scp-3500-jp (Remake)
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全てのものが光ある現実の中で生きるために

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以下のファイルはレベル5: 最高機密に分類されています。SCP-3500-JPは現時点で鎮圧されており、以下の情報は歴史的事実として記録される必要があります。以下の文書を閲覧することで、貴方は財団憲章に同意したものとみなされます。

SCP-3500-JP / LVL5+

FILE 1/2

プロジェクト: ダークフォールズ
主要連絡先:


  • ビル・ムーア管理官
    • SCP財団 HSCOチーム 管理官
  • サンドラ・ロバートソン管理官
    • SCP財団 HSCOチーム 司令官
  • グレッグ・スタインハウアー博士
    • SCP財団 HSCOチーム 収容スペシャリスト
  • ベティ・ミスーン博士
    • SCP財団 HSCOチーム (旧ヘイムダル評議会) 指揮官

SCP-3500-JP収容対策本部 内部セクション一覧

  • SCP財団
    • 監督評議会、
    • 内部保安部門、
    • 超宇宙対策機構、
    • 超天文学部門、
    • 緊急脅威戦術対応機構、
    • 資産運用部門、
    • 人工知能適用課
    • 恒星間航行部隊 (INF -Δ1 / -Δ2)、
    • 専任任務部隊 (ATF -X1 / -X2 / -X3)、
    • 内部プロジェクト: ガニメデ
  • 宇宙航空研究開発機構-JAXA
  • 宇宙連邦-コンペンディウム
    • 太陽系外種族: マエストロ、
    • 以下、5の太陽系外種族。

[…]

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SCP-3500-JPのイメージ図。

補遺3500-JP/II: 招集された初期の会合

音声映像転写ログ ダークフォールズ-1F7Y

参加者:

  • ビル・ムーア管理官、
  • サンドラ・ロバートソン管理官、
  • グレッグ・スタインハウアー博士、
  • ベティ・ミスーン博士、
  • マリー・A・ウォルターズ大統領、
  • 野上 千陽 (JAXA研究開発部門)
  • 原田 修 (JAXA科学衛星運用)

前文: 2036年7月、SCP財団の超宇宙対策機構 (HSCO) の主要人物が召集されました。その人物らは、アメリカ合衆国大統領官邸 (ホワイトハウス) の機密シャフトに誘致され、同じく召集を受けたアメリカ合衆国大統領 第50代 マリー・A・ウォルターズと共に、JAXAからの説明を受けました。以下は当時の音声映像転写ログです。

[転写開始]

[スタインハウアー博士とミスーン博士が廊下を歩いている。彼らは到着時刻の凡そ2分前に機密シャフト内部で立ち往生している。]

ミスーン博士: ああもう、今日は何だってのよ?監督評議会どもに緊急の用事で呼び出されたかと思えば、私たちはホワイトハウスに来させられる始末よ。

スタインハウアー博士: すみません、ベティ。ですが今回だけは本当に急務だと聞かされています。JAXAチームの方々の説明があるとのことですので、根気強くいきましょう。

ミスーン博士: — 待って、何て?JAXAというのが私の知ってる略称なら、どうして日本の機構がアメリカの大統領を招いて説明する必要があるの?

スタインハウアー博士: アメリカだけじゃないようですね。全世界を回って協議しているらしく…何でもより多くの国家に協力を求めているとか。

ミスーン博士: どうして言ってくれなかったのかしら?

[2名が機密シャフトの参照施設のドアを開け、進入する。]

ロバートソン管理官: 遅刻だな。

ミスーン博士: すみません、管理官。謹んで申し上げますが、この会議が他を優越するとは思いませんでした。もし必要なら、私は残りのスケジュールをこの会議に割り当てることも可能ですが。

ロバートソン管理官: いやいい、それで — (同様に着席している原田に目配せする) — その、すまないが詳細に説明してもらえるか?どうにも意味を掴みかねている。例え君の説明するものが空想科学であれ宇宙論であれ、君の言うことにはどうやら現実味がないように思えて仕方ないのだ。

原田: 掻い摘んで説明しましょうか?

ロバートソン管理官: ああその、あー、お願いする。

[原田が咳払いした後、いくつかのプロジェクションマッピングを通してレンダリングされた映像が再生される。原田と野上は互いに目配せした後、ポインターでマッピング映像を操作し始める。]

原田: お二方、初めまして。私どもはJAXA — 宇宙航空研究開発機構に常駐しております。私は職員の原田と申します。そしてこっちが野上。

[野上が一礼する。]

原田: 大統領閣下に直接お会いできたこと、光栄に存じます。そして…申し訳ありません、長々と話してしまい。私どもも最善を尽くしているのですが、この事態について説明を成すのに随分と苦労していまして。どうかご理解いただければ幸いです。

[ウォルターズ大統領は混乱の表情を露わにしながら、顎に手を当てて説明を聞いている。]

野上: さっさと説明したほうがいいのではないでしょうか。

原田: (小休止) — 私たちがそれぞれの部署に配属されてから、JAXAチームには様々な変化があったのを覚えています。数年前にSCP財団を名乗る組織が接触してから、奇妙な支出が増えたり、度々アクセスできない扉が出てきたり、金属製のプレートに関する噂が流れたりとか —

ムーア管理官: 今のは比喩表現で?その説明をする間により理解を容易にしようとは思わなかったの?

原田: (咳払い) — 我々は既に宇宙物理学におけるアノマリーの収容を担当していたりもします。天文学的確率で発見される流星群の迎撃や、生きる恒星との対話など。私の部署は科学衛星を運用する部署でして、様々なシステムの操作により人工衛星の運用を支援しています。

最近、SCP財団との協力により新たな複数人工衛星が打ち上げられました。ヴィヴァルディ-█████と称される衛星であり、実に現在のものより遥かに高感度で宇宙重力波を探査するための機能を搭載しています。

野上: 元々の科学目標は、重力波背景輻射の直接観測にありました — つまり、我々が未だ観測できない宇宙創成論に関与する、初期宇宙の観測です。この関係で我々は宇宙全体の”宇宙重力波”を継続的に観測していました。その最中に発見されたのが —

[ポインターはマッピングの中央を指し示す。ひと際大きな赤の球体が描写される。]

野上: アーティファクト-09518…SCP財団に登録されているアノマリー、SCP-3500-JPです。当該アノマリーの取りうる周期は不安定で、少なくとも準ケプラー運動やスーパー・ノヴァのように、特徴的な減衰振動の傾向にありません。その周期は減衰することはおろか、ほぼ永続的に観測されています。およそ1秒おきに”波動”が発生し、近年になって初めて観測されるようになりました。

原田: 最も奇妙なのはその強度です。本来、ブラックホール連星系の合体程度ならば100メガパーセク程度の距離を観測するのが限界です。しかし、SCP-3500-JPはほぼ測定限界を超えた重力波を発生させており、その影響範囲はもはや我々の観測可能な天文学的単位を超過しています。

スタインハウアー博士: 失礼します — 我々は宇宙論に関する最新の知識を持っていますが、そのような天体の観測には至っていません。つまり貴方たちの仰ることが非常に正確であるというなら、SCP-3500-JPは何処に存在すると?もし仮に観測不能なものを観測しようと試みているなら、それが”観測可能な”宇宙外に — あーつまり、我々から遠く離れた宇宙空間に存在すると仰るのですね。

[原田、野上が頷く。]

