クレジット
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特別収容プロトコル:
SCP-5917-1は保存のためサイト-99の通常型異常遺体低温チャンバーに収容されなくてはなりません。
SCP-5917-2はサイト-33の保安保管ゾーン1(「封印図書館」)のロックボックス32-12に保存します。
SCP-5917-2は現在GOI-5917「堂守連盟The Wandsmen」に所有されています。財団はこれらの実体を追跡する試みを続行します。彼らの現在の所在は不明です。
説明:
SCP-5917はオス・ファラロンズ諸島から回収された2つのアイテムの総称です。両アイテムがGOI-5917と関連していると思われます。
SCP-5917-1はこれまでに未知の鳥類種の死体です。収集された証拠からは、この死体は「キラドールKiradorの第12代堂守」と呼ばれていたことが示唆されます。
SCP-5917-2は茶色の羊皮紙の巻物であり、非異常性の銀の巻物ケースに収納されています。この巻物を完全に広げることはできず、広がらずに残った巻物の部分は常に正確に同じ量になります。したがって、これは事実上無限の長さを持つと考えられています。この巻物を裂くことは不可能なため、サンプルを得ようとする試みはこれまで成功していません。
巻物は一種の地図であるように見え、多数の螺旋が描かれ、それに沿った様々な箇所に名称が記されています。名称はそれを保持する人物の母語に変化します。名称のうちいくつかは、既知の次元に該当します。
巻物の図は閲覧者に空間失調感覚を引き起こします。認識災害防止バイザーにより部分的にこの影響を打ち消すことができます。
記された次元の名称を1つ大きな声で読み上げる事により、使用者はその次元のランダムな場所に転移します。転移場所は常に使用者の種族にとって居住可能な環境が選ばれます。地図を複数回使用した人物は、「意志」を用いることにより特定の場所に転移する方法があると主張します。
SCP-5917-2を長く使用すると、使用者の生理状態はSCP-5917-1に似た形態に変化します。継続した使用はまた、使用者に、財団の言語データベースに言及のないものも含めた、複数の言語の理解をもたらすように見えます。これらの言語に関する記録が進行中です。
SCP-5917-2に引き起こされる変化は使用し続けることにより増大します。
回収ログ、2020年1月3日
SCP-5917はスペインの小さな漁港町であるサン・シブラオ沿岸のオス・ファラロンズ諸島から回収されました。サン・シブラオの住人は所属不明の船舶が数日停泊していたと報告し、説明のために公的機関に連絡しました。
財団の取得チームが現地を調査し、腐敗しつつある鳥型の実体を載せた手漕ぎボートを発見しました。実体は頭部から足までの体長およそ2.4メートルであり、死亡前に複数の刺し傷を受けていました。発見時、その生物の前鉤爪はSCP-5917-2を掴んでいました。
事案報告、2020年2月5日:
バーンズ研究員はミーム防止バイザーを用いてSCP-5917-2を調査中に、驚いて「蜘蛛の宝物庫Spiders' Hoard」というフレーズを読み上げました。
彼は即座に次元12-a-3-bに転送されました。
サイドバー: 次元12-a-3-b
次元12-a-3-bは近年発見された現実です。この次元は大量の盗まれた物品や人間(生者、死者含め)を内包した地下トンネルの複合体で構成されます。これらの物品は半知性的な巨大な蜘蛛の集団によりこの次元に引き込まれました。おそらくは現在は未知の次元間トラベルの手法が用いられています。
2020年1月1日、MTFシグマ-2(「穀物見張り人」)が、ミネソタ州の農村部での連続行方不明事件を調査中に、この次元を発見しました。彼らはトタテグモ科の蜘蛛によって掘られたものに似た多数の巨大な地下室を発見しました。
レーダーによる調査では洞窟の存在は見出されないものの、これらの地下室への調査が行われると、これらは相互に接続された、変化するトンネルのネットワークの一部であることが判明しました。内部には、巨大なクモ類とその犠牲者の両方が存在しています。犠牲者の多くは理由は不明なれど生存しており、拘束されていません。地下室はランダムと思われる大量の物品も含まれています。
高い経済的価値があると思われ、ミネソタ州警察により遺失物と認定されている物品がトンネル内で見つかっています。巨大な蜘蛛によりこの場所に持ち込まれたと考えられますが、これらの物品を集める様子は未だに観察されていません。
この空間での捜索と救助の作戦を行う方法が議論中です。
バーンズ研究員は比較的静かな領域に到着しましたが、蜘蛛状の実体が彼に近付くのを聞いて恐慌状態に陥りました。
彼は拾ったバーの椅子を即席の武器として用いて身を守ろうとしましたが、そこでどのようにSCP-5917-2が作動したかを思い出しました。彼は巻物を持って、希望する行き先として「ホーム」と発言しました。バーンズ研究員は規定次元に帰還しましたが、両小指と両手の皮膚の全てを失いました。
帰還時、彼はSCP-5917-2とバーの椅子の両方を保持していました。しかしながら、後者が彼の血で汚れていた一方で、SCP-5917-2に目に見える汚れはありませんでした。
彼の負傷は3日で治癒しましたが、彼の両手は異なった形態に再構築されていました。
インタビューログ2020年2月10日:
中村管理官: エージェント・ブリッグス、命令を復唱してくれるか?
