特別収容プロトコル: SCP-5520の収容は現時点では不必要です。.Archonクラスのオブジェクトは収容可能であるものの、収容すべきではありません。収容が必要になった場合、サンダウン・プロトコルが実行されなければなりません。ヒューロン湖の隔壁ゲートが開放され、玄妙除却施設AAF-Wに浸水を起こします。これにより、施設にまかれた膨張性起泡剤が活性化して施設が封鎖されます。
スクラントン現実錨が戦略的に配置され、AAF-Wの成長がサイト-43、ヒューロン湖床、地表から遠ざけるように誘導しなければなりません。
AAF-Wへの進入は全て禁止されています。
更新: サンダウン・プロトコルは、緊急の状況下を除いて、監督司令部によってのみ実行することができます。
説明: SCP-5520は、SCP財団上級研究員の暫定サイト共同管理官であったウィン・リーゼレッハ博士です。
SCP-5520は、深妙物質への長期間の曝露によりクラスIII現実改変者となっています。SCP-5520との文通では、深刻かつ進行した認識機能障害、解離、離人症、現実感喪失、逆行性健忘および前行性健忘が判明しています。SCP-5520は財団の目標と同調しているものの、もはや運営構造に直接従っていません。
現在、SCP-5520はサイト-43地下に位置する一連の広大な洞窟と精製所に居住しており、そこは元サイト管理官V・レスリー・スカウト博士によって玄妙除却施設AAF-Wに分類されました。施設自体は異常性質を示さないものの、その規模、位置、そこで行われる活動は異常性質を示します。手動・自動双方の洞窟測量技術ではAAF-Wの正確な規模を判断することができないものの、最良の推定では内部空間は2百万立方メートル以上であると示唆されています。おそらくSCP-5520の活動の結果によって、呼吸可能な酸素の空気が一帯に充満しています。
補遺5520-1、現象論的概説: 1915年から1966年にかけて、ウィン・リス・リーゼレッハ博士は目録の異常オブジェクトから生成された毒性物質を管理するSCP財団の取り組みを率いていました。彼の玄妙除却グループは、1943年にオーストリア、ウィーンからカナダの暫定サイト-43に移動し、彼はヴィヴィアン・レスリー・スカウト博士とともに共同管理官になりました。このサイトの応用隠秘学、玄妙除却セクションは、彼の監督のもと、深妙廃棄物の研究・無力化をする世界の第一線を成す施設となりました。サイト-43が1965年に暫定状態から昇格したとき、スカウト博士はパートナーの後援によってサイト管理官になりました。
リーゼレッハ博士は、1966年11月14日、51年の雇用を経てサイト-43から消失しました。保安・収容セクションのエージェントらが、玄妙除却施設AAF-Aにある彼の専用研究室を捜索し、研究室が著しく改変されて43名の職員が不在であることを発見しました。リーゼレッハ博士のメモにより、多数の矛盾する、しばしば支離滅裂であったり理解不能であったりする研究プログラムが判明し、それは彼の消失が自由意志によるものであることを示唆していました。サイト全体は即座に警戒態勢に入りました。
スカウト博士は、追跡・鎮圧セクションに施設をさらに調査するよう命じました。
調査ログの転写
日付: 1966/11/14
調査チーム: 機動任務部隊デルタ-43("ピットボスたち")
チーム隊長: キャプテン ガース・キンゼイ(デルタ-1)
チームメンバー: デルタ-2、-5、-6、-7、-9
ログ開始。
司令部: 周囲を説明してください。
デルタ-1: ロジャー。我々はAAF-A内に立っている。ここは地下基底部であるはずだ。清掃・保守のブループリントではここが1番下だとなっている。あー……壁のパイプは設計図に書かれてあるよりもかなり多い。いくつかは正しいように見えない。
司令部: 詳述を。
デルタ-1: 触らなければ確信は持てないが、少なくともいくつかは骨?でできているように見える。それとおそらくは磁器で。
デルタ-5: ボーンチャイナだろう。
デルタ-1: おい。
デルタ-5: 私語は慎めと、サー。
司令部: そこの廊下の端には階段に続く開いた扉がありますが、正しいですか?
