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   コント 口裂け女

 みなさんが今までに聞いてきた怪談や、怖いはなしは、生きている人が怖い目や、ひどい目にあった、というお話がほとんどでしょう。
 それは当然のことだと、みなさんは思うかもしれません。生きている人間だからこそ、自分とちがう、きみの悪い妖怪や幽霊が、おそろしいのだと。
 けれども、こわい思いをしているのは、ほんとうに、生きている人間だけでしょうか。怖いはなしの好きなみなさんの中には、夜の川のむこうの暗がりや、どこともつながっていないはずの電話の受話器のむこうがわから、……助けてくれえ、つらいよう、くるしいよう、いやだよう、(……だからお前も、こっちにひきずりこんでやる!)……なあんて叫びごえが聞こえてくるような、そんなおはなしを聞いたことのある人も、いるかもしれません。
 こんやは、みなさんの“いしき”を、みなさんの体から切りはなして、亡くなったあとの、ある幽霊の女のこが体験した、絶叫がたっぷりつまったおはなしを、ご紹介しましょう。

──

 その女のこは強いうらみをもって、死んでゆきました。その強い怨念が、女のこを、すがたのとてものはっきりした幽霊として、この世にとどめたのです。女のこは、「地縛霊」のように一つの場所にしかいられないようにはならず、好きなようにこの世のあらゆるところを、さまようことができるようになりました。

 女のこの霊は、町の人通りのない、くらくて、うすきみのわるい場所へやってきました。
 ぼう、と、女のこの目のまえには、白い「無地」のワンピースのようなふくを着た、とてもながい黒髪の、おとなの女のひとのようなシルエットが、たっていました。そのうしろすがたの、上半身の部分は、「うでぐみ」でもしているのか、女のこのほうからは、肩からよこのうでや手は、見えません。

「……あなた……口裂け女、ですよね」
 女のこは、とても有名なおばけのなまえを口にしました。

 口裂け女。マスクをしていて、「わたし、きれい?」ときいてくる、女性のすがたをしたおばけ。マスク以外のぶぶんは美人のように見えますが、美人だとこたえると、「これでも?」 といって、マスクをはずして、おおきく「さけた」おそろしいくちを見せてきて、「はもの」でおそいかかってくる……
 口が裂けているというのは、口(くちびる)のはしが耳まで横にのびていて、顔が半分にわれんとばかりに、グワッと口をひらくことができる、そんな大きな口ということであるとか、かおの下はんぶんが大けがをして、皮と肉がすっかりはがれて、まっ赤で血まみれになっているとか、いろいろな「説」があります。
 そんな口裂け女は、ひと昔まえのにほんで、本当に「出た」といわれて、だいブームになり、日本じゅうのこどもたちを、ふるえあがらせていたのでした。

「……わたしは、とても悪いやつらに、とても、ひどいことをされて、殺されました」
 問いかけにこたえるでもなく、ゆらゆらと背中をむけている「口裂け女」らしきすがたにむかって、女のこは、なおも語りかけます。
「……わたしは、わたしを、ひどい目にあわせたあいつらに、復しゅうがしたい」
 女のこのこえは、怒りにふるえています。
「……つよくて、おそろしい幽霊になって、あいつらに、しかえしがしたいんです。あいつらを、こわくて、わたしよりももっと、ひどい目にあわせてやるんだ!」
 だから女のこの霊は、このにほんで、いちばんくらいに有名で、きっと、ものすごくつよい力をもっているだろう「口裂け女」のもとで、つよくてこわいおばけになるために、しゅぎょうがしたくてここに来た、というわけだったのです。

「……なるほど……」
 女のこの前にいる後ろすがたは、ひくく、つぶやくようなこえでそういうと、ゆっくりと、ふりかえりました。
 ふり返ると中の横顔には、たしかに、耳のところに、マスクの「ひも」が見えています。
 そして、とうとう、女のこは、正面から、その顔をみました。

