SCP-2213-JP改稿案③

アイテム番号: SCP-2213-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-2213-JPの収容はその性質上不可能であるとされています。SCP-2213-JPの早期発見のため、財団ウェブクローラ("四星")によってインターネット上に存在するSCP-2213-JPに関連すると推定される情報の収集を行います。SCP-2213-JPに関連すると判断された情報はカバーストーリー「センシティブな投稿」を流布したうえで検閲し、記憶改竄効果を有する画像を展開します。

SCP-2213-JP発生が確認された場合、財団エージェントが出動し、SCP-2213-JP-Aの回収と対象へのインタビューを行います。インタビュー後、対象には「ストーカー被害」のカバーストーリーを流布したうえで疑似記憶を植え付けます。

SCP-2213-JP-Aは必要数のみサイト-81NHに収容されます。必要数を超過したSCP-2213-JPは通常の処分手順に基づいて焼却処分されます。

説明: SCP-2213-JPは、日本国内に出現する、差出人不明の封筒です。SCP-2213-JPには名前等の個人を特定するに至る情報は含まれていません。SCP-2213-JPは市販の便箋であることが判明しており異常性を除き異常な点は存在していません。SCP-2213-JPの出現する対象は以下の条件を満たした人物であることが判明しています。

  • 成人済みである。
  • 独身である。

この条件が何を示しているのかは判明していません。また、対象に選出される人物は既婚歴がないにも関わらず市役所等の役所に婚約届が提出されていることが判明しています。婚約届に記載されている対象以外の人物が存在したという記録は確認されていません。SCP-2213-JPとの関連性は不明です。

SCP-2213-JP内には一枚の便箋(以下、SCP-2213-JP-A)が封入されています。SCP-2213-JP-Aには何らかのメッセージが記載されています。記載される内容は個体ごとに異なっているものの、共通して「忘れてほしい」旨が記載されていることが確認されています。SCP-2213-JPに書かれている文字の筆跡鑑定を行ったところ、一致する人物は確認できませんでした。また、SCP-2213-JPには若干の過去改変痕が存在していたことは特筆すべき点です。

SCP-2213-JPは、2013年にSNS上で時折確認されていた「謎の封筒」という都市伝説として知られていました。該当都市伝説の概要は「見知らぬ人から突如として封筒が届く」というものであったことが確認されています。都市伝説発覚後、内容の真偽を確かめる調査及び実験によって異常性が判明しています。

補遺1: 発生記録

記録-1

対象: 黒瀬 隼人氏

内容: 補遺3を参照ください。

出現地点: 東京都[編集済]1

事後対応: SCP-2213-JP-Aの回収。インタビュー後の疑似記憶植え付けとカバーストーリーの流布。

記録-14

対象: 原田 三春氏

内容: 「がんばれ」「忘れてでも生きて」に近い意味合いの文章が複数書かれていた。

出現地点: 長崎県立[編集済]高校2

事後対応: SCP-2213-JP-Aの回収、インタビュー後の疑似記憶植え付けとカバーストーリーの流布。

記録-27

対象: 木村 俊三志氏

内容: 「まだこちらに来てはダメ」「あなたは愛されている」という旨の文章。

出現地点: 青森県立[編集済]医院

事後対応: SCP-2213-JP-Aの回収、インタビュー後の疑似記憶植え付けとカバーストーリーの流布。

記録-37

対象: 斎藤 孝也氏

出現地点: 長野県[編集済]市3

内容: 「ごめんなさい」「生きて」という旨の文章。

事後対応: SCP-2213-JP-Aの回収、インタビュー後の疑似記憶植え付けとカバーストーリーの流布。

補遺2: インタビュー記録

以下のインタビュー記録は、該当都市伝説の発端となる投稿を行った黒瀬 隼人氏(34歳。日本人男性)に対するインタビュー記録です。該当書き込みは現在削除されています。

インタビュー記録 2213-JP

Record 2013/12/15

インタビュアー: エージェント・アキ(AA)

対象: 黒瀬 隼人氏(黒瀬氏)


[記録開始]


AA: では、黒瀬さん。あの封筒のことについて教えてください。

黒瀬氏: ああ、はい。わかりました。あの封筒は、丁度一か月前に家のポストに入ってたんです。最初は誰かのいたずらかと思ったんですけど、とりあえず開けてみようかなって思って。

AA: ふむふむ。

黒瀬氏: で、封筒を開けてみたら、メッセージの書かれた手紙が入ってて。何か、その手紙を見た途端にこれは俺宛てのものだなって直感的に思ったんです。

AA: 手紙には何と書かれていたのですか?

黒瀬氏: 「わたしのことは忘れて」とか、「元気ですか」って。正直、驚きましたね。誰だか知らないけど、自分をここまで気にかけてくれる人がいるなんて思いもしませんでしたから。

AA: なるほど。

黒瀬氏: あと、最近何か大切なことを忘れている気がして。

AA: 大切なこと、ですか。

黒瀬氏: はい。俺、実は封筒がポストに入れられてあった日、自殺しようとしてたんですよ。ホームセンターに言って縄と脚立買って。今になってはなんでかわからないんだけど、とても苦しくて、つらくて、生きた心地がしてなかったんです。

AA: (頷く)

黒瀬氏: 自分で言うのもあれですけど、俺あまり悩んだりとかしないタイプなんですよ。でも、そんな俺が自殺しようとするってことはそれなりに大変なことだったんだろうな、って。でも、あの手紙を見たらその大変なことを忘れた気がして。

AA: ふむふむ。

黒瀬氏: とりあえず、今は気が楽で自殺しようなんて思ってないです。だけど。

AA: だけど?

黒瀬氏: 不思議なんですよね。あの手紙を見てると、心が温かくなって、疲れとかどうでもよくなって(すすり泣く)涙が出てくるんです。それが今となってはわかりませんが、きっと、俺は忘れちゃいけないものを忘れてしまったんでしょう。


[記録終了]


終了報告書: 本インタビューの後に、疑似記憶の植え付けとカバーストーリーの適用、SCP-2213-JP-Aの回収を行ったうえで黒瀬氏は解放された。

回収されたSCP-2213-JPの内容は補遺2を参照のこと。

補遺3: 回収されたSCP-2213-JP-A

以下は、黒瀬氏より回収したSCP-2213-JP-Aの内容です。

隼人へ。

お元気ですか?私は天国でもよろしくやってます。

こんな、病弱で未来のなかった私を迎え入れてくれてありがとう。あなたと一緒に、残り少なかった人生を生きることができてうれしかったです。ディズニーに旅行に行ったり、夏祭りで一緒に花火を見たり、おいしいものを食べにドライブに行ったり。

あなたはいつでも私の心を照らしてくれたね。あなたのおかげで、残り少ない人生を悔いなく終えることができたよ。……死ぬときは、ちょっぴり怖かったけど、あなたに看取ってもらえてうれしかった。

でも、私がいなくなってからのあなたはどこか上の空で、生きている感じがしなかった。

私が死んだことを引き摺ってこうなっているのだったら、それは間違いだよ。

私はどちらにしろあなたより長く生きることはできなかったし、これはなるべくしてなったものだから。

それでも納得できないなら、私のことをどうか忘れてください。忘れられることは怖いし、消え去りたくないけど、あなたのことが心配で、大切だから。

どうか、長生きして、いい人生を歩んでね。

  黒瀬 由美4







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