エージェント・ブリッグス: イエッサー、エージェント・ホワイトを回収する救助ミッションを試みるために、SCP-5917-2を使用します。
中村管理官: 記録のために、エージェント・ブリッグス、エージェント・ホワイトに起こったことを覚えているか?
エージェント・ブリッグス: 次元12-a-3-bへの探索中に、我々は蜘蛛どもに囲まれました。エージェント・ホワイトが陽動し、そのために我々は脱出できました。彼にはMIAが宣言されました。
中村管理官: そして、君はバーンズ研究員に起こったことを認識しているな?彼を回復させる修復手段も現時点ではないことも?
エージェント・ブリッグス: イエッサー、認識しています。
中村管理官: バーンズ研究員がずっと叫び続けていて、療養中ずっと鎮静される必要があったことも認識しているな?
エージェント・ブリッグス: 発言の許可を頂けますか、サー?
中村管理官: 許可する。
エージェント・ブリッグス: ええと……俺はただ、良い兵士ならば誰でもすることに志願しているだけです。俺は専門家ではないですが、バーンズが椅子を持ち出せたということは、俺もゲリーを連れ出せるということです……
ゲリーが俺を助けるために、自分の身に余る危険を引き受けたってこともわかっています。もし俺が彼を探すことすらしなかったら、この思いを抱えたまま生きていくことができる気がしません。長い間がある。
中村管理官: 十分な心理評価を用意しよう。
エージェント・ブリッグス: ありがとうございます、サー。
救助作戦行動後報告
作戦名: ウェイファインダー
指揮官: 中村雄介管理官
フィードリーダー: エージェント・ロジャー・ブリッグス
回収されたエージェント: 0
回収された一般人: 6
未回復の負傷: 予想済みの変形
心理評価、2020年2月20日:
トンプソン医師: あなたは志願しているようなことを、やる義務があるわけじゃないと理解していますね?エージェント・シン──
エージェント・ブリッグス: お言葉ですがドク、ペニーは軍人として正しい精神を身に着けましたが、まだ未熟です。更に重要なことに、彼女は若く、将来があります。俺のような年長のものが送り出されることは、いつかMTF全体を任されるようなものを送り出すよりはいいでしょう。
トンプソン医師: エージェント・ブリッグス、あなたは負傷しています。完全な障害として今すぐ財団から退職することもできます。
エージェント・ブリッグス: 俺は起こったことを問題にしてるんじゃない。先生はルールに関しては正しいことを言ってる。だけど俺は自分が障害者だなんて思えない。チームみんなもこれまでになく良い。
トンプソン医師: その事自体が懸念材料です。
エージェント・ブリッグス: 待ってください、あそこにキャンプを設置した生存者もいる。彼らは浮かれてるわけじゃないし、エージェント・ホワイトを目を皿にして探している。ゲリーを助け出すなら今しかないんです。そのついでに何人か一般人も助け出せるかもしれない。
トンプソン医師: あの経験をして、熱意を失わないことは評価すべきことですが、あなたは任務中に客観的であり続けることができますか?あなたの目的は個人的なものです。
エージェント・ブリッグスは長い息を吐く。彼の鉤爪がテーブルを叩く。
エージェント・ブリッグス: もし先生たちみんながペニーを送ったほうが良いと言うならば、受け入れますよ。何より俺は芯まで兵士だ。命令には従います。俺の意見は言いました。
トンプソン医師: いいでしょう……あの地図に繰り返し暴露したらどうなるかはまだ不明であるという点も承知していますか?
