SCP-001-JP
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警告: 以下のファイルは5/001-JP機密情報です


このファイルにレベル5/001-JP承認無しで行われるアクセス試行は記録され即時懲戒処分の対象となります。




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    アクセス確認

    レベル5/001-JP: 承認

    人事情報: セト・プロトコル専従研究員
    所属: サイト81圏域(日本支部)




    オブジェクトクラス: Sekhmet1

    特別収容プロトコル: 一般社会におけるSCP-001-JPの情報はSCP-001-JPの観測に繋がりうる霊素子技術と共に完全に秘匿されます。SCP-001-JPの観測には霊障部門による霊知覚キャリア運用と霊体工学部門による霊因子追跡法が用いられます。これらの規定された観測法以外の手法によるSCP-001-JPへの人為的接続は急激な形而下流入によって引き起こされる副次的影響のため同様に禁止されます。

    SCP-001-JPの氾濫によって引き起こされるCE-クラス: 破滅的連鎖爆発シナリオは不可避であるとの結論に至っています。現時点でセト・プロトコルは前段階にあります。SCP-001-JP内の霊素動態を記録し、SCP-001-JPの形而上霊素許容量を観測し続けてください。1年以内に許容量が限界に達すると判断された場合、セト・プロトコルに則り第一段階へと移行してください。

    説明: SCP-001-JPはクラス未定義の形而上化霊体によって満たされた広大かつ独立した形而上空間です。SCP-001-JPを基底現実を含む形而下領域から観測する事は不可能であり、クラスⅣ霊知覚キャリア2の脳神経活動を介した観測方法が有効な観測手段として確立しています。

    M2

    高出力放射線照射により即死させた人体内の霊素動態。
    細胞の活動停止と共にSCP-001-JPへと転移しており、霊素が消滅しているように観察される。
    (擬似エリファス-シュレンク型マーキング霊因子の付与、霊子投射機によって可視化)

    細胞が生体活動を停止した際、細胞内に含有される全ての霊体は霊素に分解されながら徐々にSCP-001-JPへと転移します。この転移は生体内の細胞更新に伴って絶え間なく行われており、多細胞生物が死を迎えた場合においても活動を停止した細胞から順次転移することが確認されています。この転移は直径0.03nm~0.1nm程度の極めて微細なクラスΓ"アンチエイドス3/ヒュレー4・エントリー"ワームホール5理論に基づく時空間接続ワームホールを霊素が通過することで引き起こされており、SCP-001-JPへと転移し形而上化した霊素を形而下から物質的に観測することは不可能です。この特性により、形而下から霊素のSCP-001-JPへの転移を観測した際は徐々に消滅しているように観測されます。ワームホールは細胞の生体活動停止直後から細胞内に出現しはじめ、細胞内の霊素が完全に転移するまで絶え間なく出現と消失を繰り返します。一つのワームホールの出現から消失に要する時間は約0.004秒程度であると見積もられています。偶発的に僅かな細胞内物質がワームホールに取り込まれる事が確認されています。生命活動を終えた肉体ではこうした細胞内物質の転移が全身の細胞で発生し、最終的には生体よりも僅かに質量が減少することが確認されています。

    補遺001-JP.01: 発見経緯
    Duncan MacDougall氏の報告/霊障部門による初期研究

    Duncan%20MacDougall

    ダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall)氏(1911年撮影)

    SCP-001-JPは1907年にアメリカ合衆国マサチューセッツ州の医師であるダンカン・マクドゥーガル氏が行った魂の重量計測実験によって"死者からの魂の離脱"として報告されました。マクドゥーガル氏は1901年から研究を開始し、6名のヒト(結核患者4名、糖尿病患者1名、症状不明の患者1名)を被検者とした実験でヒトの死後に不可解な体重減少が確認されることを発見しました。マクドゥーガル氏は実験の結果を発表するにあたり、ヒトの魂の重量は3/4 oz(21g)であると発表しました。マクドゥーガル氏はこれを魂が死体から離れたことによる体重減少であると考えましたが、実際は肉体内部の霊素がSCP-001-JPへと転移する際に生じる時空間ワームホールに細胞内物質が僅かに取り込まれることで生じる体重減少でした。

