件名: 母を助けて下さい
突然のご連絡ごめんなさい。
あなたなら母を助けられるかもしれないと思ってメールしました。
僕は日本に住む高校生です。
僕の家族は幸せでした、父は村の役場で働いていて、母は僕の進学を考えてパートで働いていました。
何もかも思い通りとは行きませんが、不自由のない生活をさせてもらえました。
でも、中学を卒業する間際、母が病気になったんです。
村のお医者さんは、母の病気が何なのか分からないと言いました。
大きい病院の紹介状を書いてくれて、母はその病院で色々な検査を受けました。
それでも母の病気は何なのか分かりませんでした。
その後も色んな病院で色んな検査を受けて、その度に”原因不明”が繰り返されて肩を落としました。
体中が痛むという母に、鎮痛剤を出される。根本的な治療は何もできないままに毎日が過ぎて行きました。
そして少しずつ、母の痛みも薬も強くなっていきました。
最初は気丈に振舞っていた母ですが、段々と口数も少なくなり、表情も無くなっていきました。
思えば、母はとても強い人でした。
小学校の時、僕はちょっとしたいじめに遭いました。今考えれば子供の遊びが多少行き過ぎた程度の物で、深刻な物ではありません。当時のいじめっ子たちも今では友達です。
でもその時の母は凄かったのです、僕の怪我を見た母は僕を問いただし、「いじめられた」と言うと血相を変えて「どこの誰だい!!」と言い、僕がいじめっ子を教えると、母は僕を車にのせて直ぐにその子の家に向かいました。
「あんたんちの息子が!うちの息子を怪我させたのよ!!!」
母があれほど大声を出したのを見たのは初めてでした。
結局この事件は、父が収拾をつけました。
どうやってあの事態を収めたのか、僕には全く想像がつきません。
僕が高学年になって、色んな事が少し分かるようになった頃『モンスターペアレント』という言葉をテレビで見かけるようになりました。
「モンスターペアレント……」
僕がそう呟くと、母は言いました。
「親は子供のためならモンスターになるくらいで丁度いいんだよ。あんたの代わりは誰も居ないんだから。」
それが母の「母らしさ」なのだろうと納得しました。
そんな母が、今では虚ろな目でずっとベッドに横たわっているんです。
村の中では噂が広まるのは早いもので、神頼みみたいなことも勧められました。
僕だって頼れるものは全部頼りたくて、霊力のある水だとかそういうものを買ってくれと父に頼みました。
父は優しく言いました。
「そういう奇跡とか、不思議な力があったとしても、こんな簡単には手に入らないんじゃないかな。」
僕は父の強さを感じました。父もきっと何かに縋りたいはずなのです、それでも父は冷静でした。
でももしかしたら、もしかしたら。
そんな思いで僕はインターネットに浸かりました。
この祈祷は……デマ、詐欺。
この霊験は……デマ、詐欺。
世の中には溺れる人間にワラを掴ませて金を持っていこうとする奴が沢山居るんだと認識して、悲しくなりました。
そんなある日、僕はパラウォッチという”本物”のサイトに行きつきました。
そこには不思議な現象や変な生き物の話が沢山ありました。もちろん最初は半信半疑でした。
でも僕にもできる動作で科学じゃ説明できないことが起せるやり方が載っていたんです。試したら、出来たんです。
ここならきっと何かを知っている人がいる。僕は意を決して、そこで母の話をしました。何か助ける手段はないですか、と。
その中であるユーザーが、「自分が知っている中で、可能性があるのは」と前置きしてある人物を教えてくれました。
それがあなたです。
お願いします、お金は何年かけてでも払います。だからどうか、どうか母を助けて下さい。