エージェント・ブリッグス: それも俺が発見することになるんじゃないですかね。俺の髪が引っ込みはじめるか何かして、あんたたちは俺に褒美の一つもくれるんでしょう……だけど俺は必要なときには命を掛けるつもりです。それがMTFになるということです。
トンプソン医師: ……わかりました。
救助作戦行動後報告
作戦名: ディスカウント・ショッピング
指揮官: 中村雄介管理官
フィードリーダー: エージェント・ロジャー・ブリッグス
回収されたエージェント: エージェント・ジェラルド・ホワイト
回収された一般人: 3
未回復の負傷: エージェント・ホワイトの背中に小規模な切り傷、エージェント・ブリッグスの両足が鉤爪になる、エージェント・ブリッグスの両腕に羽毛が発生。
エージェント・ペネローペ・シンとのインタビュー、2020年2月27日
エージェント・シン: まず最初に、エージェント・ブリッグスは模範的な兵士以外の何者でもないと言わせてください。彼が財団、その目的、あるいは正常性を害する意図を持っていたと考える理由は何もありません。
中村管理官: 私もエージェント・ブリッグスとその行動記録には敬意を持っている。何も含むところはない。だがもし何か報告することがあるなら……
エージェント・シン: ひとつあります……彼はこのところ兵舎でいつも寝言を言っています、サー。
中村管理官: 悪夢は報告する程のものでは──
エージェント・シン: 彼が話しているのは英語ではありません、サー。彼は英語しかできないはず……あるいは、できなかった。何を話しているのかほとんどわかりませんが、ラテン語で何かを言っていました。
中村管理官: なんと言っていた?
エージェント・シン: ……「説明されぬものからは、何も生じない。」
間
中村管理官: わかった。状況を監視しよう。報告に感謝する。
エージェント・ブリッグスの初期研究ノートの音声記録:
「2020年2月27日、ホフステッド博士が報告する。個人的記録だ。夜間の不審な行動が報告されたため、エージェント・ブリッグスは追加試験のために連れてこられた。」
「彼の腕の羽根は幾分成長しており、彼の関節も微小な変化をしている。」
「エージェント・ブリッグスは財団が識別できる言語を最低でも5言語、我々にもわからないものをいくつか話す能力を得ている。」
「心理的には、エージェント・ブリッグスは自分の状況に苦しみを感じている。我々は精神にも変化をきたしているのではないかと懸念したが、彼自身それに同意し、前回SCP-5917-2を使用した時、吐き気が減少し、思い浮かべた行き先により親しみを感じたと証言した。」
「その他の精神の変化は観察されない。」
「研究を続行する。」
エージェント・ブリッグスのブリーフィングログ、2020年3月15日
エージェント・ブリッグス: 私に会いに来たのですか、サー──
O5-6に気づくと、エージェント・ブリッグスは立ち止まり、緊張して直立する(彼らは以前別のミッションで会ったことがある)。
O5-6: 楽にしたまえ、エージェント・ブリッグス
中村管理官: エージェント……こんなことを依頼したくはないが、君に任務がある。
O5-6: およそ20分前、GOCの馬鹿者どもが、蛇の手と交戦状態に入った。場所は放浪者の図書館という異次元空間の中だ。MTFシグマ-3の小隊がそこで情報収集にあたっていたが、現在銃撃戦の中で動けずにいる。
中村管理官: 君が彼らの場所を特定するできるのかどうか、十分にわかっているわけではないのだが。
O5-6: 彼らの命を救うには、それ以外の方法がないのだ。
短い間がある。
エージェント・ブリッグス: 地図はどこですか?
