トラッシュファイアについての持論
- ポイント: トラッシュファイアは暗く冷たく混沌とした宇宙において、現状を改善しようと足掻く者たちを描きます。これがトラッシュファイアの最重要事項であり、ほぼあらゆる作品に通底している点です。
- ワールドビルディング: トラッシュファイアの設定は比較的固定されています。もちろん、各著者や各作品ごとに細かな差異が出るかもしれませんが、基本的には同じ世界を共有していると見なして問題ありません。同じ舞台やキャラクターがくり返し登場することも割とあるので、ある意味では宇宙全体を舞台にした群像劇とも見なせるかもしれません。
- ストーリー: いくつかの内部シリーズはありますが、トラッシュファイア自体には特定のストーリーはありません。ただし、UEの作品には”旧き神々”を背景に据えたものが多く、ハブ成立後はこの傾向に拍車がかかっています。そのため、トラッシュファイア全体に共通しているわけではありませんが、多くの作品には人類 VS 旧き神々の構図が確認できますし、そこを中心に目に見える”繫がり”や”流れ”が生まれつつあります。
- 作風: トラッシュファイアはユダヤ系のフィルターを通した、現代パンク思想の顕現です。このカノンの砲手であるUraniumEmpireは (思い違いでなければ) ユダヤ系トランスジェンダーであり、彼女の思想的傾向は作品にも受け継がれています。
- メタ視点: トラッシュファイアは”メジャーカノン”から独立した空間を構築する試みです。サイトで一般的でありながらUE氏が好ましくないと感じている設定を除外し、かつ一般的でなく独自色の強い氏のヘッドカノンを効果的に活躍させられる場としてトラッシュファイアは生まれました。ENではRandominiの"Acidverse"やDjoricの”Verse of an Endless Song"のように、多数の自前の作品をもとに一つの巨大な”個人カノン”が作成されることがありますが、トラッシュファイアはUEのそれをサイトコミュニティ全体が自由に参加できるような形で明け渡したというのが近いでしょう。
要するに、UraniumEmpireが作り上げた世界観を、ある程度体系付けて1つのカノンとして皆で使える形にした、というのがトラッシュファイアだと私は考えています。
より粗雑なメモ書きたち
はじめに
このコメントは初訳者であるDr_Kasugai個人のものであり、メインライターであるUraniumEmpireの認識からはズレている可能性があります。あまり信頼しすぎないようにしてください。
カノンの中核事項
- トラッシュファイアでは、暗く冷たく混沌とした世界で、現状をより良くしようと足掻く者たちが描かれます。
- このカノンには3つの核となるテーマがあります。
- 1. この世界は暗く冷たく混沌とした世界でありながら、いたるところで秩序を作り出す戦いがおこっています。そして固定された秩序がない以上、あなたの在り方を決めるのはあなた自身となります。
- 2. 善悪は比較的曖昧です。誰もが自らの正しさを信じて、物事が上手く行くことを願っています。
- 3. 物事はそう上手く行きません。
- しかし、この不合理で無秩序な世界においても、微かな希望の炎が燃えています。極めて困難ではありますが、世界が全く良くならないというわけでもないのです。だからこそ、彼らは抗い続けます。
- ”重要団体”、”重要地域”、”連続性”タブの内容も要確認。特に大事そうなことをいくつか:
- 旧き神々: このカノンのバックに見え隠れする存在たち。いわゆる邪神。うちダエーバイト帝国に崇拝されていた4柱が頻出。
- 弱い財団: トラッシュファイアの財団は資金と政治の枷に足を取られています。世界を堂々と支配することはできません。
カノンの性質・傾向
- トラッシュファイアは他のカノンと比べて中核要素が曖昧ですが、テーマや世界観には確かな一貫性を確認できます。
- このカノンは、本質的にはメインライターであるUraniumEmpire氏による、”メインカノン”から離れた独自空間を作りたいという思いの現れです。