 そのしゅんかん、マスクが外れるその前から、女のこは、たいへんなショックをうけました。

 ふりかえったその目は、おおきく、ふとい「まゆ」とともに上につりあがって、かくばって、「かっ」といっぱいに見開かれていて、しぜんと「みけん」にしわが寄っていました。その目(め)つきは、こわいというよりも、とても「いかつく」て、正直、男か女か、はっきりわかりません。
 そして……そのまっくろなマスクには、白い、筆で書かれた、とても上手な字で、漢字で「忍」とかいてあったのです。
 ……さらに、そいつの大きく「そで」をまくったうでには、すさまじい筋肉がついていて、そのりょうては、ひとさしゆびを上にして、あとのゆびをむねのまえでくみあわせる、「九字印」(臨の構え)……ようするに、ニンジャのやってるやつを、やっていたのでした。

「……口裂け女じゃねえぇええ~~~~!!!!」
 女のこは力いっぱいに、声のかぎり、さけびました。
 絶叫です。
「なっ、何をいう! どこからどうみても口裂け女だろうが!」
 自称「口裂け女」は、むっとして反論しました。
「どこからどうみても違えだろ!! なんだその『忍』って!」
「うむ! よくぞ聞いてくれた! これは……忍者の“あかし”だ!」
「だからニンジャじゃねえぇええ~~!!!!!!」
 女のこはふたたび、はげしくさけびました。(絶叫です)
「えっ、えーっ!? に、ニンジャですけど??」
 いきなりの全否定。コミュニケーションの二手三手さきを行くようなその言葉に、さすがの口裂け女? も、あわてふためいてしまいました。
 とても強いうらみで幽霊になっただけあって、女のこの「つっこみ」もまた、とても辛らつで、暴力的なものでした。
「どこがニンジャだよ! 何もかも忍んでねえだろうがよ!!」
「い、いや、人気のないところにいるようにしているし、そもそも、おばけのじてんで、ふだんは人間にみえないんだから、しのんでいるようなもんだし……
 だ、だいたい、」
 だいたい、ニンジャだからって、いっつも忍んでるひつようってなくない? と、口裂け女?? (ニンジャ??) は、とてもくるしまぎれに質問をしかえしました。
「いや忍んでなきゃニンジャじゃねーだろ! 開き直ってんじゃねえよ! 全くもう、お前はもうニンジャでも口裂け女でもねーよ」
「な、なんだと! ……これでもかっ!」
 女のこからつめたいことばをうけた、口裂け女……でも、ニンジャでもなさそうな、よくわからないやつは、べつに「キレイ」とか言われてもいないのに、がばっ、とそのくろいマスクをはずしました。
 なるほど、たしかにそのおばけの口は、大きく横いっぱいに、ひらかれています。いかつい目つきとあいまって、そのすがおはちょっとワニみたいです。
「……それでもお前は口裂け女じゃねえ!!」
 これでもか、と「口裂け」の証拠を出されても、女のこはきっぱりと否定のことばをつづけました。
 ふかいうらみをもってこの世にあらわれて、ようやくたどりついた、じぶんをおそろしい幽霊にしてくれるはずだった存在が、こんな、なんだか、へんなやつだったとしったときの絶望は、どれほどのものだったのでしょう。
「ふん、弟子入りしたがっていたわりには、ごうじょうな女だ。だが、そのタフさ、悪くない。いいだろう。お前には、我がマッスルニンジャパワーを伝授させてやろう」
「いや、あの、マッスル何とかとか要らないんで、普通にこわい幽霊になれればそれでいいんですけど……」
「なあに、我が教えを聞いていくうちに、我の本当の恐ろしさと、その価値を知ってゆくことになるだろう。……ついてくるがいい!」
 口裂け?? 女??? はそう言って、女のこの霊を、強引にどこかへ案内していきました。
(……自分のことを「われ」って呼ぶとか、ぜってー口裂け女じゃねーだろ……)
 女のこはすっかりあきれて、そんなことをつぶやきながら、他に行く「あて」もないので、めのまえの、おばけ……? に、ついていくことにしました。