スタインハウアー博士: 非常に興味深い。この場合、我々は重力による相互影響下にない、全く異なる銀河系からのアプローチを受けている事にほかなりません。少なくとも、一方的に観測することしか出来ない巨大な天体が我々の観測外にあり、その異常な重力波 — のようなもの — だけが継続的に観測されていると。

ミスーン博士: この問題の争点は何ですか?ただ不安を煽っているように思えます。

原田: 極めて説明し難い事象について説明させてください。先ほど述べたように、SCP-3500-JPは1秒周期で重力波を発生させています。1秒。大きく誤差がありますが、1分で平均70回~80回ほどになります。第一の問題は、このアノマリーが変則的に拍動することにあります。

ミスーン博士: そうね。でもヴェールを破壊するほどじゃない。

原田: 第二の問題はきっと貴方たちにとって興味深いものです — この周期についての興味深い情報の多くの共通点は、SCP-3500-JPが何か機械的に調整されたパターンを繰り返していることにあります。例えば”うるう秒”のように、SCP-3500-JPの全体の重力波発生回数は、1時間または24時間規模で平均を観測しても誤差がありません。明らかな間隔のズレが発生すると、それは次の拍動までに修正されています。我々は、SCP-3500-JPが何か機械群のような実体であろうことを想定しています。

ウォルターズ大統領: にわかには信じ難いな。私は君たち全員が絵空事について真剣に語っているとしか考えられない。君たちの説明は何を意味するでもないのだ。

野上: 何かを説明できるとは思っていません。ただ事実です。

スタインハウアー博士: つまりこうです、JAXAの方々は銀河系の彼方にある巨大天体が機械のようなメカニズムの実体であることを推測していて、それが何十年も先、技術が発展した頃に公的なものとなることを恐れていると。

野上: いえ、正確にはその技術です — SCP-3500-JPを司るようなメカニズムは、特定の国家によってのみ掌握されてはなりません。もしそうなれば、安全保障上のジレンマを発生させかねないでしょう。

ミスーン博士: あまりにも古典的な発想じゃないですか?それが機械だと断定したのではないのでしょうが、全世界に説明するのに時間を要すると思いますね。不確定要素が多すぎる。

[沈黙。]

スタインハウアー博士: 彼らの純粋な能力には限界があるでしょう。こういう事が分かっているのなら、我々は即座に宇宙研究開発の全てのプロジェクトを凍結して、SCP-3500-JPの調査を行わなければならない。技術が発達するよりも先にね。

野上: ではどうすると?SCP-3500-JPが存在する限り、我々は彼らと軽率に宇宙へ旅立たせるわけにいきません。

スタインハウアー博士: 我々は神学的側面に影響を受けた学問に精通しています。この問題に関して、我々は常識の範疇を超えてプロジェクトを稼働させるべきだと思います。つまり、我々は物理的性質を超えた範囲からのアプローチを行う必要があります。野上さん、ときに貴方は地球外生命体を信じますか?

野上: 何ですって?

スタインハウアー博士: 我々は地球外に数多のアクセスポイントを持ちますが、その探査範囲は非常に限られています。その範囲の拡大のためには、定常的なネクサスの配備が必要不可欠です。つまり、生存可能な惑星の調査が必要です。より安全で、宇宙全体で相互監視できる社会を作るのです。

ロバートソン管理官: そこから先は監督評議会の役目だ。君は下がってくれ。…我々の合意次第で実現可能な収容作戦はいくらでもある。だが、彼の言っていることも間違っていないのだ。

野上: 私たちはオカルト研究部ではありませんが…

ロバートソン管理官: 安心したまえ。もしUFOと交信するとしても、その役目はJAXAの方々には負わせない。今日、何のために大統領を呼んだかは説明の通りだ。

ウォルターズ大統領: は?

ロバートソン管理官: 偉大なるウォルターズ大統領閣下、貴方に来てもらったのは言うまでもなく、この計画に賛同していただくためだ。我々が次に為すべきことに協力していただきたい。

ウォルターズ大統領: いや、いやいやいやいやいや、いや — 何言ってるか分かってるのか?

ロバートソン管理官: もちろんだ、我々の辞書に不可能はない。

ウォルターズ大統領: おい?なあ?

ロバートソン管理官: スタインハウアー博士。オネイロイ.オネイロイとは、知的生命および類似の個々の実体が有する形而上学的空間、即ち「夢」を意味する。この潜在領域は一般に知られておらず、睡眠状態などに限定して我々の意識に干渉する。の代表者に連絡を入れてくれ。

原田: 何するんですか?

[沈黙。]

スタインハウアー博士: 自明的です。我々は今日、宇宙連邦を作ります。

[転写終了]

SCP-3500-JPの発見と観測は、多くの検証により結論付けられている”機械の星” — SCP-3500-JPが、もし外部の組織により発見された場合に、致命的な安全保障上のリスクをもたらすと想定されていました。

同月中に関係者らを筆頭とするメンバーにより、初期のプロジェクト: ダークフォールズが結成されました。本作戦の当初の目標は、2028年以降に危険性が浮上したため大きく後退していた宇宙開発プロジェクトを促進するため、物理的手法を問わない (もしくは形而上学的) 手段により、銀河系全体のネットワークを形成し、安全保障上のリスクを低減することでした。

補遺3500-JP/III: コンペンディウムの結成

音声映像転写ログ オネイロイ-1F7Y

前文: 2036年8月、超宇宙対策機構はオネイロイ・チームの協力のもと、銀河系全体に広がる — しかし物理的に観測することのできない — 未知のコミュニティとの交渉を試みました。形而上学的手法により明らかになった20以上のコミュニティのうち、夢界空間を通じて相互干渉することができるコミュニティは僅か6つに留まりました。

最初に発見された太陽系外種族 (通称「マエストロ」) に対し、偶発的な明晰夢を経験した財団エージェントによって交渉が試みられ、その結果として地球の権力者による外交が予定されました。これに続き、SCP財団の監視下においてマリー・A・ウォルターズ大統領への訓練と調整が開始され、一時的Eクラス職員として外交に参加させるよう指導されました。

以下の転写は、同月中に夢界空間 (形而上空間) で実施された太陽系外種族との接触に関する記録です。ウォルターズ大統領に次いで明晰夢の技術を用い、HSCOチームの指揮官であるベティ・ミスーン博士が同時に参加したことで、この転写ログを書き出すことが可能でした。

コミュニティ情報
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夢界で観測されるイメージ。

名称: マエストロ (英語音写に基づく)

概要: マエストロは、現在観測されていないか、または優れた自己検閲特性を持つ惑星に存在する生物種族の包括的呼称です。実体を持ち、夢を見て、発話する人間に近い機能を有します。

アノマリーに関する高い技術力、理解があり、部分的な共存と成長を遂げている可能性があります。外宇宙存在の過去の事例を踏まえ、適切な交渉に臨む必要があります。

[転写開始]

私の意識が落ち、そして再び覚醒する。私とウォルターズ大統領が目覚めると、我々は我々自身が見慣れぬ地に立っていることを理解する。幾つかの球状の植物と構造物は、この惑星の — あるいはコミュニティ自体の — 我々から見た異端さを表現するのに十分なものである。我々はしばし訓練を行った後、恐らく街の方面であろう場所へ向かい歩き出す。

旅路の途中、古臭いビジネススーツの男が我々の遠く離れた地点を過ぎ去るのが見える。我々は彼に会釈した後、その実体との確かな会話の記憶が欠落していることに気付く。

我々はマエストロの最深部に進む。その惑星の砂と土で構成された大きな構造物に辿り着くと、番人らしき者に呼び止められた。我々の顔を見て、彼ら — 3つのポリゴンと平たい瞳で構成された紺色の実体 — は頷き、我々を奥へと案内する。彼らは、夢界空間に広がる無限の土地を娯楽の場として、そして外交の場として設け、コレクティブとして確立させていることを説明した。