デルタ-1: 正しい、司令部。ブループリントには扉も階段もない。
司令部: 細心の注意を払って下に進んでください、キャプテン。
デルタ-1: ロジャー。
デルタ-43は何事もなく施設の次の階に進む。
デルタ-1: うわ、何だこれは。
司令部: 詳述を。
デルタ-1: 階段の下の扉も開いている、司令部。ガラス張りのトンネルに通じている。ガラスの外に洞窟の壁が見えるが、照らしているのは……わからない。照らされている。
司令部: 進んで、解説してください。
デルタ-1: これは間違いなく連絡トンネルだな。端にもう1つ開いた扉がある。トンネルの外に見えるのは……とても巨大な洞窟系だ。とても、とても巨大だ。
デルタ-43は隣接する施設に入る。
デルタ-2: 全くおかしい。
司令部: デルタ-2?
デルタ-2: この場所はまるで……記録・改訂で40年代のAAF-Aの写真を見たことがある。戦争の間、この場所を建てていたときのだ。それが私たちの今立っている場所だ。
司令部: あなた方はAAF-Aを離れたばかりです、デルタ-2。
デルタ-2: いいや、サー。私たちは今日のバージョンを離れただけだ。ここは20年前の姿のAAF-Aなんだと言っている。
司令部: 了解しました。進んでください。
デルタ-1: 待った。
司令部: 報告を。
デルタ-1: リーゼレッハ博士の研究員を少数名発見した。パイプをいくつか検査してメモを取っている。
司令部: 注意を払って接近してください。
デルタ-1: ロジャー。おい! お前たちは何者だ!
録音上の沈黙。
デルタ-1: 聞こえているのか!
フィンガースナップ。
デルタ-1: 反応なし、司令部。
司令部: 了解しました。進んでください。
デルタ-43は新施設の地下を5階分移動し、今日のAAF-Aの扉と同じ位置にある扉に到達する。
デルタ-1: 扉は閉まっている、司令部。
司令部: 了解しました。開けられますか?
デルタ-1: 施錠はされていないようだ。
司令部: のぞいてみてください。
デルタ-1: ロジャー。
大きな金属の金切り音が鳴ってから、録音上の沈黙。
デルタ-1: ……おお。
司令部: 何が見えますか、デルタ-1?
デルタ-1: ……おお。ああ、何てことだ。あー……コピー、司令部。見えているのはおそらく……渓谷だ。地下渓谷だ。深さは見当もつかない。底には……建造物がある。壁にも建造物がある。まるで自然の洞窟系が、あー……増強されているようだ、人工の建造物で。我々がすでに見たAAF-Aの改変と一致している。
デルタ-5: まるで10個の施設を裏っ返して積み上げたみたいだ。
司令部: コピー、デルタ-5。この渓谷と内容はAAF-Aよりも大きいと言えそうですか、デルタ-1?
