夢の世界をふらふらと歩く。咲き乱れるシオンの花30は母校の花壇のものだし、空に浮かぶ風船は幼い頃にうっかり手放して、空に吸い込まれてしまったものだ。アイスクリームの屋台は、いつか父に買ってもらった──ああ、そんなこともあったか。それとも、たった今記憶を捏造したのだろうか。
(ん?)
シロは足を止めた。道端にベンチが置かれている。どことなく、学校前のバス停に設置されたものに似ている。そう、ここには彼女の記憶にないものなど、存在するはずがないのに。
(誰?)
そのベンチに腰掛けている男性には、全く見覚えがない。古風な三つ揃いのスーツを纏い、山高帽を被っている31。彼女の気配を感じたのか、振り返って山高帽を持ち上げる。外見だけでなく、仕草も古い映画めいている。
「こんにちは、お嬢さん。少しお話しないかね?」
「あ、はい」
普通なら、見知らぬ男性にこんなことを言われたら警戒するだろうが、そこは夢の世界の理論というものか、シロは素直に男性の横に腰掛ける。
「あの、おじさんは──」
と言いかけたか、どうにも印象が定まらない。父より年上のようにも見えるし、意外と若いようにも見える。まるで全ての"見知らぬ男性"の顔が折り重なっているかのような──。
シロは何となく理解する。この人は自分の夢の一部ではない。夢を通して接触している、他人なのだと。
「私の名前かい? リチャードとでも──いや、この名前はもう使ったな。お嬢さんは日本人のようだし、たまには和風な名前もいいかな。うん、私のことは久作と呼んでくれ」
「あ、はい」
元ネタは夢野久作32だろうか。どう考えても偽名だが、シロは素直に頷く。
(何だかなぁ、このズレた感じはあの子33に似ているような──)
「お父上のことは、本当に残念だった」
「父をご存知なんですか?」
「ああ、勿論。お父上の死は、悠久の過去から遥かな未来まで繋がる、復讐の鎖の一部だ。回避するには、それこそ地球の歴史を1からやり直さなくてはならなかっただろう34。かの御仁にできたのは、自分の死を以て鎖を断ち切ることだけだった」
「は?」
想像を遥かに超える回答を、シロはほとんど理解できない。ただ一つ。
(復讐──)
その言葉以外は。
「その、父が殺されたのは、何かの仕返しなんですか?」
「蛇の手が絡んでいる以上、そうだろうね──彼らは仲間思いだから」
(蛇の手?)
だが、シロが尋ねる前に、久作は突拍子もないことを言った。
「どうだね、君もお父上の仇を討ちたいかい?」
「か、仇?」
そんなことを言われても、シロには刀を構えた侍が「おのれ、父の仇!」とか叫んでいるシーンしか浮かばない。つまりは、全く現実味がない。
現場の様子を思い出す。父の死体の側に立っていた青年35。その手には血に塗れたネイルハンマーが握られていた。彼がそれで父の額を割った犯人だと理性では分かっていても、根本的な部分では結び付かない。無理もない。シロの現実に人の死、ましてや惨たらしい殺人などと言う概念はないのだから。
警察を呼べ──青年の投げやりな口調が、妙に印象に残っている。そんなに面倒なら、こんな事しなければいいのに、と。
「実感が沸かないかね」
「あ、いや、その──はい、薄情かもしれないけど、正直」
「それでいいんだ。月並みな言い方だが、お父上だって望んでいないだろう。しかし残念ながら、復讐の鎖は途切れていない」
※以下、ちょっと急ぎ足。本番ではシロが戸惑う様を交えながら、もう少しじっくり進めます。
「復讐の鎖に関わった者たちは、皆がこれで終りにするつもりで、殺し、あるいは死んでいったのだろう。だが、悲しきかな。鎖は人の死で繋がっているのだから、それは本末転倒と言わざるを得ない。お父上の死は、また鎖を繋げてしまった──破滅の未来へ」
久作がため息を吐いた瞬間、丘の下に広がるシロの記憶のパッチワークから成る光景が、ぐにゃぐにゃと歪んでいく。ベイブリッジが怪獣の背骨めいた姿になり、ビバリーヒルズの街並みは漆黒に染まり 江ノ島灯台がにょきにょきと角を生やしていく。
久作は新聞を拾い上げる。そこには見たこともない文字が踊っていた。
「ダエーバイト語か──おそらく、ダエーワ年代記の封印が解かれたのだろう」
久作は淡々と語った。かつてダエーバイトと呼ばれた帝国があった。悪魔ダエーワを崇める者という意味であり、おそらくは後世の命名だろう。超常的な力を持つ女王に率いられ、生贄の生命力をエネルギー源とする魔術で栄え、ありとあらゆる冒涜が日常的に行われた。後に反乱で滅び、その名は正史から失われた──ただ、1冊の本を除いて。
ダエーワ年代記、それは最早誰も知らないはずのダエーバイト帝国の歴史を、詳細に記した書物だという。いや、書物の形をした呪具と言うべきか。それに何らかの手順を加えることで、歴史を捻じ曲げ、ダエーバイト帝国を現代に蘇らせることができるのだという。
「は、はあ」
という解説を、シロはファンタジーの設定か何かのつもりで聞いていた。ここは夢の中だと分かっていても、なお。
「よく分からないけど、これってうちの親父のせいなんですか?」
「いやいや、お父上の死が、あれを構築してしまったというだけだ」
久作がパチンと指を鳴らすと、虚空に半透明の人影がいくつも浮かび上がる。正確には10人。配置によって3つのグループに分かれているようだった。4人のグループが二つに、2人のグループが一つ。人影たちの手足はお互いに鎖に繋がれ、雁字搦めに縛りあっていた。
「復讐の鎖に繋がれた者たちの三重奏」
4人グループの片方は、父の部下だと名乗っていた人たちだ。全員、特殊部隊のような服装だ。その中の一人、いかにも猪突猛進という感じの男性が「お父上の仇は必ず討ちます!」と気炎を上げていた36のを覚えている。当の自分がこんな調子で、申し訳ないことだが。彼らの頭上には、国連のものに似たロゴマークが浮かび上がっている。
4人グループのもう片方は、父の部下たちとは対照的な、バラバラな服装の人々だ。パンクロッカーのような男がいるかと思えば、ごく普通の学生服の少年もいる。彼らには見覚えがない。ただ、彼らの頭上に蛇をモチーフにしたらしき紋章が浮かんでいるのを見て、シロは久作が口にした"蛇の手"という言葉を思い出した。
そして、最後のグループ、と言うより唯一の二人組を見た瞬間。
「え?」
シロは思わず声を上げた。片方は犯人の青年だった。だが、彼女を驚かせたのは、その隣に立つ小柄な少女だった。可愛らしい顔立ちの割に、やけに鋭い眼差し──。
「凛音!? どうして──」
見間違えようもない。それは元同級生の、円 凛音まどか りんね37だった。短い付き合いだったが、決して薄いとは言えない関係だった。何せ──シロは彼女の命を救った38のだ。
その凛音が、父を殺した犯人のすぐ横に立っている。鎖でお互いを繋ぎ合っている。
「やはり知り合いか」
シロは凍りついたように、凛音の幻影を見つめている。
過冷却という現象がある──水を安定した環境下でゆっくりと冷却すると、0℃以下になっても凍らないことがある。しかし、その状態でわずかでも衝撃を与えると、そこを起点に凍結の核となる微小な相が生じ、たちまち全体が凍りついてしまう。
今のシロの状態は、まさに過冷却だった。全てが曖昧模糊な夢の世界が、凛音を核にして凍結し始めた。あらゆるものを境界で隔てる、容赦のない現実へ。父の死では過冷却の核になり得なかったのに、一時期付き合っただけの友人にはそれができたというのか39。
シロは改めて、ダエーバイト帝国の街並みを見下ろした。元の世界の面影など、もうどこにも残っていない。インカ帝国の都を丸ごと潰して、その上に建てられたスペインの植民地のように。自分も父も友人も、この世界では生まれてさえいないのだ──その事実を理解して、ようやくシロの背を戦慄が這い上がった40。
世界の終りどころではない。世界が始まった事実さえ消されてしまった。
「あの中の誰かが、年代記を所有しているらしい。そして、復讐の三重奏トリオの果てに、破滅のトリガーを引くことになる。最終楽章フィナーレ41は、おそらく数日後」
分からない。父の死が、そして数日後にやって来るという世界の終りが、どうして友人に繋がっているのか。彼女だって、自分と同じただの女子高生ではないのか。
一つだけ確かなのは、これは紛れもなく現実だということだ。
「私は夢の世界の住人だ。未来を見ることは出来ても、干渉することはできない。そこで君に頼みたい。年代記を回収し、世界を救って欲しい」
「せ、世界を救う? 私に?」
「君にしか出来ない。彼らに近い位置にいながら、復讐の鎖には囚われていない、君にしか」
「お父上のために、とはあえて言うまい。故に、こう言おう。君自身の手で真実を解き明かし、心の靄を払うためにも──やってみないかね」
「で、でも、私はただのJKよ。どうやって」
「そんなことはない、君には素晴らしい才能42があるじゃないか」
久作は立ち上がり、優雅に手を差し伸べる。
「と言う訳で、お嬢さん。一緒に踊って頂けるかね?43」
*
シロは慌てて飛び起きた。
(でも、夢じゃない)
はっきり覚えている。鎖に繋がれた凛音も、久作の手の感触も、世界の終りの光景も。
(とにかく、まずは凛音に会おう。事情を話して、協力してもらえば──)
──してもらえるだろうか? 凛音は犯人の青年のすぐ隣にいた。つまり、彼女は犯人側なのではないか。それどころか、最初から父の殺害という目的のために、自分に近付いたのでは?
(そんなことない、あの子と友達になったのは、私の意思よ)
「へいへい! ぼんやりしてる暇はないぜ、相棒!」
「ひょっ!?」
枕の上にいる妙なものが、甲高い声を上げている。久作を小さくしてデフォルメしたような。
「あ、あんたは、久作さんの?」
「まあ、分身ってところかね。リトル久作とでも呼んでくんな!44」
分身にしては、言動がまるで似ていないが。
「まずはここから脱出しないとな!」
「でも、どうやって」
「踊り方は教えたろ? あの通りにやってみなって!」
「う、うん」
*
「やれやれ、久しぶりの運動で疲れた──ような気がするな」
ベンチに腰掛けた久作の前で、復讐の鎖に繋がれた人々が、ダエーバイト帝国の街並みが、ぐにゃぐにゃと歪み、混沌と化していく。
とりあえずは、復讐と破滅の三重奏を解きほぐすことには成功した。しかし、シロという新たなパートを加えた四重奏カルテット45が、いかなる最終楽章を迎えるのかは、最早彼にも、誰にも分からない。
願わくば、せめて──。
「どこかには──繋がっていて欲しいものだ」
確保・収容・そして保護46。
~次パート構想~
・ラムダとシロが友人になった経緯(現在執筆中、なるべくこのパートの直後にした方がつながりがいいか?)
・リトルの案内で図書館への入口を探す?
・シロを発見したラムダが(罪悪感から)慌てて逃げつつ、しかしこのままではヅェネラル隊に襲われると葛藤?
・シロの行方不明に慌てつつも、もしや彼女も異常存在なのではと疑い、責務と隊長への想いで葛藤する排撃班?
※あくまで予定です。全体の完成度のためには、いくらでも改変します★
ラムダは挫折を味わっていた。
「こ、こんなはずじゃ──」
教室の机で一人頭を抱えるラムダを、同級生たちはどうしたものかという顔で見つめている。遠巻きにして。
話は数日前に遡る。
*
「円 凛音です、よろしくお願いしマッスル~!47」
ドラマ『マッチョ売りの少女ユウナ』48の真似をして力こぶを作る転校生を、同級生たちは唖然と見つめている。
当然ながら、転校一日目から孤立することになった。
(何でよ!? 女子高生に大人気だって聞いてたのに!)
港の見える丘公園49に程近い高級住宅街に立つ、私立フェリックス女子学園50。高い格式とアットホームな雰囲気を併せ持つ、横浜でも有数のお嬢様学校だ。
この学校にヅェネラルが目を付けたのは、生徒の家族にかなりの人数の焚書者がいることが判明したからだ。偶然にしては多すぎる。彼はGOCが子弟を保護し、同時に未来の人材を確保するためのフロント組織だと考えた51。かくて、配下で唯一女子学生に成り済ませるラムダに、潜入任務が下された。
学校関係者に混じっているであろう焚書者どもを特定し、可能なら彼らにスカウトされてGOC内部へ食い込む。楽勝だとラムダは思っていた。自分が纏うミーム歪曲は何者にも見破れない。然り、転校生の正体が謎の金属生命体だとは、同級生たちは夢にも思っていない──ただの、空気の読めないイタい子だと思っているだけだ。
そう、唯一にして最大の誤算は、女子高生というある意味特殊な人種に成り済ますのが、予想より遥かに難しかったことだ。
まあ、さすがに品行方正なお嬢様学校の生徒たちと言うべきか。腫れものに触れるかのような態度ではあるが、接してはくれる。しかし、会話はどうにも表面的で、遊びに誘えば逃げられ──顔には出すまいとしているが、うっすら怯えている様子で──、一向に懐に飛び込めない。これでは情報収集どころではない。
(ええい、作戦の練り直しだ!)
奮然と教室を飛び出す。その背後で、同級生の一人が、勇気を出して声を掛けようとしていたことにも気付かずに。
元町52のショッピング街をイライラしながら歩く。行き交う人々は、誰もラムダを振り返らない。深く関わりさえしなければ、彼女の偽装は完璧なのだ。だが、少しでも触れ合えば、たちまちボロが出る。
『ラムダ、誰がどう言おうと、あなたは人間──ううん、人間の女の子よ。自信を持って』
(って、レナーデは言ってくれたけど──実際、あたしは薄皮を被って、人間の振りをしているだけだ)
ラムダは時々考える。そもそもどうして自分に、人間に擬態する能力があるのだろうと。ヅェネラルは彼女が一種の兵器であり、正体を隠してターゲットに接近するための能力なのだろうと、無神経な推測をしていたが。だとしたら、自分に人間のような心があるのも、擬態の一環でしかないのだろうか53。
(今、この場で)
ミーム歪曲をかなぐり捨て、衆目に正体を晒したらどうなるだろう。刃物状に変形させた体で、手当たり次第に人々を虐殺したら──あるいは、世界から正常という幻想は消え去り、GOCはその存在理由を失うかもしれない。
それはレナーデを殺した奴らへの、何よりの復讐ではないだろうか54──。
「危ない!」
暗い念を滾らせていたラムダは、らしくもなく気付かなかった。横から飛び掛ってきた人影に。
(え)
抱き抱えられ、諸共に転がる。一瞬前まで彼女が立っていた場所に、轟音と共に何かが落下した。
(何だ、焚書者の攻撃か!?)
そうではないことは、すぐに分かった。落下物は看板だった。骨組みがだいぶ錆びているし、原因は老朽化だろう。周囲が騒然となる中、ラムダを助けた──つもりの人物は、息こそ弾ませながらも、落ち着いた声で言った。
「大丈夫? 怪我はない?」
(レナーデ──いや)
母のような姉だった彼女とは似ても似つかない、乳臭い小娘だ。どうして、一瞬でも見間違えたりしたのだろう。しかし──。
(何やってんだ。あたしが人間をやめちまったら、それこそレナーデへの裏切りだろ)
ラムダの奥底で首をもたげかけていた怪物は、すっかりいなくなっていた。
「あたしなんか、助けなくても良かったのに」
気が緩んだのか、つい本音を漏らしてしまう。自分なら下敷きになったところで死なないという意味だったのだが、その少女には違う意味に聞こえたらしかった。目尻を釣り上げ、がっしと肩を掴んでくる。
「ちょっと、駄目だよ! いくら孤立してるからって、自殺なんて!」
「へ? いや、そういう意味じゃ──って」
なぜ、自分が学校で孤立していると知っているのか。そこでようやく、ラムダは気付いた。少女が着ている制服が、自分が着ている──もとい、ミーム歪曲の服装に設定している制服55と、同じデザインであることに。
「私が友達になってあげるから、ね?」
その場の誰も気付いていない。看板が設置されていたビルの屋上から、山高帽を被り、三つ揃いのスーツをまとった男が、じっと見下ろしていることに56。
ラムダがぎごちなく頷くのを見届けて、男の姿は空気に溶けるように消えた。
*
これがラムダと朝倉栞57の出会いだった。
*
「お、おはよう、朝倉さん」
「駄目だよ、凛音。友達なんだから、栞って呼ばないと」
「は、はあ」
翌日から早速、栞との"友達付き合い"が始まった。それは彼女がラムダを一方的にあちこち連れ回して「友達とはかくあるべき」と教え込むという、何とも奇妙な関係だった。ゲームセンターでUFOキャッチャーをプレイし、クレープの屋台でバナナコンボをパク付き──ラムダは食べた振りをして体内に収納しただけ58だが──、アクセサリーショップを冷やかした。
絵に描いたような、女子高生の友達付き合い。ラムダはひたすら困惑しながらも、どうにかこうにか真似していた。元より同級生と親しくなることは、情報収集の下準備として必要だ。その練習をさせてもらっているのだと思えば、好都合ではあったのだが。
(何だかなぁ。楽しいのか、これ)
だが、一通り回ったところで、当の栞がこんなことを言い出した。
「まあ、結局、誰かの真似なのよね、こんなのは」
山下公園のベンチに腰掛けて、投げやりな表情で言う。ついさっきまで、ラムダと並んでプリクラを撮ってはしゃいでいた癖に。
「そ、そうなの?」
「皆の真似をすることで、自分も皆の一員だと思い込む。人間関係なんてそんなものでしょ59。ま、そういう意味では『よろしくお願いしマッスル~』も間違ってはいなかったかな。あそこが秋葉原のメイドカフェだったらの話だけど」
「う~、あのことはもう忘れて」
「あっはっは、ごめんごめん。まあ、要するに、凛音はサンプル不足なだけよ。その内、私以外の子とも自然に付き合えるようになるから、心配ないって」
(──なるほど)
それが言いたくて、実体験をさせていたのか、小賢しい真似を。しかし、だとすれば。
(人間たちも、あたしと変わらないのか。薄皮を被って、誰かの真似をしている)
自分が隠しているのが液体金属の体だとすれば、人間たちが隠しているのは何だ? 醜い性根か、それとも──無価値な自分か。
「でも、それでいいの?」
「何が?」
「だって、よく言うじゃない。人真似は良くない、自分だけの道を見つけろって」
「真面目ねえ」
栞はうーんと少し迷う様子を見せてから、スマートフォンを操作した。
「皆には内緒だからね」
画面に映っているのは、某有名動画投稿サイトの動画のようだった。ごく一般的な民家の一室で、マスクを被った少女がステップを踏んでいる。いわゆる踊ってみた動画だろうか。いきなり何を見せるのかと戸惑っていたラムダは。
(こ、これは──!)