    なおこの他に15匹の犬を対象に比較実験が行われましたが、マクドゥーガル氏は犬には体重減少が見られなかったとしています。当時の記録やマクドゥーガル氏の未発表文書等を調査した結果、同氏が「人間にのみ魂が存在する」という前提で実験を行っていたことが確認されており、その正当性誇示のために犬における体重減少の結果を改竄した可能性があると考えられています。また、マクドゥーガル氏は犬を対象とした実験に際して死に瀕した犬を確保できなかったことから健康的な犬を殺害することで実験を行っています。この実験はヒトを対象とした実験とは条件が異なっており、単なる計測の不手際である可能性も高いとされます。

    マクドゥーガル氏の報告は財団の関心を惹き、霊障部門を中心として本格的な研究が開始されました。なお財団が実施した諸々の情報工作により、一般社会においては実験の不確実さや標本数の少なさを理由としてこの実験の科学的信憑性に否定されました。

    研究初期の段階では霊体の消失についての複数の仮説が立てられました。これらの仮説の中には霊体が不明な領域へと転移している可能性を提唱しているものも含まれていましたが、1908年当時は精密な霊観測技術が未確立であったために検証出来ませんでした。研究においては技術的難点から、霊体の消失検証に際しては当時研究が進行中であった未定義の霊知覚キャリアが多数動員されました。1914年に実施された実験において一部の霊知覚キャリアが霊体の他空間への移動を知覚したことをきっかけとし、霊体が不明な領域へと転移している可能性が示されました。

    霊体工学部門によるSCP-001-JPの発見
    霊障部門による霊体消失現象の研究は1914年以降停滞していましたが、1984年に霊体工学部門が霊素理論を採用した擬似エリファス-シュレンク型マーキング霊因子6を開発したことによって霊知覚キャリアの脳神経活動を介して転移した霊素、及び転移先の霊素分布を観測する技術が確立しました。この技術により1985年2月17日に初めて転移後の霊素動態が観測されました。その後に行われた複数の観測、検証実験の結果からSCP-001-JPの存在が形而上学的な領域であると実証されました。

    補遺001-JP.02: 実験1989/01/09
    "アンチエイドス/ヒュレー・エントリー"ワームホール理論に基づくワームホールは霊素の通過時に形而下存在の形而上存在化を引き起こす作用を持つため、理論上はワームホールを通じて形而上存在に形相を付与させることで形而下存在化させ基底現実に取り出すことが可能です。こうした高等形而上学的研究の一環として、SCP-001-JPへと転移した霊素を形而下へと取り出すことを目的とした実験が1989年1月9日にアメリカ合衆国ネバダ州の地下研究エリア-66で行われました。

    この実験ではクラスIV霊知覚キャリアの脳神経活動を介したSCP-001-JPへの意識アクセスを応用し、ワームホールへの逆エントリーが実行されました。実験の結果、SCP-001-JPから形而上化された霊素を形而下に取り出すことに成功しました。しかしクラスIV霊知覚キャリアの意識活動が霊素の再形而下化を記録した瞬間、対象を中心とした半径80m圏内の領域に強力なガンマ線の放射を伴う爆発が引き起こされました。これにより動員されていたクラスIV霊知覚キャリアは肉体を瞬間的に燃焼され完全に消滅。爆心地から半径9m圏内に存在した全ての生命体は熱線によって即死、それ以外の半径80m圏内までに存在した生命体は爆心地に近いほど激しい火傷を負い死亡するか染色体に深刻な被害を被りました。この実験による最終的な死者は17名であり、重軽傷者は33名でした。

    この爆発現象は形而上下の転換に際して生じた余剰エネルギーによるバックラッシュ(跳ね返り)であると推測されています。これらのバックラッシュを回避する試みが研究されていますが、現在まで回避する手段は確立していません。この実験以降は同エリアに構築された耐爆耐衝撃耐放射線実験室での実験が行われました。しかし、実施された27回の実験全てでクラスIV霊知覚キャリアがバックラッシュによって死亡しており、倫理委員会によって倫理的及び人的資源の問題が指摘されました。これらの実験はバックラッシュの回避が確立するまで凍結されることとなりました。