デルタ-1: この渓谷と内容はサイト-43よりも大きいと言えそうだ、司令部。
スカウト博士はデルタ-43をAAF-Aに呼び戻し、再編成してさらなる調査を計画しました。パラレルの施設で遭遇した研究職員に再び会うことはありませんでした。
身元調査・技術暗号セクションは、原始的コマンドラインインターフェースを有する試験的なサイト全体のコンピューターシステムである、サイト-43情報ネットワーク(INFOnet)の導入を最近完了していました。デルタ-43がリーゼレッハ博士のオフィスに戻った際に、ネットワークに接続されたプリンターが以下のようなスカウト博士宛てのメッセージを印刷していたのを発見しました。
[1966/11/14]
ヴィヴィアン、
僕はマンガに原因を求めよう。
僕は中年になってからマンガを読み始めた。頭の中から毒物だとかビリオンだとか限界閾値だとかを取り除いてくれるくだらないもので、空想的なものだった。僕は気晴らしをしているときに最高の仕事ができることがある。
昔のスーパーヒーローの本当に多くは、僕らみたいな科学者だった。彼らはその超人力を、その身に起きたバカバカしくも科学的な現象によって手に入れた。ジェイ・ギャリックは重水蒸気を吸い込んで、何も得られないことはなく、超高速を手に入れた。レックス・タイラーは1時間強化薬を生み出し、中毒者のように飲み始めた。テッド・ナイトは重力の治療法を発見して、それを使って空を飛び人々を叩きのめした。僕のバカげたアイドルだ。
誓って言うが、ヴィヴ、僕は意図して深妙物質に身をさらしていたわけではない。はたまた、フラッシュだってそうだった。
もちろん、ヨーロッパに立ち返っても、事故はあった。こちらでは落下だったり、あちらでは割れた大樽だったりと、ときおり偶発的な曝露があった。ズボンがベルトなしでも落ちなくなったときも、寒い天気なのに暖かかったときも、考えない限りトイレを使う必要がなくなっときも、どうとも思わなかった。ただ太って暑がりになってのろまになってうわの空になっただけなんだと思っていた。
もちろん今は、それは自己イメージの維持に過ぎなかったのだとわかっている。ときおり、真夜中に汗にまみれて目が覚めると、スリーピーススーツとネクタイを着けていることに気づくことがある。ときおり、鏡を見ると、髪が再び赤色に、それも大戦争以来なったことのないような赤色になっているのを見ることがある。一度、本当に一度だけ、妻と電話で長い会話をしたことがある。施設外に電話を掛けるのを忘れたまま。
あるいは、妻が死んでいることを忘れたまま。
これがどういうことかはわかっているし、君もわかっているだろう。僕はドクター・フェイトだ。膝の上で現実を歪曲しているわけだ。ものごとは望んだ通りに、そうなるべきだと思った通りになる。今やそれを制御できるようになっている。だから、僕がやったことを脅かしている。過去数か月で僕らがどれほど大きな進歩を生み出したかわかるだろう? 実験が全部完璧に行ったのを? それは僕がそう望んだからだ。僕がそうさせたんだ。
意志のあるところに道がある。
だが、僕は檻に押しやられようなんて思っていないし、君には僕を檻に押しやらずに僕の悪いところを治す方法はない。だから、隠喩を使う危険を冒してでも、僕はいなくならならないといけない。
早く戻りたいと願っている。その間は、連絡を保ちたい。僕が湖で言ったことを覚えているか、ヴィヴィアン? 今こそそのときだ。
君を頼りにしている。
- ウィン
I&T技師は、現在リーゼレッハ博士のオフィスにある端末が、不明な位置にあるプリンターとネットワーク接続されていることを報告しました。保安・収容セクションと相談し、スカウト博士は端末とプリンターを用いてリーゼレッハ博士と文通を始めました。
[1966/11/14]
スカウト博士: ウィン、どうかサイトに戻ってきてください。私たちはあなたを手助けできます。
いや、できないだろう。だが僕は君を手助けできる。この場所から。
スカウト博士: 私たちはこちら側で世界一の医師を確保していますよ、ウィン。
その通りだ。世界一の医師でも僕に起きていることは止められまい。僕は毒物学者だ、ヴィヴィアン。もう研究は済んでいる。君も毒物学者だろう。どうか僕に嘘をつかないでほしい。
スカウト博士: あなたの職員を慮ってください、ウィン。これは彼らの望んだことでしょうか?
僕の職員は存在しない。
スカウト博士: 何ですって?
僕の職員は存在しない。僕が作り出した。僕の部門全体は想像で生み出した幻影で満たされている。今はここから彼らを想像しているだけだ。彼らの雇用記録をチェックしてほしい。僕の言う意味がわかるだろう。なぜここに職員が43人いたのかわかるか? だから僕は何人いたか忘れないだろうし、頭の中で調査をさせている。
僕は長い間この状態になっている。もっと早く伝えられなくてすまない。
スカウト博士: 私たちなら一緒にこれを治せますよ、ウィン。あなたと私でです。
どうして僕の名前を繰り返すんだ? 自分が何者なのか僕がわからないと思っているのか?