──

 女のこは、とっくの昔に廃業して、とりこわすお金もなく、だれからも忘れられたホテルの「跡地」につれていかれました。
「ここは我も利用している、おばけ用の無料宿泊所だ。一階にはレストランがついているぞ」
 黒い「忍」マスクの女? が、玄関で説明をしていると、
「……いらっしゃいませ」
 奥から、頭が「ろうそく」になっている、スーツ姿の男のひと? が、ぬっとあらわれました。
 頭の「ろうそく」には、黒いインクでかかれたような、やたら気力のなさそうな「顔」が浮きでており、その顔が、気力なさげに、かんげいのあいさつを言いました。
「彼はここのオーナーだ。さあ、入れ入れ。ちょうどディナーに良い時間だな。今日は気前よく、おごってやろうじゃないか」
 女のこは、玄関から奥へと入っていくよう、やたらと急かされました。
「お、おじゃまします……」
 あいさつをしながら女のこがおずおずとエントランスを進むと、
 ……パリン!
「……えっ?」
 突然、女のこのそばにあった、背のたかい台に乗った、ちいさな陶器の花びんが、その台から落ちて、音を立てて割れたではありませんか。
 すると続けざまに、「口裂け女」を名乗る黒マスクがずい、と女のこの前にしゃしゃり出てきて、
「それでは、今のプロセスを、もう一度スローモーションで見てみよう」
 などと、話し始めました。

 ついさっきの出来事を、ゆっくりした時間の中でよく見ると……
 女のこがエントランスの、例の花びんの前を通り過ぎようとした、その瞬間。
 女のこに進むように急かしていた“黒マスク”が、すさまじい速さで女のこのわき、花びんのところへ駆けよって、花びんをはたいて台から弾きとばし、瞬く間に、元の玄関の近くに戻っていったのです。
 ……そして、時間の速さが元に戻ると、花びんはすぐに床におちて、こなごなに割れたのでした。

「……見たか。これがマッスルニンジャパワーの、真髄の一つだ。おばけのなわばり、ミステリーゾーンに足をふみ入れはじめた主人公が、「ジャブ」として体験させられる、始めの怪奇現象“あるある”! それは、極限まで鍛えた筋肉と、その筋肉パワーをすべて『すばやさ』に集中させることで、実現しているのだ!」
 怪人黒マスクが、ここぞとばかりに自慢げになって女のこに説明をしていると、ろうそく頭のオーナーが、感情のない声で、口をはさんできました。
「……施設の器物損害、賠償として4万おばけ円となります」
「…………」
 黒マスクは「どや顔」で、身振り手振りを交えて説明していた姿勢のまま、氷のように固まりました。
 長いこと、沈黙が続きます。
 ようやく黒マスクは顔を動かし、ゆっくりと女のこの方を見ると、こう言いました。
「……初回授業料だ」
「おごりはどうした!」
 女のこは、あきれ半分、キレ半分で、吐きすてるようにつっこみました。

──

 晩ごはんのあと、女のこはじぶんを口裂け女と言いはるやつの、部屋のなかへとつれてこられました。
 ねどこにはベッドが二つ備えられており、当面のあいだ……女のこ用のへやのじゅんびと、女のこがそこに住む手つづきが終わるまでの間は、ルームシェアをせよ、ということでした。