曲の始まりと共に、たちまち目を奪われる。
両足はアップテンポな曲のリズムを休むことなく刻み続け、上半身はうねるような動きでメロディーラインを表現している。サビの曲調変更部分では、体が千切れるのではないかと思う程の高速回転。ラムダは初めて知った。踊りで咲き誇る薔薇を、嫉妬と思慕に狂う女心を、残酷な運命を表現し得ることを。曲と一体化しているかのようなのに、主役はあくまで彼女なのだ。
戦士であるラムダの目から見てさえ、驚嘆するしかない動きだった。
「こ、これ、もしかして」
「うん、私だよ。試しに投稿してみたら、思ったより好評でさ」
ラムダは栞と出会った日のことを思い出していた。なるほど、素人にしては、やけに思い切りがいい動きだとは思っていたが。
再生数は優に百万回を超え、コメント欄は『すごい』『こんなの見たことない』『ダンスの新時代を見た』と絶賛で埋め尽くされている。それにも関わらず、当の本人はまるで他人事のように呟いた。
「褒めてくれるのは嬉しいけど、別に新しいことをしてるつもりはないのよねえ」
「そ、そうなの?」
「だって、ダンスだよ? 決められた動きを、いかに正確に再現するかじゃない」
「でも、振り付けは栞のオリジナルでしょ」
「オリジナルと言えるかなぁ。色んな踊ってみた動画を参考に考えたんだよ?」
「う、うーん」
ラムダは分からなくなる。つまり、この世には真にオリジナルと呼べるものなどなくて、人は延々と何かを真似し続けているだけなのか。それでは、新しいものなど生まれないし、問題は永遠に解決しないではないか──焚書者どもとの戦いだって。
しかし、栞はあっけらかんと言い放った。
「真似だっていいじゃない、自分が楽しくて、皆も楽しめれば」
「──そういうものかな」
「それに、何を真似するかは選べる訳だしね。要は真似の組み合わせで、どう新しく見せかけるかってことだよ」
(真似の組み合わせ──あたしは、ラムダ・シナフスは、何の真似で構成できているんだろう)
レナーデを奪った焚書者どもへの怒り、正常という歪んだヴェールからの解放、そして生きること。それは間違いなく、他のメンバーとも共有している。いや、栞の例えを用いれば、真似することを選んだと言うべきか。しかし、その組み合わせの結果が、ヅェネラルの手のひらで踊らされ続けることなのだろうか?
(違う。少なくとも、唯一の答えじゃない)
この時、ラムダは初めて、百歩蛇の手を離れることを考えたのかもしれない。
(それに、こんな事を続けていたら、あたしはともかく、あいつはいつか──)
ポケットの中の──もとい、体内に収納したスマホが震動した。レンジからだ。彼は今、青大将の手のアジトへの連絡役をしているはずだ。この場で出ていいものか迷ったが、一瞬だけだった。まさか焚書者に追われているのでは。
「ちょ、ちょっとごめん──もしもし、どうしたの!?」
『ああ、いや、大した用事じゃないんだが』
しかし、レンジの声には緊張感など欠片もなかった。いつものように。
「だから、どうしたのよ!?」
『アジトの場所を示すサインは見つけたんだが、これどういう意味だったかな』
蛇の手は街のあちこちに、放浪者のシンボルと呼ばれるサインを残すことで情報のやり取りをする。無論、一覧表を持ち歩いたりはしない──万が一にも焚書者の手に渡ったら、えらいことだ──ので、こういう事態も生じ得る訳で。
「どんな形なの?」
『うーん、人がバンザイしているような──いや、角の生えたタマネギか?』
「だあっ、分かるかぁっ! もう、教えてあげるから、画像を送りなさい!」
『分かった』
ため息を吐いて一旦通話を切ると、栞がにやにやと笑い掛けてきた。
「な、何よ?」
「なぁんだ、もう見つけてるじゃない。人真似じゃない、凛音だけのも・の」
「は?」
「その人と話す時、あんたは誰かの真似をしてる?」
理解は一拍遅れてやって来た。体がぐにゃぐにゃと歪み、危うくミーム歪曲が解けそうになる。
「ば、馬鹿ね! こいつはそんなんじゃないわよ! こいつは世話の焼ける──そう、デカい弟みたいなものよ!」
横浜港を包む空は、青く、高く澄み切っている。潮風に乗って、カモメが旋回している。もしもその光景を因果から切り離して、時の止まった額縁に収めたなら──きっと、ごく普通の少女たちの、青春の1ページにしか見えなかっただろう。
しかし、世界を幾重にも縛る復讐の鎖は、容赦なく過去と未来を繋げていく。
*
「朗報だ。娘の──レナーデの仇の家が判明した。やってくれるな?」
(ちょうどいい、殺すのはこれで最後にしよう)
ヅェネラルがちらつかせた餌に飛び付いてしまった自分を、ラムダはずっと悔やみ続けることになる。
(第五、第六依存のパート。各パートの長さや分量によっては栞乱入後の撤退戦(の、後半?)をここでやるかもです。)
↓
排撃班待機所、あるいはGOCフロントの病院60。重苦しい沈黙に包まれている。仇討ちどころか仇に討たれる可能性すらあったのだ。あいつヤバくねえか? という状態。
ナギ、撤退戦の後のリーダーがどんなことを言っていたか思い出しながら口を開く。
「ひとまず、お疲れ様。皆よくやってくれた。とにかく、アレから生還したわけだ。それだけでも収穫だった」
評価班のことを思い出しながらも続ける。
「アレは我々の天敵だ。リーダーの他にも、あれにやられたのだろうという事がわかったホワイト・スーツはいる」
戦場においてその影すら感知させずにホワイト・スーツを葬ってきた存在、”槌の亡霊”として噂されてきたものの実態を掴んだのは立派な前進である。それ自体は確かなことなのだと自分に言い聞かせるように告げる。戦い方はわかったのだから、と。
↓
ついでにいくつか情報の確認。未知の乱入者について。栞が行方不明になってるしきな臭いことが多すぎる。キョウあたり、「聞き覚えのある声だった」と言ってもいいかも。
↓
話が終わる。「武装解除した状態で話をしてほしい人間がいるから行ってこい(誰か一人連れて行ってもいい)と言われる」OR「病室からルルとマガタが呼び出されて席を外す」のどちらかのイベントにより61、ナギとキョウの2名は黒の女王と対峙することになる。62
↓
黒の女王、めちゃくちゃ唐突に「二人以外誰もいなかったはずの部屋」に現出する。黒いワンピースに赤い上着と靴の出で立ちをした少女。63
警戒する二人に対し、「お初にお目にかかります。私は黒の女王、あるいはL・Sと呼ばれる者。あなた達が目の敵にしている"蛇の手"の指導者と行ったほうがわかりやすいかしら」とストレート自己紹介。
排撃班両名は即座に戦闘態勢へ移行するも、即座に体の動きを止められる。
「あらあら、行動には気をつけたほうがいいんじゃないですか。守護者さん、2回もリーダーを討たれるとなったら流石に不名誉なんじゃないですか? もう替えはいないんでしょう、あの刃は大抵の固有生体エネルギーと拒絶反応を起こすのだから64」
あからさまに心当たりがあるキョウに対し、「命の重みに違いがあるって大変ですね、白のポーンさん」と言う黒の女王。彼らが咄嗟に掴んだ武器を銀色の百合に変化させ、むりやりナギに受け取らせる。その後は一貫してキョウのことはスルー。
「ごきげんよう、刃を受け継いだ焚書者さん。あなたがあの人の後釜ね。以後お見知りおきを」
「……あの人?」
「あら、話は行っていると思ったのですけれど。どうしてあなた達はそう秘密主義なんだか。"詳しくは明かせないがこの件においては信頼できる情報提供者"と名乗ったほうがよかったですかね?」
ナギ、そこで「リーダーと協力していたのはこいつだ」と悟る。キョウに向かって「こいつは(今は)敵じゃない」と告げ、そこでキョウの目が殺意と憎悪を湛えているのを見る。何も言えないナギをよそに、黒の女王は「あら、仲間にも教えてなかったんですね? 秘密主義が板についてきたじゃないですか、あの人の後釜になるだけのことはある」と追い打ちをかける。
↓
「いったい何しに来たんだ」
「ご挨拶がてら、少しばかり情報を。あなたたちが追っている破落戸(ならずもの)どもなんですが、どうもうちの図書館に逃げ込もうとしているらしいんですよね。盗み出した鍵を持って」
図書館に逃げ込まれたら詰みだと察する二人。図書館を経由する"道"はどこへでも通じていて、連合はそれを追うどころか足を踏み入れることすら能わない(と、現段階の彼らは認識している)。
「とはいえ、私としてもあんまり暴力的な人たちにのさばられるのは困るんですよ。だから、彼らの見つけた"道"、袋小路にしちゃおうかなって思ってるんです」
「なんだと?」
廃棄階層(名前は出さないかも。あるいは”歪んだ道”くらいの呼び方をする?)から図書館内部へ至る道を閉ざして袋小路にし、そこを戦場にするという事を考えている。市街戦よりも市民の事考えなくてもいいんだからそっちとしても都合がいいでしょう? と述べる。露骨にこちらを利用しようとしている事に苛立ちが滲み、「仲間を殺すための掃除屋扱いか」と呟く。
「前任者さんもそこは納得していましたよ」
「一つ聞かせろ。あの人はお前たちの仲間割れのせいで殺されたということか」
「頼まれもしないのに正常性の保持者を気取るってそういう事でしょう? 残念には思ってますし、驚きもしましたが。殺しても死にそうになかったのに」
「一人娘といるところを夜襲にあった」
「……へえ、そう。娘がいたんですか、あの人」
「外見年齢だけならお前とそう変わらん子だ。そんな事を気にするタマか?」
「いいえ、まさか。世界は非情なんですよ、そんな事を気にかけてはくれないくらいに」
黒の女王は一切表情を変えることなく、話題をそらす。
「そんなことより。一つヒントを差し上げます。歪み果てた道の防衛機構は他に比べると少し弱い。外からならいざ知らず、内側からの攻撃によって容易く門は開くんじゃないでしょうかね?」
「どういう事だ」
「きっと、お仲間のほうが心当たりはあると思いますよ。もうすぐそこにいるので、私はお暇いたしましょう」
言いたいことだけを言って黒の女王は姿を消す。後にはようやく体の自由を取り戻した二人だけが残される。ナギは押し付けられた百合をへし折って捨てる。
黒の女王と入れ替わるようにしてマガタとルル(ひょっとするとネイルガンを得ていたかも)が入室。鍵は開いていたのにずっと扉が開かなかったらしい。何があったのか問われ、ナギはいくつかの情報を伏せながらも"信頼できる情報提供者"の話を告げる。
ルルは"内部からの攻撃"について、「たぶん連中に撃ち込んだ呪詛弾のことでしょうなあ」と述べる。被弾した者65が"道"の内部にいるのなら、爆破して突破口を作れる可能性が高い。
とはいえ、負傷したナギは動けないし、そもそも爆破するには呪詛のキャリアが道の内部に入る必要がある。殺すために、彼らの手助けをする必要すら出てくるかもしれない。
どう考えても利用されているが、今は駒でいるしかない。同じ盤の向こうに立ってみせる、と心に決めるナギ。
懸念&思考中のところ
ここで止めてもいいし、続けてもいい。(実際に書いて字数を見ながらやるのも手ではある……)続ける場合、例によって電話がかかってくる。候補としては以下の通り。
1.ヒナに撃った呪詛弾の位置の検出に成功する、あるいは以前の通報の逆探知に成功するなどして「Part6~7」の蛇の手の動向を検出する。この場合、追跡を基本としつつ単独行動をとるやつがいたらそっと始末を狙う……みたいな動きになるかなあ。
2.フェリックス女子学園側に何らかの動きがあることを察知する。警備の方を強化する、あるいはそこで栞に関する情報(あわよくばラムダについても出せるかも)をもう少し得ておく?