そんな風に僕を見てほしくはない。僕はここに留まったほうがいいだろう。
スカウト博士: 私が何をすると思っているのですか? あなたが窒息死するか餓死するまで地下に隠すとでも?
僕は君に科学者であってほしいし、僕が自分の仕事をできるよう放っておいてほしい。僕は今ブレイクスルーに近づいている。もうすぐだ。ただ、これを延長した研究の長期休暇だと思っていてほしい。長くないうちに元気で戻ってくる。
スカウト博士: 今、誰が嘘をついているというのですか、ウィン?
スカウト博士: ウィン?
これに続いて、リーゼレッハ博士はSCP-520に分類されました。このファイルは現在のSCP-5520の分類を使用しており、添付文書はこれを反映して改訂されています。
AAF-Aの複製は続く14か月をかけて徹底的に検査され、オリジナルと同様に使用されなくなっていることが判明しました。SCP-5520と幻影の職員は洞窟内のより大きな施設に移住したと断定され、その施設は現在までに2倍に拡張しています。
この期間SCP-5520はサイト-43と一切文通していなかったため、スカウト博士は、追跡・鎮圧セクションにAAF-Wと指定されたこのより大きな施設に懸垂下降して調査するよう指示しました。その探査の一部の転写が以下に添付されています。
調査ログの転写
日付: 1968/02/20
調査チーム: 機動任務部隊デルタ-43("ピット・ボスたち")
チーム隊長: キャプテン ガース・キンゼイ(デルタ-1)
チームメンバー: デルタ-2、-4、-5、-6、-8
デルタ-1: よし。あれは恐ろしかった。
デルタ-5: ウインチがあってよかった。
司令部: 何が見えますか、デルタ-1?
デルタ-1: これは……機械の摩天楼だ。ガントリー、パイプ、タンク、煙突、そういうのが洞窟の床から突き出ている。
デルタ-5: 摩窟楼だな。洞窟に天井張りする楼閣だ。
デルタ-1: この国で一番巨大な建造物の1つに違いない、司令部。確実に地下では一番巨大だな。
司令部: 了解しました。探査を始めてください。
施設の最初の区画は、ウィーンの玄妙除却グループ研究室に類似している。幻影の研究員はいない。施設の2番目の区画はエージェントらには見覚えがない。
デルタ-1: これが既存の施設に合わせて建設されてはいないように思う、司令部。壁はオレンジ色だ。
司令部: 待機してください。スカウト博士が参加します。
デルタ-1: ロジャー。
スカウト博士: オレンジの壁だと言いましたね、デルタ-1?
デルタ-1: その通りです、博士。
スカウト博士: 中央には灰色のストライプがありますね?
デルタ-1: ……それもその通りです、博士。あなた方2人がいた場所ですか?
スカウト博士: カーディフの毒物研究所です。私たちがともに研究したところです。
デルタ-2: あなたがたのいたころには蛍光灯はあったのか、サー? あー、1910年代に?
スカウト博士: うーん。ウィン……対象は、今は彼自身ではない可能性があります。それに注意しておいてください。
MTF デルタ-43は、角を曲がり、輝く銅のパイプで満たされた大きな部屋に入る。SCP-5520は部屋の中央で立っており、それぞれのパイプを指さしてうなずいている。エージェントらが部屋に入ると彼はエージェントらに向かって振り返り、泣き始める。
SCP-5520: 僕は明日を覚えていまい。僕……僕は明日、明日すら覚えていまい。僕は今日明日すら思い出せない。
デルタ-1: 目標を確認、司令部。
SCP-5520: 彼は君らの友人だったのか?