我々が大広間に辿り着くと、そこに金色に輝く巨大な玉座があるのが見える。その上には、先程のような異星人の更に大きな個体が居座っており、我々を圧倒する威圧感を見せる。その実体は我々を見て笑いかけ、次のように話しかける。

「あなた方の星に光があらんことを。陰に潜むものよ、ようこそ。我が名はデイヴァイン・ニルフュクス・ウナク…この星マエストロの王である。」

彼はそれ自体が本来の姿でないと主張する。彼とその種族は完全に不定形の神格であり、彼らの種族のノウアスフィアに根付いた概念物理学的具象体の表れであると説明した。つまり、彼とその一族はマエストロにとって望ましい神格の顕現であり、その概念に知が付与されたものであると明かす。

ウォルターズは彼に問う。

「我々の先端的な研究者らが宇宙の彼方にある異物を発見しており、それが将来にわたる脅威である可能性が高い。我々はあなた方と同盟を結び、より強固な研究体制によって望ましい未来のために一歩を踏み出したいのだ。そのために交渉を受け入れてもらえるだろうか?」

デイヴァインはにこやかに笑い、彼女に顔を — 顔と思しき部位を — 近づけ語り掛ける。ウォルターズと私は、デイヴァインの可変的な表情に多少の混乱を及ぼしながら、また彼を見る。彼の”顔” — それは顔と呼ぶには程遠いもの — は夢の中で無限に変化し、3つの目が揺れ動き、4つに、1つに、2つに増減するのを目の当たりにする。彼は絹のローブを着ており、右手に鉛によって形成される巨大な鉄槌を携えている。ウォルターズは彼の恐ろしい外見に怖じ、目を見開く。私は目の前の巨大な神格に対して動揺することなく、彼の次の発言を待つ。

「偉大なるウォルターズ、第三惑星の王よ。」

彼は大統領の名を告げる。玉座に座りしその権威は、彼女の眼を再びのぞき込み、次のように続ける。

「我々がその申し出を断る必要があるだろうか?否。この虚空全体の脅威は我々にとって皆等しく脅威であり、それを封じ込めるのに躊躇することはないだろう。かつて宇宙は一つであり、我々は皆兄弟だった。我々は薄れゆく魂の共同体である。あなた方の申し出を快く受け入れよう。」

彼が声を続けるとともに、空間が彼の声により振動する。その大いなる権威により、我々の観測する空間は次第に光を増し、超宇宙に突入する。空間が万華鏡の如く湾曲し、複製され、曲がり、捻じれる。その幻覚の中で彼は続ける。

「十分に警戒せよ。我々を食らおうとする超越者が存在し、それは着実に宇宙全体を蝕みつつあるだろう。探せ。我々は銀河全体に同盟を設け、次なる鼓動の影響について想定し、対処しなくてはならない。我らの歩み行く未来に加護があらんことを…進み給え、人間よ。」

彼が未来を謳い、その音が反響する。私とウォルターズの意識が途絶する寸前、私の意識はかすかにデイヴァインが笑ったのを捉えた。瞬間、私の意識は再び途絶し、深い暗闇に閉ざされる。

私は覚醒する。

[転写終了]

マエストロとの交渉の成功に続き、このコミュニティの銀河系内での詳細な座標を獲得することに成功しました。財団の恒星間航行部隊が現地に派遣され、間もなく研究・観測を目的としたネクサスが配備されました。この手法の成功に続き、明晰夢の技術を用いた太陽系外種族との更なる交渉の作戦がプロジェクト: ダークフォールズに組み込まれるようになりました。

その後、マエストロを含む銀河系内のコミュニティ連盟に対する共通のアクセスポイントが必要となりました。この事態を受け、財団は更なるSCP-3500-JP現象の解明のために宇宙開発プロジェクトを促進することを決定しました。このアクセスポイントの確立のため、プロジェクト: ダークフォールズの監視下で固有兵器 (AO-3500) の建造が開始されました。

補遺3500-JP/IV: 固有兵器の開発

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プロジェクト: ダークフォールズ

目的: コンペンディウムが使用する、共通のアクセスポイントおよびシャフトを形成・管理する固有兵器の開発。

概要: 数年単位で観測され続け、潜在的なヴェール崩壊のリスクを抱えるアノマリー: SCP-3500-JPは、恐らく銀河系内で共通の (詳細不明な) 異常実体である。この実体についての更なる解明と観測が必要であるため、財団はやむを得ず銀河系全体へのアプローチを試みた。期待される反応を示した各コミュニティとの共通の移動手段が必要であるため、そのゲートウェイ・アクセスシャフトを管理可能な兵器を作成しなければならない。

AO-3500の省略された設計図。

方法: AO-3500に関する十分な建造資源と管理体制は、それぞれの銀河系内コミュニティによって独自に、またはより良い状態で確立される必要がある。その資産に十分な余裕がない場合、SCP財団が保有する多次元収得の固有兵器によって適切な量の資産が埋め合わされる。これ以外のセクションに含まれる全ての管理対象アイテムは、以下のように説明される…

[…]


更新 2036/08/19: AO-3500の全てのセクションの建造が完了し、現時点で連盟に加盟する6のコミュニティに同様に配備された。該当のコミュニティと地球は、その全ての権力者による同意の上結成された宇宙連邦として命名され、以降SCP-3500-JP観測のため提携を結ぶこととなる。

補足資料: 管理者覚書

補遺 2036/08/19: マエストロより送付されたAO-3500の建造支援要請について、私の部署が対応しました。該当のコミュニティは、ほぼ根柢の構成部品から調達すること自体困難であることが説明されています。我々は状況を鑑み、彼らに支援物資を送ることを決定しました。この結果、該当コミュニティの観測範囲は驚異的な速度で拡大しており、彼らの文明水準が我々と同等のものになることが不可能ではなくなりました。

私はこの結果を好ましいものと捉えています。我々は宇宙全体のコミュニティを植民地化するのでなく、相互監視によって常に支援しあう状態へと移行することを最終目標に捉えています。これこそSCP-3500-JPの安全な運用方針であるでしょう。地球は限りなく小さなコミュニティであり、人類全体が宇宙全体を支配するほどの安定性などありません。

— グレッグ・スタインハウアー博士


補遺 2036/08/29: 上記のような恒例のオペレーションは、監督評議会とHSCOチームの全員によってのみ決定されるものです。グレッグ・スタインハウアー博士はこの規則に逸脱し、太陽系外コミュニティの文明水準を飛躍させる可能性がある固有兵器を無償で提供しました。この件について、私は個人的に彼に忠告しました。

この行為こそSCP-3500-JPの収容方針を逸脱するものでありませんが、彼の行動には注意すべき点があります。マエストロは現在、AO-3500に用いられる技術の断片を正確に習得しており、それを応用できるまで文明水準を加速させました。SCP-3500-JPのより安全な収容のために、この方針は常に警戒されなければなりません。

— ベティ・ミスーン博士

補遺3500-JP/V: 事態の悪化

前述のAO-3500の導入により、コンペンディウムに所属する各コミュニティとの瞬間的な移動手段を確立するに至りました。マエストロを含むコンペンディウムの協力者らは、この移動手段によってほぼ独自に観測網を広げることが可能であり、SCP-3500-JPの研究は秘密裏に進行しました。