    補遺001-JP.03: SCP-001-JPによるCE-クラス: 破滅的連鎖爆発シナリオ

    分布図

    霊因子追跡法によって得られた霊素動態を元に描画されたSCP-001-JPの形而下構造(赤部分は擬似エリファス-シュレンク型マーキング霊因子の反応が確認された領域)

    SCP-001-JPでの霊素の動態記録を元にSCP-001-JPの空間を形而下構造として構図化したところ、SCP-001-JPは二次元方向への広がりを持ち同心円状に展開されている有限の空間であるとの結論に至りました。また過去20年間で得られた霊素動態の観測記録を比較検証したことにより、SCP-001-JPの空間端部に達した形而上霊素にはそれまでの流動的な動きが見られなくなることが判明しました。これは、SCP-001-JP内の霊素量が多くなればなるほどSCP-001-JPの空間が狭まっていくことを示しています。形而上化した存在が再形而下化する現象は自然界においては発生しないため、SCP-001-JP内に移動する形而上霊素はは減少することなく増加し続けていると考えられています。20年間で得られた観測データを元に算出した結果、SCP-001-JP内で霊素の流動が起こっている領域は年々狭まっており、霊素の動態が完全に停止した領域が徐々に広がっています。試算では2100年頃までにSCP-001-JPの形而上霊素の流動が可能な領域は消滅すると考えられています。このような状況にSCP-001-JPが陥り転移してくる形而上霊素の許容量を超過した場合、SCP-001-JPから溢れ出した形而上霊素が"アンチエイドス/ヒュレー・エントリー"ワームホール理論に基づくワームホールを介して基底現実に再形而下化する可能性があります。この際、再形而下化によるバックラッシュとしてガンマ線を伴う爆発か発生すると考えられます。また、SCP-001-JPの許容量が限界に達することは即ち基底現実に存在する全有機生命の細胞において霊素転移時に同様のバックラッシュが引き起こされることを示します。ガンマ線の放射と爆発により周囲の生命体(もしくは細胞組織)が巻き込まれ、生命活動の停止と共に同様のプロセスが繰り返されます。これにより"CE-クラス:破滅的連鎖爆発シナリオ"が引き起こされ、ガンマ線を伴う爆発は霊素を保有する全有機生命が絶滅するまで継続すると見積もられています。

    2100年頃に到来すると推測されているSCP-001-JPの氾濫によるCE-クラス:破滅的連鎖爆発シナリオを回避することを目的とした"セト・プロトコル"が運用されています。

    セト・プロトコル


    概要

    財団が保有する超常科学技術、奇跡論技術、収容オブジェクト群を用いて準ΩK-クラス("死の終焉")シナリオを人工的に引き起こすことで死そのものを排除、SCP-001-JPへの霊素の転移を停止させます。

    ΩK-クラス("死の終焉")シナリオ概要

    K-クラス発生に関する財団データベースより抜粋


    シナリオ呼称: ΩK-クラス

    発生可能性: ほぼありえない

    危険度: 生存可能、ただし人類文明のある程度の再構成が必要

    説明: ΩK-クラス("死の終焉")シナリオは、その他の生物学的な変化(例えば、老化の停止や強制的な不妊)なしにすべての生命が強制的に不死となる状況を指します。このシナリオを想定した全てのプロトコルは壊れた虚構を回避するための段階を想定しています。このシナリオは財団が現在の組織構成と部局を維持することも想定しています。

    特性:

    1. 生物数コントロール: 昆虫の数と生死レートのため、これはシナリオ開始から24時間以内、昆虫の数がWK-クラスシナリオの閾値に達する前に開始されなくてはなりません。この宣言のあと、長期的解決策が他の組織のために開発されなくてはなりません。

    2. ベールコントロール: この状況下では全人類がアノマリーに暴露されることになるため、他のアノマリーに人類の注意が向くことを防止することは重要です。正常性はΩK-クラスシナリオの影響を含むように再定義され、収容は続行されなくてはなりません。新発見の不死性を捏造された研究結果として説明するカバーストーリーを流布する欺瞞情報キャンペーンが行われなくてはなりません。