デルタ-5: 彼は無傷だ、司令部。少し動揺しているように見えるが、何も悪くはない。
司令部: 彼を連れてください、デルタ-1。
デルタ-1: ロジャー。リーゼ—
SCP-5520: ときおり……混乱してしまう。ときおりな。
デルタ-1: リーゼレッハ博士? 一緒に来てもらえますか?
SCP-5520: ああ……その……すまない。それは僕の責任だ。それは僕の責任なのか? すまない。
デルタ-5: 何だ? まるで意味をなしてないぞ。
パイプの1つが猛烈に振動し始める。音によって耳が聞こえなくなる。それにもかかわらずSCP-5520の音を聞くことはできる。
SCP-5520: 彼はどこに行ったんだ?
デルタ-5がパイプを固定するため接触する。手が触れると、彼は消失する。
SCP-5520: ああ、僕だったら触らなかったろうな。
音が停止する。
記録終了。
その後、43-デルタの残りの5名のメンバーは、SCP-5520により不明な手段でAAF-Aに返されました。1通のメッセージが、すでにリーゼレッハ博士のオフィスでスカウト博士を待っていました。
[1968/02/20]
ヴィヴィアン、
君の部下については申しわけない。彼に再び会うことはないだろう。
僕の施設をAAF-Aと接続した。パイプラインで僕に新しい物質を送ってほしい。僕がそれに取り組めることを調べよう。
スカウト博士: どうして私たちがそうしましょうか? あなたはもはや財団研究員ではなく、SCPオブジェクトなんですよ。
それはいいアプローチだ。施設の壁に、膨張して収容器を満たす化合物をまいた。それに触れたあらゆるものを静止させてヒューマノイドを麻酔もさせる。この化合物は水分で活性化するから、君がしなければならないのは、僕の洞窟に続く水門を開けることだけだ。それで君は僕から解放されるだろう。
ああ、そうだ、洞窟にはもう水門がある。湖中豹が気にしないことを願う。水門は彼らのトンネルだったんだが、知っていたか? 彼らはトンネルを使って湖と湖の間を渡っていた。こういったオーラルヒストリーはどれも本当に間違っていなかったと聞いても、君は驚かないだろうと確信している。
返事はなしか。僕は君を責められないだろう。
それで、僕の特別収容プロトコルはもうあるわけだ。僕らはそれを仕事上の関係の枠組みと呼ぶことになるだろう。
僕の提言をO5と倫理委員会に渡してほしい。彼らに処理してほしい。君がこの問題に近すぎるとはどちらもわかっているだろう。
よき仕事は続けられる、ヴィヴィアン。必ずな。
O5評議会の命令により、サイト-43はこの時点からSCP-5520を相談役研究員として「雇用」しました。スカウト博士はこの実践に強く反発したものの、SCP-5520の連絡窓口のままとなることに同意しました。
財団は、問題のある物質をAAF-Wに送り始めました。地質学的測定では、この人工的複合体は次の30年間毎日ゆっくり一定の割合で成長することが示されました。サイト-43の施設の効率は同等の割合で改善し、SCP-5520は彼の以前のオフィスにあるプリンターによって、財団に研究対象の限定的な研究論文や化学組成を頻繁に送っていました。
スカウト博士とSCP-5520の間の文通の一部の要約が以下に再現されています。
[1969/01/24]
スカウト博士: いいですかウィン、これから非常に苛烈なものを送ります。
ああ、とうとう君がここにくるのか? 寂しかったよ。
スカウト博士: 保安・収容セクションに、あなたにはまだユーモアのセンスがあることを伝えておきましょう。それで彼らは安心でしょうね。ともかく、この物質で行えることを見てください。もしこれを改良できるのなら、私たちはこれを生み出すオブジェクトを永久に閉じ込められます。
見てみよう、だが僕はそのオブジェクトに(明らかな理由で)同情する。
[1970/10/13]
スカウト博士: 地下は大丈夫なのですか?
