SCP-2263-JP - 前代未聞のヒーローショー
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アイテム番号: SCP-2263-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2263-JPはサイト-81XCの標準収容ロッカー内に収容されます。SCP-2263-JPの実験は担当職員3名の許可を得たうえで実施されなければならず、実験現場には機動部隊に-83("バンカーランナー")の隊員4名が配置されます。現在、SCP-2263-JP製造元である劇団「救助隊」の追跡・調査が行われています。

説明: SCP-2263-JPは全10ページからなる児童向け演劇「ゴーダム・レッド ショー」の台本です。現在までに財団によって17の実例が発見・確保されています。表紙には「製造元: 劇団「救助隊」」と記載されています。現在までに、同名の劇団組織の発見、確認には至っていません。

SCP-2263-JPの異常性は、台本の内容に従って演劇を行った時に発生します。発生する異常性は以下の二つが確認済みです。

  1. SCP-2263-JP演技者に発生する異常。発生した場合、台本の内容に沿った行動を強制される。認知抵抗値が20.7以上の人物に対しては無効であることが確認されている。
  2. SCP-2263-JP閲覧者に発生する異常。発生した場合、閲覧者は台本上、「悪役」としてふるまう人物に対する強迫観念的な殺意を抱く。これは直接の閲覧の際にのみ発生する。また、この結果として閲覧者は「悪役」としてふるまう人物が死亡するまで殴打を続ける。対象の死亡後、影響下にあった際の記憶及び強迫観念的な殺意は消失する。

SCP-2263-JPの内容は一般的なヒーローショーと大差ないものであるとされています。演劇は主人公格のキャラクター「悪族断罪戦士 ゴーダム・レッド」を中心として進行していき、悪役格のキャラクター「怪人 デビルオー」を倒す、という筋書きです。後述のファイルの内容から、台本製作当時に現在の異常は存在していなかったと推測されています。そのため、現時点ではどのタイミングで異常性を獲得したのかは不明です。

SCP-2263-JPは██県███市に存在する、旧████劇場跡地より、ナンバリングされた17個のビデオテープと共に回収されました。旧████劇場跡地内部には複数の血痕が残されていたことが確認されています。また、複数の状況的証拠から旧████劇場は劇団「救助隊」が有していたものと推測されています。

補遺.1: 以下のファイルは、旧████劇場跡地より回収されたビデオテープの内容を転写したものの抜粋です。全てのファイルの閲覧には、こちらを参照ください。

    • _

    映像記録 2263-JP.1


    登場人物:

    • 悪族断罪戦士 ゴーダム・レッド(以下、レッド)
    • 怪人 デビルオー(以下、デビルオー)
    • アナウンス役の女性(以下、女性)
    • 15名の児童(以下、児童)

    [再生開始]


    [ステージ上に女性が現れる。女性に向かってスポットライトが照射されている]

    女性: こんにちはー!今日はショーに来てくれてありがとう!みんなに素敵なショーを届けられるよう、頑張ろうと思います!

    [女性が腰元のポーチに手を当て、軟式野球ボールを取り出す]

    デビルオー: ははははは! そのボール、いただこう!

    [デビルオーが舞台袖から歩いて登場する]

    女性: あ、あなたは!?

    デビルオー: ははは、俺様は怪人 デビルオー様だ。さあ、そのボールをよこせ。

    女性: や、やめて! これは大切なボールなの!

    デビルオー: いいから渡すんだ! 早くしろ!

    レッド: そこまでだ!

    [レッドが舞台袖からジャンプして登場する。登場後、レッドが女性の前に立つ]

    デビルオー: お、お前は!

    レッド: 俺は正義のヒーロー、悪族断罪戦士 ゴーダム・レッドだ! そこの怪人、覚悟しろ、正義の裁きを見せてやる!

    デビルオー: うるさい! 死ね!

    [デビルオーが腰元からサーベル状の小道具を取り出す。直後、レッド目がけて走り出し、サーベルを振りかざす]

    レッド: そんなもの、効かない!

    [レッドが腕でサーベルを防ぐ。互いに背後に飛び退き、見合う様子が確認される]

    デビルオー: ぐう……なかなかやるな。

    レッド: まだまだ! くらえ、ゴーダム・ナックル!

    デビルオー: ぐあっ!

    [レッドがデビルオーに向かってパンチする。デビルオーが後方に吹き飛ばされる]

    デビルオー: クソ……! こうなったら!

    女性: キャアッ!?

    [デビルオーが女性に近づき、首元にサーベルを近づける]

    レッド: 大丈夫か! 今助けに──

    デビルオー: [遮る]動くなよ? この女がどうなってもいいのか?

    レッド: くっ! 卑怯な!

    デビルオー: 卑怯ってのは俺様にとっては誉め言葉なんだよ!

    レッド: クソ、どうすればいいんだ──[沈黙]そうだ! [児童に向けて]皆、ステージに上がってきてくれ! 一緒にデビルオーを倒して彼女を救うぞ!

    [児童の歓声。会場の児童がステージに上がる]

    レッド: 皆、準備はいいかい? じゃあいくよ!

    一同: くらえ! ゴーダム・ネバ―・ジャッジメント!

    [レッドがデビルオーの顔面にキックする。児童がデビルオーの身体を叩いている様子が確認される]

    デビルオー: ぐ、ぐおーっ! 覚えてろよ、いつか、仕返しに来てやるからな!

    [デビルオーが舞台袖目がけて走り出す]

    レッド: 皆で戦えば、悪は簡単に滅することができるんだ! 皆、今日はショーに来てくれてありがとう!