    3. 終局状態の代替の研究: もし真の死が達成不可能なら、代替方法が倫理的な理由から開発されなくてはなりません。人類を衰えていく生物的機能のために永遠に苦しむままにすることは許容できないと考えられます。

    目的

    死そのものを排除することにより"アンチエイドス/ヒュレー・エントリー"ワームホール理論に基づくワームホールの自然生成を停止させ、SCP-001-JPへの霊素転移を防止します。また、プロトコル発動前にバックラッシュによるガンマ線を伴う爆発で引き起こされた場合でも不死性の付与によってCE-クラス:破滅的連鎖爆発シナリオの完全発生、有機生命の完全絶滅の回避が試みられます。

    経過

    前段階
    SCP-001-JP内の霊素動態を記録し、SCP-001-JPの形而上霊素許容量を観測し続ける。1年以内に許容量が限界に達すると判断された場合、O5評議会による承認に基づいてセト・プロトコルを発動する。

    第一段階
    全世界(可能であれば基底現実全域が望ましい)において準ΩK-クラス("死の終焉")シナリオを人工的に引き起こす。第一段階においては超常科学技術、奇跡論技術、収容オブジェクト群の無制限使用が許可される。

    第二段階
    準ΩK-クラスシナリオを完全発動。ΩK-クラス対応プロトコルに則り、24時間以内に生物数コントロールの長期的解決策を開発する。収容体制を維持するために新発見の不死性を捏造された研究結果として説明するカバーストーリーを流布する欺瞞情報キャンペーンが行われる。(ベールコントロール)また準ΩK-クラスシナリオの発動に伴う社会的混乱が予想されるため、それら混乱を沈静化させる措置が実行される。混乱鎮圧に際しては化合物ENUI-57の全世界への大量散布による虚偽情報刷り込みも許可される。

    第三段階
    SCP-001-JPへのアプローチが許可される。またクラスIV霊知覚キャリアが不足することが想定されるため、一般人からのクラスIV霊知覚キャリアの徴発も場合によっては認可される。

    第四段階
    SCP-001-JPに関連する問題を解決する。

    補遺001-JP.04: 声明

    O5-1による声明


    SCP-001-JPの形而上霊素が氾濫した場合、繰り返される連鎖的なバックラッシュによって二度と生命は活動できなくなるだろう。全ての生命が完全に絶滅した後に残されるのは生と死の垣根を超えた超常存在達である。財団や連合が立ち消えた後、彼らを管理するものはもはや存在しない。全てが無に帰し新たな生命が生まれたとしても、その生命活動が尽きる時に再びバックラッシュが引き起こされてしまう。その生命が有機生命である限り基底現実で繁栄することは無い。

    だがセト・プロトコルでSCP-001-JPの氾濫を回避する事ができるとは断定されていない。むしろ現時点の見立ててではSCP-001-JPの問題を解消する技術が発達しうるとは想定されていない。セト・プロトコルに解決策は含まれておらず、"死"を排除することでCE-クラスシナリオを先延ばしにするというプロトコルに過ぎないのである。終焉シナリオを回避するために別の終焉シナリオを引き起こすというこのプロトコルはもはや財団の理念から逸脱しているとすら言える。

    しかし、我々はこのプロトコルに縋る。例え人類から死という救済を取り上げることとなっても、我々は最後まで諦めるわけにはいかない。

    それが避けられぬ滅びであったとしても。

    それが生命に訪れる絶対の摂理だとしても。

    それが救いを絶つこととなったとしても。

    それが無駄な足掻きだとしても。

    それが死を殺すこととなったとしても。

    それが人類を終わりなき苦悩に導くことだとしても。

    それが人類を暗闇に閉じ込めることになったとしても。

    人類は恐怖から逃げ隠れていた時代に逆戻りしてはならない。他に我々を守るものはいない、我々自身が立ち上がらなければならないのだ。

    人類が健全で正常な世界で生きていけるように、例え光の中で暮らす人類でも、我々と同じ暗闇の中に引き摺り混み、それと戦わせ、封じ込めさせ、人々の世界を取り戻さなければならない。

    我々は挑み続けねばならない。
    我々は死を殺さねばならない

    確保、収容、保護。
    O5-1




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