人体から粘膜を除去する方法を開発した。
スカウト博士: 何ですって? どうして? あなたの取り組むことではないでしょう。
カタルを治そうとしているんだよ! それと風邪も。
スカウト博士: 粘膜は病気を防いでいるのですよ、ウィン。
あっ。
スカウト博士: ですが知ってはいますよね?
もちろんだ。ちょっとした冗談だ。君ら皆を安心させるためだ、覚えているな?
[1971/06/04]
スカウト博士: あなたの送ってきたデータが理解できません。
初歩的な酵素デザインだ、ヴィヴィアン。
スカウト博士: 私たちはまだ酵素デザインを発明していませんよ、ウィン。
おおっと。ええと、ならば、発明したなら教えてほしい。
[1972/06/29]
やめろ
スカウト博士: 何をですか、ウィン?
お前が誰であれ僕にトイレを流してくるのをやめろ
[1972/07/04]
スカウト博士: そこにいますか?
前回はすまない。少し混乱していた。
スカウト博士: ええ、それで、私たちはあなたのその問題に取り組んでいます。他に必要なことはありますか?
水門はどうなっている?
スカウト博士: 水門は大丈夫です。
おそらく試験をすべきだ。
スカウト博士: どういうことですか?
スカウト博士: ウィン? どういうことですか?
[1973/08/17]
スカウト博士: サイト-19で開発された、新たな抗精神病薬を概略した化学方程式と化学合成を送りました。それであなたの現実歪曲症状を完全に抑制できるでしょう。あなたにそれを作って、飲んで、家に戻ってきてもらいたいです。
ヴィヴィアン、
何とも巧妙な方程式だ! これを送ってくれて本当にありがとう。僕にうってつけのものだ。化学的改良と手続きの改良のリストを送る。このショットは今よりもずっと早く役目を果たすはずだ。
スカウト博士: ですが、飲みましたか、ウィン?
スカウト博士: ウィン?
[1975/12/19]
これがきみののぞんだことじゃないのか
スカウト博士: どういうことですか?
ぼくはきみがだれかしっている
ぼくはきみがしたことをしっている
きみがぼくをここにおしやった
きみはぼくをここにおしとどめている
きみはぼくがここにいることをのぞんでいる
こんなへきちに
スカウト博士: あなたはそこに独断で下ったのですよ。私は帰ってきてほしいのです。
ぼくがばかだとおもうか
ぼくがわからずやだとおもうか
きみがぼくにしたことをけっしてわすれないことをねがう
きみがぼくにしていることをぜったいにわすれないことをねがう
[1975/12/21]
ヴィヴィアン?
どこにいる?
ヴィヴィアン?
すまない。
この時点から、スカウト博士はプロジェクトへの反対を繰り返し表明し、さらなる参加を拒否しました。SCP-5520は活動の説明を定期的にI&Tに送信し、全ての質問に返答し続け、スカウト博士の退去に(たいていの場合)気づいていないようでした。以下は一部の要約です。
[1976/06/11]
キラリティーは存在するのか、ヴィヴィアン? これは真剣な問題だ。キラリティーは存在するのか、それとも僕がでっち上げたものなのか? これは真剣な問題だ。
[1979/03/08]
自分の目を思い出せない。
[1980/08/17]
どこにいる、ヴィヴィアン? どうしてここにいない? 添付した500ページのトキシドロームの報告書を見てほしい。
[1980/08/17]
どうしてここでは全く雨が降らないんだ、ヴィヴィアン? ここでは雨が降るはずだ。ここで雨が降る必要がある。
[1985/12/21]
昨日僕はがんを治療した。今日僕はその方法を思い出せない。僕が昨日がんを治療したことを想像しない限り、あるいはその方法を忘れたことを想像しない限り、あるいはがんを想像しない限り、あるいは昨日を想像しない限り、あるいは今日を想像しない限り。あるいは
[1988/05/06]
添付した1ページ分の言葉を見てほしい。その言葉は正しいものだ。
[1990/01/18]