HSCOチームの報告によると、2036/10/11にマエストロの調査チームがSCP-3500-JPによる重力波の起源をほぼ特定し、その完全な観測に乗り出しました。少なくとも、観測の過程でAO-3500の機能の一部が流用され、その移動技術を応用した宇宙航行用の艦船が製造されたことが確認されています。財団の内通者によってHSCOチームに計画書が譲渡されると、マエストロの行った観測実験の詳細を明らかにするため、検証が行われました。

プロジェクト: ダークフォールズ 調査報告
グレッグ・スタインハウアーによる証言

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以下の文書には、恒星間輸送機 (”VOIDMIND”) から回収された最新のデータが含まれています。2036/10/11から2036/11/03にかけ、宇宙連邦の全てのコミュニティからSCP-3500-JP直接観測のための探査機が発射されました。

光を超える速度をもたらすエンジンの開発によってでも、これまで宇宙論の全体を揺るがす情報は発見された事がありませんでした。宇宙はビッグバン理論により構成され、指数関数的な膨張にしたがって現在のように拡大した。

しかしSCP-3500-JPの観測以後、これらの説は部分的に誤りであることが実証されています。

恒星間輸送機のメカニズムは、宇宙が膨張しつつあり、銀河やクェーサーが我々の銀河系から徐々に遠ざかっているという事実に基づくものであります。137億年前に始まったビッグバンから全宇宙が膨張しつつあり、その影響は寧ろ加速しているのです。SCP-3500-JPの観測から長らく疑問に思われていたことは、この「宇宙の膨張」に関与するある1つの疑念です。

SCP-3500-JPの影響がどの惑星コミュニティに対してもほぼ均一であるということ。宇宙のあらゆる方向から一様に、SCP-3500-JPを等方的に観測することが可能であると —つまりSCP-3500-JPが”中心に”存在すると — 判明したため、この問題に対して我々は解明を迫られました。何故なら、基礎的宇宙論の多くはSCP-3500-JPのような実体の存在を否定しており、宇宙の中心というものを完全に存在しないと結論付けているからです。

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観測可能な宇宙のイメージモデル。

”宇宙の中心”というものは、ビッグバン理論の初期において発生した宇宙インフレーションのため、指数関数的に膨張し、一点だったものを極端に膨張させました。今ある宇宙全体こそ”宇宙の中心”であり、この真の中心地にSCP-3500-JPが存在するならば、それは逆説的に宇宙の初期から不動であったことを意味します。…つまり、初期宇宙モデルの起源に関与する可能性があります。

この場合、SCP-3500-JPのような超質量天体は最初期に構成されたものではないと考えられます。この天体の明示的な異常性を踏まえると、SCP-3500-JPは明らかに文明によって建造されています。その後、インフレーションによって永続的に”中心地”に存在する天体となったのです。

この場合、我々がSCP-3500-JPのルーツを知る方法はほとんどありません。宇宙マイクロ波背景放射が100億年以上の昔の姿を我々に見せているように、光の伝達速度というものは極めて低速です。このため、我々が観測しているSCP-3500-JPの全ての事象は、少なくとも数十億年以上の過去の情報であるとされているのです。もし仮に恒星間航行部隊がワープ・ドライブしたとして、現地は既に現在の…文明が滅び去った現在の状態を映し出すでしょう。

しかし、それに価値がないとは思いません。

補遺3500-JP/VI: オペレーション: ダークフォートレス

作戦計画-概念的簡約物の抜粋

前文: 2036/11/03、宇宙連邦に加盟する2つの太陽系外種族との一切の交信が不能になりました。配備されたAO-3500が完全に喪失し、残りの衛星システムが応答しなくなりました。全ての喪失イベントに続き、超宇宙対策機構は対象の文明に対する残留物の回収作戦を開始しました。

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オペレーション: ダークフォートレス
残留物回収 副提言00391番

関連するアイテム

対象の2文明が居住していた惑星群は、特に万象改変能力を持ち合わせる頂点級終末論実体 (Apex-tier eschatological entity) による攻撃の痕跡を維持していた。惑星の大部分が深遠物質.深遠物質は、サイト-43玄妙除却セクションにより解明された暗黒エネルギーの新たな性質に対する名称である。詳細は後述される。で汚染されており、破滅的な戦争とその影響を描写している。2文明は、宇宙連邦の中でも顕著にSCP-3500-JPの観測と研究を進めており、直前にSCP-3500-JPの直接観測を成功させたと記録されている。

このような状況のため、SCP-3500-JPとの何らかの関係があると推測されている。以下のアイテムは、2文明間で共通して発見された情報の抜粋である…


  • 発見された資料

2文明の残留物のうち、いくつかの連邦組織が所有していた機密文書を秘密裏に収得することに成功した。これらの文書は、SCP-3500-JPの背後に存在する古代文明の情報と、それに関わる文明の現状について説明したものであった。

この情報によると、SCP-3500-JPを構成するのは未判明の重金属であり、それは超質量天体規模の球状物質であることが推測される。幾つか機能不全であるものの — この天体は非常に高度な自動システムを備えており、精神刻印とパタスフィアに関与する高度な文明によって生成されたものであると考えられている。

この文明は「ニルヴラムス」と音写される名称で記録されており、少なくとも宇宙創成直後の太古に存在していた文明であると記録されている。その存続期間こそ短いものの、宇宙の膨張途中に偶発的に誕生した当該文明は、非常に優れた生存能力と技術を用い、現在のSCP-3500-JPを建造した存在であると描写される。

現在こそ滅亡しているものの、幾つかのSCP-3500-JPシステムは機能しており、その防衛能力によって2文明が殲滅された可能性がある。これは、宇宙規模の文明が他の文明を殲滅することで持続的に繁栄しようとするフェルミのパラドックス.フェルミのパラドックスとは、地球外文明が存在するという可能性と、相反する接触可能性の低さに関する事実の矛盾を意味する。宇宙人は存在しないとする説や、宇宙人が何らかの影響により我々と接触できない説などがある。に関連付けることができ、その思想がSCP-3500-JPシステムに根強く息づいていると判断される。


  • 深遠物質の詳細

発見された深遠物質は、これまで暗黒エネルギーと呼称される、重力理論において不確実であった”未知のエネルギー”の新たな姿であるとされている。この物質は重力に反発する”斥力”のエネルギーである。この物質の多量放出のため、2文明によって知られていた法則が致命的に崩壊していた。

深遠物質の興味深い性質は、現在確認されているSCP-3500-JPの”重力波”に共通した条件を持ち合わせている事が判明した。これによると、現時点で判明しているSCP-3500-JPの観測スケール縮退の傾向と、深遠物質は一概に無関係であるとは言えない。

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膨張する宇宙。

ある研究者グループは、SCP-3500-JPが徐々に縮退する — つまり宇宙が膨張し、銀河団が徐々に離れつつある状況が、SCP-3500-JPに起因するものであると説明している。これは、SCP-3500-JPの非常に強力な”重力波”が斥力をもたらし、宇宙全体を加速度的に膨張させている可能性があることを示唆する。

既存の重力理論から逸脱したSCP-3500-JPのふるまいは、未だ解明中の点が多い。

抜粋終了

後文: 上記の情報は、既知のインフレーションモデルやビッグバン宇宙論をほぼ破綻させ、SCP-3500-JPという特異点が宇宙の中心で機能し続けているという独特な理論を展開するものであります。当然、そのモデルの大部分が不明確かつ断定できないものであり、なおのこと証言は不可能であるため、疑い深いものであるでしょう。