3.レンジとラムダ側の情報を検知する。この場合、穴をあけるためとはいえ図書館に追い込むべくGOCが動くというちょっと愉快かつ奇妙なことになる。
4.いっそ独自で「入り口(山下公園)」を探し当てて監視でもする? 3との合わせ技になるかも。
このパートでやりたかったこと
・黒の女王の登場と図書館情報の開示
・排撃班の中でも命の重みが等価ではない事の自覚(そしてナギですら女王にとっては駒である)
・内部からのレモン砲による突破方法の提示
・ついでにキョウに出番を増やしたかった
フェリックス女子学園の中庭で。
中島桐絵66は同級生の朝倉栞を心配していた。可哀想に、父親を殺されて本人も狙われているなんて。早く全てが解決すればいいのに。いや、解決したとしても、栞のお父さんが生き返る訳でもない。彼女とはもう二度と、以前のように笑い合ったり出来ないのだろうか。
考えたこともなかった、日常がこんなに儚いものだなんて。
笑いながら歩いている学生たちとの間に、見えない深淵が横たわっているのを感じる。自分でさえこうなのだ。栞は今、どんな孤独に居るのだろう。
よもや、そんな桐絵を神が哀れんだと言うのだろうか。では、あいつらもこっち側に引きずり込んでやろうと。
ばさばさばさ、背後で鳩が一斉に飛び立つ。何だろうと振り向くと。
「え」
片側剃り上げヘアーに、パンクロッカーのようなファッションの男が立っていた。なぜ今まで気付かなかったのかというぐらい、すぐ後ろに。
「まあ、こいつでいいか」
桐絵の腹に拳をめり込ませ、一撃で気絶させる。
「さて、あんまりガキどもにチョロチョロされても邪魔だしな」
義手から爆裂弾を発射し、花壇を吹き飛ばす。たちまちパニックになる学園。
これが後にマスメディアを騒がせることになる、フェリックス女子学園人質事件の始まりだった。
*
ヤシオリの拠点(警察の現場指揮車に偽装)にて。
「隊長、テレビを見てくれ!」
ダガーに言われて画面を見ると、緊急ニュースでフェリックス女子学園が映し出されている。そこがGOCフロント団体であることは彼らも知っている。
『こちら現場のフェリックス女子学園です。犯人は生徒の一人を人質に取って、敷地内の教会に立てこもっているとのことです! あ、ご覧下さい! 教会の屋根に』
するすると旗が上がっていく。無数の眼を持つ蛇の紋章が描かれている。
「やっぱり奴らの仕業か!」
「どうやって警備をくぐり抜けたんだ?」
「しかし、何が狙いなんだ?」
「今のところ、何も要求はないらしいが」
「どうせ仕返しのつもりだろ、ふざけやがって!」
「いずれにせよ、放っておく訳にはいくまい。警官を突入させたら、皆殺しにされ兼ねん」
その時、ちょうど司令部から指令が入る。犯人を排除せよ。可能なら狙いも突き止める。
「人質の救出は?」
「──犯人の排除が最優先だ」
「そんな!」
「落ち着け、救出するなとは言われていない。最善を尽くすが──覚悟は決めておけ」
イドの口調は自分に言い聞かせているようだった。
(民間人を巻き込んでしまった時点で、俺は既に失敗している──くそっ)
すでに日は傾きかけている。夜闇に紛れた方が忍び込みやすいだろうが、待ってはいられないだろう。
*
山下公園の物陰にて。
「ちょっとアレン、どういうことよ!?」
通信用護符で声を潜めて怒鳴るラムダ。レンジは周囲を警戒している。
「しかも、よりにもよってあの学校で──あたしへの嫌がらせのつもり?」
〈そうじゃない。説明している暇はないが、どうしても必要なんだ。大丈夫、人質は死なないよ〉
(人質は──)
それ以外は、誰一人安全ではないということか。分かっている、非難できた立場ではないことぐらい。人質を取って焚書者を脅迫したことなど、自分だって幾度もある。
(その報いだって言うの)
〈予定通り、君たちはそこで待機していてくれ。絶対にこっちには来るんじゃないぞ〉
通信が切れ、ラムダは項垂れる。
(ごめん、栞。学校まで巻き込んで──)
振り返ると、レンジと目が合った。いつからこっちを見ていたのだろう。
「何してんの、ちゃんと周囲を警戒して」
「──ああ」
*
教会内にて。
祭壇に腰掛けているパヴェル、桐絵は万国旗で縛られ気絶している。
「犯人に告ぐ! こちらは要求に応じる用意がある。ただし、人質の無事を確認──」
「あー、うっせえなぁ。黙らせちまうか?」
〈無駄な殺生はやめたまえ、あれはただの陽動だよ〉
連絡用護符から、アレンの声が聞こえる。彼がノームに掘らせた穴を通って、警備をくぐり抜けたのだ。
「けっ、分かってるよ。てめえはもう用済みだ。さっさと現地に向かいやがれ」
通信を一方的に切って、歪んだ笑みを漏らす。
「しっかし、あの女も相当イカレてやがるな。宣伝のためにここまでやるかね?」
百歩蛇の手は頭を潰され、2名の裏切り者を出し、半壊状態だ。立て直すためには、早急に有能な新メンバーを募る必要がある──そのために、シエスタはこの攻撃を仕掛けたのだ。蛇の手主流派のやり方を手ぬるいと感じている者たちへの、デモンストレーションとして。わざわざ旗まで立ててみせたのも、マスメディアを通して彼らに百歩蛇の手を知らしめるためだ。
我らは百歩蛇の手、目的は焚書者鏖殺、手段は選ばぬ──志を同じくする者よ、この旗の元に集え。
「へへへ、ゆくゆくはL.Sから蛇の手を乗っ取るつもりかね」
GOCフロント団体であるこの学校を標的にしたのも、百歩蛇の手の力をアピールするためだ。実行し、報道された時点で半分は達成したと言える。
だが、もちろん、パヴェルはここで引き上げるつもりなど、毛頭ない。
(上げてやろうじゃねえか、でっけえ花火をよ)
ステンドグラスを割って、排撃班の催涙弾が着弾、たちまち部屋がガスに包まれる。これなら人質が巻き込まれても生命に別状はない。しかし。
「へっ、あいにく、俺は目も内蔵も特別製でね」
パヴェルはレザージャケットの前をはだけ、ぱかりと胸部を観音開きする。中には金平糖やゴムホースのような外見の内臓が脈打っていた。彼本来の肉体は、最早脳しかない。それでも彼は、自分は人間だと主張する。その方が人間狩りが楽しいからだ。
玄関と祭壇裏のドアが開き、排撃班が突入してくる。
迷わず銃口を向ける排撃班を、天井から降ってきた人影が取り囲む。
「他にも居たのか!?」
それは様々な国の兵士だった。ネイビー・シールズの隊員、ロシアの雪迷彩服の兵士、旧日本陸軍の兵士──服装はバラバラだが、虚ろな眼で無表情なところだけが共通している。
座席や柱に隠れながら応戦する排撃班。謎の兵士は異常な耐久力で、なかなか倒れない。やっと1人倒すと、みるみる小さくなってフィギアになる。雛山の能力で本物になっていたのだ。
「うーん、不利だなー、負けそうだなー(棒読み)。じゃあ、俺様は逃げさせてもらうぜ」
逃げ出そうとするパヴェル、桐絵を抱えようと手を伸ばす。
「させるか!」
ダガーの弾丸がその進路を塞ぐ。パヴェル本人は祭壇の影で撃てない。くひひ、と歪んだ笑い声が響く。
「邪魔したな? 邪魔したな? 俺はこの小娘を助けようとしたってのに」
(何だと)
パヴェルの足がバネになり、2階のステンドグラスを突き破って逃げ出す。その手にアンテナが付いた装置が握られているのに、イドは気付く。
「一回ぐらいてめえも焼かれてみな、焚書者ども!」
「爆弾だ、脱出するぞ!」
慌てて桐絵を抱き上げる。しかし、出入り口は兵士たちで塞がれている。
(最初から俺たちを殺すことが目的か!)
イドの主観時間が停滞する。どうすれば良かったのか。教会にナパーム弾でもぶち込んで、テロリストが人質を道連れに自爆したことにすれば良かったというのか。
教えてくれと、前隊長にすがりそうになった、その時。
「私の側に!」
突如桐絵のそばに一人の少女が現れる。虚空から湧き出したかのようだった。
従うイド。何故か、その声に懐かしさと頼もしさを感じて67。他の隊員たちも続く。こんな自分に、こいつらは迷わず従って──。
少女がついと両手を上げ、床を蹴ると同時に、兵士たちの腰に巻かれた爆弾が爆発する。イドの視界が、荒れ狂う炎と粉塵の嵐に包まれる。
*
(ちょっと場面転換を入れたい。イドと隊長の過去シーンとか?)
*
粉々になっている教会。しかし、上空から見ればその奇妙さが分かるだろう。まるでドーナツの穴のように、中心部だけは何の被害も受けていない。祭壇や床もきれいに残っている。
そして、排撃班の隊員たちと桐絵も。
「お、俺たち、なんで助かって──あいつが助けてくれたのか」
「天使かマリア様だったんですかねえ」
「バカ野郎、そんな都合のいいモンいる訳──」
ブラフマはイドに意味ありげな視線を送るが、何も言わない。
「原因究明は後回しだ。標的を追うぞ」
見上げると、ぴょんぴょんと建物の屋根から屋根へと、パヴェルが逃げていく。
「司令部、標的が逃げた。ドローンで追ってくれ。それと、人質を救出した。医療班を頼む」
*
そこから少し離れた木陰で。
「ああ、もう、死ぬかと思った」
栞が姿を現す68。その肩ではリトルがケタケタと笑っている。
「死ぬわけねえじゃん、分かってる癖に」
「そ、そうは言っても、怖いものは怖いわよ」
実際、ちょっとでもステップを間違えたら、隊員たちと共に爆死しているところだった。
リトルに『学園の教会が爆破される』と予言され、ずっと隠れ潜んでいたのだ。
「桐絵を助けられて良かった」
「うーん、お友達はともかく、排撃班の連中は見捨てりゃ良かったかもなぁ。多分、あいつらは年代記を持ってないし69」
「そ、そんな訳にもいかないでしょ」
排撃班は桐絵を医療班に預け、大急ぎで車に乗り込んでいる。あくまで追うつもりか。
(全く、男ってどうしてそんなに仕事が好きなのかしら──あんな眼をしてた癖に)
バイザー越しに見えたイドの眼を思い出す。まるで途方に暮れている少年のような──父も自分の知らないところで、あんな目をして戦っていたのだろうか。
(このあたりで第五頁のネタばらし?)
「よっしゃ、おいら達も向かうぜ」
「えー、ちょっとは休ませてよ」
「そんな暇はねぇ、急いだ急いだ!」
「ひーん」
*
山下公園にて。
すでに日は水平線に沈みかけている。
普段はカップルや家族連れで賑わっているこの横浜港を望む公園も、今はさすがに出歩いている者はほとんどいない。警察やマスコミ関係者も現場であるフェリックス女子学園近辺に固まってしまっている。
そんな、現場のすぐ近くでありながら、奇妙な空白地帯と化した公園に、シエスタ、アレン、雛山はいた。
彼らの前には、赤い靴をはいていた少女の像がある。雛山がピアノの玩具を手に取り、本物にする。赤いパンプスを履き、青いカラーコンタクトレンズをはめたシエスタがピアノを弾き、童謡赤い靴はいてた女の子を歌いだす。普段の彼女からは想像もできない優しげで澄んだ歌声に、雛山は状況も忘れて聞き惚れ、アレンはどこか懐かしそうにしている。
その奇妙なコンサートに、騒々しい乱入者が近付いてくる。びよんびよんと気が抜けるような音をさせながら、ビルからビルへと飛び移り、一同の前に着地する。
「よお、首尾はどうだ?」
「問題ないよ。もうすぐ道が開く──ところで、人質の少女は?」
「焚書者ども、何のためらいもなく蜂の巣にしやがった、気の毒になぁ」
アレンは無言でパヴェルを睨むが、結局ため息を吐いただけだった。
(ラムダが知ったら怒るだろうな)
童謡は幻の5番に差し掛かっている。
生まれた 日本が 恋しくば
青い海眺めて ゐるんだらう
異人さんに たのんで 帰って来
歌い終わると同時に、少女像が涙を流す。氷川丸の霧笛が鳴る。そんな操作は誰もしていないのに。海に向かって半透明の桟橋が伸びる。その先には虹色に揺らめく「道」が開いている。
アレンが拍手する。
「上手だね。もうレナーデにも負けてないよ」
しかし、シエスタは答えない。
「気を抜くな、本番はこれからだぞ」
そう、ここまではあくまで準備、百歩蛇の手の宣伝も「ついで」に過ぎない。彼らの目的はただ一つ、復讐だ。
一同は桟橋に降り立ち、歩き始める。
*
その様子はパヴェルを追ってきたドローンも捉えていた。
「しまった、山下公園から我々の目を逸らすのが目的か!」
「ヤシオリは?」
「現場に向かっていますが、間に合うかどうか──」
*
「と、奴らは思ってるんだろうな」
司令部のやり取りが聞こえているかのように、パヴェルはにやにや笑っている。
「せいぜいゆっくり歩こうぜ、奴らがぎりぎり間に合うようにな」
そう、ここまでの一連の行動の狙いは「山下公園から焚書者の注意を一時的に逸らし、その後、図書館に逃げ込む場面を目撃させる」こと。
綱渡りから綱渡りへ飛び移り続けるような、あまりにギリギリの作戦。しかし、それを指摘したところで、彼らは「それがどうした」と言うだけだ。
失敗を恐れて成果を妥協するなど、愚の骨頂。それが百歩蛇の手、ヅェネラル隊なのだった70。
~次パート構想~
道が閉じる寸前で、ぎりぎり間に合ったヤシオリ。罠かもしれないとは感じつつも、突入する? その後ですかさず続く二人組と栞?
ただ突入するだけでは「入口爆破」などの展開が使えないので、ぎりぎり間に合わなかったことにするか? 雛山に打ち込まれている呪術弾を何らかの形で利用する?
「レモン爆弾」「有害情報垂れ流し」などの対図書館装備は、中に入ってから使うか? いずれにせよ、ここまではGOCがやられっぱなしなので、一矢ぐらい報わせたいか。
サブテーマは「仲間」か?
“道“を通って、図書館に潜入する蛇の手組。早速、ヤシオリを迎え撃つ準備をする。シエスタが試しに図書館操作呪文を唱えると、本棚が思い通りに組み上がる。
そこから少し離れた場所、姿隠しの護符の効果が切れて姿を現す二人組。蛇の手組に便乗して、潜入したのだ。少し前にした、アレンとの打ち合わせを思い出す。
『我々に続いて、図書館に入ってくれ』
『そのまま逃げるのか?』
『馬鹿ね、それだけじゃ、一生シエスタと焚書者に追われる身になっちゃうよ』
『そう、そこでこの身代わり人形の出番だ』
本棚の影に隠れて、アレンから受け取った身代わり人形を起動する。たちまち、二人組そっくりの死体になる。蛇の手組とヤシオリに発見させて、双方に自分たちが死んだと思わせるのが目的。
「やれやれ、そんなに上手くいくかしら──でも、やるしかない」
さて、どうするか。人形だけ残してさっさと逃げるか。ヤシオリの一人くらいは倒さないと、状況に説得力がないか──そのためだけにまた人を殺すのか? ラムダは悩んだ挙句、結局状況次第ということに。
そこでアレンから通信の護符で連絡が入る。
「ヤシオリが来た」
それから少し時は戻る。
山下公園の“道”前に急行するヤシオリの面々。“道”は既に閉じてしまっているが、開く手順(未発表のパートまでも含めて、赤い靴をピアノ演奏付きで歌う)はドローンを通じて確認している。
“道”の先(廃棄階層)がどうなっているか分からない(通常の法則が適用されないなど、基本的なことは黒の女王スーリエ・ルージュから聞いている?)ため、いきなり大軍を送り込むのは無謀と判断される。まずはヤシオリが斥候&百歩蛇の手の露払いとして送り込まれることに。
「つまり、何かあったら“とりあえず死んでこい”ってことかよ」
「仕方あらへん、それが僕らの仕事やさかい」
ぼやきつつも、すでに覚悟は決まっているらしいヤシオリの面々。ナギは複雑な気分。副班長だった頃の自分なら、喜んで班長に従っただろうが…。
上層部がピアノ演奏と歌唱技術を持つ人材を派遣してくれる。また、対図書館用の秘密兵器もあるらしい。
「皆さん、お久しぶりですぅ」
「あ、あんたらは…」
やって来たのは、四つ角の面々だった。ミクラが演奏を準備し、ドクがトキシフレーズ生成装置の使い方を教えてくれる。ビートは何か言いたそうにしているが、口には出さない。
「薔薇の名前(四つ角の上部組織、GOCの図書館対策班)か、黒の女王に俺たちの居場所を教えたのは」
唐突にナギが遮り、周囲の空気が凍りつく。ドクも否定しない。
「…証拠はないが、おそらく」
薔薇の名前が図書館の情報を求めるあまり、蛇の手寄りになっていることを説明するドク。中央図書館戦で二人組に手出ししないよう、命令されていたことも明かす?
「そ、そんな奴らが寄越したモン、信用できるか!」
「僕らもそう思った」
なので、本当は「上層部は信用できない、装置は図書館に入るなり捨てろ」と言うつもりだった。だが、ヤシオリの面々の覚悟を見て、判断は本人たちに任せようと思ったという。
「歯車を演じろ、僕らが最初に教わることだ。でも、人間を辞めろとは言われていない…君たちは永久欠番になるなよ」
「…分かった。戦況に応じて、臨機応変に判断する」
そう応えながら、ナギは内心憂鬱だった。いっそ「使え」と命令してくれれば、悩まずに済むのに、失敗しても他人のせいにできるのに。
ミクラの演奏で再び“道”が開く。引き返せない戦いに向かうヤシオリ。彼らに便乗する栞とリトル。
黒の女王が言った通り、ヤシオリは図書館への潜入に成功する(普通ならGOCが図書館に入ろうとすると、危険な場所に転送されて即死する)。迎え撃つ蛇の手組と、それをこっそり覗く二人組と栞&リトル。シエスタが図書館操作呪文を唱えると、本棚がヤシオリに襲いかかる。嵐に舞う木の葉のようにぶつかってきたり、動物や昆虫の形に組みあがって攻撃してきたり?
本棚はいくら壊しても湧いてくる。一方的にやられるヤシオリ。迷いながらも、ナギはトキシフレーズ生成装置を起動する。たちまち本棚は制御不能に陥り、雨のように降り注ぎ、戦場を3つに分断する。
分断された区画は本棚の山で囲まれている。慎重に登るか、隙間を潜れば他の区画に行けなくはないが、それを目前の敵が見逃してくれるとは思えない…という状況(実際は人による。例えば二人組やアレン・ヒナなら邪魔立てはしないだろう)。通信は一応可能だが途切れがち(著者に都合のいい情報だけやり取りさせる)。
・区画1 キョウ&マガタVSシエスタ&パヴェル
相変わらず猪突猛進なマガタに、「お前は俺と同じだ。ただ戦うのが好きなだけなんだろう」と挑発するパヴェル。それに対して「お前と一緒にすんな」と怒るマガタ。「俺はあいつらと一緒に戦うのが好きなんだ!」と少年漫画のように反論され、意外にも寂しげに笑うパヴェル?
重装甲型でスピードでは劣るキョウは、高速飛行できるシエスタとは相性が悪い。しかも本棚の攻撃から仲間を庇い続けたせいで、装備も大半が破損している。そんな状況に、キョウはどこか達観した様子。キョウに巻き付き「お前のような雑兵に用はない! 班長を出せ!」とせせら笑うシエスタ。しかし、キョウに「ヅェネラルにそっくりだな」と呟かれ、思わず凍りつく。今の自分をレナーデが見たら、どう思うか…。
・区画2 ルルVSアレン&ヒナ
攻めるルルに、守りに徹するアレン。ヒナは物陰で震えている。
「仲間が心配だろう、早く助けに行くといい」
「いや、行きたいのは山々やけど、後ろから攻撃されたらイヤやし」
「邪魔はしないよ」
「──何や、それは」
柄にもなくカチンとするルル。
「あんたこそ、仲間が心配やないんかい」
「亡くなった恋人に誓ったんだ、誰も殺さないと」
「ボクを殺さなければ、ボクはあんたの仲間を殺すで。それでも行かせるんか? まだ生きてる仲間より、死んだ恋人の方が大事なんか?」
凍りつくアレン(闇堕ちの兆候を見せておく)。
「ボクはあんたを倒すで。倒して、仲間も助ける。新入りのボクを、全力で受け入れてくれたあの人たちを!」
大技の詠唱に入るルル。ためらいながらも、アレンも詠唱に入る。誓いを捨てて、必殺の術を使おうとしているのか。
「アレンさんには殺させない!」
ヒナが飛び出し、本物化させたビームガンを撃つ。アレンからの対魔法防御に専念していたルルは不意を突かれ、致命傷を負う(読者視点では死亡に見える)。しかし、最後の反撃の術でヒナ死亡。
「わ、私は──レナーデ」
ヒナの骸の前に崩折れ、アレンは絶望に打ちひしがれる。
・区画3 ナギVS二人組
このパートではあまりくどくど喋らず、淡々と、しかし激しい戦闘を描写するか?