「食後の運動をかねて、きょうはもう一つ、わざを伝授してやろう」
 さっき「わざ」をおひろめした時はかっこうのつかない結果におわってしまったため、その口裂……ムキムキ忍マスクは、あらためて良いところを見せつけてやろうと、やっきになっていました。
「さっきの、ものが勝手に落ちたやつ、あれは、人間の目からすれば、『ポルターガイスト』の一種だ」
 ……しかし、その真実は、おばけだというのに超能力を使わずに、すごい筋肉を使って高速移動をすることによる、トリックだったのでした。女のこは、とにかくいち早く、そのざんこくな(しょうもなさすぎる)真相を、忘れたがっていました。
「だが、さっきのは、ほんの小手調べにすぎない。物語がちょうど良い頃合いまで進んだら、『ポルターガイスト』はやがて、その本気をみせはじめるのだ……良いか、」
 ムキムキマスクはそう言うと、むんっ、と、腰のあたりに力を入れて、足をすこしひらいて、背すじをまっすぐにして、立ちました。
 ムキムキマスクはそれから、その姿勢で立ったまま、動かなくなってしまいました。
 しかし、女のこの方は、だんだんと、じぶんの足もとが不安定になってきていることに、気がつきました。
 ……やがて、あきらかに、小ぢんまりとした部屋のなかが、くらくら、ぐらぐらと、揺れはじめます。
「クックックッ……地震だと思うか? だがな、この建物の外では、何もおきていない」
 たしかに、窓のそとから見える電線なんかが揺れている気配は、ありません。
「これもまた、我がマッスルニンジャパワーによるもの……私は今、実は、超高速で貧乏ゆすりをしているのだ!」
 マッスルニンジャ何とか言うマスクのやつは、つりあがってかくばったおおきな目を、さらに、かっ、と見開いて、言いました。
「だが、これを、ただ筋肉を鍛えただけのやつがやるのならば、ただ単に、そいつの足がブルブルふるえるだけだ。あるいは地面を揺らすほどの貧乏ゆすりができても、足の動きが見えてしまって、そいつのしわざだとすぐにバレてしまう。マッスルパワーを、ニンジャの集中力で制御し! 足の振動を、床や壁へと受け流す! これで、まるでこの場にいない何者かによって、部屋じゅうが動かされているように錯覚させられる、という寸法よ」
 ズズズズ……と部屋じゅうを低くきしませながら、マッスル何とかはテンションが上がって、まだまだ説明を続けていきます。
「さらに……見よ! この技と、先ほどエントランスで見せた、高速移動によって遠くのものがさも勝手にうごいているようにみせる技を、組みあわせれば!」
 すると、ベッドのそばにある小さな電灯が、少しのあいだ浮かびあがって、しばらくして、元にもどりました。
「どうだ、この通り……部屋ぜんたいを支配する強大なゴーストが、……全方位から、物を投げつけて、人間どもを攻撃する……邪悪な空間の、完成だ!」
 マ何とかの説明のと中と中で、布団がめくられては元に戻されたり、食器棚が開いて、中からお皿やコップが出てきて、しばらく空中でゆらゆらとゆれてはまた棚の中にしまわれたり、椅子がずりずりと床をうごいたり、テレビ台からテレビが浮かび上がって、ベッドの上までくると、ゆっくりと、ぽすん、とその上に置かれたり、していました。
 それらの怪奇現象が起こるたびに、マ(略)の説明がちょっと途切れるものですから、はたから見れば、そのトリックは、もうすっかりバレバレでした。
 女のこは、そんな分かりきったしょうもないことよりも、
(……こいつ、自分の物は壊さないのかよ、みみっちいな!)
 なんていうことを思っていましたが、その時、

 ……ドゴン!!
 という大きな、どこか怒っているような、何かを強くぶつける音が、床と、となりの壁から、同時に鳴りひびきました。
 それから、すぐさま、
「……うるせえぞ!」
「静かにおし!」
「今、何時だと、思ってんだ~~!!」
 などと、壁や床のむこう側から、口々に文句のどなり声が届いてくるのでした。

「えっ、あ、ああ、すみません、すみません!!」
 騒音の犯人(犯おばけ??) は、すぐにポルターガイスト「もどき」をやめて、ほうぼうに、ひらあやまりにあやまりました。
 まわりのおばけたちは、この“マ”のおばけよりも身分が高いのでしょうか、とにかく、急に腰をたいそう低くしはじめたそのおばけの態度は、とても、情けないものでした。