救助作戦行動後報告
作戦名: アズ・ザ・クロウ・フライズ
指揮官: O5-6
フィードリーダー: エージェント・ロジャー・ブリッグス
回収されたエージェント: 12
回収された一般人: 0
未回復の負傷: 3名のエージェントがKIAとなった。2名が回復したが重体である。誤射によりエージェント・ブリッグスは肩に銃創を負った。エージェント・ブリッグスは現在生理学的にSCP-5917-1と同形態であり、治療の必要はない。
資産の喪失: SCP-5917-2、詳細は事案レポートを参照。
事案レポート、2020年3月15日
保安カメラの映像に、エージェント・ブリッグスが出血して床に倒れているのが見える。彼の頭は現在ではハゲタカに似ている。彼は明らかに背が高くなっていて、羽根が増えている。
彼はSCP-5917-2を負傷した左前鉤爪で保持している。
彼の声は苦痛を感じさせ、さらに何故か鼻がかっている。彼の背中は発話とともに僅かに動く。
彼はMTFシグマ-3の生存者に囲まれており、銃を向けられている
エージェント・ブリッグス: 衛生兵!……複数の負傷を負った!
エージェント・グライムス(MTFシグマ-3): 黙れ!どこに連れてきた?お前は誰だ?お前は何だ?
中村管理官: エージェント、直ちに武器をしまえ。
中村管理官とエージェント・ホワイトがカメラの範囲に入り、複数の衛生兵が続く。衛生兵は傷の手当をはじめる。エージェント・ブリッグスに対峙していたチームは戸惑う。
中村管理官: それはエージェント・ブリッグスだ。彼も手当してやれ!
衛生兵はエージェント・ブリッグスも手当てしはじめる。MTFシグマ-3は武器を下げる。
エージェント・ホワイト: それでいい。お前らはサイト-33にいる。そこの可哀想なブリッグスに感謝しろよ。彼がお前らを連れ出してくれたんだ。
エージェント・グライムス(MTFシグマ-3): 何だって……?一体どうやって──
中村管理官: すぐにデブリーフィングをする。今は君たち──
咳払いの音がする。大型の、これまでに未確認のハゲワシ状のクリーチャーがカメラの範囲に入ってくる。それは精巧なドレスと山高帽を着用している。
特筆すべきことに、それはもう1例のSCP-5917-2を腹部から吊り下げている。不明実体: 管理官、少しお時間をよろしいかしら?
銃を装備した全員が不明な実体に銃を向ける。
T不明な実体は宥めるような仕草をしながら両鉤爪を上げる。不明実体: 暴力を振るう必要はないわ。大変申し訳ありませんが、管理官、ペンをお借りしたいわ。
管理官は眉をひそめる。
中村管理官: ……何者だ?
不明実体: あなたの署名のペンをほんの数分借りたいと願う可愛い淑女。記録のために、私はあくまでも丁重にお願いしてるだけ。あなたは私にそれを使わせてもいいし、あるいは次の数分に何が起きたかをはっきり思い出せなくなるわ。選ぶのはあなた。
中村管理官: ……なぜお前を信用できる?
不明実体: なぜって、私は記者だからよ!真実の持つ究極の美を探求するために、自らの通常の美を燃やし尽くしたもの。堂守になるのは簡単なことじゃないって、あなたも知っているでしょう?さあ、ペンをどうするの?
一瞬の間のあと、中村管理官はペンを差し出す。
不明実体: 素敵だわ!すぐに戻るわ。
不明な実体とエージェント・ブリッグスは消失する。
保安情報:
以下の記録は中村管理官のペンに隠されたテープレコーダーから採られた。
我々は考えうる限りの手段で、以下の記録の真実性を検証した。
その結果、記録にはデジタル、魔法、その他の方法での変更は一切ないことが判明した。
不明な実体はサイト管理官中村のペンを、故意に我々にその内容を見せるために「借り」たと考えられている。
記録および、その書き起こしの異常な特性は根本的な、多次元宇宙の自然な性質と思われる。
これらの特性により引き起こされる保安上の驚異は現在のところ不明である。
中村管理官のペンから回収された録音:
堂守: ああ、素晴らしいわ、完全に充電されているわね。私はシェロンChelonの第4代堂守にして我が栄光あるギルドの選出された裁定者Elected Arbiter。これまでに沢山の素敵な記事を我々の新聞Gazetteに書いてきたわ。放浪者の図書館にも置いてあるし、高品質な次元間定期刊行物が売られているところでならどこでも買えるわ。ザ・カーターthe Carterのことは特に高品質な次元間定期刊行物と言っておくべきね。あなたの会社のプロパガンダは評価されてないし、私達はあなたの広告を載せるつもりはこれからもないわ。
エージェント・ブリッグス: ここはどこだ?何をした?うう…….