仇討ちのため、世界のため、そんな戦う理由が、ただ生きるためだけに戦っているレンジの真っ直ぐな眼差しの前で、ぐらぐらと揺らぐナギ(たった今芽生えた疑念ではなく、初戦闘時から継続している)。徐々に己の本心に気付く。
(自分は班長になどなりたくなかった)
(少なくとも、こんな形では)
(せめて、復讐だけでも終えて──楽になりたい)
(そんな身勝手な理由で、俺はこいつを殺そうとしている)
・区画1 キョウ&マガタVSシエスタ&パヴェル(パート2)
迷わずシエスタに巻き付かれたキョウを助けに向かうマガタ、その背中に狙いを定めるパヴェル。来るなと言って従うマガタではない。このままでは彼が死ぬ。キョウは覚悟を決め、スーツの自爆モードを起動する。慌てて逃げようとするシエスタに、全力でしがみつくキョウ。
「これ以上、ヤシオリの班長は交代させん。だが、ヅェネラルの亡霊よ、お前はここで終わりだ!」
・区画3 ナギVS二人組(パート2)
一連のやり取りは通信でナギにも伝わっている。やめろと叫ぶ間もなく、爆発音が響く。気が付くと、ナギは二人組に背を向け、本棚の山を突き崩しながら区画1に向かっていた。
何とか生き残った二人組だが、レンジは片手片足を失う重体。俺は置いていけというレンジを叱り、ラムダは彼を支えながら歩き出す。
レーダーを頼りに、区画1に辿り着くナギ。木っ端微塵になったキョウのスーツと、ぐったりと動かないシエスタ。そして、パヴェルの放った槍型武器(足が槍状に変形、バネで打ち出す?)に貫かれて死んでいるマガタ。パヴェルもマガタの最後の反撃で体が半分になる重傷。生まれて初めて激情に駆られ、絶叫しながらパヴェルを滅多切りにするナギ(この期に及んで、初めて復讐というものを理解した)。我に返り、打ちひしがれる。レーダーを確認すると、ルルも反応がない(実際は図書館の崩壊に巻き込まれて、レーダーの範囲外にいる)。
「俺のせいだ…俺があんな装置に頼らず、仲間を信頼していれば…」
そして、自分が心の奥底で、班長班長と自分を持ち上げる仲間たちを、疎ましく思っていたことに気付く。あいつらはきっと、最後まで俺を信じてくれたのに。
突然、シエスタが起き上がり、尻尾でナギを吹き飛ばす。重傷を負い、ブレードも折れてしまう。
(俺に班長の資格なんて、ない)
トキシフレーズ生成装置の影響で階層そのものが崩れ始め、ナギ、シエスタ、ブレードが落ちていく。
※これ単独では短すぎるので、どこかのパートに挿入する形で? 廃棄階層突入までに?
本編から1年ぐらい前の出来事?
L.Sから軽井沢のアジト(第三頁に登場したあれ)の情報を渡され、襲撃に向かう前班長。
ただし、別の戦いでヤシオリのベテランメンバーは壊滅、新入りのナギ、キョウは訓練中、マガタに至ってはまだ入隊していないため、別の排撃班の隊員たちと向かう(第二頁でナギたちが密命のことを知らなかった理由)。
だが、別荘にはヅェネラルたち主要メンバーはおらず、レナーデなどのバックアップメンバーしかいない。あっという間に倒せたが、レナーデは護符で結界を張って立てこもる。しかし、切れるのは時間の問題。
レナーデは拳銃型の護符を自分に向け、引き金に手を掛ける。
班長は父親のために仕方なく手を貸していたのだろう、協力してくれれば悪いようにはしないとレナーデを説得するが、彼女は「嫌ですよ、仲間のことを話せと言うんでしょう」と反抗期の娘のような口調で拒絶する。自分の娘を思い出して、内心苦悩する班長。
「それに」と悲しげに続ける「私の作った護符のせいで、あなたの仲間が大勢殺されたのは事実です。それだけじゃない、私は親友まで死地に追いやってしまった(シエスタに作ってやった姿隠しの護符を、ヅェネラルが悪魔契約の護符に改造してしまったこと)。償いはしなければ」
視線の先には、シエスタとレナーデを写した思い出の写真が。
「私は許されなくてもいい。仲間たちを許してくれとも言えない。だから、自分だけは許してあげて下さいね」
にっこり笑って、自分の額を撃ち抜くレナーデ。
呆然と佇む班長。猛然と娘に会いたくなる。しかし、会って何を話せばいいのか。お前のために他人様の娘を殺してきたとでも?
そして、1年後。
「レナーデの仇だ!」
ラムダの叫びに、班長の動きが一瞬止まる。それが生死を分けることになった。レンジのハンマーを受け、倒れる。遠のく意識で、レナーデと栞に詫びる。
(すまない、私は結局──自分さえ許せなかった)
・シエスタとナギを瀕死にして転がす
・腕輪を使って全人類を捧げ始めるアレン
・アレンとレンジのどっちをやるか迷うナギ
・マガタ最初に死にそうだな
を参考にさせていただき、「刃折りてえな」をねじ込んだものになります。かなり荒い叩き台であり、また「二人組&栞」の動きについては中盤では言及していません。(ここの二勢力は間違いなくお二人のほうが動かせるでしょう)
「彼らの介入が遅くなればこうなる」と思った上でこの先の展開を決めていけたらなと思っておりますので色々とよろしくお願いします。
※
爆破される図書館と泥沼の戦い。
(出来ればシエスタを即座に変身させない口実をつけておきたい。アレンに「君が変身するのは最後の最後だ(普通に寿命の心配OR最後が生身のヒトであるシエスタだと御しやすい)」と言わせるか、あるいは初手で負傷させるか)
シエスタの操作かなんかかな? 図書館の本棚による戦線の分離。「パヴェルwithヒナ&アレン VS キョウ&マガタ」、「レンジとラムダ VS ナギ&ルル」の2戦に。71
ヒナをキョウが殺め(子供を殺す役を他人に担わせたくない)、直後、パヴェルとマガタ&キョウはほぼ相討ちの形に。
(ここまでの話をどこ視点でやるかについては今後決めることになると思いますが、この戦闘が終了した以降についてはナギ視点のパートをいただけるとうれしい……)
ナギとルル、二人組を置き去りにして駆けつける。たぶん最大火力をぶっぱなしてからスモークを全力で炊き、VERITASを切ればどうにかなるかな? どうにか全力で駆け付けるナギ。たどり着いた先では倒れたマガタとキョウ、そして重症のパヴェル。ナギは激情のままに重症のパヴェルの首を飛ばす。
(ここでナギにキョウの介錯やらせたら楽しいかなって思いましたけど、流石に趣味に走りすぎてるかもなのでちょっとワンシーンの候補ってことにします)
シエスタVSナギ、アレンVSルル。
シエスタとの自暴自棄な戦いの中で片方のブレードが折れる。折れたブレードを掴んで「魂なら全部くれてやる、俺も、そいつのもだ」と叫ぶナギ。一瞬蛇の姿がブレ、光る金色が見える。72ナギ、腕輪をつけた腕を斬る。変身が解除。
片腕のシエスタを見下ろし、止めを刺すべく歩み寄る。そこで、背後から不明な攻撃を受け、致命傷を負って倒れ込む。血の匂いしか知覚できないな、とちらりと思う。
(ここでモノローグを入れる。仲間(故リーダーを含む)か待っているが、自分はそこに行けない。そういえば、捧げられていたな、と思い起こす。そうでなくても、血で汚れすぎた挙げ句ヤシオリの刃を折った自分がそばに行けるはずもない。許されるならロクでもないモノローグの締め方をしたい。)
一方、シエスタはナギの背後から現れた影を見上げる。返り血を浴びたアレンが腕輪を片手に無表情にシエスタを見下ろしている。
[ここで排撃班のターンを終了したい]
●
[ここから二人組&栞 VS アレン戦。メイン視点どっちがいいかなあ。共著でもいいかもですね]
(ぶっちゃけこのメンツについてはお二人の方がうまく動かせると思うのでかなり荒いです……)
アレン、腕輪と本を拾い上げ、狙いを明かす。この本に血を垂らせば世界はまるごと変貌する。そして、それが意志と魂を持つ液体であればなお効果はいいだろう。何ならラムダを勧誘してもいいかもな。君さえ望むなら世界を最初から造り変えられるとかなんとか。
(シエスタよりも自分のほうがこれらのアーティファクトを扱える、と抜かしてもいいかもしれないな)
この時点でラムダが標的であることがわかる。ラムダを守るレンジ73、本をどうにかしたい栞の戦意は一致する。
腕輪に対し、「全人類の魂をを捧げよう。手始めに、まずはそこの二人74かな」と告げる。
戦闘開始。栞は折れたヤシオリブレードを片手に戦う。しかしながらキレたアレンは非常に強いので自分が死なないようにするのに精いっぱい。戦っているさなか、一発の銃声が響き、アレンに決定的な傷を負わせる。
[二人組&栞 VS アレン戦のパートここまで]
●
[第X頁"蛇と焚書" メイン視点はシエスタ。部分的にナギがいてもいい]
これは復讐の物語であった。
廃棄階層、戦場の片隅。二人の復讐者が倒れている。一人はヤシオリの班長であり、砕けた刃の主である。もう一人は百歩蛇のリーダーであり、腕輪を奪われた女である。ナギのほうは負傷が激しいし、シエスタは傷以前にそもそも寿命が削れすぎている。
シエスタ、目を覚ます。自分たちがまだ生きていることに気づく。アレンたちは戦っているので自分たちには気を払っていない。
(双方、「悪魔との契約」が宙ぶらりんになっているので魂が行き場をなくして肉体にひっかかっている状態をイメージしています。アレンは刻限を決めなかったのでこういうことになっても察知できない? このあたりはシエスタがちょっと推測できるかも。)
また、見ると自分の傷が少しだけ癒やされている。よく見ればレナーデが使役していた妖精(第三頁の彼ら)が自分たちの周辺を漂っている。アレンのそばにいたやつが腕輪の悪魔から逃れてきたか、あるいはシエスタが持っていたレナーデの形見の奥底にいたのかもしれない。今のシエスタはあの腕輪をしていないので妖精との接触が可能である。
妖精らはシエスタとアレンの方を心配そうに見ている。レナーデなら現状のアレンを止めたがるだろうな、と思うシエスタ。しかし、腕ごと腕輪を失った自分には戦況に介入する術がない。自分の戦いはとっくに終止符を打たれている。
戦況を見ていると、わずかにナギが身動きする(妖精の一人が気を利かせたとか、癒やしの鱗粉が落ちてるとかなのかもしれない)。まだ戦意を保っているが、ろくに身体が動かせていない。ブレードだって折れているじゃないか、と思ったところでまだ拳銃があることに気づく。少し考え、シエスタは「そいつを癒してやってくれ」と要請に告げ、目を閉じる。75
ナギ、妖精の治療により視力を取り戻す。班長の仇として追ってきた男が自分に背を向けている。銃を持ち上げようとしたところで、見慣れた刃の光を目にする。誰を撃つべきかは考えるまでもない。自分は長く、あの刃の担い手の背を守っていた。あの刃が切り開いた道を、みんなと走っていた。
伏したまま銃を持ち上げる。腕が重いが、誰かに支えられたような気がした。
撃ち慣れた銃の重みが手の中にある。あの刃が向けられた先へと、照準を合わせる。
銃声。馴染んだ硝煙の匂いがする。銃弾がまっすぐ吸い込まれていく。
その先を見届けるより先に、射手の腕は落ち、血の海に沈んだ。
廃棄階層。戦場の片隅に二人の人間が身を横たえている。一人はかつてヤシオリの副班長として、刃の担い手を守っていた者。もう一人は百歩蛇の構成員であり、ただレナーデの親友であった女である。彼らは静かに眠っていた。
──こうして、彼らの復讐は終わった。
["蛇と焚書"パートここまで。]
●
[以下、最終話へ。あとは決着をつけるだけだぜ(つけるだけとは?)]
以降、所感と現段階の問題
ぶっちゃけ、「最終回前話、”蛇と焚書”」とその流れがやりてえだけだろって言われたら何も否定できないですね!(素直) まあ、ここに至るまでの色々があるのであれこれ調整は必須ですが、「ナギとアレンとシエスタ(あと、もちろん二人組と栞ですね)を残す」さえどうにかすれば持ち込めるかなと思います。
ただこの路線だとヒナが死んでからアレンが闇落ちするまでに時間がないので別にフラグは必要になりますかね……
(もちろんもっと前に死なせてもいいんですが、その場合はヤシオリを苦戦させるための何かが要るな……)
あと、この場合はほぼ全員が廃棄階層戦に参戦することになるので、必然的にその前は死人が出せなくなるという問題はありますね……。まあ、死んでも調整は可能なんですが。
※あくまで予定です。全体の完成度のためには、いくらでも改変します★
※上手くのってぃーさん案と融合できればいいのですが……。
図書館操作呪文でヤシオリを本棚で押しつぶそうとするシエスタ。しかし、ヤシオリが用意していた有毒成句(トキシフレーズ) 垂れ流し装置(SCP-5024 - 放浪の図書館に登場)のせいで、呪文が暴走。本棚が各員を分断する。
(ここからしばらくはのってぃーさん案参照)
ナギ&ルルとの死闘、ラムダが呪術弾の影響で力が出せず、苦戦?
片手と片足を失い、ハンマーも折れながら戦い続けるレンジ。班長の仇だと叫ぶナギと、ただ生きるためだけに戦うレンジの対比。
通信からパヴェルたちと戦っているマガタやキョウが重傷だと知り、迷いながらもレンジを放って救援に向かうナギ&ルル。
(ここからしばらくはのってぃーさん案参照)
自分は置いていけというレンジを引きずって進むラムダの前に、瀕死のシエスタが。
「レンジ、お前はなぜ耐えられる? 自分が無価値だという事実に」
「どうして価値が必要なんだ?」
「──必要ないかもな」
年代記を二人に差し出すシエスタ。
「持っていけ、他の手へ行くなら、土産にはなるだろう」
「どうしてこれを?」
「我も無価値になりたい──生き物を止めて、無に還りたい」
瞳を閉じて動かなくなるシエスタ(実は気絶しただけ)。
渡す時に少しだけ年代記に血がかかり、文字が浮かび上がる。二つの樹の下でを参考にした。
クェイン(カインのこと)は激しい戦いの末、アブ・レシャル将軍(アベルのこと)を討ち取った。ダエーバイトに寝返ったとは言え、実の弟を殺してしまったことをクェインは悔み、その骸を柩に入れて丁重に葬った。
クェインの手足は戦いによって傷つき、最早使い物にはならなかった。そこで大いなる蛇ナハシュは彼に金属の手足を与えた。
(そうだ、わたしは……)
歴史が少しだけ変わり、自分がダエーバイトの兵器であったことを思い出すラムダ(少し唐突かもしれないが、ラムダが一種の兵器である可能性は第7頁案で伏線を張ってある)。
とうとう動けなくなるレンジ。その前に栞が現れる。その手にはナギの折れたブレードが(何となく身を守る物が欲しくて拾っただけ)。
[ここで最終頁に移るか?]
何と言えばいいのか分からない栞に、ラムダが必死に懇願する。
「あんたの父親を殺したのは私なの、だからレンジは許してあげて!」
レンジを目の前にしても、仇を討ちたいという思いは浮かんでこない。それを確かめ、なぜかホッとする。
「そんなつもりないよ。ただ、凛音が心配で来ちゃっただけだってば。私、あんたみたいに真剣に生きてないし」
「そんなの俺も同じだ」
意識が朦朧としていて、自分が何を喋っているか分かっていないレンジ。
「生きる以外、何も考えていない──あんたの父親と戦った時だって、殺されないように必死で──」
「ば、馬鹿、レンジ!」
苦笑する栞。つまり、父は腹を空かせた熊に殺されたようなものか。
(ん? もしかして)
山下公園で凛音と交わした会話を思い出す。彼女がデカい弟呼ばわりしていたのは……。
「あーっ、年代記だ! うわわ、ヤバイ、血が掛かる!」
リトルがレンジの年代記を見て騒ぐ。栞が慌ててひったくり、事なきを得る。早口に二人に説明し、預からせて欲しいと頼む。
「これからどうするの?」
「このまま進むつもり。図書館なら誰かしら居るはずだから。いざとなったら──(自分がレンジの手足になると言おうとした)」
リトルが栞にささやく。
「まあ、おいらとしちゃ、年代記さえ回収できりゃ、他はどうでもいいんだけどよ──本当にいいのかい、行かしちまって?」
即答できない栞。確かに仇討ちしたい等とは思えないが、この先後悔しないという保証はあるだろうか?