 部屋のなかが落ちつきを取りもどしたあと、すっかり「しぼられた」ようすのおばけは、つぶやくように、女のこに話しかけはじめました。
「……正直さ、おばけが夜中に騒いだら叱られるって、どうなのよ? 『おばけ』ったら、こういう時間にこそ、ガンガンにさわいで、人間をおどろかして、なんぼじゃないの? どうにも、ここに住んでいるやつはおぎょうぎの良いのが多くて、調子がくるっちゃうんだよねえ」
 まわりのぎょうぎが良いんじゃなくて、お前の育ちが悪いんじゃねえの、と女のこは言ってやろうかと思いましたが、さすがにそこまで言ってしまうのはあんまりのような気もしたので、
「いや、なんつーかさ、日本のおばけって、もっと静かに怖がらせるものじゃない? でかい音とか、ハデな怪奇現象でわめきたてて人間を怖がらせようとするのは、アメリカ……ハリウッドとかの、おばけのやり方なんじゃないかな」
 などと、冷静な分析で相手を諭すような言いかたで、答えました。
「えーっ」
 マッスルおばけ(自称「口裂け女」……定期的に書かないと、本来のおはなしが何だか分からなくなってしまいますね)は、あきらかに不服そうな返事をしました。
「日本のおばけだからこうしなきゃいけない、アメリカのおばけはこういうやつだとか、わざわざ、そういう『かた』にあてはまらなきゃいけないような必要なんて、無くない? そういうー、先入観とか『レッテル』でものを考えるのってー、良くないと思いまぁーすぅ」
 マッスルおばけはなんだか下あごをつきだすような、わざとらしいしゃべり方で、女のこに反発しました。
 女のこは、
(「マウント」取れるときにマウント取ってくるスタイル、クッソうぜえ……)
 と思いましたが、確かに相手の言うことにも一理あるような気がしたので、なにも言い返しませんでした。(べつに国をどうこう言う言いかたが相手のおばけを深く傷つけたりしたわけでもないので、特にあやまりもしませんでしたが)

 日本人はどうだとか、アメリカ人だからどうとか、○○人はどう、○○国だからどうの、とか……国の他にも、地域とか民族とか、そういうところで人や物事を見て、頭ごなしの決めつけで判断したりすることは、よくないことですから、やめましょう。ね?

──

 あくる日、女のこは、広い廃屋に連れてこられました。人気はもちろん、おばけの気配もない、しょうしんしょうめいの廃きょです。
「うむ、この場所なら、心おきなく修行ができるぞ!」
 さあ特訓開始だ、と“マッスルニンジャ”何たらはやる気なさげな女のこに告げながら、天井がくずれてできた、大きな岩のちかくへ行きました。
「いつまでも我を信用しないお前に、今度こそ、マッスルニンジャ・テクニックがいかにおばけライフにとって重要か、教えてやろう」
 そうしてマッスル何たらは女のこに見えないように岩のかげにかくれると、
「……忍っ!」
 とさけびました。
 すると、岩のところから少しはなれた、何かしょかのところに、同時に、その“マ”……そろそろみなさんが忘れそうなのでまた言いますが、このおばけは(少なくとも、じぶんじしんにとっては)口裂け女のかっこうをしています……のおばけの、まるで半透明のようになったすがたが、あらわれ始めました。
「どうだ! これは、分身の術を応用して、我のすがたの、まぼろしを作っているのである! 外見だけで実体のない、まさにおばけのすがただ! この術を身につけることで、我やお前のような、実体のある妖怪でも、完全な幽霊のように実体を隠して、攻撃をよけることができるのだ! さあ、少女よ、近くにある石をひろって、我のすがたに投げつけてみせよ! その石は、みごとに我のすがたを、すりぬけるであろう!」
 女のこは投げやすい石をひろうと、ふりかぶって、ひと呼吸おいてから、おばけの「ところ」へ、なげつけました。
 ……ズガッ!
「……ウグワァァーーッ意外とめっちゃ動体視力とコントロールが凄エェェ~~っ!!」
 おばけは絶叫しながら、おでこのあたりに、かるいケガをおいました。石は高速移動するおばけの本当のからだを正確にとらえ、みごとにクリーンヒットしたのでした。
「こ、このっ、師匠にむかってガチで石をなげてくるんじゃない!」
 ……気を取りなおして……と、おばけは分身の術をしながら、説明をつづけようとします。
「……よいか、この高等な術を実現させているものこそ、昨日も見せた高速移動の技よ! そして、その高速移動を体得するためには、相応の筋肉をその身につけるいがいに、方法は無……(ゴツッ!) ウヒイィィ~っ、ひとが話している最中に何も言わずに凄いコントロールで石を当ててくるのはやめろォォ~っ!!」
 女のこはとても冷めた目つきで、またも石をクリーンヒットさせます。
「あーもう、分身の術の授業はやめやめ! この術を会得するための課題として、まいにち反復横跳びを五十回やること! ふつう、おばけは疲れないんだ、飽きさえしなければ、続けられるだろう!」
 つぎいくぞ、つぎ! と、おばけは授業のしきり直しをしようとしました。
 女のこにあんなつれない態度をとられても、このおばけは、まだまだこんな茶番を続けるつもりのようです。このおばけの方も、なかなかいい根性をしています。