    [会場に歓声が響き渡る]


    [記録終了]

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      映像記録 2263-JP.14


      登場人物:

      • 劇団「救助隊」に所属するとされる男女20名

      注記: 映像記録 2263-JP.2から映像記録 2263-JP.13までは同様の記録が続くため省略済み。


      [記録開始]


      人物1: では、ゴーダム・レッド ショーの公演も10回を超えたということで、乾杯!

      一同: 乾杯!

      [重要度の低い会話のため、省略]

      人物1: それにしても、流石だよ雄一は。子供を実際に悪役と戦わせるヒーローショーなんて誰が思いついたよ。それに、君がゴーダム・レッド役をやったお陰でこのショーもだいぶ人気になった、ありがたいことだ。

      雄一: いえいえ、団長さん、僕なんてまだまだですよ。それに、このショーはやられやくがいるからこそ成立するんです。そういう意味だと、弘夢くんがいないと成立しません。このショーが有名になったのは弘夢くんのお陰です。

      人物1: やっぱお前はいいやつだな。いずれ、この劇団のトップになる気概があるよ。

      雄一: 恐縮です。

      弘夢: 何言ってんだよ雄一。お前のお陰でここまで人気になったんだ。素直に受け入れなって。

      雄一: でもなあ、お前に悪いだろ。いつも身体張ってもらって。

      弘夢: いやいや大丈夫だって。この劇団のためならなんだって俺はやるからさ。

      雄一: だも、時折加減知らない子供に殴られるだろ? 痛くないのか?

      弘夢: [沈黙]なんてことないさ。俺は打たれ強いからな!

      [雄一と弘夢の笑い声]

      雄一: そうだな、じゃあ、これからもナンバーワンとナンバーツー同士、頑張っていこうぜ。

      弘夢: おう!

      雄一: よーし、今日は飲むぞー!


      [記録終了]

        • _

        映像記録 2263-JP.16


        登場人物:

        • 雄一
        • 弘夢

        [記録開始]


        雄一: おーい、弘夢ー?

        弘夢: [沈黙]雄一。

        雄一: 探したぞ弘夢。もうそろそろ劇始まるからさ、控室に行こうぜ?

        弘夢: [沈黙]

        雄一: どうした、弘夢。

        弘夢: なあ、雄一。ヒーローってなんだろうな。正義と言って自分が振るった暴力を正当化する。

        雄一: どうしたんだ?

        弘夢: そんなの悪役と変わらないと思わないか?

        雄一: [沈黙]とにかく、控室に──

        弘夢: なあ、答えてくれよ。このままだと、俺、ショーに集中できそうにないんだ。

        雄一: 弘夢。[沈黙]俺は、どんな理由でも暴力をふるうことは悪だと思ってる。正直、こんなショーを提案したけどやりたいとは一切思ってない。

        弘夢: [沈黙]

        雄一: だからさ、お前にはいつか、このショーをすることが無くなったときに謝りたいんだ。

        弘夢: [沈黙]そうか。

        雄一: じゃあ、僕は先に控室行ってるから。15分前には来いよ!

        [雄一が走り去っていく]


        [記録終了]

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          映像記録 2263-JP.17


          登場人物:

          • 雄一(以下、レッド)
          • 弘夢(以下、デビルオー)
          • アナウンス役の女性(以下、女性)
          • 観客の児童30名(以下、児童)

          [記録開始]


          [映像記録 2263-JP.1と同様の部分を省略]

          レッド: 出たな、デビルオー。

          [デビルオーは黙っている。手には17インチの包丁が握られている]

          レッド: おい、どうした? かかってこい!

          デビルオー: なあ、雄一。

          レッド: 待て待て待て、今は演技中だぞ? 私情は後にしてくれ。

          デビルオー: どうしても今じゃないとダメなんだ。

          [会場が騒然とする]

          女性: これはどういうことだ!? 何かのトラブルか!?

          レッド: [沈黙]分かった。話を聞こう。

          デビルオー: さっき、お前は「こんなショーやりたくない」って言ったよな。

          レッド: そうだが、それがどうした?

          デビルオー: なら、やめてくれよ! 俺はもううんざりなんだよ! ショーのたびに観客の子供に殴られたりけられたりして増えていく青あざ。知ってるか? 俺はな、ショーの前日になるとストレスで食ったもの戻しちゃうんだよ。この前の打ち上げの時だってそうだった! 精神科に行ったら鬱って診断されたさ。お前はそんなこと知ってたか?

          レッド: 弘夢。

          デビルオー: どうした? 同情か? 同情ならやめてくれ。

          レッド: すまなかった。今までお前にかけていた負担なんて知らなかったし、傷だらけになっていたことも分からなかった。今からでも遅くない、ショーを中止して、団長に言いに行こう。

          [レッドがデビルオーに近づく]

          デビルオー: 雄一。

          レッド: さあ、手をとって。

          デビルオー: ごめんな?

          [デビルオーが持っていたナイフをレッドのうなじに刺す。レッドは短い悲鳴を上げてその場に倒れ込む]

          女性: 何してるんですか! 雄一さん、大丈夫です? 意識あります?

          [デビルオーが女性を突き飛ばし、更に数回、胸部、眼球、太腿にナイフを刺す。刺されるたびにレッドは短い悲鳴を上げ、痙攣する様子が確認されている]

          女性: 観客の方! 誰でもいいので救急車呼んでください! お願いします、まだ助かるかもしれないです!

          [デビルオーはうなだれた状態で直立する。劇場内を喧噪が包む]

          [数十分後、救急隊が駆け付け、レッドを担架に乗せて劇場を後にする]

          [暗幕が下りる]


          [[記録終了]

          現在までに該当記録の関係者(PoI-2263-1からPoI-2263-19)は発見されていません。発見後、財団によって拘留された後にインタビューが実行される見込みです。

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