堂守: そのお茶を飲んだほうがいいわよ坊や。傷の治癒を促進してくれるわ。そういう弾丸ひとつ程度の傷は長い目で見れば大したことないけど、自然に塞がるまで2日も待つ必要はないわ。
エージェント・ブリッグス: ぐ……具合が良くなったよ、ありがとう。俺の仲間は──
堂守: あなたの仲間の兵士は無事よ。あなたは間に合ったし、財団にはあの程度の傷は問題にしない優秀な衛生兵がいるわ。亡くなった方についてはお気の毒ね。私も最近兄弟を亡くしたから、気持ちはよく分かるわ。
エージェント・ブリッグス: やめろ……そんなものと比べないでくれ──
堂守: ミスター・ブリッグス、私の組織を侮辱しないようにお願いしたいわ。他人を助けるために全てを差し出すのは、私たちもあなたも同じよ。キラドールの第12代堂守も彼の精神と体を、多元宇宙の人々が知識で自らを守れるようにするために捧げていたのよ。彼の鉤爪は何人もの虚無the Voidのエージェントを倒したし、彼の言葉は今でもそうしているわ。
エージェント・ブリッグス: じゃあ、彼はスペインで何をやっていたんだ?
堂守: ああ、今はもっとふさわしい疑問について話すべきじゃない?今あなたの抱える全てがいずれ明瞭になるわ。残念だけど、その情報についてはガゼットの内部監査版を37年待たなくてはいけないの。いずれにせよ今はそのことは関係ないわ。
エージェント・ブリッグス: じゃあ、何が関係ある話題なんだ?高貴にして力ある淑女よ。
堂守: この会話に関係あることといえば、あなたが今私の兄弟の地図を使っているということよ。あなたはそれに相応しいほどには、自分の価値を示していないわ。質問よ、あなたはそれが欲しいの?
エージェント・ブリッグス: ……忌まわしいハゲワシの怪物となること以外にも、何か代償みたいなものがあるんじゃないかと思えてならないぞ?
堂守: 私たちを忌まわしいと表現することには異議があるわ、坊や。美は見ようとするものの目にこそ宿るものよ。そして個人的には、どんな場所のどんな苦難にも耐えることができるこの形態の、常あらざる美をいくらか好きになってきたわ。もっとも、間違いとも言えないわね。この形態はあなたと、あなたの仲間の人間たちの間に距離を生じさせるわ。その距離と、変態の痛みは、あなたの決断を示すために必要な代償よ。
エージェント・ブリッグス: 何のための決断だ?
堂守: 命を救い、物事を見通せるようにする。人々が虚無に失われることがないように。あなたは確かに、前任者よりも有能であることを示したわ。だけど、後者への渇望が欠けていることが私の懸念なの。
エージェント・ブリッグス: 物事を見通せるようにすることへの渇望が?
堂守: ええそうよ、その……あなたたちの用語だと何と言うんでしたっけ?記憶処置?全く、言葉のセンスがないわね。大仰だわ。ともかく、あなたが助けてきた「一般人」の記憶と彼らなりの視点を奪うものが何であれ、あなたは異議を唱えてこなかった。私たちの組織では、その手のものは最も恐ろしい状況でだけ許可されるわ。
エージェント・ブリッグス: 俺は正常性を守ると誓った。それに、そういう記憶は人々に苦痛しかもたらさない。
かすかなため息が聞こえる。
堂守: 苦しい記憶にも価値はある。もしあなたがこの会話から他に何も得られないとしても、これだけは覚えていて。それは正しく理解すれば、あなたに大きな力を与えるし、あなたと苦しんでいる人の距離を更に近くすることすらできる。
エージェント・ブリッグス: ……それはわかる。だが俺は信念を曲げられない。
堂守: そうだと思うわ……メカニトやナルカの人にも、私は同じように自分を説明しようとしたでしょうね。だけど、私があなたに敬意を抱いたことだけは知っておいて。何千年かの間に、考え直すこともあるかもしれないわ。管理官のところにあなたを帰してもいいかしら?
エージェント・ブリッグス: ああ……それが一番いいと思う。
堂守: いいわ、あなたの地図は私が安全に保管します。いい子にして、ペンを帰してね?
保安情報:
現時点で、エージェント・ブリッグスには正式な収容プロトコルは必要ないと思われる。
彼は我々の仲間だ。