突如、魔法の電光が栞に襲いかかる。咄嗟にかばい、致命傷を負うラムダ(ラムダは電気に弱い?)。
「アレン? どうして──」
不意打ちを仕掛けたのはアレンだった(栞が年代記について話しているのを、物陰で聞いていた)。
「許したつもりでいた」
異様な目つきで年代記を凝視しながら、アレンは止めど無く涙を流している。
「レナーデが復讐など望むはずがないから。だが、気付いてしまったんだ。ヒナが死んで(雛山の死亡シーンで闇落ちの兆候は見せておく?)、そこのお嬢さんの言葉を聞いて──自分にはそんな優しさなどないと。私はただ、全てに絶望していただけだ! さあ、その本を渡せ! こんな呪わしい世界、最初から生まれなかったことにしてやる!」
アレンが再び電光を放つが、栞のSCP-3688に弾かれる。
「渡さないなら、これでレンジを刺し続けるぞ!」
氷の槍を手にレンジに迫るアレン。栞がSCP-3688を中断しかけるが、リトルに止められる。
「ラムダ、おい、ラムダ!」
彼女の方が死ぬなどとは夢に思っていなかったレンジは、生まれて初めて動揺する。ラムダが微かに何かを言っている。
「レンジ、私に続いて唱えて」
「何を──」
「必殺技の発動呪文」
戸惑いながらも、呪文を唱えるレンジ。それはダエーバイト語でこのような意味だった。30番へ指令(ラムダ=Λの数価は30)、我が失われし手足となれ。
「レンジ、これからもよろしくね」
それがラムダが発した、最後の言葉だった。ラムダはレンジと融合し、彼の新しい手足になる。いくら彼が呼びかけても、返事はない。
「凛音!?」
「こいつは俺が止める、お前は何があっても踊り続けろ!」
金属の腕で氷の槍を打ち砕く。アレンは嵐のような攻撃を続けるが、レンジは競技用義足のように変形させた足で本棚から本棚へと飛び移り、攻撃を避け続ける。
「全人類の魂を捧げる! 私に究極の力を!」
「あれは」
アレンがシエスタの腕輪を掲げ、叫ぶ。黒い霧が竜巻のように溢れ出し、中から全身を黄金の鱗に覆われた半人半蛇の巨人が現れる。
アレンの強さになす術がないレンジ。肉体的に強いだけでなく、精霊魔法も超強化されている?
栞が手にしていた折れたブレードが光を放ち始める(刀身にアメノハバキリの銘が浮かぶ?)。強大な「蛇」の存在を感知して、真の力を発揮した?
「これを使って!」
栞が投げ渡したブレードを、レンジが掴む。たちまち金属の腕と一体化する。
[戦闘シーン、パワーで圧倒するアレンに、逃げ回りながら何とか隙を伺うレンジ?]
業を煮やしたアレンはパワーを貯めて、廃棄階層全体を巻き込むような必殺技を放とうとする。だが、攻撃が来る直前、レンジと栞は示し合わせたかのようにお互いの手を取り──一瞬だけSCP-3688を形成し、攻撃を無効化する。
どうしてそんなことが出来たのか、栞にも分からない。ついさっき会ったばかりの人なのに──父の仇なのに。
(もしかして──)
凛音を通して、自分はすでにレンジに会っていたのか。ずっと──一緒にいたのか。
力尽きてよろめくアレンに、矢のように突進するレンジ。
(掛かったな!)
アレンはまだ僅かに力を残していた。レンジに最後の一撃を放とうとするが、シエスタのおかげで何とか意識を取り戻したナギの放った銃弾がアレンの目に命中し、攻撃を外す(のってぃーさん案参照)。
レンジのブレードがアレンの腕を切り落とし、さらに転がり落ちた腕輪を真っ二つに断つ。
元の姿に戻るが、アレンは寿命を使い果たし、急速に風化して崩れ落ちていく。
詳しくは知らないが、おそらくは同じ立場だったアレンの最期に、栞は立ち尽くす。
「教えておくれ、お嬢さん。どうしたら、君のように優しくなれる?」
「私は優しくなんかない。真剣に生きていないだけだよ」
そんな間抜けな答えに、しかしアレンは納得したように微笑み、消滅する。
「愚か者が真剣になったところで、ろくな結果にならない、か。レナーデも呆れているな、きっと──」
栞が呼びかけても、ラムダに変化はない。
「すごいぞ、これ。俺が望んだ通りに動くんだ。まるで、ラムダの意思なんてないみたいに」
泣き笑いのような顔をしているレンジを、栞はきっと睨んだ。
「凛音を助けてあげて」
「え?」
「あなたは私の父親を殺した。その代わりに、凛音を助けてくれた。そうなれば、許してあげられるかもしれない」
そもそも恨んでいる訳でもないのに、許すも何もないものだが。それでも、今の彼には生き続ける理由が必要だ。凛音が我が身を捧げてまで生かそうとした彼には。
「分かった」
レンジは栞に折れたハンマーを手渡す。
「そいつは俺と深く繋がっている。ラムダが元に戻ったら、その糸を辿って会いに来る。父親を殺した凶器なんて、持っていたくないだろうが」
まあ、正直複雑だったが。
「分かった、預かっておくよ」
レンジが腕を一振すると、ブレードが折りたたまれて腕に収納される。それを見て、レンジは悲しげに苦笑する。
「何やら色々くっついちまったな。俺に価値なんてないのに」
有毒成句(トキシフレーズ) 垂れ流し装置のせいで、廃棄階層が崩壊し始める。栞はリトルの案内で出口目指して、レンジはラムダを救う手掛かりを求めて、図書館の奥を目指して走り出す。
~エピローグ案~
タイトルは「開演」?
夢の中でキューサクに年代記を渡す栞? 「終演」の様子を見せられ、これが本来の運命だったと明かされる?
海上を漂っていたところを保護されるルル?
シエスタとナギは生死不明?
図書館の奥底でL.Sと出会うレンジ、ラムダを助ける手伝いをするのと引き換えに、これまでの出来事を語って欲しいと言われる?
それをL.Sがまとめたのがこの物語? だから、メタ的な意味では、この章が「開演」?
※基本的にはアレン視点。
レンジとラムダが評価班と戦い始めた頃。
寿町(治安の悪い、いわゆるドヤ街。中央図書館のある野毛山からは電車2駅ぐらいの距離)の隠れ家。GOCの追っ手(式神かドローン?)が迫ってきたので、使い魔との契約を解除するアレン。使い魔は鳥に化ける妖精ムリアンが姿を変えたもので、契約を解除すると非実体化してしまう?)。
二人組がGOCの評価班と戦い始めたと(やや非難混じりに)報告するアレンに、シエスタは「そうか」とだけ応え、腕輪の調整があるからと自室に引きこもってしまう。もう始末は付いたから、興味はないと言いたげだが……。
(シエスタ、君は知っていたのか? ヅェネラルがラムダを騙したことを)
※2パートに分けるとしたら、このタイミング? 二人組が図書館から飛び立った時? 使い魔との契約解除はここでもいいかも?
「本当に来ちゃった…」雛山は肩を落としている。
「二人組(というよりラムダ)は図書館を利用して逃げようとしている。その道を開く条件を探るために、横浜の民俗資料が集中している中央図書館にやって来る」というシエスタの読みは、無慈悲にも的中した(セリフで説明するのは不自然──とっくに説明済みのはず──なので、地の文で説明)。
「死んじゃうのかな、ラムダ姉さんもレンジさんも」
「心配すんな」
雛山を慰めた?のは意外にもパヴェルだった。
「奴らがこの程度でくたばるかよ」
そう、彼はシエスタの作戦に反対しなかった。二人組は自分の獲物だと、公言して憚らないこのバトルマニアが。悲しい苦笑を浮かべるアレン。少なくとも二人組の実力に関しては、この男の方がよく理解っている。
(シエスタだって、ラムダの賢さと優しさは理解っている)
それを利用して、追い詰めようとしている。我々は理解り合えないのではない──理解っているのに、拒絶している(百歩蛇の手の人間関係を要約、引いては人間の限界そのものを暗示)。
(レナーデ、君はよくこんな私たちを、仮初にもまとめてくれていたな)
まだまだ雑です。
[図書館の一角(何故かここだけ日本の喫茶店みたいな造りになってる。)にてハードカバー本を片手にコーヒーを啜るL.S.。右肘から二本のブレード(融合したあとに若干短くなったアメノハバキリ)を生やしたレンジが、歩み寄り、向かいの席に座る。]
「ホローポイント、カサブランカ(←準用注意人物-JP総覧参照)、少し外してくれ。」
「おお、噂をすれば何とやら。……いらっしゃい櫺くん。」
「では後ほど。コーヒーは頼んでおいたよ。」
[二人が退場。静寂が走る。]
「……随分と混ざったな。蛇狩りの名を関する双刃に、蛇の鱗を象った液体金属兵器の肉片……右腕のそれはパヴェル・バシレフスキーの遺産か。」
「複製みたいなものだ。中身は熱線兵器に近い。」
[最序盤に着ていたものと同じ、灰色のウィンドブレーカー(邪魔になるので袖の一部は改良済み)を纏うレンジに目をやり、L.S.はゆらりと本を閉じる。レンジの目の前にはいつの間にか一杯のコーヒーが置かれている。]
「コーヒーってやつか、これ。」
「飲んだことが無い、といった顔だな。」
「実際その通りだからな。」
「……」
「ラムダを助けたい。」
[コーヒーには手を伸ばさずレンジが告げる。L.S.はまじまじとレンジを眺めながら肘を付く]
「三つほど条件がある。それを飲んだら力を貸そう。」
「……一つ目は?」
「助ける理由を教えろ。」
「貰ったものを何も返せていない。これから返したい。」
「それだけか?」
「こいつを、ラムダを待っている奴がいる。」
「……二つ目だ。お前はラムダを助けた後どうするつもりだ。」
「……」
[またしばらく静寂]
「まぁ、決まってないならそれでいい。咎めるつもりもない。」
[ゆっくりと、しかし確実に真剣に向き直ったL.S.が、最後の条件を突き立てる。]
「最後の条件だ。彼女の物語を聞かせてくれ。お前の中を満たすその混沌を、因果の終端を見せてくれ。」
[レンジはコーヒーを啜り、苦笑いしながらL.S.を見つめ返す。]
──7年後
『──機動部隊に-78(“ハンマーガールズ”)より朝倉博士へ、作戦フェーズ2を終了。野郎のケツをぶっ飛ばす準備は整いました。』
「『了解。体制を維持し、突入の合図を待て。』……排撃班は報告無しですか、“ルル”さん。」
[財団へ加入した後、小規模かつ高危険度のカルト系要注意団専門機動部隊の運用を担当するに至った栞が、合同任務に赴いていた6399排撃班“タケミカヅチ”(←こちらを参照。日本神話滅茶苦茶かっこいいので今度ちゃんと学んでみよ……)の班長、ルルに投げかける。]
「『6399排撃班、突入体制整いました。指示を待ちます。』……数ヶ月見ない間に、随分と目つき変わってもうたな、栞ちゃん。」
「お陰様でこっちの空気も肌に馴染んできました。……父もこんな場所で闘ってたんですね。」
「今すぐ会わせたいところなんやけどねぇ。まぁ難しいわな。」
「……あ、そうだ。班長就任おめでとうございます。」
「ありがとさん。事が済んだら飯でも食い行こか。……それは?」
「御守りです。」
「……ずいぶん物騒な御守りやな。」
[栞の手の平は、既に折れて半分程度の大きさになってしまったネイルハンマーの残骸を握っている。]
[横浜市の空の下。古ぼけた民家の中に潜む、邪神召還のための儀式を開始したカルト教団の一掃作戦の火蓋が切って落とされようとしていたその時、不浄の神的なアレが教団構成員を食らいながら血飛沫撒き散らして顕現。屋根を突き破りながら立ち上がり、合同任務部隊を一瞥する。]
「“タケミカヅチ”は零れた奴らから順次拘束してくださいな! あのバケモンは──」
「我々が担当します。(“ハンマーガールズ”)、ツーマンセルを組み突入地点から待避、建物の倒壊に注意しながら頭部を優先的に射撃しなさい! こちらの物理攻撃は通ります!」
[戦闘開始。ルルもヘッドセット片手に指揮車両から飛び出し、爆破術式での攻撃に移る。栞はすべてのヘッドカメラから送られる映像を頼りに見事な作戦指示を行う。しかし邪神は徐々に肥大化していく。]
(ああ、駄目だ、このままじゃ……!)
『──6399-12より合同任務部隊! 北側から何か変な奴が向かってきています! 人型実体! VERITASで確認できる限り……なんだこれ、複数の未知のエーテルが──』
[衝撃音。いつの間にか空中にいた人型実体が繰り出したソニックブームを帯びた強烈な右の打撃が邪神の頬を貫く。肉片、汚泥、血飛沫と共に引き抜かれたその右腕には、蛇の牙のように鋭く尖った二本のブレードが装着されている。]
『……栞ちゃん! 今すぐ来てくれ!』
[一瞬固まりつつも、バックアップスタッフの制止を潜り抜けながら現場へ飛び出す栞。木々の向こう側で邪神の頭部を引き裂きながら飛び回るその男の姿に、栞は──]
「ルルさん!……合同任務部隊! 教団構成員鎮圧人員を除く全員で邪神の左膝を攻撃しなさい!」
[一斉射撃。うつ伏せに倒れ伏した邪神の頭部めがけ、太陽の逆光を背負った人型実体が赫熱化した右腕を構えながらロケット噴射で急速降下する。頭蓋を完全に叩き割った右腕から超高出力の熱線が放射され、周囲の地面諸共邪神の上半身が吹き飛ぶ。]
[蒸気と土煙を退けながら、ルルに貸し出されたVERITASバイザーを用いて残骸の上に佇む人型実体を観測する。数種類の、全く別のエーテル値が観測されるがままに文字に起こされる。]
「──凛音?」
「聞かせてくれ、か。……長い四重奏カルテットになるぞ。」
「構わない。私の協力を得たいのであればそのすべてを語るのが決まりだ。」
「了解した。本当に長いから覚悟してくれ。」
「……ああ、そうだ。四つ目の条件があったな。」
「……」
「不服そうな顔には悪いが、これは実に簡単なモノだからそう構えないでくれ。……なんてことはない。こんどは──」
お前の物語を見せてくれ。
蛇と焚書のカルテット
最終頁: 開演
「報告にあったのは男女二名のはずだったが?なんだあの黒いのは。」
「蛇が人間の皮を纏ってただけだろ。何にせよこいつらに人の姿は似合わん。即刻処理する。」
「ヤシオリの連中には申し訳ないけど、目の前にゴミが落ちてたら掃除しなきゃですしね。そこの汚ェ男は僕とロード4で殺します。班長とロード2、ロード5はあのスライムを。」
「お前が指示すんなやロード3。……まぁ良い。その分担でいこうか。」
ご丁寧に目の前で作戦会議を開く白服共はパイザーの内側に汚い笑みを浮かべていた。人類の叡智の結晶を全身にフル装備した世界最強の戦士が五人。当然まっとうに撃ち合っても負けるだけだ。だからこちらも堂々と作戦会議を開くことにした。
「一番デカいのから殺る。階段と左囲い乱用でいこう。」
「了解。一人当たり二十秒で。逃走者は?」
「逃げる前に殺す。」
直後に沈黙が走る。双方の距離は20メートル。現場が市街地のド真ん中である上にこちらは飛び道具を一切所持していない。当然五人全員が腕部大型ブレードを展開した後、タクティカルナイフも抜刀する。
「様子を見てから仕掛ける。距離を──」
隊長格の台詞が終わる前に全力で正面へと駆け出した。敵は瞬時に会話を中断し迎撃の姿勢をとる。我流一筋で戦う俺とは真逆の、十数年かけて磨かれたのであろう洗練された構えだ。今からこいつらのど真ん中に突っ込むことになる。だが決して単身突入ではない。
「今だァッ!」
俺の咆哮と共に左後ろから滑り込んできた黒いスライムが、ものの数秒で長身男を他の白服と隔離した。長身男はもの怖じずにタクティカルナイフを握りしめこちらに向ける。
「かかって来い、化け物。」
「お望み通り。」
ホルスターからネイルハンマーを取り出し、振りかざす。カウンターが返ってくることは明確であり、正直これを防げる自信はあまりない。そして仮に食らった場合俺の命が無い。だからこそ彼女と共に戦うのだ。
「合わせろ、今!」
「んりゃぁっ!」
黒い障壁から突如として出現した触腕が長身の背中を全力で殴打する。姿勢を崩した長身の脳天めがけて一発、フルスイングで獲物を振り下ろす。軽い悲鳴をかき消すように顔面を蹴り上げ、隙をつくように喉元にネイルハンマーの釘抜きをぶち込み、強化布越しに喉元を抉る。
「んなァッ!?」
人物関連
二人組
櫺/レンジ
一本のネイルハンマー(時々予備のハンマーと合わせて二刀流)でGOCエージェントを狩る日本人のタイプ・ブルー青年。五行系列の弱小呪術師の家計に生まれた弱小術師。家のとり潰しと共に無一文のまま放り出されたところを百歩蛇に保護される76。
能力はVERITASの完全無効化77のみ。ホワイト・スーツ相手だと刃物が通らないからという理由(←ちょっと薄いのでネイルハンマーにこだわる背景設定作りたいです。)でネイルハンマーを使っている。
GOCエージェントに対する恨みも百歩蛇に対する恩義も、他人への想いも文字通りの“皆無”。ラムダさえ守れれば、ラムダと共に生きることができるのであればどんな手段も厭わないスタンス。その気になれば全世界を敵に回せるただし現在はラムダの要望により『必要最低限しか殺さない』というスタイルに。
(Vさんメモ: 名前は感覚でつけてます。BLAME!の主人公の“霧亥”と同じくらい意味のない名前です。名付け親は誰なんだろう。)
ラムダ・シナフス
自らの居場所を求めただひたすらGOCエージェントを殺し続けてきたが、レナーデとの出会いをきっかけに確かな『人間性』が芽生える。任務への躊躇や反感を徐々に増した結果ヅェネラルとの亀裂が深まる。
レンジの各キャラに対する心情
・ラムダ……こいつがいなかったら事務所襲撃事件で死んでいた。難しい判断は全て彼女に委ねる。必ず守り抜く。
・ヅェネラル……こいつの指示通りに動いていればラムダと生きていける。その気になれば殺せる。
・シエスタ……数少ない名前知ってる奴。別に興味はない。
・アレン……誰だお前。なんとなく強いのは解る。
・パヴェル……誰だお前。何でかは知らないがいつも隙を狙われている。
・ヒナ……マジで誰だお前。
・レナーデ……こいつの死がラムダに感情を与えたらしい。別に感謝しているわけじゃないが恨んでいるわけでもない。
・ヤシオリ……誰だか知らんが仇為すのであればぶっ倒す。
排撃班
6311排撃班(“ヤシオリ”)
──蛇の手専門排撃班。メインの班員は四人。
作戦時における識別コードは“ムラクモ/M[任意の数字]”。
“ナギ”
元班長の急死に伴い臨時で班長を勤める胃痛人員。班長の密命?に何となく接触しこれを追う。ヅェネラルの首をハネる役を担う。個人兵装は右腕部機関砲のみの状態から両腕部大型ブレード(旧隊長と同じスタイル)に変化する。
“キョウ”
副班長。長身眼鏡にして圧倒的無口。イドのプレッシャーを軽減させたいところではあるが如何せんすれ違いが起きやすい。こちらもこちらで胃痛が絶えないが「誰かの代わりに誰かを殺す」役を担わせたいところ。個人兵装はエントリーツール(バールみたいなあれ)。シェスタがバールを使うかもしれないのでうまく合わせられないだろうか。
“マガタ”
隊長を殺された恨みは班内随一を誇る(何らかの形で命を救われたのか)。単身先攻突入をキメて蛇を殺して回るレベルでヅェネラルにキレているが……?個人兵装は腕部グレネードランチャー。
(のってぃーメモ: 脳内で動かしたらツッコミ担当になりそう。なんで?)