「いいか、筋肉だけでなく、ニンジャの力を使いこなすためには、力のつよさだけではなく、これまでに示した『すばやさ』、そして、『しなやかさ』も、とても重要になってくるのだ。……見よ!」
 そういうと、おばけは次に、あおむけに寝ころんだようなしせいになったかと思うと、「ふんっ!」と力をこめるこえを上げて、両手両足をささえにして、胸とおなかとを、大きく上に持ち上げました。
「いくぞ、ブリッジ! ……からの! 高速、階段昇り降り!」
 おばけは「ブリッジ」したままの手足を器用にバタバタと動かし、廃墟の奥のほうにあった昇り階段を、同じ姿勢のままで駆けぬけるようにのぼったり、その後すぐに降りてきたり、をくりかえし始めました。
「これは、悪魔が人間にとりついておどかす時の、基本的な技だ! もちろん、悪魔は、どんなにヒョロヒョロの人間にとりついてもこの芸当ができるように、自分自身のからだを、しっかりと鍛えておかなくてはならない! それも、ただ闇雲に筋肉を鍛えるだけではなく、からだの各ぶぶんのストレッチも、きちんとだな……あっ、こ、コラっ、この体勢のときに、また石を振りかぶるんじゃない! いや、本当に、今ぶつけられたら、マジでやばい、あぶないから! やめろ! やめろって!!」
 ブリッジ走りを続けながら説明をするおばけにむかって、女のこは無表情でまたも石を投げつけようとしてきたものですから、おばけは大慌てです。おばけは女のこに止めるようによびかけてけん制をしながら、ブリッジ中の手足をバネのように折りまげて、次のしゅんかん、びよーん、と、飛びあがりました。
 おばけは空中でからだを半回転させると、手足をいっぱいに伸ばして……そして、天井のすみに、張りついたのです。よく見ると、伸ばした片方の手の平と、両足の先とで、それぞれ壁のいちばん上あたりを強く押しこむようにして、そのからだを支えているようでした。その支えにしている腕や脚が、ぴくぴく、ぶるぶるとふるえています。
「く、くそっ……そ、そして、これが、これもまた、おばけと……そして、ニンジャにとっての必須スキルといっても過言ではない、天井隠れの術だ! この術は、心霊映像で、出演者に気づかれず、且つ、いっしょの画面に収まるようにするのに、有効である! この術を使うために必要なのは、見てのとおり、ひたすらに筋肉の力のみだ。『すばやさ』や『しなやかさ』を鍛える必要は、それほどないかもしれないが……そんなことより、重要なのはだな……! この体勢ならば、お前が石を投げようとしてこないかどうか、正面からきっちりと見ておける、ということだ! お前な~!!」
 そう憎々しげに言いながら、おばけは、少しだけ顔に冷や汗も浮かべつつ、その大きくて角ばった目を、もっと大きく見開いて、床のうえに立っている女のこを、にらみつけました。女のこは、「じと目」で、おばけのその大きな目をにらみ返します。