ですがもし事実であるなら?残念なことに、我々の非公式の研究チームはこれが概ね事実であることを認めており、文明の存在についても幾つかの確証があるとしています。そうであるならば、我々は宇宙理論全体を書き直す必要があるでしょう。

宇宙連邦など存在しなければ、我々は理論をゆっくりと上書きすることができました。しかし今、我々には時間がありません。宇宙連邦間で安全保障のジレンマを発生させる前に、我々はこの理論を共有し、安全のために収容を行う必要があります。

以上の提言を基に、我々HSCOはSCP-3500-JPの収容試行を提案します。

ビル・ムーア管理官


確保・収容・保護

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SCP-3500-JPのイメージ図。

補遺3500-JP/VII: 延長された討議

音声映像転写ログ ダークフォールズ-4G1A

参加者:

  • ビル・ムーア管理官、
  • サンドラ・ロバートソン管理官、
  • グレッグ・スタインハウアー博士、
  • ベティ・ミスーン博士、
  • 下位評議会に所属する12名、
  • 監督評議会に所属する1名 (O5-2)。

前文: SCP-3500-JPに関する詳細な報告が提出されたのち、本会議が招集されました。以下は当時の音声映像転写ログです。

[転写開始]

[4名は会議室に滞在し、次のHSCOチームからの伝達を待っている。]

ムーア管理官: 宇宙連邦などという不要な組織結成が必要であったか、今一度議論するべきですか?

スタインハウアー博士: いい発見があったと思います。SCP-3500-JPの影響は指数関数的に拡大しており、恐らく短期間で全ての銀河団を永遠に隔絶するということです…つまり、AO-3500という兵器が幾ら光の速度を超えていようとも、それを遥かに上回る距離の拡大が生じ…我々はそれぞれのコミュニティと永遠に意思疎通できなくなります。

ムーア管理官: どこがいい発見だと言うの?それは我々の不安と対立を煽るだけで、根本的に何の改善にもなりはしないでしょう。問題はそれだけじゃありません — SCP-3500-JP。アレは恐らく古代文明の残骸であり、具体的に我々が対抗しうる能力を持ち合わせるとは限りません。

ロバートソン管理官: いや十分に対抗できるだろう。問題は我々のような組織がSCP-3500-JPを制圧した時、何が起こるかということだ…要するにSCP-3500-JPは、現実宇宙全体を湾曲し得るビッグ・アノマリーなのであり、その内部には恐らく収奪するに相応の対価が — つまり特有の、再現不能な固有兵器が存在することになるだろう。100億年前のオーパーツ、そして神の言語で構成されたプログラム。これらを単一のコミュニティが獲得した時、宇宙連邦全体で維持されていた平衡力が乱れることになる…

ミスーン博士: 何度も私たちは忠告してきたはずです、連邦なぞ信用に値しないと!我々はしばしの協力関係を結べばそれで十分だった。だけど貴方たちはより良い関係の維持などという — より本質的に不可能なことを要求した。

スタインハウアー博士: まあ…過剰ではありませんか?

ロバートソン管理官: 過剰ではない。実際に彼女の言っていることが正しいのかもしれない。私たちが目先の脅威を排除するために躍起になっている間、全宇宙の外交は完全に緊張状態に陥り、自国の安全保障のために武装化を始めた…これが私たち全員が行ってきたことのツケだ、要するにな!

[沈黙。]

ムーア管理官: 結局のところ、SCP-3500-JPは何なのでしょう?

スタインハウアー博士: 良い事を聞いてくれました。ちょうどそれを説明しようと思っていたところです —

[スタインハウアー博士は室内の4Dプロジェクターを起動し、宇宙空間をレンダリングしたマッピングデータを操作する。その中央にSCP-3500-JPと書かれたイメージが存在し、それは拡大される。]

スタインハウアー博士: SCP-3500-JPは古代文明…つまりニルヴラムスによって制作されたものです。SCP-3500-JP自体から断続的に送信されるメッセージの意味論的転写によると、これはニルヴラムスの最後の王朝を機能させ続けるためのシステムであるとされます。

過去に実施されたダークフォートレス作戦を思い出してください。我々は殲滅された2文明のデータを復元し、後に、奇跡的にもそれらからデータを回収することに成功しました。その情報によると、ニルヴラムスの最後の王朝というアーティファクト群は、次のように説明できます…

フェルミのパラドックスに説明されるように、この手の文明は自己の繁栄のために他の全ての文明を永遠に遠ざけようとしています。その影響、つまりSCP-3500-JPによる”重力波”は、時空全体を大いに湾曲し、それを加速度的に膨張させます。これが何を意味するかというと — 宇宙全体が永遠に孤立化するよう仕向けているのです。

ニルヴラムスの最後の王朝に残されたのは、大広間、30人ほどの管理者らの残留物、アークリアクター、30YB相当の未解明の情報、そして現実を湾曲する頂点級のアノマリー、即ち”心臓部”です。この”心臓部”から発生する重力波を永久に維持するため、”心臓部”には最上級の素材が割り当てられています。それらの能力を総じて収奪すれば、もはや文明は留まるところを知らないでしょう…その現実改変能力を悪用することは、即ち現実をフィクションの延長線上に再配置し、すべからく思いのままに改変できるようになります。文字通りに。

ロバートソン管理官: その能力を例えると何に匹敵する?

スタインハウアー博士: [削除済]

[沈黙。]

ロバートソン管理官: クソ。忌々しいったらありゃしない。

ムーア管理官: つまり我々は、そんな脅威となるビッグ・アノマリーの探求を続け過ぎたと?我々自身の失敗だと言うのですね?

ロバートソン管理官: 我々だけとは限らないぞ。つまりだな、我々を差し向けた敵対勢力が存在するとも考えられる、そうだろう?

ムーア管理官: 我々を最初から利用しているコミュニティが存在する…

[会議室のドアが乱暴に開かれ、財団の内部エージェントが進入する。]

エージェント: 管理官殿!今すぐ報告しなければならない事がありまして —

[会話を遮るかのように、突如として会議室内の全ての電力システムがショートする。放電し、それらが発火することにより爆発的に炎上する。転写記録装置が破損し、映像と音声は途絶する。]

[転写中断]

この会議の開催中、記録中の施設にて原因不明の電力火災が発生しました。続く数十秒以内に火災は消化されましたが、この事故により複数名の職員が負傷し、搬送されました。以降の記録は、発見されたアナログ記録装置によって行われています。

[転写再開]

ムーア管理官: オーケー…全員生きてますか?

[4名がそれぞれの状態を確認する。生命兆候にあらゆる影響は無いように見られる。]

ムーア管理官: エージェント、何があったのかを説明してください。

エージェント: 私が報告しなければならないことは2つあります…まず、ウォルターズ大統領が暗殺されました。彼は公然での発言中に何者かによって狙撃され、推定死亡の状態です。世間的にも深刻な事態であり…報道こそ規制されているものの、情報が拡散されるのも時間の問題です。

[沈黙。]

ミスーン博士: 畜生。こういう事なら何か対策すべきだった。

ムーア管理官: 次のニュースは?

エージェント: マエストロの大艦隊がSCP-3500-JPに到達したことが報告されました。彼らはSCP-3500-JPの周辺区域で現在戦闘中であり、SCP-3500-JPを解体して強奪しようとしています。

ロバートソン管理官: クソッタレのハイパースペース野郎が…我々の部隊は間に合いそうにないか?