(Vさんメモ: )
“ルル”
補欠で配属された新人。元班長との面識が無いため他のメンバーとの交流に溝がある。私は掘り下げられない……個人兵装は小隊支援火器(MG42など)。爆破系の術式を扱える五行系列の呪術師。廃棄階層突入戦で一躍買う。
(のってぃーメモ: なぜか脳内でボケよりの関西人になりつつある。なぜ?)
(Vさんメモ: 一応近畿の呪術師なのでちょいちょい方言入るかも。)
“班長”
元班長。故人。レンジにより殴り殺される。密命とはなんぞや。個人兵装は両腕部大型ナイフ。
(のってぃーメモ: 喫煙者だったことにしてもいいですか? なんか急に班長が没した後で唐突に煙草を吸い始めようとするイドとそれを諫めるブラフマの幻覚を見てしまったんですよ)
[以下、「notyetDrが動かしてるときはこんな感じです」のメモ]
新班長(イド⇒ナギ)
新しく班長に据えられた元サブリーダー。男性。一人称は「俺」。短い黒髪に中肉中背。ISTJ("管理者"型の性格)。至って平均的な外観だと当人は思っている。復讐をしたいという気持ちも決して薄いわけではないが、それ以上にリーダーとしての責務に押しつぶされないことに必死。どうして自分はこんなものを遺されたのだ?
戦闘ではリーダーのすぐ後ろで援護を担当していた。今は切り込み隊長として、見ていた背中を演じている。作戦立案能力、大局を見る事にかけては随一の能力を誇る。ただし、決断力にはやや難点がある(というかというか、あんまり決断せずに済んでいた?)。枝分かれした道の先に何があるのか見通す力とどの道を選ぶか決める力は別物だからである。班長存命時は決断のための情報を集め、まとめる役割を担っていた。実際のところ、参謀とか副官にしておいたほうが本人はイキイキしている。が、リーダーとしての素質もわりかししっかり持ってはいる。(本人に自覚はない)
表向きは大人しめの常識人枠だが、意志は強い。ノリツッコミ技能を保有。窮地だと余計なことを考える暇がなくなるので更に強くなるタイプ。排撃班のことは自らの居場所であり、落ち着くことが出来る場所として大事にしている。GOC上層部のことは堅苦しいのでちょっと苦手。また嗅覚が鋭く、何かと匂いで知覚しがちな一面がある。
「ああ、あのちょっと冷めた肉まんみたいな匂いがするやつか(ナギ)」「はい?(一同)」
他キャラ(グループ)への心情
・ナギ(自身)……あんまり自信はない。リーダーに不向きでは?
・キョウ……雨上がりの森の匂いがする。信頼。「こいつがいるなら大丈夫だろう」と無根拠に思いがちな傾向がある。
・マガタ……安物の整髪料の匂いがする。(もっといいのを買え、と内心思っている)いつも元気。実家で飼っていたチワワ(人見知り)に似ている……。
・ルル……寺社仏閣の匂いがする。とんでもない時期に来たけどすんなり溶け込んでるみたいで一安心。
・故リーダー……煙草の匂いがしていた。尊敬と信頼を持っていた。いったいあなたは何を見ていて、何を考えていたんですか。全然わかんないです。
・二人組……(出会った後は)無機質な濡れた金属の匂いがする連中。仇なので殺すべき。子供を見逃したことについては少しだけひっかかっているがそれはそれとして殺す。
・ヅェネラル隊……黴臭い本の匂いがする連中。密命なので、根絶やしにしなければならない。また、Part5以降では「友人の仇」が加わる。ただし、「絶対罠だろ」と思って踏み込んだら闇討ち同然になったことについては少しだけ意識の片隅にひっかかっている。殺すけど。
・栞……さすがに年頃の少女(それも上司の娘)の匂いについて語らない程度の良識を彼は持っている。哀れみの対象。寂しかろうな、と思っている。が、特に強い認識はしていない。どうして見逃されたのかちょっと不思議。
新・副班長(ブラフマ⇒キョウ)
ナギが班長になった後を引き継いだ新・副班長。男性。一人称未定(「僕」OR「私」)。がっしりした長身に冷たい銀縁の眼鏡。イメージとしては旧くがっしりとした巨木。ISFJ(""型の性格)。仇は討ちたいし蛇の手への嫌悪もあるが、マガタやナギがヒートアップしがちなのでそのときは抑えに回ろうと心に決めている。78
戦闘時は以前からマガタと組んで前線を守っている。防御に優れ、穴を埋めるようにして動くのが得意。また、戦線で何らかの異変に気づくのは彼が最初である事が多い。本人の気質も含めサポート・補佐向き。リーダーにすると気にするべきことが多すぎて潰れていく可能性があると自覚しているのでこの新配役には納得している。
非常に寡黙で安定感があるが、たまに天然。周囲からは何を考えているのかよくわからないと思われがち。排撃班のメンバーのことは少し一歩引いたところで見守っている事が多い。また聴覚に優れており、任務達成後に一人で何かを聴いてい。様々なジャンルに手を出しているがお気に入りは弦楽四重奏。音の方向性が似ており、かつ全部聞き取れるほどには規模が小さいのがいいらしい。
・ナギ……放っておくとたまに自分で背負いすぎる気質なので気にかけている。
・キョウ(自身)……輪の一歩外にいるべき存在。
・マガタ……いいやつ。ご近所さんの犬みたいな吠え方をする。恐れを忘れないのは戦士としていいことだが。
・ルル……善良そうだが底が知れない。
・故リーダー……尊敬。仇は討つので後は我々に任せて安らかに眠ってください。
・二人組……生かしておくと我々に安寧が訪れない。
・ヅェネラル隊……不気味な奴ら。漠然とした嫌悪。
・栞……不安なことも多かろうに気丈な子だ。ひょっとしたら踊れることを知っているかも。
突撃復讐マン(ダガー⇒マガタ)
単純明快な突撃マン。男性。一人称は「オレ」。逆立てた髪に尖った犬歯。ENFP("広報運動家"型の性格)。自分の事を狼のような戦士だと思っているが他のメンバーからは犬だと思われている。蛇の手ならびに異常存在に対して非常に強い嫌悪と根深い恐怖を抱いている。また班長への恩義も強く、復讐に対するモチベーションはヤシオリ随一。
戦術、「まっすぐつっこんでグレネードランチャーをぶっぱなす」、以上。あとの難しいことはだいたいリーダーとキョウが何とかしてくれる。こう書くと脳筋のアホっぽい(事実ではある)のだが、獣じみた直感を持ち、とっさの判断力および機転については非常に優れており79、故リーダーを含む他メンバーの命を救った回数も決して少なくはない。平常時にもっとも頭が回って先を見通せるのはナギだが、五里霧中の異常事態において最も頭が回り体が動くのは彼。(この観点だとキョウが強いのは「平常が平常でなくなりゆく予兆の察知」と言えるだろう。)
非常にシンプルなものの見方をしており、敵味方の区分も明快。そのあたり、ナギにはちょっと羨ましがられているかもしれない。帰属意識が強く、排撃班のことは仲間だと強く認識している。ツッコミ担当。……一番少年漫画適性が高いの、こいつでは?
・ナギ……いいやつだがちょっと優柔不断じゃないか?
・キョウ……いつも人の輪から一歩引いている。たまには加わったらいいのに。
・マガタ(自身)……恐れのない戦士。
・ルル……いいやつそうだし面白いやつだが、時々なに考えているかわからない。
・故リーダー……大恩人。仇は必ず討ちます。
・二人組……仇。殺す。
・ヅェネラル隊……仇。殺す。
・栞……さぞ悔しいでしょう。お父上の仇は必ず全員ブチのめします。
五行の新入り(ヨネ⇒ルル)
欠員を埋めるためにやってきた新入り。男性。一人称は「ボク」。反り上げた頭に古い火傷痕。時々ひどく冷えた目をしている。歴戦のピンチヒッター。(ひょっとすると最年長か?)ISTP("巨匠"型の性格)、あるいはESTP("起業家"型の性格)。新班長と面識はなく敵討ちという動機もないが、「あの人らとは因縁がある」と好戦的。
一通りの戦闘はこなせるが本業は呪術師であり後方支援者を自認。扱う術式は幅広く、攻撃以外にも補助妨害などを多く備える。火力は他の3名に劣るが、ちゃんとした戦術家の指揮官のもとにおけば戦術の幅を大きく広げられる人材。元評価班だったりして。
飄々とした関西弁(≠大阪弁)で話す。それなりに善良ではある(少なくとも悪人ではない)が底が見えない。団体に対する帰属意識は薄く、ヤシオリのことも「今度はおもろい所に来たな」くらいの認識。ドライな放浪者気質。マガタのことを時々からかって遊んでいる。ボケ担当。
他キャラ(グループ)への心情
・ナギ……苦労人認定。戦術に不満はない。
・キョウ……うっすらと危うさを認識している。自分の事をヤシオリの一員だと思ってないやろ?
・マガタ……元気で面白いやつ。テンポがいい。
・ルル(自身)……流れ者。熱くなるのは苦手。
・故リーダー……知らない人。
・二人組……何や見覚えのある術やな……。
・ヅェネラル隊……恨みとかそういうものではないが、強く冷えた敵意。
・栞……よく知らない子だけど、わずかに違和感。(ドリームマンの気配の感知?)ちゃんと未来を見ることが出来る子だと思っているかも。
※排撃班のメンバーは開始時点ではさして娘さんのことを意識していないし、詳しくもない。彼らが勝手に想像している栞の内心とは、彼ら自身の「排撃班として、部下として、前線で戦うものとして」という立ち位置を抜きにした個人的感情が大いに投影されたものである。
[notyetDrメモ ここまで]
6350排撃班(“ハウンドドッグ”)
──対異常生物特務排撃班。タイプ・イエローや式神、召喚獣なんかも恐らく対応可能。ホワイト・スーツを纏った班員四名とゴルカ服装備の後衛班で構成される。作戦時の識別コードは“ハウンド/W[任意の数字]”。
“ヴァイトマン”
歴戦の排撃班をまとめる歴戦の班長。新入りの“サウィング”に一目置いている。個人兵装は大口径腕部機関砲。
“サウィング”
監察医の資格取得を目指し奮闘中の頃の冠城検死官。新入りの癖してちゃっかり副班長を務める。異常生物も仲間の死体もぶっ捌くその腕からついたコードネームのニュアンスが“ノコギリ引き”。個人兵装はノコギリ 日本刀 大型ナイフ 厨二心をくすぐる何かかっこいいアレガスランチャー(SCP-2911-JP戦闘シーンに登場したW2と同様)。もしかしたらシロの先輩……?
“コーフィー”
名前の無いファイルにおけるハウンド4。しっかりキャラ付けしたことはないけど強いて言うなら女性キャラです(適当)。個人兵装はフラッシュボムとか(適当)?
“バーナー”
名前の通り汚染物質や敵対生物の焼却に用いる大出力火炎放射器を装備した班員。図書館のヤバい書物をある程度無力化するのに一躍買うかもしれない。
6398排撃班(“閃”)※読み方は“セン”
敵対要注意団体の制圧なら任せとけな脳筋の集まり。ホワイト・スーツ四騎じゃ足りないかもしれないので数十人規模に拡張すると共に班長以外モブ化するかもです。レンジやヅェネラル隊幹部クラスに殺される役として……
“メイス”
班長。イドやターニィとの関係性を掘り下げてみたいものの素材が足りない。個人兵装は大口径腕部機関砲。
ヅェネラル・プレシオル・リノプタル
パートⅠで死亡。男性、初老、一人称は「儂」で、常に威圧的な口調。獅子のたてがみのような銀髪、片目は眼帯に覆われ、もう片目は陰火ような眼光がちろちろと燃えている。若者顔負けのがっしりした体格。旧日本軍の将校のような服装。胸には殺したGOC職員から奪った勲章がずらりと並んでいる。悪趣味と言われても気にしない。
噂では元はGOCの幹部だったが、アルフィーネ事務総長との権力争いに敗れ、復讐のために蛇の手に寝返ったという(片目はその時の戦闘で失った?)。しかし、真相は誰も知らない。確かなのは、GOCに対して並々ならぬ復讐心を抱いていること。
復讐のためには手段を選ばず、配下すら道具扱いする。しかし、そうされても構わないからGOCに復讐したいと願う者にとってはある種のカリスマでもあり、瞬く間にそういった者たちを集め百歩蛇の手を組織した。娘であるレナーデすら半ば道具扱いしており、その死をメンバーをまとめるために利用している。
他メンバーに対する心情は以下の通り。
・レンジ……優秀な上に自意識が薄い、有用な道具。なのだが、なぜか嫌な予感がする。
・ラムダ……優秀だが、最近妙な知恵を付け始めた。要警戒。
・レナーデ……愛情もない訳ではないが、子は親の一部だと信じて疑わない。
・シエスタ……優秀で忠実、理想の道具。
・アレン……優秀だが扱いづらい。娘もこんな男のどこが良かったのやら。
・パヴェル……優秀である意味扱いやすい。
・雛山……こんな奴いたっけ?
足抜けを願っていたラムダを警戒し、「これで殺しは最後にする」という条件でレナーデの仇である隊長の暗殺を命じた。彼が任務で同級生になった、朝倉栞の父親であることは知らせずに。現場で気付いて逃げ出せば粛清の口実にし、気付かずに殺せば「全てはGOCのせいだ」とGOCへの憎悪を焚きつける予定だった。
横浜市に図書館の廃棄階層への道があることを知り、自分たちの拠点にするために探っていた。彼を切り捨てることを決意したL.Sによってその情報を漏らされ、隊長が調べていた(この段階でアジトの場所も検討が付いていた?)。調査の過程で年代記を見つけ、他に手段がなければ世界全てを道連れにするつもりだった。
能力は未定だが、恐らく弱くはないはず。ダエーバイト系の魔術師(植物を操るとか、生贄を使うとか)にして、研究の過程で年代記を見つけたことにするか、言霊使いなどにして図書館へも干渉できる(その知識の一部をシエスタが受け継いで、排撃班を図書館へおびき寄せる?)のもいいか?