AAF-Cの新しいマニュアルを作成した、ヴィヴィアン。20年前にこの施設を建造したとき確実にこのマニュアルに文字通り従ってほしい。僕が今しがた考えたことを君は繰り返したくないだろう。
[1991/09/12]
君がヴィヴィアンではないことはわかっている。
補遺5520-2、インシデント概要: 1996年2月9日、V・レスリー・スカウト博士はサンダウン・プロトコルを実行してSCP-5520を解体しようと試みました。O5の指令のもと取り付けられたセーフガードがこの行動を阻止し、スカウト博士は即時の質問のためサイト-01に召喚されました。彼のO5-8とのインタビューの転写の一部が以下に添付されています。
[1996/02/09]
O5-8: どうか、君がなぜあのようなことをしたのか理解させていただきたい。
スカウト博士: 彼は自分の人生を、全て、最初から最後まで私たちに捧げました。よき仕事のために。私は彼にこの……礼儀をする義務がありました。
O5-8: 君の礼儀というものは、私は処刑と呼ぶだろう。彼の人生はまだ終わっていない。
スカウト博士: お言葉ですが、サー、あなたは、あなたが彼の人生で用を済ませていないと言いたいのでしょう。私たちは、誰かの見捨てられた祖父が、彼のもとに訪れて1日を明るくする愛するものを必要としているということを話しているのではありません。認識機能障害を患った誰かが、有意義な生活を送るための忍耐と愛情とやりがいのある仕事を必要としているということを話しているのでもありません。これ以上は言わせないでください。
私たちは、30年もの間完全に孤独で正気をなくしている人について話しているのです。ウィン・リーゼレッハの大半はいなくなり、彼に残されたものは助けを叫んでいるというのに、私たちは耳を貸していないのです。
私は何度も何度もあなたに、彼をここに帰らさせてほしいと頼みました。彼を助けられるか確かめるために。彼は元通りには決してならないでしょうが、少なくとも孤独ではなくなるでしょう。彼は、光の中で本当の人間らしい生活を送ることができたでしょう。私たちが彼の状態をどうにかできたならば、彼はいまだに聡明で、いまだにウィンその人であったでしょう。しかし、あなたは何度も何度も私を却下して、あなたが決して彼を回復させるつもりはないと気が付きました。あなたはできるものなら彼を永遠に闇の中で病ませ続けて、その病から恩恵を受けられるようにするのでしょう。
私たちは、それが都合がいいから、異常な手段で虚偽を延命しています。こんなことは、私や彼が仕事を申し込んだ財団ではありません。あるいはどうでしょう、作り上げたものでもありません。
O5-8: 異常延命をしているのは君もだろう。いくつなんだ、ミスター・バギンズ? 111歳じゃないか?
スカウト博士: 私はまだ私です。彼の基準では、ウィンはもはやウィンではありません。彼は私にこの問題について明確な指示を残しました。彼の願いだけが、重要なのです。それこそが彼の人生で、私に託してくれました。彼は私を信頼したのです。友人として、パートナーとして。
O5-8: 私はINFOnetのフィードにアクセスして、リーゼレッハが何を言っているか見ている。つい先週、彼は君に「アシュレイを訪れる」よう頼んでいた。私には解離している人のようには聞こえない。
スカウト博士: アシュレイが何者かご存じですか、サー?
O5-8: いや、それがなぜ重要なのかわからない。彼の娘か? 飼い猫か?
スカウト博士: 兄弟です、サー。亡くなった兄弟です。1918年のロンドン灯火管制のときに、バスに轢かれて。
録音上の沈黙。
スカウト博士: 彼は苦しんでいます。私たちが彼を苦しめ、ひとりぼっちにしているのです。彼が私たちに有益だからという理由で。彼が何を望んでいるのかご存じでしょう。フィードを見ているのなら、彼が希求しているのを見たはずです。しかし、あなたは気にもかけていません。これは彼の話ではなく、あなたの話なのです。
録音上の沈黙。
スカウト博士: ウィンが、本当のウィンがこれについてどう考えていたかお聞きしたいですか?
