パート1

Finally it works

… in iPhone!

UPDATE 1.08: 2018/11/21
UPDATE 1.07: 2018/11/03
UPDATE 1.06: 2018/10/30
UPDATE 1.05: 2018/9/29
UPDATE 1.04: 2018/9/16
UPDATE 1.03: 2018/9/06
UPDATE 1.02: 2018/9/05
UPDATE 1.01: 2018/8/25


STANDALONE BUTTONS

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 廊下を覆い尽くす大量の血液の表面に、頬に大きく返り血を浴びた男の顔が映っている。濁った鏡面が原因なのかその表情はてんで投影されないままであり、当の本人も自分が今どんな顔をしているのかなんてさっぱり解っていない。少なくとも血のプールの向こう側で立ち尽くす少女が笑っていないことだけは確かだった。

「誰?」

 少女の掠れた声が、プールに吸い込まれていた男の意識を肉体へと引きずり戻す。音源は男の想像より近い位置に立っていた。先程照明を潰したせいでその容姿はあまりはっきりと現れないままである。玄関の向こう側から車の走行音が静かに響いてくる。──男は、右手に握り締めていたネイルハンマーをゆっくりと振り上げた。肘の付け根から指先にかけて、みるみるうちに血管が浮き出てくるが──

「待って。」

 突如背後から割って入ってきた別の少女の声が、男の挙動を完全に制止させた。若干の震えを帯びた声の主に、男は率直に問いかける。

「……理由は?」
「……その子は──」
「……」
「任務内容はソイツの殺害だけだった。その子は関係無い。」
「仕事を目撃された。処理する。」
「生かしても殺しても通報はされる。無駄な殺しは避けるべきだよ。」

 数秒の沈黙の後、男は小さい溜め息を漏らしながらネイルハンマーを腰部のホルスターに収納し、少女に背中を向けた。

「警察を呼べ。」

 一言そう言い放ち、もう一人の声の主と共に玄関を目指す。

「ごめん。カバーしきれなかった。」
「問題無い。刃を逸らしてくれただけでも助かった。止血はここを出てからやろう。……無茶しやがって。」
「わっ、ここで抜いちゃまずいよ。血が噴き出ちゃうって。」

 男の背中に深々と突き刺さっていた包丁がゴトンと音を立てて床に落ちる。二つの人影はゆっくりとドアを押しのけ、横浜市街地の夜の闇へと溶けていった。

 灯りのない一軒家の中には、一つの死体と、一人の少女だけが取り残されていた。


「──で、何だ。ガキを逃がしてここへ帰ってきたと。」
「ああ。」
「……やってくれたなぁレンジよ。……ラムダ、お前もだ。」

 “櫺”と呼ばれた男は、ネイルハンマーにこべりついた血液を拭き取りながら、ゆっくりと声の主を見上げる。中肉中背の、およそ櫺と同じような体格の男が立っていた。その表情は終始深く、ひたすら固い。──蛇の手が一派、“百歩蛇の手”首領にして日本方面隊の問題児、ヅェネラル・プレシオル・リノプタルその人である。

「ガキにはなんと?」
「『警察を呼べ』、その一言だけを伝えた。」
「どっちの判断でそうした?」
「……あの、これはすべて私の判断による行動です、ヅェネラル。」

 先程“ラムダ”と呼ばれた外見年齢15歳程度の少女は、弱々しく右手を挙げながら、目を逸らしつつ会話に参入する。ヅェネラルは眉間の皺を一層深くしながら静かに口を開いた。

「……百歩蛇の手ヅェネラル隊最高戦力が聞いて呆れるな。“双頭”やら“白服狩り”やらと国内外から注目されていた、今や蛇の手最強とも名高い二人組が──」
「その二人組が、昨夜あの焚書者……蛇殺しの頭を始末しました。あなたの指示通りに、です。」
「指令の内容に関する不備は認めるが、うちの隊には『目撃者は例外を除き始末する』という揺るがない掟があったな。」
「……」
「そうだよな櫺。」
「ああ。」

 ラムダの沈黙をバトンタッチの合図と受け止め、レンジが会話を引き継ぐ。

「ヅェネラル、一つ言っておくが連中は追跡用のGPSや各種計測機器、通報機器を体中に埋め込まれている。俺があの少女を殺していようといなかろうと数分後に足が着くのは確定していた。それが俺たちの──」
「理由になってねえな。その取り逃したガキに仕事の情報をリークされるかされないかで今後の俺たちの存続は大きく揺らぐ。現にお前もそれを防ぐために大量に殺してきたよな。」
「……」
「絶賛俺たちの安全はグラグラ揺らいでいる最中だ。宿題忘れたガキみたいな言い訳しか出せねえならこれ以上の議論も無駄と判断する。しばらく席を外すがここから動くことは禁ずる。」
「了解した。」

 ヅェネラルはゆっくりと立ち上がり、部屋を後にした。完全にドアの前から消えたことを確認した後、ラムダが恐る恐る口を開く。

「……予測通りだったね、レンジ。」


「──いいんじゃないかねぇ?“追放処分”で。元々アンタの手には収まらなかったって事だと思うぜ。」

 ヅェネラル隊構成員の一人、パヴェル・バシレフスキーは、薄暗くやたら広い、古びた会議室の片隅で昼酒を煽りながらゴロゴロと寝転がっていた。元々真面目に会議に参加するような性格を欠片も持たない彼も、今回の議題には流石に興味を持ったのか、用意された椅子そっちのけではあるものの一応は円卓を囲んでいる。