シエスタ・シャンバラ
女性、20代後半、一人称は「我」で、男性的な口調。長い黒髪、切れ長の目、鞭のように引き締まった体、流麗な鼻梁の顔立ちだが、美女と呼ぶにはあまりにも甘さが欠けている。高級なパンツスーツに身を包んでおり、外見は大企業の重役秘書のよう。この格好だと現在の活動拠点である日本の都市部に溶け込みやすいからで、ファッションは実用本位。
代々五行結社の構成員を生み出してきた家系の出身であり、知識や体術はずば抜けてきたが、肝心の魔術師としての素養が欠けていたため、一族からは冷遇されていた。そこをヅェネラルに見出され、百歩蛇の手に入る。生真面目な性格で、ある意味ヅェネラル以上に掟に厳格。GOCの苛烈さを知っているからこそ、対抗のために鉄の掟が必要だと主張する。
自分を救い出してくれたヅェネラルに、絶対の忠誠を誓っていた──道具にされているだけかもしれないとは、薄々感じながらも。大義と私情を分離できない、そんな不器用さもある。ヅェネラルの片腕的存在であり、彼の死後は自然に新リーダーに就任する。他メンバーに対する心情は以下の通り。ただし、基本的には表には出さない。
・レンジ……同じような境遇でありながらも、全く気にしていない(少なくとも、彼女の目にはそう見える)その生き様に、内心嫉妬している。その反動で無断脱退を決して許せず、強固に粛清を主張する。実はツンデレ?
・ラムダ……能力と人格は評価していたが、必ずしもヅェネラルに忠実ではないため、腹を割って話すことはできずにいた。レナーデが仲介役をしてくれていたので、対立はせずにすんでいた。
・ヅェネラル……絶対的主人。己を律するため、あえてそう信じ込んでいるところもある。死後も忠実にその遺志を継ごうとする。
・アレン……レナーデの恋人でありながら、仇討ちに消極的な態度を非難している。ただし、内心では理解しており、ならば自分が代わりにやるしかないと思っている。実はツンデレ?
・レナーデ……親友。自分をさらけ出せる数少ない相手だった。焚書者は全て彼女の仇であり、一人たりとも生かしておくつもりはない。仇討ちなど彼女は望まないと分かっていながらも。
・パヴェル……人格的には全く信頼していないが、道具としては優秀だと思っている。
・雛山……口では厳しいことを言っているが、内心では哀れんでいる。本人のためにも、アレンの腰巾着状態は卒業させてやりたい。
絡み合う蛇のようなデザインの黄金の腕輪を装備している。強力かつ不定形の悪魔実体(いわゆる悪魔のことだが、財団世界ではよりエネルギー体に近い存在?)が封じられており、「(任意の敵)の魂を(任意の時間)以内に捧げる」という即席の契約を結ぶことにより具現化し、持ち主と融合する。多くの場合、黒い煙の形で現れ、シエスタの全身を包み込むことで、有翼の半人半蛇の姿に変身させる。鱗を変形させて武器にしたり、毒の息を吐く、鱗を小型の分身に変えるなども可能かもしれない。
契約の達成が困難なほど強い力を得られるが、もし果たせないと代償に寿命が削れてしまう。元はレナーデがシエスタのために作った(ここまで危険ではない)お守りだったが、後にヅェネラルが改造を施して現在の形にした。当然レナーデは父親に抗議したが、当のシエスタに「力を求めたのは自分の意思」と突っぱねられる。シエスタとしてはレナーデを焚書者から守る力が欲しかったのだが、レナーデは「親友を死地に追いやってしまった」と深く後悔していた。
アレン・ミナカタ
男性、二十代半ば。一人称は「私」で、穏やかながら、しっかりした口調(断定型が多い)。撫で肩、垂れ目、耽美的ともなよなよしたとも取れる容姿。砂色の髪を部分的に編み込み、ネイティブアメリカンの民族衣装のテイストを織り込んだような衣装を見つけている。ぎりぎり現代の服装の範疇で、民族音楽系のミュージシャンのように見えなくもない。実は服には魔術を補助する紋様が織り込まれており、そのカムフラージュのため。
元はディア大学の精霊魔術科を主席で卒業する程の優秀な魔術師だった。周囲からは教職に就くことを望まれていたが、同級生のレナーデが蛇の手のメンバーであることを知り、自身もメンバー入りした。後に恋仲になる。蛇の手の理念を理解はしているが、暴力には反対。単なる理想主義者ではなく、ヅェネラルに認められることで隊の方針を徐々に変えようと努力していた。
他メンバーに対する心情は以下の通り。
・レンジ……その自由な魂は、ヅェネラル隊の変化の象徴足り得ると期待している。何とかヅェネラル隊に戻って欲しいと思っている。
・ラムダ……恋人の妹、すなわち彼にとっても妹。何とかヅェネラル隊に戻って欲しいと思っている。
・ヅェネラル……恋人のちょっと困った父親。認めてもらいたいと思っていた。
・シエスタ……恋人の親友、すなわち彼にとっても親友。彼女が無理をして新リーダーを演じていることに気付いているが、指摘していいものか悩んでいる。
・レナーデ……恋人。彼女を守れなかった自分を、今でも責めている。ただし、仇討ちに関しては「彼女は望んでいない」として消極的(自己解釈であり、実際に聞いた訳ではない)。
・パヴェル……困った人だが、生まれつきなら仕方ないと諦めている。能力的には信頼している。
・雛山……可愛い弟分。自分の能力を持て余す様に、過去の自分を重ねている。出来るものなら、ヅェネラル隊からは脱退させてやりたいと思っている。
伝統的な精霊魔術の使い手。どちらかと言うと、直接攻撃よりサポートが得意? 可能なら精霊・妖精系SCPを使役してもいいかも。例・SCP-2185 - 水体性召喚獣労働組合(契約に基づいて働く社畜水の精霊)、SCP-1643-JP - ヴェルサイユの木陰にて(ヴェルサイユ庭園に住む樹木の精霊)、 SCP-457 - 燃え盛る男(暴れん坊の火の精霊)、SCP-1352 - 自我あるつむじ風(まんま、人懐こいが危険)、SCP-266 - ウィル・オ・ウィスプ(熱を吸い取る発光体)。
レナーデを失ったことにより、本人でも気付かない根深い絶望に囚われている。後のパートで、瀕死のレンジを前にしても仇を討とうとしない栞を見て「自分はレナーデの真似をしていただけだ」と本心に気づいてしまい、年代記を奪って(翻訳を担当した過程で、使い方を知った?)世界を滅ぼそうとする。
レナーデ
物語開始時点の1年前に死亡。女性、享年20代半ば。一人称は「私」、優しいがどこか諦観の漂う口調。緩く波打った亜麻色の髪、神秘的な緑の瞳、春の花のような華やかかつ穏やかな美貌。服装には特にこだわりはないが、あまり派手な格好は苦手か。
ヅェネラルの実の娘。父とは似ても似つかない心優しい女性で、復讐に囚われた父を嘆きつつも、見捨てることはできずにいた。「ひょっとしたら、私の母を死なせてしまったという自責の念かもしれないから」とアレンやシエスタに漏らしていたが、彼らも詳細は知らない? メンバーたちの良き保護者であり、ヅェネラル隊は彼女で保っていた。逆に言えば、彼女の死こそが隊の崩壊の始まりだった。
他メンバーへの心情は以下の通り。
・レンジ……彼女の死後に加入したので、面識はない。しかし、ラムダたちの態度から、死後もその影響が大きいことは知っている。
・ラムダ……妹のような存在。ラムダが人間であろうとするのは、彼女が掛けてくれた「誰が何と言おうと、あなたは人間の女の子よ」という言葉を大切にしたいから。
・ヅェネラル……哀れで愛しい父。
・シエスタ……親友。その意思を尊重しつつも、父の復讐に付き合わせたくないと願っていた。
・アレン……恋人。自分を選んでくれたことに感謝しつつも、巻き込んでしまったことを申し訳なく思っていた。
・パヴェル……かわいそうな人。
・雛山……可愛い弟。アレンと同様、出来れば蛇の手から脱退させてやりたいと思っていた。
L.Sから提供された情報を元に行動していた隊長に発見され、人質にされて皆を危険な目に合わすまいと自ら命を断つ。また、これで父や皆が復讐の虚しさに気付いて欲しいという想いや、間接的にとは言え大勢の焚書者を殺してしまった罪滅ぼしの意味もあった。敵とは言え、人の娘を殺してしまったことは隊長にも根深い罪悪感を残した。そのせいで、レンジに襲われた時も全力が出せなかった? 物語の始まりになった、生贄の乙女。
能力は未定だが、シエスタの腕輪を作ったのが彼女という設定を使うなら、お守りなどのマジックアイテムの制作か? ディア大学に在学中に学んだ? ラムダに渡したお守りのせいで、アジトの位置がバレてしまった?
パヴェル・バシレフスキー
男性、二十代後半。一人称は「俺様」、常に挑発的な口調で、しょっちゅう「ひひひ」「けけけ」といった笑いを漏らす。がっしりした体格だが、常に浮かんでいる隈と削げた頬が不健康な印象を与える。片側剃り上げヘアーに、パンクとミリタリーが入り混じったファッション。理由は「かっこいいからに決まってるじゃねえか」。
元はスラムの孤児で、他人を食物にするのが当然の環境で育った。後にハーマン・フラーの不気味サーカスに拾われ、手足を義体に改造される。当初はそれで芸をさせられていたが、その血の気の多さに目を付けた団長によってさらなる改造を施され、反乱鎮圧用のピエロ・ハンターにされる。そして力を得た彼は、団長を半殺しにしてサーカスを飛び出し、ヅェネラルに拾われる。
根っからのバトルマニアで、ヅェネラル隊に所属しているのも、強敵との戦いを求めて。勝つためには手段を選ばず、無関係の人間を巻き込むこともためらわない。内心ではメンバーとさえ戦ってみたいと思っている。雑魚をいたぶる趣味だけはないのが、数少ない美点か。異常に飲まれてしまった人間、を体現する存在。
他メンバーに対する心情は以下の通り。
・レンジ……是非戦ってみたいと思っていた。今回の無断脱退は格好のチャンス。
・ラムダ……同上。
・ヅェネラル……偉そうな親父だが、強敵と戦わせてくれるなら文句はない。
・シエスタ……うっとうしい女だが、レンジやラムダと戦いたいので、粛清には賛成。
・アレン……ただの腰抜け野郎。道具としては役に立つ。
・レナーデ……いい女だったが、戦士ではないので興味なし。
・雛山……アレンの腰巾着。道具としては役に立つ。
体に超常的なギミックを仕込んでいる。ピエロをモチーフにした仕込み大砲、足をバネ状にして驚異的なジャンプ力を得る、口から万国旗を吐き出して絡みつかせる、ヘソからエアバッグを出して攻撃を防ぐなど。サーカスをモチーフにした、相手を愚弄するような外見をしたものが多い。また、銃器や運転の技術も高く、しばしば雛山が出した武器や車両の使用を代行する。
雛山 龍三郎
男性、十代後半。一人称は「僕」、おどおどした口調。小柄で華奢な体格。常に垂れ下がっている眉と、常に周囲の顔色を伺っているような目つき。ごく一般的な学生服。とにかく目立つ格好をしたくないからで、必要なら着替えもする。ただし、過剰に「周囲に溶け込もう」とするせいで、かえって目立ってしまうこともしばしば。
ヅェネラル隊最年少メンバーで、内気で気弱な性格。元はごく普通の学生。裕福だが愛情の薄い家庭に生まれ育ち、学校では金づるといじめられっ子の中間のような立場だったが、突然目覚めた能力(後述)でいじめっ子を殺害してしまう。罪の意識と恐怖から自殺を考えていたところを、アレンに説得され隊に所属する。
アレンに依存しており、パヴェルからはしばしば「腰巾着」と揶揄される。自覚はしており何とか自立したいとは思っているが、状況が過酷すぎていまいち光明は見えない。アレンに同調し、レンジたちを仲間に戻すことを主張する。
他メンバーに対する心情は以下の通り。
・レンジ……あまり親しくはないが、境遇には同情している。
・ラムダ……姉御肌の頼りになる人。自分よりよっぽど立派な「人間」だと思う。
・ヅェネラル……おっかない人。でも、ある意味分かりやすい。
・シエスタ……おっかない人。アレンは「本当は優しい人」と言うが、いまいち分からない。
・アレン……実の兄のように慕っている。生まれて初めて出会った、本心を話せる人。レナーデの仇討ちに関しては「彼女は望んでいない」という言葉を尊重しているが、いっそ復讐鬼になった方が楽なのにと痛々しく思っている。
・レナーデ……実の姉のように慕っていた。ヅェネラル隊をまとめていたのは、実は彼女の存在だったと気付いている。
・パヴェル……おっかない、理解不能。
玩具に触れて念じることで、本物に変える能力を持つ。ミニカーなら本物の自動車になるし、モデルガンなら実際に撃てるようになる。ただし、彼自身には運転や射撃の技術はないため、主にパヴェルに使ってもらうことになる。ぬいぐるみや人形も本物にでき、その場合はある程度コントロールできることにしてもいいかも。本人は未だに自分の能力とは実感できておらず「なぜか自分が触った玩具が本物になるという怪奇現象」だと思っている。蛇の手メンバーは異常に関わってしまっただけの人間、を体現する存在。
各陣営の対廃棄階層("道")スタンス
notyetDrが現段階で持ってるイメージを青字で表記。修正とかアイデアとかあればガンガン追記してください
百歩蛇の手
・山下公園にあることを把握(第五の段階で?)
・基本的にGOCが入ってこられないことを知っている
(・ただし、シエスタは操作法と排撃班を招き入れる方法があることを知っている。これはトンガラシ翁かなんかから仕入れる? アレンあたりは解読できるかも)
・関連アーティファクト"未完の年代記"を所有、かつ関連があることを把握。ただし、世界を書き換えるだけの力があることは知らない。
それで大丈夫だと思います。シエスタとしてはヤシオリにはなるべく油断して欲しいので、こっちから道を開いて招き入れてやるのは避けたいでしょうね。- ykamikura
ヤシオリ
・基本的にGOCが入ってこられないことを知っている
・ただし、不安定になっていることを把握し、アンカーを内部に導入すれば入り口を爆破にかかれる
・「未完の年代記」が極めて危険であることは知っているかも。逆に図書館操作法の事は知らない?
・正直黒の女王がどこまで情報を流すか(つまり黒の女王が何を知り、何を目指して動くか)に依存する……
・ちなみにこのことはヤシオリも察しているし「は? 俺らはチェス駒か?」と思っているかもしれない
・ラムダが図書館に入ってくれなきゃ爆破できないので、むしろ入り口を見つけたら誘導する方にいくかもしれない。(他の班員はさておきナギには「残党も全員殺す」の意識があるから、そのあたりは踏み切れる)
それで大丈夫だと思います。最初はシエスタがトラブルで道を閉められなくなった振りをして、ヤシオリを廃棄階層におびき寄せる……とか考えていたのですが、爆破の方が二転三転できて面白そうですね。- ykamikura
二人組
・避難経路として。正直図書館なら何でもいいんだと思う(ヅェネラルづてで情報を探してるから被ってるだけ)
・ただし、途中でアレンの出してくる話に乗るなら「そうだ廃棄階層(危険地帯とは知らない。「シエスタがいる場所」くらいの認識?)に偽装死体置きにいこう!」とは思うかも
・入るだけなら頑張ればいけそう
アレンから貰った姿隠しの護符(制限時間付き、使い捨て。アレンがレナーデの真似をしてどうにか作った?)を使って、アレンの合図で突入する感じですかね。タイミング的には、シエスタたちに便乗して? さすがにヤシオリの突入に便乗するのは危ないかも? - ykamikura
栞とドリームマン
・ドリームマンってどこまで知ってるんですか?
・ラムダの後を追う、もアリか?
ドリームマンなら何を知っていてもおかしくない(ご都合主義)。蛇の手を知っているぐらいだし、図書館やL.Sのこともおそらく知っているでしょう(彼が財団管理者だとすれば、黒の女王とは宿敵同士ということになりますね)。ただ、現状の第六項下書きを使うなら、未来予知はせいぜい数日先のことしか分からなくなっている。
栞としては、ラムダの後を追うのが一番自然ですね。ただし、↑の設定を使うなら、ラムダは見えなくなっているんですよね。リトルには見えたとか、図書館内にいる光景を予知したとか? - ykamikura
黒の女王
・ヅェネラル隊にキレてるし始末するためならヤシオリを利用することも辞さない
・なんでキレてるのか、どこまで図書館(廃棄階層)を戦場にすることを許すのかは要相談
・ヤシオリの著者としてありがたいのは「廃棄階層から図書館につながる道は切り離すからそこで暴れときな」であるが、黒の女王としてそれはアリなのか?
それで大丈夫だと思います。最後の廃棄階層崩壊は、彼女が邪魔者をまとめて焼却炉にでも放り込もうとした結果かもしれませんね。- ykamikura
・L.S=黒の女王がヅェネラル隊にキレてる理由(キレ度が高い順) - ykamikura
1. 禁断の図書館操作呪文が載った年代記を持ち出して、図書館を私物化しようと企んでいるから 下手したら、蛇の手そのものが「規約違反」で図書館から追い出されてしまう恐れがある(利用客が図書館を勝手に増改築するようなもの)。事実、かつて蛇の手は出入り禁止を食らったことがあるらしい。その可能性を少しでも減らすために、この物語のL.Sは多少責務が増えるのを覚悟で「筆頭司書」に就任した?。
2. 優秀かつGOCに恨みを持つメンバーを他派から引き抜き、いずれ蛇の手全体を乗っ取ろうと企んでいるから この辺はパート10以降のどこか?案でパヴェルがもらしています。
3. いくら何でもやり口が過激すぎるから 結果、穏健派である青大将の手を巻き添えにしたことで、本格的にキレたのかも?