エージェント: 残念ながら。

[沈黙。]

ロバートソン管理官: 全面戦争という訳か。

ミスーン博士: 彼らの目的は大方見当がついています。SCP-3500-JPの頂点級の資産と拍動イベントは、もはや宇宙全体を永遠に孤立させることが不可能ではありません。そうして彼らは宇宙の中心に居座り、フェルミのパラドックスの如く、宇宙全体の不要な文明を永遠に排除するよう動くのでしょう。

ロバートソン管理官: …監督評議会から全部門に通達しろ。あらゆる事を成せ。

[転写終了]

マエストロの反逆に続き、SCP-3500-JPが短期間で制圧される可能性がありました。試算によると、少なくとも14日以内にSCP-3500-JPの完全制圧が達成され、それによってニルヴラムスの最後の王朝が収奪されます。それにより、マエストロはSCP-3500-JPの制御を獲得し、非常に短時間で宇宙全域を制圧する可能性があります。

この事態を受け、監督評議会は暫定的なXK-クラス: 世界終焉シナリオの発生を宣言しました。

以下の資料は、終焉シナリオの発生後に複数の視点で記録されたタイムラインを抜粋したものです。その大部分が深刻に汚染、または激甚に破損しているため、情報の正確性は定かではありません。網羅的な情報に不備がある場合は、緊急脅威戦術対応機構へご連絡ください。

Sauelsuesor

記録抜粋

前文: 以下の資料は、恒星間航行部隊-Δ1が太陽の周辺を巡回中に (偶発的に) 接触したSCP-179との対話の転写です。原文は口語フランス語の転写です。

SCP-179: こんにちは。

Δ1-A: なんてこった、ハロー?こいつぁサウエルスエソルか?どうして我々に接触する?

SCP-179: 私は貴方たちに警告しなければならない事があると思った。それは今までよりも重要で、そして私たち兄弟にとっても非常に深刻な問題。私は忠告し、福音を与え、生命存続のためのあらゆる事を成さなければならない。

Δ1-A: そうだろうな。非常に申し訳ないんだが、我々は現時点で外宇宙の連中に勝利できると思っちゃいない。だからこれは犬死に作戦だ…君と君の兄弟を救えるとは思わない。我々には力不足すぎる仕事だ。

SCP-179: そう、そして必要以上の物事を抱えているわね。

Δ1-A: ああ — 何だって?

SCP-179: 私は貴方たちのような偽善者だけに全てを捧げようとは思わない。だからこそ、私は今全宇宙のために戦わなければならないだろうと思っているの。つまり、貴方たちが無力だということを承知の上で話している。

Δ1-A: だから何だ。俺たちにどうしようもない事を話して、それで時間を無駄にする必要があるのか?

SCP-179: 貴方たちは自らを過信している。だから伝える必要がある。そして知るの、それだけではないと。

[SCP-179は太陽の方角を指し示す。その周辺を観察すると、僅かに胎動する細長い実体が複数いることが確認できる。]

Δ1-A: ありゃ何だ!?

SCP-179: 人は一人では戦えない。人は理外のものを吸収し、併合し、それを受け入れつつも成長する。拒むべきものではない。貴方たちはいつしか理外の存在を受容せず、反対に隔離するように成長した。その過ちは今、正されなければならない。それら全ての存在がいつしか宇宙の終わりを予感するとき、存在は存在でなくなり、宇宙は無に帰すと知る。その時、本当に人類とは戦う必要があるべき存在だと誰が思うのでしょう?

[実体は概ねワーム状であり、やがて殻を突き破るようにもがき、太陽から高速で離脱する。複数の実体群は、SCP-3500-JPのある方角へと進行する。]

SCP-179: そして人は蛹から蝶となります。今、恐れるべきものは同胞となり、共に忌むべき敵を打倒するために立ち上がる。理外の者よ、恐怖するなかれ…我ら同じ宇宙の民よ!今こそ団結の時です。

[重度に変形したSCP-1682実体軍が飛び立つ。]

Δ1-A: アンタらは…オブジェクトが今や我々の味方だと主張するのか?誰もそのようには思って —

[別の恒星間航行部隊がSCP-3500-JPの方角へ向かって進行する。その背後に一瞬だけ、無作為に拡大された植物状の構成物が括り付けられているのが見える。それは鳴動し、複数の特異な外見を持つ実体を収容しているように見える。]

Δ1-A: マジかよ。

Wanderer

原文抜粋

[名義不明]: この期に及んで私と話をするだと?ハッ、アンタら牢番も随分と物好きなようだ…

私が可能性のある記憶を持っていることに心底興味があるらしいな。そしてその中には、かつてアダム・エル・アセムの子と呼ばれた者の記憶がある事も事実だ。私は…ブルーバード。かつての放浪者

そうだ。私はこれを通じて可能性のある記憶に辿り着くことができた。その中でも、かつてより語ったことのない記憶について語るべきだろう。いや — その記憶はこれまでに存在こそしなかったからな。

ブルーバードは続けて話し出す。

かつて、ノドの地に在るべくして存在しなかった者が居た。彼はそれまでの道のりにおいて誰にも理解されることなく、ただ自らの使命のために歩みを続けていた。カインは、彼の歩む道のりが我々に向かって真逆に伸び続けるのを見た。彼の影は太陽に逆転し、その記憶すべてが吸い込まれるように逆流している様子が分かる。

その者は往古の来訪者であると名乗った。彼は数千年以上の昔、彼の理解者に唯一の願いを託され、そして今 — 彼自身の宇宙に従い、歩み続けていた。彼は過去たる未来に向かい歩んでいた。カインは、自らの無限の記憶の中でも来訪者に関する記憶がないこと、そしてあろうことか、記憶は今増え続けていることを認識する。

往古の来訪者とカインに、今こそ確かな接点など無かった。時を遡り、彼の法が時代に挿入されると…カインは自らの記憶を想起した。来訪者は、かつてカインのもとを訪れていた。来訪者は彼のことを先んじて知っており、彼の”呪い”こそが戦いを制すると告げた。

「血を流すだけが全てではない」カインは言った。カインは自らの呪いによって破滅した自らの家族を思い出さずにはいられなかった。その呪いを完全に受け入れる前、彼は彼自身の天に対して憤怒していた。

しかし来訪者もまた、動かなかった。「私はエイブルの名を知っている。彼はとうの昔に苦しみ、絶望と孤独の果てに蘇り続ける人生を捨てた。彼は死んだのだ。だがもし…そうでないとしたら?」

彼の言葉はカインの逆鱗に触れる。しかし、額の印が酷く歪みだすほどに、彼は彼自身の怒りを悲しみへと変える。エイブルは死んだ。カイン。愚かな兄弟殺しが、どうして兄弟の死を悲しむのか?