- ENにはRandominiの"Acidverse"やDjoricの"Verse of an Endless Song"といった、”個人カノン”とも言える様な大型シリーズが存在しますが、トラッシュファイアはUEのそれを他著者にも自由に使えるように、ある程度体系づけてサイトコミュニティへ公開したような形が近いと思われます。
- よって、トラッシュファイアとUEのヘッドカノンは密接な関係にあります。トラッシュファイアには、その1側面として、氏の”メインカノン”から離れたヘッドカノンをより効果的に機能させるための役割があるともいえるかもしれません。
- トラッシュファイアの作品は、その根幹テーマを維持している限りはかなり多様な在り方を認められていますし、事実としてもそうです。例えばとあるバンドの興亡から、極めて幸運な独裁者、サイボーグの悲劇まで、扱う事項・舞台・年代はかなり幅広くとれます。
- しかし、UEの作品群にはバックグラウンドとして旧き神々を据えている場合が多く、特にハブの成立以降はその方向性がより強まってきています。
世界観に関する補足 (特にハブに関して):
- Trashfireは出来の悪いもの・ゴチャついたものを指して使われるスラング的な単語 (らしい) です。
- このカノンの設定はサイトコミュニティ全体の多様な情報を吸収し、独自の形に再構築することによって成り立っています。ハブにも色々詰まっているので、よければ探してみてください。
- 途中に何度か登場する”ディセンサス”は、SCP-1348等に登場する現生人類以前の支配種族です。
- 緋色の王が水棲だとされているのは、このカノン内における王がクジラやイカといった水棲生物に関連づけられているためです。
- ”菫色の女王 / 悪精の女王”はSCP-001であり、サイト-56に収容されていると推測されます。UE氏のフォーラムポストによれば、SCP-2677は本来この存在を収容するためのシステムだったようです (記事中に登場するSCP-████がこれに該当します)。なお同著者の著者ページでは、菫色の女王は”パタフィジクス的な寄生虫”だとされています。
- なお、このカノンでは複数のSCP-001が存在するため、緋色の王も同時にSCP-001であるとされます。
- ”蟲形の穴を空けるもの / 蟲王”はSCP-4947だと思われます。
- ”緑の魔道士 / 白の狼”は同一存在のようです。
- ”聖約者”は旧神4柱に対応する、それぞれの子供のような存在です。彼らはこのカノンの背後で暗躍していたり、いなかったりします。うち一人は”スペードのジャック”です。
- ”第四帝国”と”異常利用特殊部隊”はDE支部の要注意団体 (を再解釈したもの) です。なお、DE側では基本的にオブスクラとの関連はないとされることがほとんどです。
参考文献:
- 外部サンドボックス: UE Canon - UE氏のヘッドカノンに基づく年表。
- 外部サンドボックス: Trashfire Primer - 書きかけで放置されているトラッシュファイアの初心者向けガイド。執筆・読解するうえでの参考になるかと思います。
- フォーラムポスト: 翻訳記 - CN版翻訳者であるSimon Arran氏による翻訳工程の振り返りと、カノンの噛み砕いた解説。こちらも執筆・読解するうえでの参考になるかと思います。
- Uraniumempire's Personnel File - 著者ページ。一部のキャラクターや神格の設定が載っています。
- Secure Facilities Locations - サイト-56についての簡単な情報が掲載されています。該当部分は現状未翻訳ですが、近いうちにJP版にも反映する予定です。
- Personnel And Character Dossier - 本カノンの主要人物の一人であるベロニカ・フィッツロイの情報が (ごくわずかにですが) 掲載されています。
- いくつかのフォーラムポスト。
Trashfire Primerの翻訳
未完のエッセイですが、参考として役立ちます。ただし、これが書かれたのは1年ほど前のことであり、今とは少し情勢が異なります。
トラッシュファイアの紹介
by uranium empire
やあ、席についてください。ホームスタック カバラ、マレイ・ブクチン、レーガノミクス、それからトラッシュファイアの話をしましょう。
トラッシュファイアって?