 しばらくの間、無言のにらみ合いが続きました。……なんだか、気まずいかんじがしてきます。
 先に緊張にたえられなくなったおばけは、ふん、と言って、天井から飛びおりました。そして、空中で前転を一回して、しゅたっ、と、みごとに床に立って着地をしました。
「ハア、ハア。ど、どうだ。ここまでやれば、お前も少しは、マッスルニンジャパワーのありがたみを、分かったんじゃないのか」
「……ええ、何となく、わかった気がするわ」
 女のこは、静かに、ゆっくりと言いました。
「あんたが、口裂け女じゃないってことの、いちばんの証拠がね」
 ……と。
「な、何を! 今までのレクチャーの、い、一体、どこで……!」
 おばけがあたふたとしている間に、女のこはつかつかとおばけのもとへ寄ってきて、すばやく、そのマスクを、もぎ取りました。
 一応、……“いちおう”は、耳までさけている口が、あらわになります。
 しかし、女のこは、「マスク」をうばいとっておきながら、こう言ったのです。
「それは……あんたの、その目だよ。……あんた、目がでかすぎるんだ!!」
「えっ、……えっ?」
 じぶんを口裂け女と信じてうたがわないそのおばけは、まだ、女のこの言っていることが、よく分かっていないようすでした。
「あんた、口が裂けててでかいだけじゃなくて、目もやたらとでっかいんだよ、まるで永○豪先生の悪役か、主人公がブチギレた時みたいな顔をしやがって! 目も口もでかくて、よく見りゃ鼻もかなりでっかいし、それじゃあ、口がでっかいのも、まるで何の不自然もないじゃない!」
「な……っ!」
 おばけは小さな声をだして反論をしようとしましたが、すぐにはいまいち良い反論が思いうかびません。
「そう、あんたの顔のパーツ的には、むしろ口がふつうの人間みたいな大きさのほうが、バランスがわるくなるのよ! あんたの口の大きさは、あんたの顔的には、ちょうどいいサイズなのよ!」
「んなっ……あ……あ……!」
 おばけはますますたじろいで、声をふるわせていきます。
 さらに女のこは、そこに追いうちをかけていくのでした。
「だから、そもそも、あんたの口は……裂けてねえんだよ!!」
「あ……ア……っ!」
 おばけは言葉をうしないながら、何歩かあとずさると、
「ア……ア……アイデンティティ・クライシス~~!!」
 と、思いきり絶叫をして……そして、爆発したのでした。

 大爆発のあとの炎がチリチリと燃えのこって、廃墟の床をこがしてゆきます。
 女のこはそのようすを見ながら、
「……やられたら爆発するとか、やっぱり口裂け女じゃねーだろ……」
 と、ひとり、つぶやきました。

「いえ、妖怪のなかには、弱点をつかれると爆発四散するものも、いると聞きます」
 女のこのそばへ、ろうそくの頭をした宿泊所のオーナーが、ぬっとあらわれました。
「うわあ、突然びっくりした!」
「たとえば『見上げ入道』という妖怪は明確な弱点をもつことで有名ですが、かれもまた、そこを攻撃されると爆発してしまうとか」
「いや、『見上げ入道見越した』っていうのは私もしってるけど、爆発するなんてはなしは、きいたことも……」

 ……ドオン! (ギャース!!)
「おや、近くに見上げ入道さんがいたようですね」
 ろうそく頭のオーナーは、平然とした顔で言い放ちました。
「……マジで!?」

おしまい。

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執筆者: soilence
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最終更新: 12 Jan 2021 09:00
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