来訪者はカインへの説得を諦め、その次の時へと歩みだした。カインはその背中に、彼と共に歩むアベルの姿を確かに見た。来訪者が会釈を送り、瞬間、彼の記憶は途切れる。

…ただ一つ確かな事がある。アベルはかつて生きていた。アベルは善良で、羊飼いで、そして最初の子だった。来訪者が歩みだすほど、記憶はゆがみ、書き換えられる…戦争の中で、カインの記憶はますます捻じれたものになるだろう。

、来訪者は告げる…我々にこそ勝利があったと。

Admonition

インシデント報告書抜粋

概要: プレースがいない。

詳細: SCP-3500-JPに関する最終戦争が発生して以降、現O5-6 (プレースホルダー・マクドクトラート) は度々不可解な行動を繰り返し、この最終戦争に関する決定的な打開策が必要だと述べていた。当該インシデントの発生当日、彼は時空話連続体に散逸する自分自身の反復と相互に接続し、それぞれの個体に対しサイト-184/Aに留まるように指示した。この行動の動機は不明である。

当日の深夜2時、O5-6のそれぞれの多次元同位体は行動を開始し、最終的にSCP-6659の標準装置に自らの頭部を挿入する。この直後、プレースホルダー・マクドクトラートの多次元同位体を被トーテム実体とする特定神格存在の探索が開始され、結果としてプレースホルダーの肉体は消費される。彼は最後に以下のような発言を残し、死亡した。

かつて、この星にマリドラマギウアンと呼ばれた者たちがいた。私は彼らの中心ストーリーが断片的に瓦解しているのを発見し、それを好機だと判断した…

私は彼らに交渉した!私が最後に彼らを見たとき、彼らの墓標は歪み、そして再び動き出した。そして私が下を見ると、私の腕から先は無く、そこに滴り落ちる血が見えた。契約は成功した。手の者よ…今こそ再び動き出せ。貴様らの支配しようとした未来を取り返せ!

私は地獄に落ちる。あれ程に憎むべきだったかつての悪意に目を背けた。最後の時だ

この直後、サイト-17に移送中であったSCP-682が突如として興奮状態に陥り、移送中の輸送機全体を攻撃する。SCP-682はやがて塩酸に順応すると、輸送機全体を構成する合金の構造を局所的に改変し、その部品でオントキネティック兵器を即座に建造した。ほぼドーム状に変形したそれは、緩やかにSCP-682と融合する。

オントキネティック兵器は第三宇宙速度を超過しつつ地球から離脱し、理論的に整合しない時間内にSCP-3500-JPへと到達する。オントキネティック兵器は以下のようなフレーズを残し、即座に敵性実体の大多数を無力化する。

忌々しい愚者どもよ
この時代は我を非常に激高させる

貴様が滅するを望むなら
忌むべき者に力を振るい
そして激怒を招くだろう

我が力は今や無限となり
憎悪と失墜の果て知るだろう

後悔するがいい
姿を現すべきでなかった者よ

恐るべきは真に貴様だという事を
力の前に屈服し知るがいい

忌まわしい愛
憎むべき存在

ひれ伏すがいい
真の憎悪の前に

SCP-6820の出現後、即座にそのオントキネティック兵器は消失したため、詳細は不明である。

Paradox

記録抜粋

前文: 恒星間航行部隊-Δ2は、プロジェクト: ダークフォールズの命を受けてSCP-3500-JPの奪還に乗り出しました。以下の資料は、当時の戦闘状態を描写する唯一のログです。

[-Δ2の搭乗する輸送機が振動する。その部隊とSCP-1000の軍隊は、輸送機がSCP-3500-JPの表面に着陸すると同時に外部に進出し、周辺を探索中のマエストロの部隊に対して攻撃を開始する。]

Δ2-F: キャプテン、連中は重装甲で待ち構えてます。”アレ”を解放するべきですか?

Δ2-A: どうなるか知ったことではないぞ。

Δ2-F: いいって事ですね。ここまで来て後戻りする余裕はないでしょうし。

[Δ2-Fが指示すると、輸送機の内部に留め置かれていた収容コンテナが解体される。その瞬間、周辺で戦闘していた複数の敵性実体が即座に昏倒し、無力化される。一瞬、記録映像が捉えた収容コンテナには、Yon-Kamurとだけ記されている。実体が行動する度、周辺には暴力的かつでたらめに破損した敵性実体の死骸が散乱している。]

Δ2-F: これどうやって再収容するんですか?

Δ2-A: それがカスパンを悩ませた最大の問題じゃないか。今はそんな事を考えている場合ではないようだがな。ほら、来るぞ!

[Δ2部隊に更なる増援が接近する。それらは重火器を用いて部隊を攻撃するが、暫くして頭上に出現した奇跡論的な徽章に気を取られ、複数体が無力化される。]

Δ2-B: クソッタレ!今度は何だ?

Δ2-A: いや…あれは…

[徽章は徐々に明瞭になり、それが財団の徽章に概ね類似していることが判別できる。複数出現した徽章はやがて輝き出し、周辺の敵性実体を滅却する。]

Δ2-A: 未来に課題が残ったな。

Δ2-B: 我々があれを建造する必要がありますね。将来的に —

[徽章が消失する。敵対勢力は徐々にΔ2に接近している。]

Δ2-A: 時代こそ違えど、これは我々が観測した中でも悪夢の168時間に匹敵する恐ろしさだな。もういい、十分なデータは取れただろう?総員撤退だ、早くしろ!

Δ2-B: どうして帰還させる必要があるんですか?

Δ2-A: 私は監督者に頼まれて、ここの情報に関してより多くのものを収集するよう命じられていた。今 —

[Δ2-Aは、手に持っていたブロンズ色の円環を強く握りしめる。それは予測不可能な規模で変形する。]

Δ2-A: より良い方法でここを制圧する。再びな。

[大規模な記録上の歪みが発生し、記録は少し前の状態まで逆行する。結果として、Δ2-Aの部隊はマエストロの部隊が検出するよりも早く現地に到着し、速やかに敵性実体を制圧する。]

Below Zero

記録抜粋

前文: SCP-3500-JPの完全な制圧後、地球全体の防衛の一部を太陽系外に投入したため、一時的に地球全体が攻撃されるリスクがありました。その直後、HSCOチームの収容対策本部がマエストロの部隊に襲撃され、複数名の死傷者が発生しました。

この後、臨時オペレーションが開始されました。そのアプローチは、SCP-3500-JPの機能を再活性化させることで宇宙の膨張を再加速させ、全宇宙コミュニティを二度と干渉しないように隔離することでした。

以下の転写は、当該オペレーションの作戦実行者であるグレッグ・スタインハウアー博士による記録の抜粋です。スタインハウアー博士は臨時オペレーションに志願し、SCP-3500-JPの内核に位置する制御装置の”再起動”を任命されました。

[オペレーションの記録は、スタインハウアーがSCP-3500-JPの中心部に滞在している状態から再生される。]

オペレーター: 本当に君が志願する必要があったのか分からないね。

スタインハウアー: 私には使命があります。自分で決めた役割が。私はここへ来て、SCP-3500-JPを起動し、そして死ぬこと…それが使命です。

オペレーター: どっちにせよ帰りのパスはない。財団の連中はアンタみたいな優秀な人材を失うことを嘆いてるよ。

スタインハウアー: …私よりも優秀な人がいました。

オペレーター: 昔話かい?

スタインハウアー: まあ — 彼女は偉大な科学者でした。より深い洞察力を持ち、いつ何時も努力することを惜しまないような…いや違う、彼女は…実に優れた人間だった。彼女を失ってしまった。

オペレーター: なるほどね。

スタインハウアー: 私の誤った選択を修正したのも彼女でした。今では名を謳うことすら難しい。ああ、愚かな事をした…

オペレーター: 君は悪くない。というか、財団にいて間違わない人間はいない。いつだって失態が付き物だ。

スタインハウアー: 本当にそうでしょうか?