トラッシュファイアはSCPのカノンであり、その根幹は……あー、これといった物語が根幹にあるわけではありません1。時系列に関して言えば、トラッシュファイアは最初の多元宇宙の創造 (そしてその後の破壊) から、はるばる (執筆時点では) 紀元2023年 (そしていくつかのCN記事ではもっと先にまで2!) 広がっています。トラッシュファイアの話の大半は比較的自己完結的で、腐敗したナチスの固有兵器から途方もなく幸運なキューバの指導者まであらゆるものを描きます。
カノンに関して言えばその広がりはかなり広範ですが、いくつかのキーとなる特徴が全体を繋げています。以下に要約しましょう:
- 世界の一貫性: トラッシュファイアは、本質的にはルールのある宇宙です。これらのルールは作中の住民たちから見れば不合理で不可解なものかもしれませんが、ある話が別の話と矛盾しないというのはご安心いただける点ですね。
- 弱い財団: トラッシュファイアの財団は資金と政治の枷に足を取られています。
- 醜い派閥争い: 概して、トラッシュファイアでは派閥により組織された宇宙に焦点を当てています。彼らに選択の余地はありません──一匹狼は宇宙の恐ろしく無情な虚空に喰らわれてしまいます。
- 資本主義 vs 尊厳: トラッシュファイアの中心にあるのはヒエラルキー、金や伝統といった無意味な抽象概念の名の下に人間性を破壊するシステムへの批判です。特に、レーガン、サッチャー、ピノチェトといった人間が具象化したような新自由主義に対して批判的です。
- ユダヤ教: 多元宇宙の形而上学的構成からニューヨークの犯罪ファミリー3にいたるまで、トラッシュファイアは主にユダヤ教の視点を通じて定義されます。
トラッシュファイアの歴史
トラッシュファイアの物語は、主に以下3つの時代を舞台とします。
- ”神話”時代。中期旧石器時代から紀元前800年が対象。神学の大部分はこの時代に確立されます。
- ”超自然スリラー”時代。20世紀が対象。派閥の大部分は、他派閥の合間に足場を見つけます。
- ”新たな奇妙”時代。デジタル時代の不思議が既存の体系を揺るがします。
我々の話は、生と死と革新の物語である"Qlippoth and Sefiros" (クリフォトとセフィロス) から始まります。これは共通のテーマを用意し、多元宇宙の枠組みを敷く、ある種のミニチュアのトラッシュファイアだと考えることができます。
本質的に、皆さんご存知のトラッシュファイアは、物質の力 (クリフォト) とエネルギーの力 (セフィロス) の戦争による多元宇宙の死から始まって、その後の古き灰から新たな多元宇宙が芽吹きます。しかし新たな多元宇宙の中に閉じ込められたものたちがいます──「旧き神々」です。彼らは広大で理解し難く、議論の余地がある知性と議論の余地がない力を持った実体です。
そこから現在の数万年前の地球へと話は進みます。先史時代において、人類と人類に近い生命は、不死なるものや旧き神々との相互寄生の関係によって成り立っています。このことはダエーバイト帝国と特にその4神で最も具象化されています。ダエーワたちの滅亡後も、神秘主義はほぼこの4神に直接的・間接的に対抗する形で成り立っています。
数千年先へ、紀元1940年頃まで一気に飛びます。
財団は内戦、酷い地政、そして全米超自然収容イニシアチブの敵対に張り詰めて弱り果てています──もう政権交代の頃合だというのに、ASCIもご立派なことでしょう?
もちろん、それらが永久に存在することはありません。今から21世紀の間、絶え間なく積み上げられていく宇宙の問題は、財団が資金をそれほど気にしなくてよい立場になるまで、必要な抜け目なさによって抑えられています。それでも宇宙の問題が問題であることには変わりなく、一部は時とともに悪化する一方です。好例として、ダエーバイトの滅亡から4千年後も、財団はまだ彼らとその神々が生み出した混沌を片付けている最中です。(例: 4886)
財団がある程度の安定性を見出したのは90年代後半あたりになってからであり、それも一連の秘匿活動、取引、外交を通じてようやく得たものでした。この新たに見出した安定性をもって、トラッシュファイアの焦点はその周りの組織たちへと移ります。
トラッシュファイアの政治
(おしまい)
CN版翻訳者Simonによる解説
CN版ハブページのディスカッション欄に書かれている、翻訳者Simon Aran氏の解説コメント (抜粋) です。ただし、私は中国語の知識がほとんどないので、英語から以上に訳文がぎこちないかもしれません。
メインサイトの大物著者であるUraniumEmpireが作成したカノン「トラッシュファイア」は、ハブ中でも言っているように、種々の伝統的な財団の設定群に対するある種の”返答”です。トラッシュファイアは他のどの設定にも依拠することなく、他の文書からも独立したこれ一つで存在しています。ですので、トラッシュファイアはやや反一元論的で、反伝統主義的な「離経叛道」と言えます。この設定下の世界自体は、あらゆる無秩序・無力的な状況に満ちています。各団体は皆自分が「正しい」と考え、この世界を「修正」しようとしています。多元宇宙の衆生は裂け目の中で存続を求めて戦っています。彼らは異常の跋扈する世界にいるだけでなく、絶えず組織間の対立に巻き込まれています。遠方には名状しがたき旧き神々の冷たな視線があり、近方には日和見主義団体や旧時代の遺物が機会を狙って蠢いており……
明らかに、この世界観においては、財団であろうとGoIであろうと、人類市民だろうと非人類市民だろうと、その生存環境は大部分のカノンよりも困難です。しかし、この暗く冷たく混沌とした宇宙にも希望が全くないわけではありません。世界の無数の隅々に、ごく微かな炎を灯す生者がいつだって存在しています。これらの炎の燃料が廃棄物の残りであっても彼ら自身であろうとも、寒い冬のなかにつかの間の明かりと暖かさを生み出せるのであれば──「炎をこれまでより少しでも明るくする以上に喜ばしいことがあるでしょうか?」