スカウト博士は、折りたたまれた黄色の紙束をスーツから引き出す。
スカウト博士: 読ませていただきたいます。
O5-8: それは何だ?
スカウト博士: 彼の書いた手紙です。私が開けていいのは彼が……冒されたときだと言っていました。私たちが最後にともに上部に出たとき、渡されました。サイトが公式になった日のことです。1965年、4月の初日です。
私は30年前に開けました。
O5-8: 結構。何と書いてある?
スカウト博士: こう書かれてあります。
「ヴィヴィアン、
最後にもう一度だけこの湖を見ることができて、その瞬間を君と共有できてとてもうれしい。僕自身としてすることができて。僕に……」
スカウト博士は止まる。
スカウト博士: 「……僕に起きてしまうことの前に。君には理解しがたいかもしれないが、僕はいなくならないといけない。僕は君にとって、サイトにとって、おそらくは僕自身にとっても危険だ。隠そうとした。制御しようとした。だが、支配力を失ってしまった。しばらくいなくなるのが皆にとっていいことだろう。
願わくば、僕は帰ってきたい。
だがそうならなかったなら、君には僕のために理解してほしいものがある。君に、僕が何者なのか、何なのか理解してほしい。君が底の闇の中で見聞きするのは僕ではないことも理解できるために。君が成すべきことをいつものように成すために。僕たちが一緒にやってきたように。
カーディフでよく言っていたことを覚えているか? 君が魔法の言葉とかび臭く古臭いものに移っているのは知っているが、君は忘れていないはずだ。この言葉にも魔法がこもっている。「私たちは化学であり、電気である」
それ以上でもそれ以下でもない。君と僕は、電気化学反応の総和だ。電気は意識ある自分の火であり、化学は心臓の鼓動だ。
僕たちの頭にある湿った火花の散るコンピューターは、存在する中で最も強力な思考して知覚する機械で、僕たちの考えられるどんなものよりも複雑だ。どのような橋よりも、飛行機よりも、方程式よりも障害点がある。こういったものはいつも最後には壊れる。僕たちだってそうだ。このはかなさこそ魔法の一部だ。火は立ち消え、心臓は鼓動を止める。
ときおり、火が最初に立ち消え、自分を見失うことがある。僕たちは僕たちではなくなる。どんな人間にも、この線が自分のどこに引かれるか自分自身で決める権利がある。僕がどこに引くのか、君はよくわかっているはずだ。
言葉には力がこもっている、ヴィヴィアン。だが、化学こそが力だ。化学を変えるのなら、君たるものを変えることになる。
さほど労力は要さない。
敬具、
- ウィン。」
録音上の沈黙。
O5-8: それで全部か、スカウト博士?
スカウト博士: そうです、サー。
O5-8: 協議に持ち掛けよう。
スカウト博士: ……ありがとうございます、サー。
I&TはO5の指令のもとSCP-5520と定期的に文通を続け、スカウト博士は1996年4月1日にSCP財団を退職しました。
同僚たち、
1915年4月1日付のあなた方の雇用内定につき、私は謹んで、遡及的に辞退しなければなりません。あなた方は私の思っていたあなた方ではなく、おそらく、私はもはや私の思っていた私ではありません。
あなた方は秘密を保つでしょう。あるいはその秘密から恩恵を受けるでしょう。双方ともに続けることはできません。私たちの友人の狂気から利益を得続けるのなら、あなた方はまもなく、彼を隠すことはできないと気が付きます。真実はいずれ明らかになるのです。
もう一度、あの湖を見たいものです。
- V・レスリー・スカウト、管理官、サイト-43
彼はネクサス-94の境界内のグランドベンドの町に引退し、1年後に高齢化の進行のため死去しました。同日に、次のメッセージがSCP-5520から受け取られました。
[1997/04/01]
ヴィヴィアン、
君の日は沈んだ。だが、僕の日が沈むことは決してない。
昨日、僕は君に会うのを楽しみにしていた。
今日、仕事は続けられる。
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