4. L.Sが個人的にもヅェネラルを嫌っているから 四面楚歌って言葉知ってる、ヅェネラル?
1はさすがに変えられないかもしれませんが、2以降は明示するかどうかは流れ次第ですかね。
タスク
共同/共通のタスク
- ストーリーを始めとしたプロット練り練り
- 構成と投稿順の計画練り練り
- 書くべきシーン/書けそうなシーン/書きたいシーンのストック
- 体調管理
- 完結まで持ち込む
各自のタスク
──第二席
──第三席
- 第五頁
──第四席
──共著(やるかどうかは解らない)
本編で語られており、回収も一応済んでいる伏線
レンジとラムダの出会い
「有村組に雇われてたレンジが独りだけ生き残って、落札されて間もなかった私に偽装装置をくれて、そこからしばらく2人で広島や神戸を旅して、ヅェネラルに拾われて」
回収予定: 第七頁で完全に回収予定? 同時に「二人の絆の強さの理由」も表現できればベストか?
ラムダが人殺しを止めた理由
『レンジより百歩蛇へ通達。状況終了、対象の死亡を確認。証拠画像を送信する。』……“理由の無い殺し”は金輪際封じる。そうだな?」
「私がレナーデを救えていたら、他人の死なんか怖がらずに済んだのに」
回収予定: 第九頁 – 青空と後悔(仮タイトル)で栞との会話が後押しになった、ということにする予定。
シエスタがヅェネラルに忠誠を誓う理由
シエスタにとってヅェネラルは、人形以下のゴミ扱いの境遇から救い出してくれた恩人であり、絶対の主人である。逆らうことは、彼が与えてくれた己の価値の否定であり、存在理由と矛盾する行為だ。
(自分にもこんな力があったら)一瞬だけ思い描き、すぐに振り払った。そんなものがあったら、今頃自分も両親と同じ人種になっていた。魔術師以外人にあらずと信じて疑わない、あの救いようがない愚か者どもと。
回収予定: 未定。ただし、現在のシエスタの動機はすでにレナーデの仇討ちになっているので(ヅェネラルかわいそう)、無理に付け加えるのは蛇足になるか?
本編で語られているが、未回収の伏線
本の正体および能力
よろよろとレンジの死体にかがみ込む。その懐から一冊の古文書が覗いているが、ラムダはそこまで気が回らない──この本なき図書館で、それはあまりに不自然な光景だと言うのに。
終演より
シエスタは懐に忍ばせた本の感触を確かめた。ピストルを隠し持つ暗殺者のように。陥落するアジトから命からがら持ち出した、ヅェネラルの遺品だ。
回収予定: 第八頁 - 終末と黎明(仮タイトル)で、ドリームマンから栞にダエーバイト年代記ことSCP-140であることを説明する予定。
ラムダと栞の関係
「……同級生、だよ。例の潜入先の、GOCフロント企業の高校で仲良くなった人。」
回収予定: 第九頁 – 青空と後悔で、ラムダと栞の学校生活を描く予定。
前班長がレナーデを殺害した顛末
「──2004号……あるいは”双刀”か。お前の言うとおり、レナーデの仇討ちで殺しも一回打ち止めにするつもりだったんだが。まぁそう上手くはいかないと思うぞ。少なくとも“意味のある殺し”だけはずっと続く筈だ。」
回収予定: 放浪者の図書館・廃棄階層突入までには、殺害シーンを挿入する予定。草案はレナーデ死亡シーン(ykamikura案)を参照。
ヤシオリ班長専用ブレード(仮名アメノハバキリ)の存在理由
冷え冷えと黒く光る、双つの湾曲した刃。ホワイトスーツに装着する個人兵装、ヤシオリ班長の愛用していた両腕部大型ブレードだ。
回収予定: 最終頁でラスボス化(半人半蛇の巨人)したアレンを前に真のパワーを発揮、「蛇の属性を持つ相手に特化した武器(アメノハバキリは八岐大蛇退治に用いられた刀)」であることが判明する予定。
前班長が受けていた極秘任務
「ひょっとすると既に気づいていたかもしれないが、ヤシオリの班長は秘密裏に上層部からの指令を請けて動いていた。まだ秘匿レベルの申請が終わっていないためここで全貌を明らかにすることは出来ないが、近日中には正式に君に引き継がれることだろう。それだけ覚えておいてくれ」
1件目は以前聞かされた"ヤシオリ班長の密命"についてだった。どうやら、向こうが仕掛けてくる前から班長は百歩蛇の手と明確な敵対関係を持っていたらしい。曰く、百歩蛇の手の首魁はあまりに危険なアーティファクトを保有していたらしい。詳細はわからないが、本の形をしているのだという。
回収予定: 第十頁(タイトル未定・排撃班パート)で黒の女王スーリエ・ルージュ(仮名)からヤシオリ一同に説明させる予定。
栞が見ていたという夢
戦場へ向かう最中、ナギの脳裏にちらりと生き残ったリーダーの一人娘の事がよぎった。奇妙な夢を見たとかでたまたま目を覚ましていて、惨劇を目にして、そして見逃されたという少女。
回収予定: 第八頁 - 終末と黎明(仮タイトル)で、ドリームマンが栞を夢に誘う試行であったことが判明する予定。
前班長に「本」の存在を教えた情報提供者と、その目的
曰く、百歩蛇の手の首魁はあまりに危険なアーティファクトを保有していたらしい。詳細はわからないが、本の形をしているのだという。班長はずっとそれを破壊するべく、"詳しくは明かせないがこの件においては信頼できる情報提供者"と協力して動いていたのだ。
回収予定: 第十頁(タイトル未定・排撃班パート)で黒の女王スーリエ・ルージュ(仮名)からヤシオリ一同に説明させる予定。
なぜシエスタは二人組が中央図書館にやって来ると読めたのか
『焚書者どもに伝えろ、レンジとラムダは中央図書館にやって来る』
回収予定: 第七頁(タイトル未定・中央図書館編最終パート)で蛇の手組パートで説明予定。
前班長を失ったナギの喪失感が、他の班員より大きい理由
「あいつらが俺たちに仇を差し出す動機はある。あれだけ痛めつけられた後だからな。ただの罠であっても、それならそれで敵の居所は掴める。……リーダーの仇の、だ」
班長だけがここにいないまただ。またこれだ。脳裏を過った現実が、表情筋を静かに定位置へ押し戻す感覚。あの日以来、幾度となく自分を包み込んだ薄暗い喪失感。真っ白な欠落感。笑いを浮かべる度に訪れるそれは、多分この先もずっと俺の中に居座り続ける。
回収予定: 未定。のってぃーさんに期待しよう(圧)。優秀で人格者な上官だから、という理由は班員共通と思われるが、ナギはそれに加えてさらに個人的で深い理由がありそう。
放浪者の図書館への“道“の場所、その開放手段
「放浪者の図書館に繋がるポータル、横浜のどこかにある。確実にある」
「そう。そこも厄介なんだよね。盗み読み中にちらっとだけ、何枚か赤い靴を履いた女の子と、あと女の子の銅像の写真が見えたんだけど、そのあとヅェネラルにつまみ出されちゃったからなぁ」
「“道”に関しても、心当たりがある」
回収予定: 第十一頁 – 黄昏と出港(仮タイトル・百歩蛇の手組による学園襲撃&道開放パート)で判明予定。
薔薇の名前が四ツ角に「二人組に手出しするな」と命じた理由
『さっき緊急のメール来てたけど、《図書館の情報は聞き漏らすな。戦うな。殺すな。生かしておけ》だとさ』
回収予定: 第十頁(タイトル未定・排撃班パート)で黒の女王スーリエ・ルージュ(仮名)からヤシオリ一同に説明させる予定。
デコイの用途
ラムダの目の前に置き渡されたのは、ヒトデのような形状の乾燥した球根だった。合計4つ。以前ヅェネラルの蔵書で見つけた異次元世界の固有植物、マンドラゴラの実物である。
「!……このデコイ、ヒナのために作ってたんじゃ──」
回収予定: 廃棄階層突入時に実際に使って説明するか?
本編で未使用の伏線
二人組を中央図書館から逃がした人物
使用予定: 第七頁の最後でちらりと登場予定。ラムダの知り合いであること、リトルが一緒にいることまでは明言?
回収予定: 第八頁 - 終末と黎明(仮タイトル)で、最後にリトルが栞に同行することでほぼ明言、第十一頁 – 黄昏と出港(仮タイトル・百歩蛇の手組による学園襲撃&道開放パート)の栞の回想シーンで確定する予定。
ヅェネラルが“道“を探していた理由
使用予定: 未定、無理に仕込む必要はないか?
回収予定: 未定、廃棄階層潜入時にシエスタに説明させる(図書館操作呪文とルールが適用されないせいで、好き勝手できる通路&拠点が手に入るから)か?
シエスタが排撃班を廃棄階層に誘い込んだ理由
使用予定: 第十一頁 – 黄昏と出港(仮タイトル・百歩蛇の手組による学園襲撃&道開放パート)の最後で、パヴェルに「入口を教えてやったんだから、ちゃんと来いよ」などと呟かせる予定。
回収予定: 未定、廃棄階層潜入時にシエスタに説明させる(図書館操作呪文で優位に立てるから)か?
ダエーバイト年代記に図書館操作呪文が載っている理由
使用予定: 未定、ダエーバイト帝国も図書館を利用していたという描写が必要か?
回収予定: 未定、一応シエスタがトンガラシ翁に年代記を翻訳させている最中に、アブ・レシャル将軍ことアベルが図書館操作呪文を使って敵を撃退する逸話が出てくる、などを考案中
エピローグタイトルが「開演」である理由
使用予定: 未定、無理に仕込む必要はないか? プロローグタイトルとの対比で十分伏線になっているか?
回収予定: 未定、黒の女王がレンジから経緯を聞いて、まとめたのがこの物語ということにして回収? 栞の活躍で滅びの未来が回避され、新たな歴史が始まったという点とも絡められるか?
◆この世界の黒の女王に関して
通称は黒の女王・スーリエ・ルージュ(フランス語で赤い靴の意)、蛇の手のリーダーL・Sと同一人物。正確にはその一人。本名は佐野きみ。1902年(明治35年)の生まれで、童謡『赤い靴』の主人公のモデル。行方不明になった父ギアーズを探して、異人ならぬ「何者でもない」の導きで放浪者の図書館へ。
実年齢は120歳近いが、外見は十代。ゴシック・ロリータ風の黒い衣装に身を包み、赤い靴を履いている。淑女を装った話し方だが、内容は辛辣そのもの。特に正常性維持機関の人間に対しては、呼吸するように罵倒を浴びせてくる。ただし根は冷静で、今の世界には彼らがまだ必要と認めている。父(彼も異常な方法で延命させられている。O5の一人かも?)を財団から解放するためには、人類から異常存在への忌避感を取り除かねばならないと考えている。
それゆえ、私怨のために異常能力を振りかざし、図書館を(廃棄階層とは言え)私物化すようとする百歩蛇の手は、迷惑極まりない異端者。しかも、ダエーワ年代記という危険なアイテムまで持っている。早急に始末しなければならないが、自ら手を下すと蛇の手メンバーの反感を買う可能性があるため、GOCに情報を流して代行させることにした。レナーデが前班長に殺害されたのも、彼女が流した軽井沢のアジト(第三頁に登場)の情報が原因。
履いている赤い靴はあらゆる境界・次元を越えた移動を可能にする。その能力で他者とはズレた空間に居るため、彼女が望まない限り何者も手出しできない。また、放浪者の図書館への長年の貢献が認められ、筆頭司書という地位に就いている。その権限で他者に図書館の会員証を発行したり、ルール違反者を取り締まったりもできる。
蛇の手のリーダーL・Sとしての自分と、黒の女王スーリエ・ルージュとしての自分、そして佐野きみとしての自分を、完全に演じ分けられている訳ではない。レナーデを死に追いやり、栞から父親を奪ってしまったことは、内心罪悪感を覚えている。しかし他者の前で、特に正常性維持機関の人間の前で、それを認めることはないだろう。
◆放浪者の図書館・廃棄階層に関して
放浪者の図書館は生物的な特徴を持っている。本棚が増え続けるのは細胞分裂であり、司書や整理係は栄養(本)を運ぶ血液、利用者は共生菌、ルールを破ると罰せられるのは免疫のようなもの。してみると、廃棄階層は髪の毛に近いのかもしれない。それはすでに細胞としての活動を終えており、本棚も空っぽの状態。
しかし、廃棄階層には図書館のルールが適用されないという利点もある。司書や整理係は来ないし、戦闘行為も禁止されない。この点に目を付けたヅェネラルは、廃棄階層を私物化し、ポータル兼拠点として利用しようと企んだ。スーリエ・ルージュはその動きを察知したが、彼らを一箇所にまとめた方が始末し易いと判断し、妨害しなかった。
◆ダエーワ年代記に図書館操作呪文が載っている理由
年代記はヅェネラルが廃棄階層について調べる過程で入手した。図書館操作呪文が載っているのは、このような部分。
肉の邪教徒どもはまず、帝国の叡智の源泉たる図書館に攻め込んだ。女王の寵愛深きアブ・レシャル将軍(アベルのこと)は、図書館で邪教徒どもを待ち伏せた。押し入ってきた邪教徒どもを前に、将軍は声高に呪文を唱えた。「大いなる知恵の蛇の名において命ず。授く主ナハシュ(二つの樹の下にに登場。おそらくイブに知恵の実を食べさせた蛇がモデル。この後図書館に引きこもった。ついでに言うと、蛇の手という名前も聖書の蛇が由来か)の名において命ず。放浪の図書館よ……(呪文)……我が意のままに姿を変えよ」たちまち図書館は、将軍の命ずるままに構造を変化させた。邪教徒たちは本棚に押し潰され、書物の洪水に飲まれ、あるいは百年歩き続けても出ること叶わぬ書庫に落とされ、あえなく全滅した。
通常階層ではこの呪文は筆頭秘書(作中で該当するのはスーリエ・ルージュのみ)でなければ使えないが、廃棄階層なら誰でも使える。ヅェネラルはこの呪文があれば、廃棄階層で神のように振る舞えると考えている。この部分にのみ気を取られていて、年代記の真の力には気付いていない。
◆シエスタの過去
第3項の一文
シエスタにとってヅェネラルは、人形以下のゴミ扱いの境遇から救い出してくれた恩人であり、絶対の主人である。逆らうことは、彼が与えてくれた己の価値の否定であり、存在理由と矛盾する行為だ。
および
(自分にもこんな力があったら)
一瞬だけ思い描き、すぐに振り払った。そんなものがあったら、今頃自分も両親と同じ人種になっていた。魔術師以外人にあらずと信じて疑わない、あの救いようがない愚か者どもと。
を元に膨らませました。
実はシエスタはレンジと同じく五行結社の幹部を代々勤めてきた家柄の出身。家は極端な魔術(陰陽術?)至上主義で、優れた術者を生み出すために、近親婚や人外との婚姻、胎児への施術などの禁忌を繰り返してきた。その副作用で精神が歪な者ばかりになっていた。
そんな家に生まれながら、素質が全くないシエスタは冷遇されていた。学業は学校一の成績にも関わらず、一人だけ屋敷の離れに住まわされ、優れた素質を持つ姉からは「出来損ない」呼ばわりされる日々。ある日、姉が病に倒れる。それは代々繰り返した禁忌の結果であり、治療するにはシエスタを生贄にして肩代わりさせるしかない。
生贄の儀式当日、儀式場に現れたシエスタは突如銃を抜き、姉を射殺する。血まみれの姉に向かって「どうしました、優秀なお姉様?」と呟くシエスタ。両親は慌てて術を使おうとするが、シエスタの指にはまった指輪に無効化される(蛇変身の腕輪はまだ持っていない)。シエスタは両親に続いて一族も淡々と皆殺しにする。
血の海と化した屋敷に佇むシエスタの前に、ヅェネラルが現れる。術封じの指輪を授け、一族皆殺しを打診したのは彼だった。「言った通りだろう? 奴らなどより、お前の方が強いと。術という手段に拘泥して、強さの本質を見失うとは愚かな。強さとは、意志の力に他ならぬ。お前にはそれがある」「我ならもっと用意してやれるぞ。お前の価値を見せつける舞台をな」
こうしてシエスタはヅェネラルの片腕となる。この事件が切っ掛けでGOCは五行結社を危険視するようになり、それがレンジの生家への襲撃に繋がった? 己を認めてくれたヅェネラルに、価値を示し続けること。それが以降のシエスタの全てとなった・・・はずだったが。
「ただいま戻りました、お嬢様」
「もう、お父様がいない時は名前で呼んでちょうだい」
「・・・失礼しました、レナーデ」
(レンジの過去との差別化が難しいか? 一応、他人に両親を殺されたレンジに対して自分で殺害した点、生きることしか考えていないレンジに対して「価値」という言い訳が必要な点で差別化はしているつもり)
(メインエピソード中に組み込むのは難しいか? 外伝で語るか? レンジの過去を知って、似た境遇なのに現在の性質は正反対なことに戸惑うシーンも欲しいか?)