「えと……パヴェルさん、とりあえず午前十時からの飲酒はやめましょうよ……」

 会議開始10分前から席の一つに鎮座していた学生服の少年が迷惑そうに口を開く。──ヅェネラル隊最年少の構成員、雛山龍三郎は目線をギリギリ合わせないようにパヴェルに語りかけたつもりだったが、にやけ顔を一瞬で真顔に変えたパヴェルにがっつりとメンチを切られ固まってしまっている。

「……落ち着いてくれ。ただし会議中の昼酒はやめていただきたいな。」
「腰巾着の管理くらいしっかりしとけよアレン。年上に対する礼節がなってないぜ。」
「純粋に彼に無礼だよパヴェル。その缶から手を離せ。」

 不明な文化圏由来の民族衣装に身を包む耽美な顔つきの青年、アレン・ミナカタが、笑っているのかいないのか判断できない目で後方を凝視する。パヴェルは舌打ちしながらも酒を飲み干し、三缶目のハイボールに手を伸ばした。

「……僕はアレンさんやレナーデさんと同じく、追放処分には反対します。あの二人を失ったら百歩蛇……ヅェネラル隊の戦力は大きく衰えちゃいます。今回の掟破りに関しても実害と言えるものは“二人組の容姿が割れる”というものだけですし、そもそもだいぶ前からあの二人はGOC内部でも注目されつつあったらしいじゃないですか。今更そんな情報だけ──」
「ヅェネラルが言いてえのは実害の規模じゃなくて“掟破り”に関してだ。まだあの二人の行動によりもたらされる実害が予測できない状況下で予測だけを語るな腰巾着。」
「えと……腰巾着呼ばわりはやめようよパヴェルさん……」
「お前もだよレナーデ・クローデル。“居場所を失った彼らを待ち受けるのは財団による監禁かGOCによる抹殺”、それで良いじゃねえか。隊の命運を保護するための掟すら守れん奴はすぐに切り落とすべきだ。蛇に無駄な足はいらねえ。」
「でも……」
「でももだってもクソもねえからもっかいよく聞け。お前にとってラムダがどれだけ大切な人なのかは俺も重々理解している。が、そのラムダの判断がお前の命を危険に曝している状況であることを理解しとけよ。」
「……」
「アレンはどうなんだよ。腰巾着もだ。」
「僕はあくまで反対する。」
「同じくです。」

 部屋の中に響きわたる舌打ちに耐えかねたのか、ヅェネラルの隣に座っていた女がついに口を開いた。[修正]

「パヴェル、意見に関しては概ね同意するがあまり熱くなりすぎるな。[加筆]」
「……悪かったよ。とりあえず二人の追放処分は絶対だ。そこんとこよく憶えとけよ穏健派諸氏。」
「[加筆]」

 シェスタ・シャンバラは少し溜め息を漏らしながらも立ち上がり、次の瞬間、煙のように消え去った。

「俺らも行くか。」

[加筆]


「──お前の考えた最後の言い訳も通じなかったな。」
「ごめん。こんな事に巻き込んじゃって。」
「気にすることはない。それに、俺も事の重要性は何となく理解した。」

 レンジは磨き終わったネイルハンマーをホルスターに収納しながら、部屋の隅で床の溝をなぞるラムダに顔を向ける。

「……マジで言ってたとおりになったな。」
「うん。部屋の隅からこちらを凝視してくる小男がいないこと以外は、全部夢の中のものと同一の内容だった。」
「もう一回状況を確認するぞ。」
「よし。」
「『作戦目標の殺害後に俺が例の少女を殴り殺す最中、廊下の向こう側にある書斎の片隅に鎮座していたスーツ姿の小男が暗闇の中からお前を睨んでいる』、これが作戦前夜にお前が見た夢の全内容で間違いないな?」
「その通り。」
「夢と違うのはその小男がいないこと、そして俺があの少女を殺していないことか。」
「うん。」

 レンジは若干[加筆]

「少女に見覚えは?」
「暗すぎて何も解らなかったよ。」
「ふむ。」
「でも聞き覚えのある──」

 

[加筆]


「敵襲ーーーーッ! 焚書者四名! 白服の焚書者四名、正門より襲来! 見張り五名即死!繰り返す──」

 歩哨の叫びを合図に、アジト内に残存するすべての構成員が戦闘態勢に移行する。全員がバラバラの装備を纏い、バラバラの動きを展開しているにも関わらず、それらの行動は結果的に完璧な迎撃用のフォーメーションとして構築されていった。現時点でこの基地に滞在している構成員は、戦闘員が28 23名、バックアップスタッフも10名近くいる。敵数はたったの四人だが、既に腕利きの蛇が5匹殺されているとなれば迂闊に気が引けない。

「雛山は?」
「ローソンへ買い出しに。通信は傍受されてるだろうからメールでの避難警告は冗談抜きでやめろよ。」
「了解した。とりあえずは──」

 大きな爆発音と共に隣の棟の四階部分が崩れ落ちる。あの地点には──

「……レナード!」

[加筆]

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