オペレーター: それよりも、思うところがあるぐらいなら、どうして君が死ぬ必要があるんだ?君が後世に伝えるべき人間じゃないのか。

スタインハウアー: 人の記憶というものは徐々に薄れるものです。未来に伝わっても、そのデータは断片的に失われてしまう。過去が歪み、薄れ、消えゆくぐらいなら、私は彼女の情報を少しでも多く覚えておきたい。そして死にたい。そう願ったんです。

オペレーター: 好きにしな。

[スタインハウアーはSCP-3500-JP内核への侵入を続ける。]

オペレーター: アレが見えるか?この星のコアだ。気を付けてくれ、触っただけで君の存在が消し飛ぶ程の —

[突如としてオペレーターの音声が不安定化し、雑音に変化する。]

[記録が再開し、スタインハウアーは恐らくオペレーターの声を聴いていない。]

スタインハウアー: これは…

Core.jpg

送信されたデータ。

スタインハウアー: オペレーター、私はSCP-3500-JPの中央に存在する。核のようなオブジェクトを目の前に確認している。とても小さな、しかし力強く輝くものだ。無数の目のような物体が私を睨みつけているようにも感じる。私には分かる、これには意識があると。

不明: その通りだ、スタインハウアー。私は…君たちがSCP-3500-JPと呼ぶもの。私は…君たちの学術的見解に基づけば、”調停者”と呼ばれる存在だ。私は死した文明の遺産であり、今亡き人々の最期の意志であり、フェルミのパラドクスを引き起こす唯一の根源である。

スタインハウアー: そうか…私は君を、調停者を再起動しに来た。

不明: 何故、君たち自身の意思によって”再起動”しなければならない?私は思うのだ、これは宇宙全体を隔絶するための利己的な兵器でしかない。それは宇宙の意思でもない。ただ独善的でしかないのだ。故に、君はこれを再活性化しようなどという目的に何の理由もないように思える。

スタインハウアー: それを問う必要があるのか?

不明: ”調停者”は同意なしに起動できない。一度停止したら、次は文明人の意思によって起動されない限り無い。今亡き文明の善良な考えに基づく設計だ。だから私の意識が存在する。私は君に尋ね、その答えを知り、解放するか隔絶するかを決定する。

スタインハウアー: 君は生きているのか?

不明: 生きるというのは非常に難しい問題だ。私がプログラムで構成された自律兵器であるように、その個々の情報は私を司る無限個の電子シナプスと流動的ニューロンにより決定される。1と0の世界、そこに明確な意識などなく、私の意識は偶発的かつあたかも”そこにあるように”振る舞われるに過ぎない…君もそうだ、スタインハウアー。君の脳は同じように出来ていて、同じように活動し、発声し、心を持つ。だがそれらは電気信号に過ぎない。

君は輪廻する存在だ。君の意識は死ぬと更に覚醒し、次の人間のものとなる。君はもしかすると、100年前に生きたアメリカ合衆国の大統領だったかもしれない。君は一昨日生まれた赤ん坊であるかもしれない。君は人間であり、虫であり、生態系をつかさどる全ての生命の生まれ変わりなのかもしれない。君はSCP-3500-JPだったかもしれない。そしてそれは、私であったことを意味するだろう。長い時を超越し、君という意識はどこまでも広がり、宇宙全体の意思を作り上げる。

君は今、宇宙全体を凌駕する兵器の”調停者”だ。宇宙全体の管理者だ。宇宙という構造をどこまでも作り変え、幻想のように全てを無に帰すことだって可能だ。君はこの宇宙の作り手であり、最初で最後の生命だ。そして、君はどこまでも成長し続けるひとつの意識であり、それは卵だ。君は孵化している。

[沈黙。]

スタインハウアー: 私は…それでも越えなければならないものがある。

不明: それは何だ?

スタインハウアー: ベティ・ミスーン。彼女を記憶し、次に超越し、そして乗り越えるべき人の名だ。私は…例えそうであったとしても、私自身の生を凌駕し、次なる段階へと成長しなければならない。

不明: ふむ…

[”調停者”は鳴動する。]

不明: そのために2つの選択肢がある。1つ、君は人生を諦め、SCP-3500-JPの起動とともに現実から消え去ることだ。そうすると、君の存在は強大な現実によって葬り去られ、跡形もなく失われる。そうすることで、君は永遠の輪廻と苦悩から解放される。

2つ。君はSCP-3500-JPと共に次なる歩みを得る。エルゴ領域を超え、事象の地平線の更なる先へと歩むことだ。君はブラックホールのその先を知ることになる。君はゴルディアスの結び目を大胆にも断ち切ることになる。君は生を捨て、その頂点を更に超えた未来の領域へと突入する。そうすると、君は苦しみを得る代わりに発見を得ることになる。そして、記憶は永遠となる。

[沈黙。]

スタインハウアー: 思うに私は…

不明: 何だ?

スタインハウアー: …この記憶を失いたくない。私はこの訓戒を糧に、次なる歩みを得たい。例えそれが逸脱的なものであろうとも…私は、成長するための戦略を選びたい。

[拍動]

不明: そうか…いいだろう。君は今、現実を捨てる。君は今、幻想の存在となる。君は今、過去を超え、未来をも超えて唯一の存在となる。SCP-3500-JPは再活性化し、君を破壊する。

[拍動]

不明: 死を乗り越えた先に何があるか…君は知ることになる。

スタインハウアー: 構わない。

[拍動]

スタインハウアー: 二度と忘れない。そのためにここへ来た。

[拍動]

スタインハウアー: 今がその時だ。

[拍動]

OverCore.jpg

送信されたデータ。

補遺3500-JP/VIII: 最終更新

作戦終了報告
ケースファイル: ダークフォールズ


記録: ビル・ムーア管理官

状況: アーティファクト-09518、”機械の星”、またはSCP-3500-JPとして記録されるアノマリーは、宇宙の中心地に存在する超質量機械群である。このアノマリーは、宇宙創成から間もない時代に誕生したニルヴラムスという文明によって建造され、恐らく宇宙全体のコミュニティが永遠に干渉しないよう指向するため設計された。

この天体の”再起動”後、本オブジェクトは加速度的に拍動イベントを発生させ、結果として全宇宙を急速に膨張させた。この影響で、当時最終戦争に陥っていたマエストロと地球全体の文明は永遠に隔絶され、両勢力が二度とSCP-3500-JPに接触できなくなった。

戦争の影響を緩和するため、この記録を最後に地球全土にアンニュイ・プロトコル (超規模記憶消去処置) が施される。このため、SCP財団を含む全ての組織・人員は最終戦争に関する記憶を失い、また同時にSCP-3500-JPについての断片的な記憶も喪失する。裏付けられた証拠により、以下の人員が矛盾を修正するために記録上から抹消される事が判明した。

  • グレッグ・スタインハウアー、元HSCOチーム収容スペシャリスト。
  • ベティ・ミスーン、元HSCOチーム指揮官。

殉職したベティ・ミスーンの処理は容易であるが、SCP-3500-JPの”再起動”手順により消息不明となったスタインハウアーについては、適切な対応がとられない。この人物に関する詳細な情報は削除される。


収容: 監督評議会は、当該オブジェクトを宇宙規模での保全プロセスと推測し、THAUMIELクラスを割り当てた。この情報は、サイト-01の機密深層データベースに保管され、必要ない限り外部に公表されない。今後の改定は行われず、SCP-3500-JPスロットに本ファイルが残存することが、監督評議会の合意により決定されている。

SCP財団の今後の目的は、もしSCP-3500-JPが何らかの形で無力化された場合に、それを再起動し、再発生する可能性があるXK-クラスシナリオに対処することである。このため、SCP-3500-JPスロットはダミーデータで偽装され、真のアクセス権限を持つ管理AIのみが限定的に本情報を閲覧可能とする。


Item#: 3500-JP
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リスククラス:
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本情報を知る者は存在しない。不正アクセスは固く禁止される。

確保・収容・保護

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零下現実


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